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サービスプロフィットチェーンとは? 好循環を生む7つのステップと企業事例

サービスプロフィットチェーンとは? 好循環を生む7つのステップと企業事例

ビジネスにおいて、顧客満足度の向上は重要な課題です。しかし、顧客満足度を向上させるには、その前段階で自社の従業員を満足させるステップが欠かせません。

サービスプロフィットチェーン(SPC)は、従業員の満足が、顧客の満足や企業の成長や利益につながるという考え方をもとにしたフレームワークです。

この記事では、事例を交えながらサービスプロフィットチェーンの7つのステップを詳しく解説します。

ビジネス上の課題が多く、注力すべき点を絞りきれないとお悩みの方にも役立つ内容となっていますので、ぜひご覧ください。


この記事の監修者
株式会社dacsfirm  取締役 

サービスプロフィットチェーンとは

サービスプロフィットチェーン(SPC)とは、従業員満足度、顧客満足度、企業の利益の関係性を表したフレームワークのことです。

従業員の満足度を向上させることがサービス品質の向上につながり、結果的に顧客満足度の向上や企業の利益につながるという考え方で、1994年にハーバード大学のヘスケット教授やサッサー教授らによって提唱されました。

日本においても、ホテルを対象としてサービスプロフィットチェーンに関する研究が6年間行われた実績があり、SPCモデルの効果が証明されています。


サービスプロフィットチェーンに重要な7つのステップ

サービスプロフィットチェーンでは、企業の活動が次の7つのステップに分けられ、それらがうまく循環することで安定した収益向上が期待できると考えます。

ここでは、それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。

1. 従業員満足度(ES)の向上

第1段階は、従業員満足度の向上です。企業は、雇用条件の改善やトレーニングの実施、職場環境の整備などを通じて、従業員が働きやすい環境を整えます。

企業にとって従業員は顧客であるという意識を持ち、サービスを改善する姿勢が重要です。

サービスプロフィットチェーンは、顧客ではなく従業員の満足度向上から始まることを覚えておきましょう。

2. 従業員のロイヤルティ育成

第2段階では、満足度が向上した従業員のロイヤルティを育成します。ロイヤルティとは、忠誠心や愛着のことで、企業に対する帰属意識を高めることを意味します。

仕事にコミットし、よりよい成果を生みたいという意欲が、サービスプロフィットチェーンの次のステップにつながります。

3. 生産性の向上

第3段階になると、ロイヤルティが向上した従業員の働きによって、生産性が向上します。モチベーションの高まりが生産性の改善につながり、サービス品質の向上が実現する流れです。

4. 顧客に対するサービス品質の向上

第4段階では、生産性が向上したことによって従業員に余裕が生まれ、顧客に対するサービス品質の向上へとつながっていきます。

顧客は対応の早さや信頼性、従業員の対応といったサービスの内容を総合的に評価し、サービスに価値を感じればリピーターになる可能性が高まります。

5. 顧客満足度(CS)の向上

第5段階でようやく、顧客満足度の向上が実現します。ステップ4までの過程で高めてきた組織内部の付加価値が顧客の満足に転換される形です。

6. 顧客のロイヤルティ育成

第6段階では、顧客のロイヤルティを育成します。ステップ1からステップ2で実施した、従業員の満足度が向上しロイヤルティが高まる流れを、顧客に対しても行います。

顧客のロイヤルティが育成され始めると、リピート率や購買単価といった具体的な数値に変化が現れ、LTV(生涯顧客価値)の向上につながります。

7. 売上や利益の向上

最後の第7段階では、リピート率や購買単価などの数値が改善された結果、企業の売上や利益の向上に結びつきます。

ここまで来たら、もたらされた利益を従業員の満足度向上のための施策に投資し、サービスプロフィットチェーンのサイクルが再び開始されます。


サービスプロフィットチェーンに取り組む企業事例

サービスプロフィットチェーンに取り組んでいる企業では、どのような変化が起きているのでしょうか。事例をいくつか紹介します。

スターバックス

世界的なコーヒー専門チェーンのスターバックスは、新しく入社したすべての従業員に対して、80時間かけて研修を実施しています。研修は雇用形態を問わず行われるのが特徴で、従業員の満足度向上につながっています。

サウスウエスト航空

サウスウエスト航空は、自社の従業員が提供するユニークなホスピタリティを大切にしています。「従業員を満足させることで、従業員は自ら顧客に対して最高の満足を提供する」という考え方のもと、在職6か月以上の社員に自社株を割り当てる、リストラをしないなどの施策を実施しています。

セールスフォース

クラウドベースの顧客管理・営業支援システムを提供するセールスフォース・ジャパンは、GPTW Japanが月に一度発表している「2023年版 日本における『働きがいのある会社』ランキング ベスト100」で2位に選出されています(2023年8月)。

米国本社も同様の賞を複数受賞しており、サービスプロフィットチェーンが組織に定着していることがわかります。業界最高レベルの奨励給制度をはじめとして、社内カフェスペースや瞑想スペースの提供など、従業員の満足度を高めるための、さまざまな施策が実施されています。

オリエンタルランド

ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、従業員の定着率が高い企業として知られています。従業員が気軽に新商品を提案できる「I have アイデア」など、独自の施策によって従業員と顧客の満足度向上を実現しています。

星野リゾート

総合リゾート運営会社の星野リゾートは、従業員の満足度を高めるために顧客満足度調査を実施するというユニークな取り組みを行っています。

星野リゾートは過去に、従業員の満足度向上を目的として、「経営層が従業員を褒める」という施策に取り組みました。しかし、それほど成果は得られなかったといいます。

一方で、「お客様に褒められる」ことは従業員の自信や仕事に対する満足度向上につながるため、顧客満足度調査を通じてポジティブなフィードバックを集め、従業員に共有しています。


サービスプロフィットチェーンに取り組む際のポイント

サービスプロフィットチェーンに取り組む際は、次のようなポイントを意識しましょう。

従業員満足度と組織文化の醸成

SPC構築に取り組む際、最も重要なのは従業員の満足度と組織文化の構築となります。

従業員満足度を高めるためには、人事制度の整備・改善、従業員個々人の志向と能力にフィットした最適な人員配置、業務フローの改善といった施策が必要です。こうした施策のPDCAを回すことによって従業員の満足度が向上していきます。

そして、サウスウエスト航空の事例にある通り、満足度が向上した従業員が自発的に高品質なサービスを顧客に提供する気運が生まれます。

また、こうした従業員が増えることで次第に顧客に付加価値の高いサービスを提供していこうとする組織文化が醸成され、サービス品質の向上と継続的な改善が実現します。

顧客満足度とデータ活用

従業員満足度を顧客満足度に転換するには、従業員の自発的な行動に頼るだけでなく、顧客のニーズを理解し、顧客の目線に立った施策を実行する仕組みが重要です。

例えば、MA(マーケティング・オートメーション)、SFA(営業支援システム)、CRM(顧客関係管理)といった、営業・マーケティング活動を支援するITツールを駆使することによって、より効率的・効果的にSPC構築を実現できます。

これらツールを活用し、顧客の声を収集し、データと分析を通じて顧客行動を洞察します。

そのうえで、適切な戦略・施策を策定し、実行するプロセスを回すことで、顧客の満足度向上とロイヤルティの構築、その先の企業成長や利益の創出が可能となります。

継続的な改善とリーダーの存在

SPCの仕組みを構築し、継続的に改善していくためには、組織文化の醸成が欠かせません。

それを実現するためには、組織のトップたる経営陣が、SPCを「成長のための中長期的な取り組み」であることを認識し、リーダーとして自ら牽引しなければなりません。

もちろん、経営陣だけで社内すべての組織を管理・運用することは不可能です。現場をリードするマネージャー陣にもSPCの目的をしっかりと理解してもらう必要がありますが、経営陣から各部署のマネージャーに至るまで、リーダーが組織の革新と進化を促進することが重要です。

それらを従業員・顧客の満足度につなげ、中長期的なビジネスの成功を確立していきます。


サービスプロフィットチェーンのまとめ

サービスプロフィットチェーンは、7つのステップを経て、従業員満足度、顧客満足度、企業の利益の3つを結びつけるフレームワークです。

従業員満足度を高めることで企業の売上や利益が向上する循環が生まれ、収益向上と競争力の強化を実現できます。サービスプロフィットチェーンのステップを繰り返し、企業の安定した成長につなげましょう。


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監修者プロフィール

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下川 貴一朗

株式会社dacsfirm 取締役

国内中堅証券、監査法人系コンサル、独立系FA・PEファンドを経て、2019年12月より現職。得意領域は経営戦略の立案・実行・管理の全般。

常勤先の株式会社キャムでは、取締役としてコーポレート・マーケティングの2部門を新設し、現在はマーケティング部門を管掌。

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