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転籍とは? 企業側・労働者側のメリット・デメリットや注意点を押さえよう

監修者: 2級キャリア・コンサルティング技能士(国家資格) キャリアコンサルタント(国家資格)CDA(career development adviser) ハラスメント対策認定アドバイザー  五十嵐 美貴

転籍とは? 企業側・労働者側のメリット・デメリットや注意点を押さえよう

従業員の人事異動のひとつとして、「転籍」があります。自社の従業員を他社に出向させることですが、「左遷」「派遣」など混同しやすい言葉も多くあります。

転籍は自社にも従業員にもさまざまな影響があるため、意味をきちんと理解しておきましょう。

本記事では、転籍の概要や立場別のメリット・デメリットについて解説します。


会社の転籍とは?

転籍(転籍出向)とは、今働かせている従業員との労働契約関係を解消したうえで、新しい企業(出向先企業)と雇用関係を結び直させる出向の方法です。

従業員の転籍を行う場合、企業は転籍先の企業と転籍契約を結びます。また、転籍させた従業員を出向元企業に復帰させる場合は、出向元と新しく労働契約を結び直す必要があります。

つまり、たとえ以前は自社の従業員だった人材であっても、労働契約を再度締結しなければ働かせられないということです。

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転籍と混同しやすい言葉との違い

転籍と混同されやすい言葉は、「在籍型出向」や「左遷」などいくつか存在します。転籍とそれぞれの違いを、理解しておきましょう。

1.在籍型出向

「在籍型出向」とは、出向元企業に在籍したまま、また別の企業に出向させることを指します。労働者は出向元・出向先の双方と雇用契約を結び、一定期間は出向先の企業で働きます。

転籍との違いは、従業員がもともと働いていた企業に戻るかどうかです。在籍型出向は、一定期間だけ出向先の企業に勤務し、期間満了後は出向元の企業に戻って働きます。

しかし、転籍の場合は以前働いていた企業に復帰することはありません。

もともと在籍型出向は、グループ企業や関係会社の雇用調整や人材交流のために行われることが多い方法です。

しかし、コロナ禍で一時的に休業する企業が、自社の従業員の雇用機会の確保やスキルアップを目的に別の企業で働かせるケースも目立ってきています。

参考:厚生労働省「在籍型出向「基本がわかる」ハンドブック(第2版)

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2.左遷

「左遷」とは、人事異動によってそれまでより低い役職や、能力に見合わない職務に配置することです。

「業務量の少ない部署へ配置転換する」「希望していないエリアへ転勤させる」といったことでも使われる場合があり、必ずしもネガティブな意味合いで使うわけではありません。

左遷も、勤め先の企業には在籍したまま行われるものです。在籍しなくなる転籍とは、大きく異なります。

なお「左遷」という言葉は、用語として正式に存在するものではありません。後述の異動に対する捉え方の一種だと言えます。

3.異動

「異動」は、職場内での地位や職務を、長期間にわたって変更することです。「配転」とも呼ばれます。

異動は従業員の配置変更全般を指す言葉であり、転籍や左遷も異動の一種だと言えます。

4.派遣

「派遣」は、自社の従業員を他社に勤務させることです。派遣元は派遣先と派遣契約を結び、従業員自身は派遣元と労働契約を結びます。

転籍との違いは、契約を結ぶ相手です。

転籍は既存の労働契約を解消し、出向先の企業と新しく労働契約を結びます。派遣の場合は、派遣元企業と労働契約を結んだまま派遣先企業で働きます。


【立場別】転籍によるメリット

転籍は、転籍させる企業側、転籍を受ける企業側と、転籍する労働者のそれぞれにメリットがあります。立場ごとに分けて、詳しく解説します。

転籍させる企業側のメリット

転籍させる企業のメリットは、以下のとおりです。

  • 転籍する従業員の人件費が削減できる
  • 解雇に近いものの、企業イメージダウンや従業員の反発を招きにくい
  • 転籍後の従業員に責任を負わなくてもよい
  • グループ企業への転籍の場合、グループ全体の業績アップになる可能性がある

転籍はある種、解雇に近い人事異動です。しかし、従業員に次の職場を用意したうえで行うものであるため、比較的ポジティブな印象を社内外に与えられます。

また、転籍する従業員が経営不振の子会社や下請け会社、取引先の立て直しに貢献できる人材であれば、自社と転籍先企業との良好な関係や連携につながるでしょう。

うまく行えば、無理のない人件費の削減をしつつ、自社の経営の立て直しにも取り組めるものなのです。

転籍を受ける企業側のメリット

一方、転籍を受ける企業にとっては、以下のようなメリットがあります。

  • 新規人材の採用コストがかからない
  • 出向元での経験が活かされるため、教育コストの削減につながる
  • 即戦力となりうる優秀な人材を獲得でき、配属先部署の戦力強化にも期待できる
  • 経営の立て直しに役立つ

採用コスト・教育コストを抑えつつ、優秀な人材を迎え入れられる点は非常に魅力的です。

人材採用・育成の費用が経営を圧迫しているようであれば、その分のコストが浮いて経営も立て直しやすくなるでしょう。

これから新たにプロジェクトを立ち上げる予定がある場合、役立つ経験と知識がある人材ならプロジェクトメンバーの一員にもできます。

転籍する労働者側のメリット

転籍する労働者にも、いくつものメリットがあります。

  • 次の就職先が確保されているため、転職活動をしなくてもよい
  • これまでと異なる業種や職種にチャレンジでき、キャリアアップにつながる
  • 仕事のマンネリ化を防ぐ効果がある
  • 適材適所の配置に期待できる
  • 今までより出世できる可能性がある

自動的に次の職場が用意されていることは、大きな安心感があるでしょう。長く同じ職場や環境で同じ仕事に携わっている人にとっては、気分を一新できる良い機会だとも言えます。

また出向元から出向先に、自分の特徴やスキル、能力などの情報提供がされれば、より自分に合った仕事に就ける可能性もあります。

出向元の企業ではポストがなかった場合も、子会社や下請け会社で管理職としての実績を積めば、出世できるかもしれません。

【立場別】転籍によるデメリット

転籍には、それぞれの立場の企業や従業員にデメリットもあります。こちらも、立場別に解説しましょう。

転籍させる企業側のデメリット

まず、転籍させる企業側には、以下のようなデメリットがあります。

  • 労働契約を解消するもののため、手放した従業員は戻ってこない
  • 従業員が減るため、人手不足になる可能性がある
  • 出向先や転籍させる従業員との条件のすりあわせが難しい場合がある

転籍の性質上、一度手放した従業員を再び雇用することは困難です。一時的な雇用調整として転籍を行って業績が改善した、あるいは転籍によりかえって人手不足になった場合でも、従業員が戻ってきてくれるとは限りません。

また、そもそも出向先や従業員が転籍に同意しなければ、自社が希望しても転籍が実現しない点もデメリットと言えるでしょう。

転籍を受ける企業側のデメリット

転籍を受ける企業にとってのデメリットとして挙げられるのは、以下のような点です。

  • 新しい人材を迎え入れるための準備が必要になる
  • 好条件を提示できないと、転籍が実現しない
  • 迎え入れた人材の能力・スキルが想定より低い可能性がある

転籍が実現した際は、新入社員を受け入れるときと同様の準備も必要です。状況によっては、社内に負担がかかるかもしれません。

また、そもそも職位や給与、待遇などで満足のいく条件が提示できなければ、希望する従業員が来てくれないこともあるでしょう。転籍は対象となる従業員の同意なしでは実現できないためです。

加えて、転籍してくる従業員に豊富な知識や経験、スキルがない場合は、思うように効果が得られないこともあるでしょう。どんな人材なのか、事前に入念な調査・確認をしておくことをおすすめします。

転籍する労働者側のデメリット

転籍する労働者側にも、以下のようなデメリットがあります。

  • 希望する企業・職種にありつけるとは限らない
  • 現在の職場より給与水準が下がる恐れがある
  • 出向先の規定や業務内容を一から覚え直さなくてはならない
  • ライフスタイルの大幅な変更や引っ越しが必要になる可能性がある
  • 知り合いがいない職場で新たな人間関係を築かなくてはならない

転籍は出向先が決まっている異動ではありますが、実際は転職と同じようなものです。これまでの仕事のやり方が通用しなくなり、人間関係も再び構築し直す必要があります。

特に年齢を重ねてからの転属の場合、出向先の上司が年下になる場合もありうる話です。予想外にストレスを抱えてしまうこともあるでしょう。

また、転籍にマイナスイメージを抱く人も多いものです。労働者によっては、仕事への意欲が低下する可能性も否定できません。

従業員の立場に立って出向元と出向先が話し合い、納得してもらえる労働条件を調整することが重要です。対象の従業員本人はもちろん、ほかの従業員にも転籍へのマイナスイメージや会社に対する不信感が生じないよう、誠実な対応と説明が必要でしょう。


転籍に関する注意点

最後に、転籍に関してよくある疑問や、企業が注意しておくべきことを解説します。

従業員には転籍を拒否する権利がある

転籍は、企業が一方的に命じることはできません。そのため、従業員が転籍を拒否することもできます。

転籍は既存の労働契約を解消し、別の企業に出向させるものです。転籍させる場合はその都度、対象の従業員から同意を得なくてはなりません。

もし従業員から転籍の理由や転籍後の処遇などに不満があると言われたら、必ず対話をしましょう。転籍そのものを受け入れられないのか、一部の条件を変更すれば可能なのかを見極めながら、慎重に調整してください。

また、従業員が拒否したからといって、何らかの懲罰や処分を下すことも認められません。

参考:わーくわくネットひろしま「7-4 転籍命令には応じなければならないか

転籍時には原則退職金を支払う必要がある

従業員を転籍させる際は、原則として退職金の支払いが必要です。転籍はいわば、自社を一旦退社させることであるためです。

一般的には、転籍を命じられて在籍していた会社を退職する際に、退職金を支払います。

ただし、出向元と出向先の勤続年数と合算し、出向先を退職する際に退職金を支払うケースもあります。特に子会社やグループ会社への転籍の場合は、勤続年数も継続されて、転籍先の基準で退職金も積算されることもあるようです。

勤続年数に応じて、出向元と出向先が按分して退職金を支払う場合もあります。このあたりの取り決めは、企業によってさまざまです。

転籍時に出向元との雇用契約は消滅する

前述のとおり、転籍をさせた場合は、その従業員と出向元との雇用契約が消滅します。それにともない、給与や社会保険なども出向先の規定に従うことになるのです。

このとき、転籍後の給与が転籍前より低くなって、従業員からその差額(給与較差補てん金)の補償を求められる可能性があります。

出向元の企業には、それを補償する義務はないため支払わなくても構いません。しかし、支払った分の金額は、必要経費として自社で損金算入が可能であるため、支払うこともあります。

ただし、給与の差額以外も補償にしてしまうと、出向元から出向先への「寄付」と見なされ、課税対象となる可能性があります。

参考:国税庁「出向者に対する給与の較差補てん金の取扱い

転籍の事実を書面に残しておく

転籍後のトラブルを防ぐためにも、合意内容や契約内容については書面に残しておくことが望ましいでしょう。

一例として、以下のような書面にできます。

転籍は従業員の同意が得られた場合に、契約をして行われるものです。

しかし、転籍することで給与だけでなく、労働条件や福利厚生などに関しても、対象の従業員に不利益が生じる可能性も否めません。


転籍についてのまとめ

転籍は人事異動の一種で、出向元・出向先・従業員自身のそれぞれにメリットがあります。

しかし、自社と従業員との雇用契約を解消して別の企業に行かせるものであるため、慎重に進めなくてはなりません。

また、転籍には対象となる従業員の同意が必須であり、原則として退職金も支払わなくてはなりません。

転籍を行う際は、注意すべき点が多くあります。トラブルを回避するためにも、丁寧な説明と着実な手続きをしましょう。


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監修者プロフィール

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五十嵐 美貴

2級キャリア・コンサルティング技能士(国家資格) キャリアコンサルタント(国家資格)CDA(career development adviser) ハラスメント対策認定アドバイザー

フリーランスのキャリアコンサルタントとして、高校生から中高年までの幅広い年齢層の就職・転職支援、相談業務に従事。

高校や大学での面接指導、職業訓練校や就労移行支援事業所での講師兼キャリアコンサルタント、就職・転職フェアでの相談コーナーにて、求職者を支援。新卒・中途採用、次世代リーダー選別のアセスメント業務歴25年。適性診断テスト(文章完成法テスト)を用いての人物像把握など、これまで10数社の判定に携わる。

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