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育児・介護休業法の概要と改正内容|企業が押さえるべきポイント

育児・介護休業法の概要と改正内容|企業が押さえるべきポイント

2021年の6月に育児・介護休業法が改正され、育児休業がより取得しやすくなるような措置が企業に義務付けられました。産後パパ育休制度の設立や育児休業の分割取得ができるようになったため、企業も対応が必要です。

今回は、育児・介護休業法改正に対して、企業の担当者が押さえておくべきポイントについてわかりやすく解説します。就業規則や社内制度の見直しを行うために、ぜひ参考にしてみてください。


この記事の監修者
西岡社会保険労務士事務所  代表 

育児・介護休業法とは

まずは、育児・介護休業法とはどんな法律かについて解説します。

育児・介護休業法の概要

育児・介護休業法(正式名称「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)とは、従業員が育児や介護のための休業を会社に申し出た場合、会社に休業を認めるように義務付けた法律です。

従業員が育児や介護で会社を辞めることなく、仕事と家庭生活の両立を支援するために設けられました。法改正により、「子の看護休暇」や「介護休暇」といった短期間の休暇制度も追加されています。

育児休業の対象者は、原則1歳未満の子どもを養育する労働者です。ただし、子どもの保育先が見つからないなど、一定の条件を満たせば、最大2歳まで休業が認められます。

介護休業の対象者は、要介護状態の家族の介護が必要な従業員です。配偶者や父母、子ども、祖父母、兄弟姉妹、孫までが家族の範囲に含まれます。

制度の利用割合

厚生労働省の「改正育児・介護休業法 参考資料集(平成28年8月)」によると、介護をしている労働者のうち、介護制度を利用している人の割合は15.7%でした。

利用した制度の内訳と介護をしている人に占める割合は、以下のとおりです。(複数回答可のため各種類の合計は総数とは異なります。)

  • 介護休業:3.2%
  • 短時間勤務:2.3%
  • 介護休暇:2.3%
  • その他:8.2%

会社を長期間休む介護休業の利用割合はわずか3.2%に留まっており、制度利用が進んでいないのが現状です。

参考:「改正育児・介護休業法 参考資料集(平成28年8月)|厚生労働省

育児・介護休業法の条文

育児・介護休業法の第一条では、育児や介護のための休業・休暇制度のほか、所定労働時間の短縮などの措置を設けることを、企業に義務付けています。

“第一条 この法律は、育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護休暇及び介護休暇に関する制度を設けるとともに、子の養育及び家族の介護を容易にするため所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか(以下略)”

引用:「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」|e-GOV 法令検索 

また、企業の義務として、休業・休暇制度を従業員に周知することや、従業員が制度を利用しやすい雇用環境を整備することなどを条文で定めています。


育児・介護休業法の改正内容の変遷

育児・介護休業法は度々改正が行われてきました。ここからは、育児・介護休業法の改正内容について解説します。

2021年以前の改正内容

1995年4月1日に育児休業法が改正され、育児・介護休業法がつくられました。それ以降の2021年以前にはさまざまな改正が行われました。主な改正は、子の看護休暇・介護休暇制度の設立や育児休業期間の延長などです。

子の看護休暇・介護休暇は、急な子どもの病気や介護が必要になった場合、1日単位または半日、時間単位で休暇が取れる制度です。

また、育児休業期間の延長によって「パパ・ママ育休プラス」を利用すれば、子どもが1年2カ月になるまで、育児休業の取得ができるようになりました。保育所に入れないなどの事情があれば、最大2歳になるまでの延長も可能です。

2021年6月の改正内容

2021年6月に改正された育児・介護休業法ですが、施行は以下の3回に分けられています。それぞれの施行時期と内容について解説します。

施行年月

施行内容

2022年4月

  • 雇用環境の整備や個別の制度周知、育児休業の取得意向の確認を義務化
  • 有期雇用労働者の育児・介護休業取得の要件を緩和

2022年10月

  • 産後パパ育休の創設
  • 育児休業の分割取得

2023年4月

  • 育児休業等の取得状況の公表を義務化

2022年4月の施行内容

2022年4月に行われた施行内容の1つは、従業員が育児休暇を取りやすくなるように次の措置を企業に義務付けるものです。

  • 雇用環境の整備などに関する措置
  • 育児休業制度の従業員への周知
  • 育児休業の取得意向の確認義務

雇用環境の整備などに関する措置とは、育休制度について研修を行うことや相談窓口を設けることを指します。また、制度を従業員に周知する方法をルール化して実施したうえで、従業員の意向を1人ずつ確認しなければなりません。

2つ目の改正点は、有期雇用労働者に対する育児・介護休業取得要件の緩和です。改正前の「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上」という要件が廃止され、転職してすぐの人でも、育児・介護休業を取れるようになりました。

2022年10月の施行内容

2022年10月に行われた施行内容は、「産後パパ育休 (出生時育児休業)制度」 の創設です。育休とは別に、産後8週間以内に4週間まで休業を取得できます。期間内に2回に分けて取得でき、労使協定による労使合意があれば休業中に仕事ができるため、利用しやすい内容になっています。

産後パパ育休以外にも、育児休業を分割取得(2回まで分割可能)できるようになりました。夫婦交代で育休取得する場合、取得時期の選択肢が広がります。

参考:育児・介護休業法について|厚生労働省

2023年4月の施行内容

2023年4月に行われる施行内容として、「育児休業等の取得状況」を年1回公表することが義務付けられます。対象となるのは、従業員数が1,000人を超える企業です。

公表が義務付けられる内容としては、「男性の育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。

公表は、自社のホームページや厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」に掲載するなど、誰でも閲覧できるような形で行いましょう。

参考:育児・介護休業法 改正ポイントのご案内| 厚生労働省


育児・介護休業制度で担当者が押さえておくべきポイント

ここからは育児・介護休業制度について、企業の担当者が押さえておくべき7つのポイントについて解説します。

1.就業規則の確認と更新作業を行う

法改正に合わせて、会社の就業規則の更新作業が必要です。休業や休暇に関する事項は、就業規則に明記することが義務付けられているからです。

2022年度に施行された「産後パパ育休 (出生時育児休業)制度」と「育児休業の分割取得(2回まで分割可能)」の内容を、就業規則に追記する必要があります。休業の申請方法なども記載したほうがいいでしょう。

育児・介護休業法は度々改正されているため、厚生労働省の「育児・介護休業等に関する規則の規定例」などを参考に、漏れがないか全面的にチェックすることをおすすめします。

2.義務化された業務を漏れなく実施する

2022年4月から企業に課された義務は、次の3つです。

  • 雇用環境の整備などに関する措置(育休制度の研修実施、相談窓口の設置など)
  • 育児休業制度の従業員への周知
  • 育児休業の取得意向の確認義務

義務化された業務を漏れなく実施するには、各業務の責任者を明確にする、具体的なルールや事務手順を定める、実施状況をチェックするなどの具体的な対応が必要です。各部署の責任者へ、「従業員への周知と取得意向の確認を徹底しましょう」と通達するだけでは不十分です。

また、2023年4月から義務となる「育児休業等の取得状況の公表」についても準備を始めましょう。

3.取得を控えさせる内容周知や誘導は、絶対にNG

育児・介護休業制度は、育児や介護で困った時に休業取得を促進することを目的としています。「育児休業制度の従業員への周知」が義務化されたのも、目的は同じです。

休業取得を控えさせる行為は、育児・介護休業法の目的に反するため、法律違反です。また、法律で認められた従業員の権利を侵害するものであり、従業員や社会からの批判を浴びるリスクもあります。

4.周知すべき対象者をしっかり把握する

育児休業制度を従業員に周知するためには、取得対象となる従業員を把握しなければなりません。出産予定の女性については、産休の申請で事前に把握しやすいのですが、男性については本人からの申し出がない限り、把握できません。

男性従業員にも研修などで休業制度の概要を理解してもらい、出産予定を会社に連絡するように周知しましょう。

5.個別周知書を作成する

従業員に周知するために個別周知書を作成し、対象者に交付することをルール化することも重要です。個別周知書の主な内容は、以下のとおりです。

  • 育児休業は男性でも取得できること
  • 産後パパ育休 (出生時育児休業)は男性の育休取得を促進する制度であること
  • 育児休業時には雇用保険から育児休業給付が支給されること
  • 育児休業中の社会保険料は免除されること 

厚生労働省の「育児・介護休業等に関する規則の規定例」「個別周知・意向確認書記載例 」などを参考にして、作成しましょう。

6.制度の内容を対象者に分かりやすく説明する

従業員が制度を理解し、安心して休業取得できるように、個別周知書を活用して制度の内容を分かりやすく説明します。

「個別周知・意向確認書記載例 」には、周知書に関する法律上の決め事や、さまざまなケースを想定した具体例が解説されているので、参考にしてください。

7.対象者のサポートと準備を怠らない

従業員が休業後にスムーズに職場復帰できるよう、サポートや準備も必要です。安心して休業を取得するには、職場の上司や同僚の理解に加えて、休業中も業務に支障が出ないようなシステム・環境づくりが欠かせません。

また、円滑な職場復帰を支援するために、時短勤務制度の活用や事前の職場復帰スケジュールの作成などの対応も検討しましょう。


育児・介護休業法についてのまとめ

育児・介護休業法とは、従業員が育児や介護のための休業を会社に申し出た場合、会社に休業を認めるように義務付けた法律です。2022年には2回の施行が行われており、企業には施行内容に合わせた対応が求められています。

就業規則の変更や従業員の説明を行うには、改正や制度の内容への理解が不可欠です。

また、育児や介護をしながら働く人がより働きやすい環境づくりのために、管理職への教育も進めるようにしていきましょう。

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監修者プロフィール

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西岡 秀泰

西岡社会保険労務士事務所 代表

生命保険会社に25年勤務し、FPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。
2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
得意分野は、人事・労務、金融全般、生命保険、公的年金など。

【保有資格】社会保険労務士/2級FP技能士

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