雇用保険料を計算するには? 計算方法や覚えておきたいポイントを解説!
雇用保険とは、労働者が失業・休業した際の給付金を支給する制度です。
雇用保険の掛け金である雇用保険料は、従業員と企業の双方が決められた規定に従って負担をします。
企業側は従業員の給料から雇用保険料を正しく計算した上で、納付しなければなりません。しかし、この計算方法について複雑だと感じる方もいるでしょう。
この記事では、経理の担当者に向けて雇用保険料の計算方法と、算出するポイントを紹介します。ぜひ参考にしてください。
雇用保険料の計算方法について
雇用保険料は給与額×雇用保険料率で計算すると算出されます。雇用保険の対象となる賃金項目や、事業別の雇用保険料率などを見ていきましょう。
雇用保険の対象となる賃金項目
まずは雇用保険の対象となる賃金項目23個を紹介します。
※1:労働者が在任中に退職金相応するすべての金額もしくは、一部を給与や賞与に上乗せして前払いされるもの
※2:恩恵的なものでなく、全労働者もしくは、相当多数に支給される場合
※3:労働者が負担する分を事業主が代わりに負担する場合
※4:社宅などの貸与を行う際、貸与を受けない人へ均衡上住宅手当を支給する場合
※5:奉仕料の配分で事業主から受けるもの
雇用保険の対象にならない賃金項目もまとめました。
※1:退職時に支払われるもしくは、事業主の都合などにで退職前の一時金で支払われる
※2:労働基準法第20条の規定に基づく
※3:労働者が行う財産形成貯蓄を推進するため、事業主が労働者へ支払う一定の割合の奨励金など
※4:一部の社員に社宅などを貸与しているが、他の者に均衡給与が支給されない場合
事業別の雇用保険料率
事業別の雇用保険料率を表にしてまとめました。まずは、令和2022年4月1日〜2022年9月30日の保険料率を見てみましょう。
(出典:令和4年度雇用保険料率のご案内)
※1:園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖、特定の船員を雇用する事業なども含む
次に、2022年10月1日〜2023年3月31日の保険料率を見てみましょう。
(出典:令和4年度雇用保険料率のご案内)
※1:園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖、特定の船員を雇用する事業なども含む
2023年2月時点では、この最新版の表をもとに計算してみましょう。
雇用保険料の計算例
雇用保険料は、 給与額または賞与額 × 雇用保険料率で算出されます。詳しく解説しますので、次の例題をご覧ください。
IT社に勤務する会社員が2022年6月に以下の支払いを受けた場合の計算例
給与にかかる雇用保険料 40万円×3÷1,000(2022年4月における一般の事業の雇用保険料率)= 1,200円 賞与にかかる雇用保険料 60万円×3÷1,000(2022年4月における一般の事業の雇用保険料率)= 1,800円 |
2022年10月1日から従業員の雇用保険料率が引き上げられるため、このような計算になります。
IT企業に勤務する会社員が2022年12月に次のような支払いを受けた場合の計算例
給与にかかる雇用保険料 40万円×5÷1,000(2022年10月における一般の事業」の雇用保険料率)= 2,000円 賞与にかかる雇用保険料 60万円×5÷1,000(2022年10月における一般の事業の雇用保険料率)= 3,000円 |
保険料率が切り替わる前と後では支払額が違うため、計算間違いが起きないようにしましょう。
なお、雇用保険料率が切り替わるタイミングは、給与締切日で判定します。
10月中の締切で10月末の給与支払いの場合、10月給与から切り替わります。一方、10月末締切で、翌月給与支払いなら11月給与から変更になります。
雇用保険料を算出する際のポイント
雇用保険料を算出する際のポイントを4点紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
雇用保険料は賞与から控除する必要がある
賞与に対する雇用保険料の計算方法は給与と同じで、額面賞与×雇用保険料率=雇用保険料の公式を使います。
しかし、「大入り袋」など臨時的・恩恵的な賞与は、前述の「雇用保険の対象にならない賃金項目」と同様に控除の対象外です。
また、退職後の賞与も、額面賞与に雇用保険料率を掛けて算出した雇用保険料を控除しましょう。雇用保険料は、支払われた賃金すべてにかかるためです。
従業員が雇用保険の加入条件に当てはまる月から計算する必要がある
雇用保険料を徴収し始めるタイミングは、加入者が雇用保険の加入条件を満たした月の給料からです。
そして、加入者が雇用保険料を払う具体的なタイミングは所属先の給与の締め日によって異なります。
例えば、給与の締切日が15日、給与支給日が25日の場合、次のようになります。
- 加入条件を満たしたのが14日:今月分の給与から徴収する
- 加入条件を満たしたのが16日:来月分の給与から徴収する
雇用保険加入日と企業それぞれの給与締切日によって、保険料を徴収するタイミングが決まります。
1円未満の端数の処理について
雇用保険料で労働者が負担する金額を算出した際に、1円未満の端数が出た場合は次のように処理しましょう。
- 50銭以下:切り捨て
- 50銭1厘以上:切り上げ
では、実際の計算を見ながら端数処理をシミュレーションします。次の計算例をご覧ください。
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雇用保険の対象者
雇用保険へ加入するためには、所定の条件を満たした労働者でなければいけません。例えば、正社員やパートは次のような条件を満たす必要があります。
- 1週間の労働時間が20時間以上
- 31日以上会社で働く見込みがある
ただし、65歳以上の人は「高年齢被保険者」、65歳未満の人は「一般被保険者」に区分されます。
また、季節的に雇用される人のうち次の条件のいずれかを満たす人は「短期雇用特例被保険者」として雇用保険の加入者となります。
- 1週間の労働時間が30時間以上
- 雇用期間が4ヵ月超
雇用保険料の計算についてのまとめ
経理の担当者に向けて雇用保険料の計算方法と計算のポイントを解説しました。
雇用保険料を事業主が徴収し納付することは、法律で義務付けられています。
企業の経理担当の方は正しい計算方法や注意点を理解しましょう。
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