給与計算のやり方は? 給与計算の流れや注意点も解説
給与は、従業員の生活を支える大切なものなので、1円のミスも許されません。
しかし、昇給や住所変更、保険料の改定など毎月変動があるため、よく確認しないと間違えてしまうこともあります。また、割増賃金の計算は時間外労働だけではなく、休日労働や深夜労働など時間帯によって割増率が異なるため特に注意が必要です。
この記事では、給与計算のやり方や流れ、注意点をわかりやすく解説します。給与計算を正確に行うための知識を身につけましょう。
給与計算の方法
給与計算は、次のステップに沿って行います。
- 勤怠情報を取りまとめる
- 総支給額を計算する
- 控除額を計算する
- 振込支給額を算出する
1. 勤怠情報を取りまとめる
勤怠は締日を過ぎてから従業員が上長に承認をもらい、その勤怠情報をもとに給与計算を行います。
提出された勤怠は間違っていることがあるため、従業員一人ひとりの勤怠を確認しながら確定させましょう。
勤怠を確定したあとは、出勤日数や時間外労働時間、休日出勤時間、深夜労働時間など給与に関わる時間を集計し、時給や残業代を計算します。
また、欠勤や遅刻・早退がある場合は、就業規則に則って賃金から控除する場合があるため、忘れずに集計しましょう。
2. 総支給額を計算する
総支給額とは、基本給や各種手当、残業代など従業員に支給される給与の合計額のことです。
給与は、昇給や扶養の変更、住所変更などの影響により支給額が変動するため、月ごとに変更事項を確実に反映しなければなりません。
また、残業代は「1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間」で計算されます。
「1時間あたりの基礎賃金」とは、月給制であれば一般的に「月給 ÷ 1か月の平均所定労働時間」で求められます。
「割増率」は時間帯や休日によって異なり、法律では次のように定められています。
- 時間外労働:25%
- 休日労働:35%
- 深夜労働:25%
- 月60時間超:50%
なお、残業代の計算方法や割増率については、就業規則に記載されている方法で計算が必要です。
給与の計算前に必ず就業規則を確認しましょう。
3. 控除額を計算する
控除とは一定の金額を差し引くことをいい、給与計算では控除額を計算する必要があります。主な控除項目は次の通りです。
項目 |
算出方法 |
---|---|
健康保険料(介護保険料)・厚生年金保険料 |
健康保険料や厚生年金保険料は「標準報酬月額」に保険料率をかけた金額を控除します。 ただし、保険料は従業員と企業で折半しているため、算出した金額の2分の1が控除額となります。 |
雇用保険料 |
雇用保険料は総支給額に被保険者分の雇用保険料率をかけた金額を控除します。 ただし、結婚祝金や出張旅費など労働の対価として支給していない項目がある場合は、その金額を除いた総支給額に料率をかけて算出します。 |
所得税 |
月々の給与から控除する所得税は、総支給額のうち課税対象となる項目の合計額から社会保険料の合計額を控除した金額を「給与所得の源泉徴収税額表」にあてはめて概算で算出します。 なお、所得税は1年間の所得に応じて税額が確定されるため、最終的に年末調整で調整されます。 |
住民税 |
住民税は、従業員の住んでいる市区町村に納める税金です。毎月給与から控除し、企業が代わりに市区町村へ納めています。住民税は毎年5月・6月ごろに通知書が市区町村から送付され、通知書に記載されている金額を毎月給与から控除します。 |
その他控除 |
その他、生命保険料や財形貯蓄、組合費など労使協定によって給与から控除が認められている項目は、規定に則った計算方法で控除します。 |
4. 振込支給額を算出する
最後に、総支給額から控除額を差し引いて振込支給額を求めます。
振込支給額を求める計算式は次の通りです。
振込支給額 =
総支給額 - 保険料 - 税金 - 労使協定による控除額
なお、算出した振込支給額に100円未満の端数が生じた場合は50円未満の端数を切り捨て、50円以上の端数を100円に切り上げて支払うことも可能です。
給与計算のポイント
ここでは、給与計算のポイントを解説します。
賃金支払い5原則を遵守する
賃金支払いの5原則は次の通りです。これらのルールは遵守する必要があります。
- 賃金は通貨で支払う
- 従業員に直接支払う
- 全額を支払う
- 最低でも毎月1回以上支払う
- 期日を決めて定期的に支払う
現代では口座振込が一般的ですが、労働基準法では現金払いを原則としているため、口座振込をする場合は従業員の同意が求められています。
また、2023年4月より給与デジタル払いの解禁が予定されており、電子マネーでの振込が可能になるため、従業員の希望に合わせて柔軟に対応しましょう。
アルバイトなど時間給の従業員の給与計算に注意する
アルバイトなど時間給の従業員の場合も、基本的な給与の計算方法は同じです。「時給 × 勤務時間」が基本となりますが、時間外労働・休日労働・深夜労働が発生した場合は割増賃金の支払いが必要になるため注意が必要です。
また、1日の労働時間を15分や30分などで区切り、それに満たない労働時間を切り捨てることは禁止されています。ただし、1か月の時間外労働や休日労働、深夜労働の各々の時間数の合計に端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは認められています。
産休・育休による社会保険料免除のタイミングを確認する
産休・育休中は社会保険料が免除されますが、意識せずに給与計算を行うと誤って控除してしまうことがあります。
賞与月に産休・育休を開始した従業員がいる場合は、特に注意が必要です。給与からは社会保険料を控除しますが、賞与からは控除しないという処理を行う必要があります。
例えば、6月20日から産休に入る従業員には、6月25日に支給する給与からは社会保険料は控除しますが、6月10日に支給する賞与からは社会保険料を控除してはいけません。
これは、給与が前月分で、賞与が当月分の社会保険料を控除することによるものです。
また、育休の日数によっては必ずしも社会保険が免除されるわけではないため、育休期間を確認してから社会保険料の控除の有無を判断しましょう。
給与計算でよくあるミスと対策
給与計算でよくあるミスをいくつかご紹介します。
保険料率の間違い
保険料率の改定を反映し忘れたことによって、誤った保険料が算出されてしまうケースがあります。
保険料率の改定について常に最新の情報を入手し、変更月を忘れないようメモしておくと良いでしょう。
日割り計算の間違い
月の途中で入社・退職した従業員がいる場合は、日割り計算が必要になりますが、除外する手当などを間違いやすいので注意が必要です。
日割り計算をする際には、一つひとつの手当について、就業規則や賃金規定を確認しながら計算するようにしましょう。
扶養の外し忘れ
子どもが社会人になる、配偶者の年収が増えるなどの理由で、従業員の家族が扶養から外れた場合には情報の反映が必要です。反映を忘れてしまい、所得税の徴収が漏れてしまうケースがあります。
給与確定前に身上異動の情報を確認する工程を設け、変更漏れがないかチェックすると良いでしょう。
月額変更届の提出忘れ
標準報酬月額は通常7月1日に決定され、その年の9月から翌年の8月までは変わりません。その際に賃金の変更などによって、随時改定の手続きが必要になる場合があります。
昇給・昇格や各種手当の大きな変動などが起こった場合は、月額変更届の提出予定日と対象者をあらかじめメモしておきましょう。
年齢の数え方の間違い
法律上、年齢は誕生日の前日に加算されます。その際に誤って誕生日当日を基準にしてしまうケースがあります。
ルールを覚えたうえで、1日生まれの従業員は社会保険料(介護保険料など)を変更する月に注意しましょう。
給与計算のまとめ
給与計算のやり方や流れ、注意点を解説しました。
給与計算にミスがあると、従業員からの信用だけでなく、会社全体の信用を落としかねません。本記事で紹介した給与計算のポイントを押さえて、一件ずつ慎重に行いましょう。
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