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サクセッションプランとは? その必要性や作り方、企業事例をわかりやすく解説!

サクセッションプランとは? その必要性や作り方、企業事例をわかりやすく解説!

サクセッションプランとは、経営者や幹部の後継者を育成する計画のことです。企業の中軸を担う幹部候補生の育成は、企業が長期的に存続するために重要な課題であることから、注目が集まっています。

この記事では、サクセッションプランの定義や混同しやすいワードとの違い、必要性、具体的な作り方、企業事例などを徹底解説します。

企業の将来を見据えた人材戦略に興味がある方は、ぜひご覧ください。


この記事の監修者
北原中小企業診断士事務所  代表 

サクセッションプランとは

サクセッションプラン(Succession Plan)は、直訳すると「継承計画」となり、企業の後継者を育成する計画を意味します。

企業の資産である従業員の雇用を守り、事業運営を通じて培ってきた技術やノウハウを次の世代に継承させるためには、後継者の育成が欠かせません。サクセッションプランをもとに企業の現状を把握するところから開始し、将来的に組織を担う人材の育成・定着までを実施します。

企業を支える幹部候補の育成も、サクセッションプランに含まれます。

人材育成との違い

サクセッションプランは企業の後継者を育成する計画であり、経営者が指導者となって後継者の候補になっている人材の指導にあたります。

一方、人材育成は人事部の業務の一つで、育成の担当者が従業員に対して研修やフォローアップといったサポートを実施します。

サクセッションプランの目的は企業の継承で、人材育成は組織の継続的な運営を目的としている点が大きく異なります。

後任登用との違い

サクセッションプランに似た言葉として、後任登用があげられます。「後継者を探す」という点は同じですが、後任登用は幅広いポジションに用いられる人事戦略で、後継者の候補を既存の担当者の直属の部下や年次の従業員から選出するのが特徴です。

サクセッションプランは経営戦略の一環として中長期的な計画をもとに実施されますが、後任登用は特定のポジションに後継者が必要になったタイミングで速やかに実施されます。人材育成と同様に、後任登用も組織の継続的な運営を目的として実施されるものです。


サクセッションプランが注目される理由

サクセッションプランは、2018年にコーポレート・ガバナンスコードが改訂されたことを受けて実施が求められるようになりました。また、国際標準化機構(ISO)が、労働力の持続可能性のサポートに関するISO30414(人的資本に関する情報開示のガイドライン)を定めたことも背景にあり、重要度と注目度が増しています。

経営者の高齢化や人材流出などによって、後継者が不足している企業が増えている現状もあります。

サクセッションプランを実施することで、昇進基準が可視化され、経営幹部ポストの空白期間の防止、人材育成や採用にかかるコストの削減、優秀な人材の確保といったメリットが考えられます。

サクセッションプランは、企業の存続や成長にとって重要な施策であり、今後、さらに注目度が上がっていくものと考えられます。


【手順別】サクセッションプランの作り方

ここでは、サクセッションプランの作り方を手順に沿って解説します。

1. 経営理念や事業戦略を明確にする

サクセッションプランは、企業の未来を見据えながら作成します。そのため、経営理念や事業戦略といった経営の軸となる概念を見直し、明確化したうえで進めることが重要です。また、自社の強みや弱み、主力商品など、これまでの経営状況も改めて確認します。

具体的には、次のような項目を確認するとよいでしょう。

  • 経営理念
  • 企業文化
  • 中長期的な事業戦略
  • 自社の主力商品・サービス
  • 自社の強み・弱み
  • 競合他社
  • 市場の現状と将来的な予測

顧客のニーズや競合他社の状況など、自社を取り巻くビジネス環境に大きな変化が起きているようであれば、大胆な組織変革も必要になります。

2. 後継者が必要となるポジションを決める

自社の将来的なビジョンが明確になったら、それを実現するために必要なポジションを洗い出します。

社長や執行役員、幹部の候補となる部長など、組織の将来を担うポジションを具体的にリストアップし、どのポジションの人材を育成するかを決定します。場合によっては、これまでになかったポジションを新たに立ち上げる必要があるでしょう。

3. 各ポジションの要件を定義する

戦略に必要なポジションは、それぞれに求められる能力や実績といった要件があります。どのポジションにはどのような候補者が相応しいのか、具体的に要件を定義しましょう。

  • 専門知識
  • 業務実績
  • 語学力
  • 資格
  • コミュニケーション能力
  • 論理的思考力
  • 創造性
  • 協調性
  • マインドセット
  • リーダーシップ

専門知識や業務実績といったハードスキルだけでなく、コミュニケーション能力や協調性といったソフトスキルにも着目することで、より適切な人材の選出につながります。

4. 候補者の決定

各ポジションの要件をもとに、候補者を決定します。客観性や公平性を保つために、自薦・他薦を問わず幅広く候補者を募りましょう。人事データも活用しながら、将来的な成長の可能性も加味したうえで決定するのがポイントです。

5. 育成計画の策定・実行

候補者が決まったら、育成計画を策定します。求められるスキルはポジションごとに異なり、候補者の資質や能力によっても適切な手法があることから、育成計画は候補者ごとに策定するのが望ましいといえるでしょう。

研修への参加に留まらず、配置転換や海外への派遣も視野に入れながら、必要なスキルや経験を中長期的に高めていきます。1か月・3か月・半年・1年など、チェックポイントを明確に定め、いつまでに何をするべきなのかを管理できるようにしておきましょう。

6. PDCAを回す

育成計画を策定・実行したら、成果を評価しながら改善を続けます。成果を正しく評価できるよう、あらかじめ評価の項目や基準を定めておくことが重要です。

サクセッションプランは中長期的に進めていくものなので、計画の後れや立て直しが必要になることも想定されます。自社を取り巻くビジネス環境の変化や事業の状況に合わせて計画を柔軟に修正しましょう。

7. 候補者へ評価とフィードバックを行う

サクセッションプランでは、候補者の評価とフィードバックも重要です。育成計画の策定・実行の成果を評価し、PDCAを回すと同時に、候補者への評価とフィードバックを行いましょう。より効果的に計画を実施することが可能となります。


サクセッションプランを実行するメリット・デメリット

サクセッションプランには、次のようなメリット・デメリットがあります。比較的短期間で実施される人材育成や後任登用とは異なり、サクセッションプランは中長期的な計画をもとに進める必要があります。中長期にまたがる施策ならではのデメリットがあることを理解しておきましょう。

メリット

サクセッションプランは、中長期的な経営計画をもとに進められます。自社の現状の棚卸しを行い、将来的な理想像を見据えながらサクセッションプランを立案することで、経営の体制を本質的に見直すことが可能です。自社のビジョンや理念も再認識できるでしょう。

また、サクセッションプランの立案を通じて、企業を持続させるために必要なポジションや、そのポジションに求められる資質やスキルが可視化されます。

同様のプロセスを人事評価制度に適用させると、評価の基準が明確になり、従業員のモチベーション向上につながります。明確な人事評価は、優秀でやる気がある人材の定着にもつながります。

さらに、既存の従業員を育成することから、外部の人材を採用するコストを抑えられるのも
サクセッションプランのメリットです。

デメリット

サクセッションプランは運営に期間を要することから、候補者の離脱や計画の頓挫といったリスクが伴う点がデメリットとしてあげられます。

また、採用のコストは抑えられますが、時間をかけて経営者や幹部候補となる人材の育成を行う必要があるため、候補者一人あたりに必要な育成コストは増大します。

候補者は通常業務を行いながら育成プログラムに参加することになるため、モチベーションの管理も欠かせません。サクセッションプランの策定や実行にかけた手間と時間が無駄にならないよう、リスク管理も踏まえた綿密な計画立案が求められます。

状況に応じて計画を柔軟に変更する姿勢も重要だといえるでしょう。


サクセッションプランを導入した企業事例

ここでは、サクセッションプランを導入した企業事例を紹介します。自社でサクセッションプランを導入する際の参考にしてください。

花王株式会社

大手消費財化学メーカーの花王株式会社は、「花王ウェイ」と呼ばれる独自のサクセッションプランを導入しています。

幹部候補となる従業員を、「今すぐ後任になれる人材」「1~3年後に後任になることが期待できる人材」などにレベル分けし、それぞれの段階に応じた育成を行っているのが大きな特徴です。

将来的な可能性も見据えたサクセッションプランを導入することで、人材の継続的な確保が可能になります。また、候補者となった従業員が自身の立ち位置を客観的に把握できるのもメリットで、自発的な成長が期待できます。

帝人株式会社

日本の大手化学メーカーである帝人株式会社は、経営者育成制度「ストレッチ」を導入しました。

既存の担当者に自らの後継者候補となる人材を推薦させ、人事委員会で対象者が審議されます。選抜では、海外のビジネス経験や交渉能力といった経歴が重要視されます。

また、候補者を育成する際は、花王株式会社のサクセッションプランのように、対象者を3段階に分けて研修などを実施しています。

トヨタ自動車株式会社

日本最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車株式会社は、グローバル幹部の人材育成を目的とした「GLOBAL21プログラム」を導入しています。

LDP(リーダーシップ開発プログラム)の開催や、同社の経営哲学である「トヨタウェイ」の共有を通じた人材育成に特徴があります。

良品計画株式会社

「無印良品」を展開する良品計画株式会社は、潜在能力やパフォーマンスなどを軸とした独自のマトリクスをもとに、従業員の基本属性を分析する手法を採用しています。この独自ツールは「5ボックス」と呼ばれ、社外取締役や社長、専務から構成される同社のサクセッションプランに用いられています。

リーダーシップやマネジメント能力を可視化するツールも導入されており、サクセッションプランの候補者となる従業員を効果的に選出できる仕組みが整っています。


サクセッションプランについてのまとめ

サクセッションプランは事業の後継者を育成する施策であり、長期的な企業の存続と組織の活性化に必要不可欠な施策です。

サクセッションプランの立案を通じて経営の体制を本質的に見直すことが可能になり、優秀な人材の確保につながるといったメリットがある一方、中長期的な施策ならではのリスクも伴います。

候補者の辞退や退職、育成コストの増大といったデメリットも踏まえたうえで、綿密に計画を立てましょう。状況に応じて計画を柔軟に見直すことも重要です。


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監修者プロフィール

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北原 竜也

北原中小企業診断士事務所 代表

2017年に中小企業診断士を取得。補助金等の事業計画書作成支援を中心にコンサルティングを開始。

ITコーディネータ、健康経営エキスパートアドバイザーの資格も保有しており、中小企業を中心に幅広い知見を活かした支援・助言を行っている。

カウンセラーとしての側面もあり、カウンセリングの聴く技術を活かし、クライアントが望む姿を明確にし、具体的な行動に移せるコンサルティングを得意としている。

【保有資格】

・認定経営等革新支援機関 中小企業診断士

・ITコーディネータ

・健康経営エキスパートアドバイザー

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