男性育休の概要や助成金の種類まで徹底解説
男性育休の取得率は上昇傾向にありますが、女性と比較するとわずか6分の1ほどであり、育児負担における男女差には依然として大きな偏りがあります。
そんな中、育児介護休業法が改正、令和4年4月より順次施行され、企業には男性育休の取得促進が義務付けられました。
本記事では男性育休について、期間や法改正におけるポイント、お金にまつわる制度、立場別のメリットについて解説します。
男性育休とは
男性育休とは、文字通り男性が取得する育児休業のことを指します。
男性の育児参加が求められるようになり久しいですが、「会社が男性育休の制度を整備していない」「取得できる雰囲気ではない」などの理由から、なかなか男性が育休を取得できず、結果的に子育ての負担が女性に偏ってしまうという課題がありました。
そこで、令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、令和4年4月より、企業は男性育休を含む育児休業制度を従業員に説明し、取得を推進することが義務付けられました。
男性の育休期間はいつからいつまでか
男性の育休にかかわる制度として、「パパ・ママ育休プラス」と「産後パパ育休」の2つを紹介します。
育休期間 |
|
---|---|
パパ・ママ育休プラス |
取得可能期間を1歳2ヶ月まで延長 |
産後パパ育休(出生時育児休業) |
産後8週間以内に最大4週間、分割して2階取得可能 |
育休制度 |
子が1歳になるまで、分割して2回取得可能 |
通常、育児休業を取得できる期限は子どもが1歳の誕生日を迎える前日までです。
しかし、パパ・ママ育休プラスを取得すれば、夫婦ともに育児休暇を取得することで、この期限を1歳2ヶ月まで延長することができます。
ただし、1人あたりが取得できる育休の期間は変わらず、1年が最大です。
産後パパ育休は、子どもが生まれてから8週間以内に、育休とは別で最大4週間まで休業を取得できる制度です。分割して取得することも可能です。
日本における男性育休の取得率
厚生労働書が発表した雇用均等基本調査によると、2021年度の男性の育児休業取得率は13.97%で、2012年の1.89%から大幅に上昇しています。
しかし、2021年度の女性の育休取得率は85.1%であり、男女間では依然として大きな差があります。
男性育休に関する法改正について
ここでは、令和3年6月に改正された育児・介護休業法のうち、男性育休にかかわるポイントを確認していきましょう。
企業から従業員へ通知・取得推進の義務化
法改正を受け、従業員が自身、もしくは配偶者の妊娠を申し出た場合、企業は育休制度について個別に説明したうえで、取得の意向を確認することが義務付けられました。
産後パパ育休が創設(出生時育児休業)
産後パパ育休は、従来のパパ休暇に代わって導入された制度です。
男性従業員は、配偶者が出産した際、8週間以内に4週間までの休業を、分割して2回まで取得することができます。
また、これは通常の育児休暇とは別途の制度となります。
育休取得が叶いやすい職場環境の整備
企業には、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備が義務付けられました。具体的には以下のような取り組みが挙げられます。
- 研修の実施
- 相談窓口の設置
- 制度と育休取得促進に関する方針の周知
- 自社の育休取得の事例提供
大企業の取得率公表義務化
常時雇用する従業員が1,000人を超える企業は、年に1度、男性育休の取得率を公表することが義務づけられました。
公表はインターネットなど誰でも閲覧できる方法でしなければなりません。
なお、女性の産休・育休取得率や、平均取得日数についての公表は任意ですが、取得率や取得日数が多い場合は公表することで自社のPRにつながる可能性があります。
有期雇用の方の取得要件緩和
男性育休の取得条件から「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という項目が削除されました。
ただし、個別に労使協定が締結されて適用除外になっていることもあるので、就業規則の確認は必要です。
男性育休中のお金まわりの制度について
男性育休を取得するにあたって「収入が減らないかどうか」を気にする方は少なくないでしょう。
ここでは、男性育休を取得した際に受け取れる給付金や、免除される保険料などについて解説していきます。
育児休業給付金
育児休業給付金は、産後パパ育休や育児休業給付金を取得した際に受け取れる給付金です。
給付される金額は休業前の給与の67%相当です。ただし子の出生から181日目以降は50%となります。
また、育休中に会社から給与が支払われている場合は、その金額に応じて育児休業給付金の金額が減ってしまいます。
社会保険料
育児休業を取得した人は、次のいずれかに該当する場合、その月の給与から引かれる社会保険料が免除されます。
- その月に14日以上の育児休業を取得した
- 月末日に育児休業を取得していた
ただし、賞与から引かれる社会保険料については要件が異なり、連続して1ヶ月以上の育児休業を取得していた場合のみ免除の対象となります。
両立支援等助成金
両立支援等助成金とは、仕事と家庭両立できる環境づくりに取り組む中小企業を対象に支給される助成金です。
両立支援等助成金には6つのコースがあり、併用はできません。
ここでは男性育休に関連が深い「出生時両立支援コース」について見ていきましょう。
出生時両立支援コースには、第1種、第2種の2つの支給があります。
第1種では、男性育休を取りやすい環境を整備したうえで、従業員が実際に取得した際、企業に対して20万円の支給がおこなわれるものです。
また、育休取得にともなう代替要員を確保した場合はさらに20万円(代替要員が3人以上の場合は45万円)が加算して支給されます。
第2種は、男性育休取得率が1事業年度以内に30%以上上昇した場合に60万円、2事業年度以内に30%以上上昇で40万円、3事業年度以内に30%以上上昇すれば20万円がそれぞれ支給されるものです。
また、厚生労働の「生産性要件」を満たしている場合はさらに加算されます。
【立場別】男性の育休取得推進によるメリット
続いて、男性育休が推進されることによる、企業、従業員それぞれのメリットを見ていきましょう。
企業側のメリット
男性育休を取得しやすくするためには、属人化の解消、つまり「○○さんがいなければ仕事が回らない」といった状況の解消が必要です。
属人化の解消は有給休暇の取りやすさや業務効率の改善にもつながるため、男性育休促進を機に誰が抜けても仕事が進む状況を整備できれば、子どもがいない社員にとっても働きやすい環境が実現することになります。
また、働きやすい環境を整備することで、離職率の低下や、新規人材の確保、自社のイメージアップといった効果も期待できます。
また、男性育休について一定の要件を満たし、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣から認定を受けると、日本政策金融公庫から低利融資が受けられたり、公共調達で加点評価が得られるなど、資金調達においても優遇されます。
従業員側のメリット
従業員視点にとっての男性育休推進は、生まれて間もない我が子と長く過ごせることが単純にメリットといえるでしょう。
また、女性にとって産後2ヶ月ほどの時期「産褥期」にあたり、さまざまな身体の不調に見舞われます。
男性育休を利用して男性が率先して育児をおこなうことで、パートナーの回復を助け、産後うつなどのリスクを抑えることができます。
さらに、男性が充分な育児スキルを身につければ、女性の職場復帰にもつながるでしょう。
企業が男性の育休推進のためにできること
ここでは、企業が男性育休推進のためにできることを紹介していきます。
属人化の解消
仕組みの面では、属人化の解消が大きな課題です。「自分がいなくなるとチームが立ち行かなくなってしまう」という状況があると、その従業員は育児休業や有給休暇を取ることが困難になります。
また、属人化している状態は、特定の授業員が退職したり、怪我や病気などによって働けなくなったりした際のリスクが大きいため、企業にとってリスクの高い状態といえます。
属人化を解消するためには、業務の流れを可視化・マニュアル化するなどの施策をおこない、誰が抜けても業務が立ち行くようにする必要があります。
属人化が解消されれば、男性育休だけではなく、有給休暇の取得なども容易になり、子どもがいる社員以外にもメリットが生まれます。
男性育休を取得しやすい雰囲気づくり
仕組みを整備しても、男性育休に抵抗のある従業員は少なからずいるでしょう。気兼ねなく育休を取得できる雰囲気づくりが重要です。
具体的には、経営層がメッセージを発信したり、まずは管理職に意識づけをおこなうなどして、育休を取得しやすい雰囲気をトップダウンで浸透させていくと良いでしょう。
また、既に男性育休を取得した従業員がいる場合は、体験談を共有してもらうことも重要です。
男性の育休制度についてのまとめ
男性育休の期間や、法改正におけるポイント、お金にまつわる制度、立場別のメリットについて解説しました。
社会全体で女性の活躍が求められるなか、これまで女性に偏っていた育児における負担を、男性も受け持っていくことが欠かせません。
また、男性育休によって男性が受け持つものは、単に育児の負担ばかりではありません。生まれたばかりの我が子と過ごす時間は、男性従業員にとって長期にわたる仕事のやりがいや、生きがいにもつながってくるものです。
男性育休の促進に向けた施策には、属人化の解消など、子どもがいない従業員にとってもメリットとなるものが含まれます。ぜひ今回の義務化を機に、前向きに捉えて取り組んでみてください。
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