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確定申告は必要? 所得の種類と副業による所得を中心とした雑所得

確定申告の基本

著者: 税理士  川邉 憲一

 確定申告は必要? 所得の種類と副業による所得を中心とした雑所得

働き方改革の一環として、副業が解禁されたところも多く、それに伴い、確定申告が必要な方も増えてきているのではないでしょうか。

今年も残すところあと二か月。そろそろ確定申告の準備を始める方もいるでしょう。そのためには必要な書類を入手したり、領収書の束をめくったりと、なにかと準備が必要となります。そもそも、確定申告が必要となってくる条件とは?

本コラムでは、確定申告の基本についてご紹介していきます。


1. 確定申告の対象者

確定申告は、個人事業主や不動産を貸している大家さん、給与所得者で年末調整で精算が終わらない者(給与収入が2,000万円以上や副業で年間20万円以上の所得を有する者、同族会社より利子や賃料を受けている者など)が対象となってきます。

所得税は、個人の所得に対してかかる税金であり、「1年間のすべての所得金額」から「所得控除額」を差し引いた残りの金額(課税所得金額)に税率を適用して税額を計算します。


2. 所得の種類

所得税法において所得は10種類に区分されており、それぞれの所得に区分して所得税の計算を行います。

①利子所得

利子所得とは、預貯金および公社債の利子ならびに合同運用信託、公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいいます。

②配当所得

配当所得とは、株主や出資者が法人から受ける剰余金や利益の配当、剰余金の分配、基金利息、投資法人からの金銭の分配または投資信託(公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託以外のもの)および特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得をいいます。

③不動産所得

不動産所得とは、次の(1)から(3)までの所得(事業所得または譲渡所得に該当するものを除きます)をいいます。

(1)土地や建物などの不動産の貸付け

(2)地上権など不動産の上に存する権利の設定および貸付け

(3)船舶や航空機の貸付け

④事業所得

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。

ただし、 不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得や山林所得になります。

⑤給与所得

給与所得とは、勤務先から受ける給料、賃金、賞与などの所得をいいます。

⑥退職所得

退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社または信託会社から受ける退職一時金なども退職所得とみなされます。

また、労働基準法第20条の規定により支払われる解雇予告手当や賃金の支払の確保等に関する法律第7条の規定により退職した労働者が弁済を受ける未払賃金も退職所得に該当します。

⑦山林所得

山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得をいいます。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採または譲渡した場合は、山林所得ではなく事業所得か雑所得になります。また、山林を山ごと譲渡する場合の土地の部分は、譲渡所得になります。

⑧譲渡所得

譲渡所得とは、一般的に土地、建物、株式等、ゴルフ会員権、金地金などの資産を譲渡することによって生ずる所得をいいます。

ただし、事業用の商品などの棚卸資産や山林の譲渡、使用可能期間が1年未満の減価償却資産や取得価額が10万円未満の減価償却資産(業務の性質上基本的に重要なものを除きます。以下同じ。)および一括償却資産の必要経費算入の規定の適用を受けた減価償却資産などの譲渡による所得は、譲渡所得に含まれません。

⑨一時所得

一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。

⑩雑所得

雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。


3. 雑所得の区分

令和2年の確定申告の用紙より雑所得の内訳が①公的年金等、②業務、③その他に分かれました。②の業務に係るものが追加となりました。

具体的な内容としては、以下のとおりです。

  • ① 公的年金等に係る雑所得については、国民年金、厚生年金、確定拠出年金などの年金の受取による所得になります。
  • ② 業務に係る雑所得については、原稿料、講演料やネットオークションなどを利用して個人取引、車両配達員の報酬よる所得等があります。
  • ③ その他に係る雑所得は、生命保険などの個人年金に係る受取に係る所得、暗号資産や外貨通貨などの取引に係る所得が該当することになります。

事業所得にあたらない副業に関しては、雑所得の業務にあたることになります。

業務に係る雑所得を有しており、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える方が確定申告書を提出する場合には、総収入金額や必要経費の内容を記載した書類(収支内訳書など)の添付が必要になります。

書式は、今までの事業所得の白色申告の場合の収支内訳書に、事業所得か雑所得かチェックを入れることになります。


4. 副業の取り扱い(事業所得か雑所得か)

令和4年10月7日に発表された所得税基本通達の改正案で、事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定することになります。

なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く))の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意しましょう。

副業が事業所得にあたるメリットとしては、以下のとおりです。

  • ① 黒字になる場合は青色申告承認申請を受けることにより、10万円(正規の簿記の原則により帳簿書類を作成している場合は55万円、さらに電子申告により申告するか電子帳簿保存法により会計帳簿を保存している場合は65万円)の所得控除を受けることができる。
  • ② 赤字の場合は他の所得と損益通算を行うことができる。

雑所得にあたる場合は、事業得で受けられる2つの特典はないことになります。

令和4年分以後の所得税において、業務に係る雑所得を有する場合で、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える方は、現金預金取引等関係書類を保存する必要があります。

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著者プロフィール

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川邉 憲一

税理士

1975年茨城県生まれ。1998年早稲田大学社会科学部卒業。2006年税理士試験合格。2007年税理士登録。2009年大原大学院大学会計研究科卒業。2016年行政書士登録。川邉憲一税理士事務所所長。

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