ジョブローテーションとは? 意味や目的を簡単に解説
ジョブローテーションは、従業員のスキルアップを目的とした業務変更や人事異動のことです。終身雇用制度が崩れるなかで誕生した人材育成の方法ですが、どのような企業が導入に向いているのでしょうか。
今回は、ジョブローテーションのメリット・デメリットや向いている企業について解説します。
従業員のキャリア形成や業務効率化に成功した企業の事例も紹介しますので、制度の導入を判断する際の参考にしてください。
ジョブローテーションとは?
まずは、ジョブローテーションとはどういった制度か、どんな目的があるのかについて解説します。
ジョブローテーションの意味・目的
ジョブローテーションとは、定期的に職場や業務内容の変更を行い、さまざまな部署の業務を経験させることで、スキルアップを行う制度です。
経営戦略の一環として、部署の強化や欠員人材の補充のために行う人事異動とは異なります。
ジョブローテーションの目的は、従業員にさまざまな業務を経験させてその能力を開花させること。
また、その従業員にとって最適な業務や部署への配置を行い、業務効率の向上を図ることです。
ジョブローテーションが生まれた背景
以前の日本は終身雇用制度を採用している会社が多く、一度入社すると定年まで同じ会社で働くことが前提となっているため、人材育成は計画的に行いやすい状況でした。
しかし、終身雇用制度が崩壊した現在、一つの会社に長期間在籍することを前提とした人材育成の方法を取ることは困難です。
そこで、社内のさまざまな業務を一定の期間を定めて経験を積ませることで、人材育成を計画的に行う「ジョブローテーション」という考え方が誕生しました。
業務内容を定期的に変えることで、社内で長期的な人材育成を計画的に行うことができます。
ジョブローテーション制度に向いている企業
ジョブローテーションが向いている企業には、どのような特徴があるのでしょうか。3つの共通する特徴について解説します。
1.複数の業務が連動している企業
複数の業務が連動している会社は一つの業務で何か起こった時、以降に続く業務の内容に影響が出ることがあります。
そのため、一連の流れとなっている業務については、複数の業務のジョブローテーションを行うことで、全体の流れを理解させることができます。
各業務の関連性が高い企業ほど、ジョブローテーションの役割は大きいといえるでしょう。
2.企業風土や社風を浸透させたい企業
M&Aなどで企業風土や社風が異なる二つ以上の会社同士が合併して、一つの会社となることがあります。
そのような場合、合併前の会社の企業風土や社風を浸透させるために、ジョブローテーションが効果的です。
双方の会社の特色に対しての理解が進み、結果として、一つの企業としての経営の方向性を理解することにつながります。
3.大企業
大企業は組織一つひとつが巨大なため、部署同士のつながりも大きくなります。
企業の規模が大きな会社になればなるほど、その全体像を理解してもらうことが重要です。
企業経営に必要な知識や経験を学ぶ手法として、ジョブローテーションを活用することが効果的であるといえます。
ジョブローテーション制度の企業側のメリット
ここからは、ジョブローテーションの企業側のメリットについて解説します。
1.部署間の連携強化が図れる
ジョブローテーションは、さまざまな部署の仕事を期間を定めて行うことで、それぞれの部署ごとの業務を学ぶとともに、各部署の役割への理解を深めることができます。
そのため、それぞれの部署ごとの役割を的確に理解することができ、双方の部署の連携の強化を図れるため、結果として会社の生産性の向上につながると考えられます。
2.効果的な人材配置ができる
社員の適切な人材配置は、特に新入社員や中途採用されたばかりの社員に対して生じる問題です。
ジョブローテーションを行うことで、すべての部署の業務を一通り経験させることができるため、どの部署の業務を行っている時に最も高いパフォーマンスを出しているかが明確になります。
結果に応じて社員を適材適所に配置することができるため、人材と業務のミスマッチをかなり減らすことができるでしょう。
社員の離職率の低下にもつながります。
ジョブローテーション制度の企業側のデメリット
効果的な人材配置に役立つジョブローテーションには、以下のようなデメリットもあります。
1.スペシャリストが育ちにくい
ジョブローテーションは、さまざまな部署に一定期間配属させることで、複数の業務を経験することができる制度です。
別の視点で見れば、各部署の配属期間はそれほど長くないということです。それぞれの部署において必要最低限の業務はできるが、より専門性が必要な業務については身につきにくいといえるでしょう。
2.配置転換後の生産性の低下
ジョブローテーションによって、人材配置が変更された直後は、新しく配属された人の教育に時間をかける必要が出てきます。そのため、今までどおりの生産効率で業務ができなくなる恐れがあります。
さらに、ジョブローテーション制度では長くても1年ほどで、次の部署への配属転換が行われることになります。
そのため、その都度配属された人の教育への時間をどのように確保すべきか、生産性を低下させないようにどのような業務を進めるかを考えることが不可欠です。
通常の業務に加えて、負担が増加することは避けられません。
ジョブローテーション制度の成功事例
ここからは、ジョブローテーション制度を取り入れて成果を上げた企業の事例を紹介します。
ヤマト運輸(運送業)
ジョブローテーション制度の成功事例として、有名な企業が大手運送業のヤマト運輸です。
導入目的は「会社全体の業務の流れを理解してもらうこと」でした。
具体的な取り組みとして、新入社員を入社2年間「現場業務」に配属させています。
その後、本社の各部署へ配属となりますが、そこでもジョブローテーションを通じて、さらなるキャリア形成を図るようにしています。
その結果、若手社員のキャリア形成のサポートにつながり、高いモチベーションを維持した状態で業務に取り組むことができるようになりました。
株式会社一ノ蔵(清酒製造業)
株式会社一ノ蔵、は働き方改革の取り組みの一つとしてジョブローテーション制度を導入し、成功した企業です。
導入する目的は「若者の採用・育成を進めるうえで、労務環境の改善を行うため」でした。
働き方改革の取り組みとして「5時過ぎたら帰ることを社長や役職者の声かけで徹底した」「ジョブローテーション制度を導入することで、業務のスキルアップを図り、業務効率化を図ること」などに取り組みました。
その結果、残業時間を月平均で1.4時間に抑えることに成功し、有給取得率も約6割に上昇しました。
若者の採用・育成に積極的で労働環境がよいことを示す「ユースエール認定企業」を取得することができたことも、制度導入の成果の一つです。
ジョブローテーションについてのまとめ
ジョブローテーションは、部署間の連携強化や適切な人材配置が図れるといったさまざまなメリットがある制度です。
複数の部署の業務が連動している企業や、合併して巨大化した企業にとっては有効な人事戦略の一つと言えるでしょう。
一方で、業務の生産性の低下を招くリスクがあり、スペシャリストの育成にも不向きです。
導入するかどうかは、他の企業の事例を参考にしながら慎重に検討してください。
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