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給与所得控除とは? 計算方法やその他の控除との違いを解説

監修者: 一級ファイナンシャル・プラニング技能士  川崎 翔太

給与所得控除とは? 計算方法やその他の控除との違いを解説

給与所得控除は給与所得に一定の割合を掛けて、かつ規定の金額を足し引きすることで求められます。

しかし控除額は一律ではなく、所得の金額によって控除される割合が変わるため、経理担当者は丁寧に計算する必要があるのです。

この記事では、給与所得控除の概要やほかの控除との違い、計算式を解説します。


給与所得控除とは

給与所得控除とは、所得税法で定められた金額を、給与・賞与などの金額から差し引ける制度です。

前提として、勤め先から支払われる給料や事業によって得た金銭には、所得税がかかります。

しかし、生活をするうえでは様々な経費や支出があるものです。

家族構成も世帯ごとに全く異なるため、経費だけを引いた所得に課税すると、過度な税負担がかかってしまう可能性があります。

給与所得控除は、この対策として導入されている控除の1つです。

一定金額を給与所得から差し引くことで、各自の生活に即した税負担に近づけています。

参考:国税庁「給与所得控除」、財務省「所得税について教えてください。


給与所得控除とその他の「控除」との違い

「控除」と付くものは、給与所得控除以外にもいくつかあります。それぞれどのような違いがあるかを解説します。

1.所得控除

「所得控除」と「給与所得控除」は名前がよく似ており混同しやすいものですが、その内容は大きく異なります。

給与所得控除は、無条件に年収から差し引かれます。一方、所得控除は、条件を満たしたうえで確定申告書を作成し、給与所得者が自分で管轄の税務署に申告しなくてはなりません

所得控除には、以下を始めさまざまなものがあります。

  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 扶養控除
  • 配偶者控除

所得控除は、それぞれに明確な要件が定められている点にも注意が必要です。

控除対象となるかどうかは、1つずつ確かめなくてはなりません。

参考:国税庁「所得控除のあらまし

2.基礎控除

「給与所得控除」は文字通り、給与所得を対象にした控除で、給与を受け取っている人しか対象となりません。しかし「基礎控除」は、納税者全員が受けられます

基礎控除の金額は納税者自身の合計所得金額によって決定され、0円~48万円の範囲で変動します。

納税者本人の合計所得金額

控除額

2,400万円以下

48万円

2,400万円超2,450万円以下

32万円

2,450万円超2,500万円

16万円

2,500万円超

0円

引用:国税庁「基礎控除

この基礎控除の金額は、元々は、合計所得金額を問わず一律38万円とされていました。

しかし2020(令和元)年に税制改正があり、現在の合計所得金額ごとに変動する仕組みになっています。

参考:国税庁「所得から差し引かれる金額(所得控除)を計算する

3.特定支出控除

給与所得控除は給与全体を対象とした制度ですが、「特定支出控除」は、給与から支払った業務に必要な支出の一部を対象に控除できる制度です

たとえば以下のような費用が該当します。

  • 転居費
  • 資格取得費
  • 図書費
  • 衣服費

参考:国税庁「給与所得者の特定支出控除

ただし、いずれも仕事をするために必要な支出であったことが条件です。たとえば転居費は転勤のために引っ越した場合のみが該当し、そうでなければ対象外となります。

また、図書費・衣服費といった費用は、仕事をするために必要な出費であると給与の支払者から認められていなくてはなりません。

加えて65万円以上の場合は、その分を超える場合は控除されなくなります。


給与所得控除が設けられている目的

給与所得控除が設けられている理由として、主に「給与所得者と事業主の不公平を解消するため」が挙げられます。

給与所得者の公平性を保つため

給与所得控除が設けられている理由は、給与所得者(サラリーマン)の公平性確保のためです。

事業主の場合、事業に必要な出費は経費として、自らの所得から差し引けます

そして前述の通り、所得税は経費を差し引いた後の所得に基づいて計算するものです。経費の金額によっては、節税になる場合があります。

しかし給与所得者には、そもそも経費の計上が認められていません。仕事に必要な出費があった場合も、所得から差し引けないのです。

そうなると、事業主には節税の可能性があるのに、給与所得者にはないという不平等が出来上がってしまいます

給与所得控除は、その不平等解消のための仕組みなのです

税務署の負担減になっている側面も

また、結果的に税務署の負担を減らしている側面もあります。

詳しくは後述しますが、給与所得控除額は各自の収入で決まります。そのため、経費の金額の大小で所得が変化する事業主と違い、給与所得者は所得額及び所得税額が算出しやすいのです。

この結果、税金の徴収が確実に行えて、税務署の負担軽減になっていると言えます。


給与所得控除額の計算方法

給与所得控除額は、各自の収入金額によって異なります。どのように算出するのか、例を挙げて考えてみましょう。

控除される具体的な金額については、以下のように定められています。なお、源泉徴収票が複数枚ある場合は、それらの給与を合計した金額を収入金額とします。

給与等の収入金額

(給与所得の源泉徴収票の支払金額)

給与所得控除額

~162万5,000円

55万円

162万5,001円~180万円

収入金額×40%-10万円

180万1円~360万円

収入金額×30%+8万円

360万1円~660万円

収入金額×20%+44万円

660万1円~850万円

収入金額×10%+110万円

850万1円~

195万円 ※控除額の上限

参考:国税庁「No.1410 給与所得控除

例1:給与等の収入金額が450万円の場合

この場合は、「360万1円~660万円」に該当するため、収入金額の2割に44万円を加えた金額が給与所得控除額となります。

計算すると、4,500,000×0.2 + 440,000=1,340,000となり、給与所得控除額は134万円です。

例2:給与等の収入金額が150万円の場合

この場合は「162万5,000円まで」に該当するため、特別な計算は発生しません。

収入金額を問わず、控除額は55万円で固定されます。

例3:年度の途中で転職して、源泉徴収票が複数ある場合

年度の途中で転職をして、旧勤務先のA社で300万円、新勤務先のB社で400万円の給与と、それぞれの源泉徴収票を受け取った社員がいるとしましょう。

源泉徴収票が複数枚ある場合は、まず全ての源泉徴収票の金額を合算し、収入金額を求めます。

そして合算した額を基に、給与所得控除額を確認してください。

今回の場合、収入金額は3,000,000 + 4,000,000=7,000,000となり、700万円です。

この金額は「660万1円~850万円」に該当するため、収入金額の1割に110万円を加えた金額が、給与所得控除額となります。

計算すると、7,000,000×0.1 + 1,100,000=1,800,000となり、給与所得控除額は180万円です。

なお、年末調整は一般的に収入金額が多いほうの勤務先で行います。


給与所得控除についてのまとめ

給与所得控除は、すべての人が公平で、かつ実生活に即した税負担になるよう導入されている制度です。

控除される金額は各自の所得額によって異なり、処理する際は注意が必要です。

また、名前がよく似た控除もあるため、混同しないようにしてください。

加えて医療費控除・配偶者控除といった基礎控除を希望する場合は、給与所得者自身での確定申告が必要です。

年末調整の際はそれぞれの要件や内容をよく確認し、ミスなく処理をしてください。

この制度が存在する意義も把握しておくと、より一層税制への理解が深まり、業務もスムーズに進めやすいでしょう。


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監修者プロフィール

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川崎 翔太

一級ファイナンシャル・プラニング技能士

東証一部上場金融機関に勤め、以後投信生保販売業務や法人融資業務に従事。

2019年に独学で1級ファイナンシャルプランニング技能士に合格。

個人・法人問わず幅広くライフプランや節税相談を行っておりFP分野全般を得意とする。

現在新たに事業承継・M&A分野の業務も行っており日々活動の幅を広げている。

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