子会社とは? 定義や種類、目的、注意点をわかりやすく解説
子会社とは、50%を超える株式を他の会社に保有されている会社のことです。子会社は親会社の意向に沿って、経営の意思決定を行います。
今回は、節税対策にもなる子会社の定義や種類、目的や注意点をわかりやすく解説します。子会社の設立を検討している経営者の方はぜひ参考にしてください。
子会社とは?
子会社は「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう」(会社法第2条第3号)と定められています。つまり、50%超の株式を他の会社に保有されている会社のことです。
一般的な株式会社は株式数に応じて議決権を持っているため、子会社は他の会社の意向に沿って、経営の意思決定を行うことになります。これが「経営を支配している」という言葉の意味です。
子会社の判断基準
会社の議決権の50%超を他の会社が保有している場合、その会社は経営を支配されているため、子会社に該当します。
一方、議決権が50%以下である場合、議決権以外の要素も考慮して子会社かどうかを判断します。たとえば、下記のような場合は子会社に該当します。
- 会社の取締役会の役員のうち過半数が、他の会社の役員や従業員である場合
- 会社の資金調達額の50%超を他の会社から借り入れている場合
- 他の会社との間に経営を支配する契約を結んでいる場合
子会社の種類
ここからは、子会社を種類別に解説していきます。
完全子会社
株式や持分の全てを他の株式会社に保有されている会社が、完全子会社です(会社法第847条の3第2項の2)。
この場合、親会社である他の株式会社が直接株式等を持っているとは限りません。その親会社の他の完全子会社が株式等を保有している、いわゆる孫会社も完全子会社の一つです。なお、法人ではなく、個人が株式等を保有している場合は、完全子会社とは呼びません。
連結子会社
親会社が上場企業等の大会社である場合、親会社が提出する決算資料は子会社の経営成績を反映させた連結財務諸表である必要があります。この連結財務諸表に含められる子会社は、連結子会社と呼ばれています。
連結財務諸表規則第5条では、すべての子会社を連結の範囲に含めなければいけないが、売上や利益などの要素で重要性の乏しいものは連結の範囲に含めなくてもよいとされています。
非連結子会社
子会社でありながら、連結財務諸表に含めなくてもよいとされた会社が非連結子会社です。
完全親会社の支配が一時的である子会社や、資産、売上高、損益、利益剰余金及びキャッシュフロー等の項目を勘案し、完全親会社の財務状況や経営成績に大きな影響を与えないと判断された子会社が、連結の範囲から除外されます。
類似しているグループとの違い
子会社にはとよく似た用語に「関係会社」「関連会社」「グループ会社」があります。それぞれとの違いについて解説します。
関係会社との違い
その会社の親会社、子会社及び関連会社などを総称して、関係会社と呼びます(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則第2条第8項、以下、財規)。
議決権を保有している場合など、お互いの経営に影響を及ぼすことのできる会社のグループを指す言葉です。
参考:「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」|e-Gov法令検索
関連会社との違い
その会社が出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、経営に対して重要な影響を与えられる、子会社以外の会社が関連会社です(財規第8条第5号)。
たとえば、その会社が20%以上の議決権を有している他の会社や、15%以上20%未満の議決権があり、その会社の役員や従業員が他の会社の代表取締役などに就任している会社などが含まれます。
グループ会社との違い
その会社のビジネスに影響のある会社を総称してグループ会社と呼ぶこともあります。グループ会社は、法律や会計の規則で明確に定められている言葉ではありません。その範囲には幅がありますが、おおむね関係会社と同じ意味で使用されています。
子会社を作る目的
子会社を作る目的は会社によってさまざまです。ここからは、主な目的について見ていきましょう。
節税対策のため
法人税の計算では、資本金が1億円以下等の要件を満たした中小法人は、所得800万円までに適用される法人税率が23.2%から15%に軽減されるという優遇規定があります。
また、会社ごとにある交際費の800万円の定額控除枠の活用や、設立後2年間の消費税の免税期間を活用して、節税することができます。ただし、法人住民税など、子会社を作ることで増える税金も存在します。
後継者問題対策のため
社長一人がすべての議決権を有している場合、社長に万が一のことがあった時に株式の相続で揉めてしまうケースがあります。たとえば、二人の子が50%ずつ相続した場合、その後の会社の経営に関する意思決定が上手く進まない可能性もあるでしょう。
子会社を設立して、事業を二つに分けておくことで、それぞれの子が100%の議決権を持った会社を相続できるので、その後の意思決定がスムーズに行えます。
リスクヘッジのため
リスクを分散できることも、子会社を設立するメリットの一つです。一般的に会社名とサービスや製品は紐づけて認識されているため、万が一何かのサービスや製品に不祥事等が発生した場合に、企業イメージの低下を一つの会社に留めることができます。他の親会社や子会社のサービスや製品への影響を最小限にできるでしょう。
人材・ノウハウを活用するため
子会社の代表や役員として、自社の役員や幹部候補の従業員に就任させることで、人材の活用や育成につながります。特に、会社を経営するという経験は、なかなか得難いものです。将来の後継者候補に子会社の経営者としての実績を積んでもらう、という方法を行っている会社は非常に多くあります。
また、外部の会社を買収して子会社化する場合等は、自社にはない販路やノウハウ等を吸収して活用できます。
子会社を設立する方法
事業を買収して子会社とする場合、主に「株式取得」と「事業譲渡」のいずれかの方法で行うことが一般的です。
株式取得によって事業を買収する場合、会社の株式を購入して、その経営権の50%以上を取得します。この場合、一つの会社をそのまま子会社にする形になるため、買収の目的とした事業やノウハウ以外の債務やリスクなどを事前に調査することが重要です。
事業譲渡によって事業を買収する場合、一つの会社の中の特定の部門や事業に関する資産と負債を購入します。この場合、新しい子会社を設立して事業を行うこともできますが、子会社にはせず、親会社で事業を行うことも可能です。事業譲渡の場合、買収の対象となった部門や事業以外のものは全て元の会社に残すことになります。よって、株式取得の方法と比べて、リスクが限定される点が特徴的です。
子会社を設立するときの注意点
ここからは、子会社を設立する時の注意点について解説します。子会社を作る前に注意点について理解しておくことが大切です。
負担・管理コストが増える可能性がある
会社の経理事務や会計事務は、会社ごとに行う必要があります。そのため、子会社を設立すると、親会社と子会社の2つの会社の経理処理を行わなければなりません。さらに、上場会社の場合は連結財務諸表を作成する必要があるため、会社の決算作業の難易度は大きく上がることが予想されます。
また、子会社の管理等のために従業員が増えると、給与計算や社会保険手続きのコストも増加するでしょう。
税務調査が厳しくなる可能性がある
子会社を設立した後、親会社と子会社の間で取引を行うことも出てくるでしょう。ただし、関係会社間での取引については、税金を計算するうえで特別なルールが適用されることが少なくありません。このようなルールに気をつけないと、税務調査の対象として選ばれやすくなる可能性があります。
また、関係会社間の取引がある場合、単純に税金計算の際に対応しなければいけないルールが増えますので、税務調査でチェックされる項目も多くなります。
労使トラブルが起こる可能性がある
設立した子会社に従業員も移ってもらう場合、主に転籍か出向か、どちらかの方法を使うことになります。
転籍とは、親会社との雇用関係を終了し、新たに子会社と雇用契約を結ぶ方法です。一方の出向とは、親会社との雇用関係は残したまま、子会社で勤務し、給与は親会社から受け取ります。子会社は親会社に出向負担金として給料相当額を支払う方法です。
どちらの場合も、従業員の立場に変更が生じるため、会社の期待と本人の意向にズレが生じて、離職などの労使トラブルのきっかけになる可能性があります。従業員に転籍や出向を求める場合は、事前に本人への説明などの対策が重要です。
子会社のトラブルが親会社の責任になる可能性がある
親会社と子会社は別の会社ですが、法律上は多くの場面で連帯責任を負うことになります。たとえば、子会社がコンプライアンス違反を起こした場合、親会社もその対応と対策を求められることになるでしょう。
また、子会社の経営成績は最終的には親会社が責任を持ちます。トラブルで子会社が赤字となってしまっても、その赤字はいずれ親会社が負担することになるでしょう。
子会社についてのまとめ
子会社とは、50%を超える株式を他の会社に保有されている会社のことです。また、50%を超えない場合でも一定の要件を満たすことで、子会社となります。
子会社を作る目的は節税対策や後継者対策、人材・ノウハウの活用などさまざまです。一方で、コストの増加や労使トラブルの可能性も考えられます。子会社の設立を検討する際は、目的や注意点を理解したうえで、会社にとってベストな選択を行うようにしてください。
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