外国人労働者問題の現状|問題点やその原因・企業が取り組める解決策とは
日本では、減少する労働人口を補うために外国人労働者の受け入れが進んでいます。
厚生労働省の資料によると、外国人労働者を雇用している事業所数は全国で約26万か所に上り、外国人労働者の数は約170万人となっています。
外国人労働者の増加に伴って増えていく課題に、企業はどのように対処すべきなのでしょうか。
この記事では外国人労働者問題の現状を取り上げ、問題点や原因、企業が取り組める解決策を紹介します。
日本で急増する外国人労働者問題とは
まずは、日本で急増する外国人労働者問題の具体例を見ていきましょう。
1. 低賃金労働
外国人労働者に対して「安価に雇用できる人材」という認識を持っている企業は少なからず存在し、外国人労働者が日本人労働者よりも低い賃金で雇用されている現実があります。
一方で他国に目を向けると、平均賃金が上昇している国は増えており、2021年の日本の平均賃金はG7の中で最下位です。外国人労働者から働き先として魅力的だと感じてもらえるよう、日本企業は外国人労働者に対する認識を改め、雇用条件を見直す必要があるといえるでしょう。
2. 劣悪な職場環境
厚生労働省が令和2年10月9日に発表したプレスリリースによると、監督指導を実施した外国人技能実習生が在籍している9,455の事業場のうち、労働基準関係法令違反が認められた事業場は6,796(71.9%)でした。
そのうち34件は、重大・悪質な労働基準関係法令違反があったとして送検されています。
違反事項は、労働時間(21.5%)、使用する機械等の安全基準(20.9%)、割増賃金の支払(16.3%)の順に多く、外国人労働者が劣悪な職場環境で長時間労働を強いられている現実が見て取れます。
3. コミュニケーションの難しさ
外国人労働者の受け入れが難しい理由のひとつに、言語の壁によるコミュニケーションの難しさがあります。雇用主が外国語を話せず、外国人労働者も日本語を理解できないとお互いにストレスが大きくなり、さまざまなトラブルにつながります。
「うなずき」「人を呼び寄せるときの手の振り方」などのジェスチャーも、国によって意味が異なる場合も多く、誤解を生むことがあるでしょう。
4. 長時間労働
外国人労働者の労働時間は、日本人と同じように法律でルールが定められています。しかし、外国人労働者が違法な長時間労働を強要され、時間外労働の手当もきちんと支給されていないケースが後を絶ちません。
5. 地域社会との摩擦
日本には約170万人の外国人労働者がいますが、地域によっては外国人が少なく、地域住民が接し方に慣れていないこともあります。外国人に対して不信感を抱いた住民が差別的な態度を取ってしまうなどのトラブルも考えられます。
外国人労働者問題が起こる主な原因
外国人労働者問題が起こる主な原因は次の通りです。
外国人労働者に対する人権意識が低い
外国人労働者に対する人権意識の低さは、長時間労働や低賃金、劣悪な労働環境といった問題を引き起こす原因のひとつといえます。外国人労働者を日本人と同様に扱い、権利を尊重することが求められます。
身分が不安定
日本で働く外国人労働者は、身分が不安定になりがちです。パスポートがなければ自国に帰ることすらできません。パスポートを取り上げられ、不当な条件で働かされるなど、外国人労働者の身分が不安定であることを悪用する雇用主も存在します。
日本人側が歩み寄ろうとしない
コミュニケーションを外国人任せにする日本人の態度も、外国人労働者問題が起こる主な原因のひとつです。
相手が言語を習得するのを待つのではなく、日本人側が外国人に歩み寄る姿勢を持つことが重要です。相手の国の文化や宗教への理解を深めることも、コミュニケーションを円滑にするポイントになります。
企業ができる外国人労働者問題の解決策
ここでは、企業ができる外国人労働者問題の解決策を紹介します。
待遇を改善する
外国人労働者問題の解決で企業が真っ先に取り組むべきなのが、労働基準法を遵守することです。日本人との労働環境の格差をなくし、待遇を改善しましょう。採用や労務の担当者だけでなく、経営者も外国人労働者の労務管理や採用ルールについて理解を深めることが大切です。
外国人研修を行う
日本人なら誰でも理解しているマナーや慣習も、外国人労働者にとっては初めて触れるものも少なくないはずです。マナーを知らないことでトラブルにつながることもあるため、研修の機会を設けて丁寧に説明しましょう。外国人労働者に歩み寄ろうとする姿勢を見せることは、彼らの仕事へのモチベーションを高めることにもつながります。
日本人の従業員向けにも研修を行う
日本人の従業員向けに研修を実施し、外国人労働者の受け入れ体制を整える対策も有効です。コミュニケーションの取り方などの基礎知識に加えて、語学研修を取り入れても良いでしょう。
研修は定期的に実施し、外国人労働者と接するなかで疑問に思ったことをディスカッションする場を設けるなど、内容のブラッシュアップも必要です。
支援体制を整える
来日したばかりの外国人労働者は、文化や言語の違いによってストレスを抱えやすくなります。公私ともに外国人労働者を支援できるよう、体制を整えましょう。
困ったときに相談できる窓口を設けるなど、外国人労働者が一人で問題を抱え込まないようにする環境づくりが重要です。
企業が外国人労働者を採用するメリット
企業が外国人労働者を採用するメリットとして、人手不足の解消と優秀な若手人材の確保があげられます。
今後、日本では労働人口が減少するため、自ずと外国人労働者に頼らざるを得ない状況になります。
特に、若年層の労働者の確保が難しくなることが予想されるため、海外の優秀な若手人材を確保することは、企業にとって重要な課題です。
また、外国人労働者の採用は、海外展開の足掛かりとしての役割も担います。中長期的な企業の成長を見据えて海外へと市場を広げていくことは、もはや不可欠といえます。
外国人労働者を積極的に採用することは、企業だけでなく日本全体にとっても重要なことであるといえるでしょう。
企業が外国人労働者を採用する際の注意点
外国人労働者を採用する際は、就労ビザの種類や有効期間を確認しましょう。
外国人が日本で働く際は、自社の業務に合った在留資格を持っている必要があります。在留資格を持たない場合、不法滞在および不法就労になるので注意が必要です。
また、雇用時・離職時には、会社を管轄するハローワークへ届出を行います。採用時には、候補者が日本である程度コミュニケーションが取れることを確認することも大切です。
日本語の能力をはかるには、直接コミュニケーションを取ってみるほかに、日本語能力試験の認定レベルを参考にすることも可能です。認定レベルはN1~N5に分かれており、数字が若い順にスキルが高いことを意味します。
日本人の同僚や取引先とスムーズにコミュニケーションを取るには、N1もしくはN2レベルの日本語能力を有していることが望ましいといえます。
このような注意点を踏まえて、外国人労働者を受け入れられるように職場環境を整えておきましょう。
外国人労働者問題についてのまとめ
外国人労働者問題の問題点や原因、企業が取り組める解決策を紹介しました。
国籍に関係なく、誰もが気持ちよく働ける環境を整えることは、経営者の重要な課題です。
今後、外国人労働者の数は増加が予想されています。長時間労働や低賃金といった外国人労働者を取り巻く課題の解決は急務といえるでしょう。
本記事を参考に、外国人労働者を受け入れるための体制を検討してみてはいかがでしょうか。
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