フレックスタイム制のデメリットとその対策|メリットと注意点も併せて紹介
フレックスタイム制は、ワークライフバランス向上や、柔軟な働き方を促進する新しい働き方です。
従業員のストレス軽減や、企業の生産性向上を期待できるでしょう。
しかし、光熱費増加などのデメリットも存在しますので、メリットとデメリットを十分に理解しなければなりません。
この記事では、フレックスタイム制の導入を検討する経営層に向けて、フレックスタイム制のデメリットや対策方法、メリットを解説します。
また、記事の後半部分では、フレックスタイム制の導入における注意点もまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
フレックスタイム制のデメリット
フレックスタイムのデメリットを5つにまとめました。
- 勤怠管理の難易度が上がる
- 生産性低下の恐れがある
- 光熱費が増加する
- 取引先との連携に支障が出る
- コミュニケーション不足が起きる
それぞれ解説します。
勤怠管理の難易度が上がる
従来の固定の勤務時間とは異なり、フレックスタイム制度では従業員それぞれが異なる時間に出退勤するので、勤怠の管理が難しくなるでしょう。
例えば、ある従業員が長時間労働していたり、逆に所定の労働時間を満たしていなかったりと、さまざまなケースに対応しなければなりません。
生産性低下の恐れがある
フレックスタイム制度では従業員が自らのペースで仕事を進められるため、生産性の向上が期待できるかもしれません。
しかし、実際にはチームでの協力が必要なタスクが増えた場合や、必要なメンバーが同じ時間帯に出勤していない場合など、作業の効率が低下する可能性もあるのです。
結果的に、一人一人のパフォーマンスの低下につながるかもしれません。
光熱費が増加する
従業員が様々な時間帯に働くとオフィスの利用時間が伸び、光熱費などの経費が増加します。
特に、早朝や夜間などの通常の業務時間外にオフィスを利用することで、エアコンや照明、コンピューターなどの電気使用量が増えるでしょう。
近年では電気代が高騰しているため、光熱費の増加は企業への経済的なダメージにもつながります。
取引先との連携に支障が出る
フレックスタイム制度は労働時間の柔軟性を高めますが、取引先との連携面には一定の課題が生じます。
取引先が固定の勤務時間を採用する場合、打合せのスケジューリングや緊急の対応が難しくなるでしょう。
例えば、重要な商談やプロジェクトの進行中に、必要な担当者が異なる勤務時間を選択していると、迅速な意思決定や情報共有が難しくなります。
コミュニケーション不足が起きる
フレックスタイムの導入は、従業員それぞれの生活リズムや作業の効率化を重視する一方で、コミュニケーションの機会が減少するリスクが伴います。
特に、オフィスにいる従業員の数が少ない時間が続くと、直接の対話を通じた情報共有や相談の機会が減少します。
チームの連携が取りづらくなったり、ミスの原因となる情報のすれ違いが起きたりする可能性が高まります。
フレックスタイム制のデメリットに対してできる対策
フレックスタイム制度のデメリットに対する対策法をまとめました。ぜひ参考にしてください。
フレックスタイム制の導入目的を明確化
フレックスタイム制を導入する目的を明確にすることで、企業全体の方向性を統一できます。
例えば、次のような導入目的が当てはまります。
- 従業員のモチベーション向上
- 商品開発などの専門性を有する業務を、より効率よく行う
- 一般的な労働時間の管理方法では、対処しにくい業務を管理しやすくする
また、目的に合わせて具体的なガイドラインを設けることで、混乱や誤解、業務効率低下などの事態を避けられるでしょう。
勤怠チェックできるシステムを導入
デジタルツールやシステムを導入すると、フレックスタイム制度でも勤怠管理がしやすくなるでしょう。
例えば、Web打刻やICカードなど、クラウドベースの勤怠管理システムを採用することで、従業員の出退勤時間をリアルタイムで確認できます。
また、月次や年次の労働時間を簡単に集計できますので、とても便利です。
チャットツールやビデオ会議などで業務の効率化
フレックスタイム制度において、従業員同士のコミュニケーションを活発化するためには、チャットツールやビデオ会議ツールを導入するとよいでしょう。
リモートでのコミュニケーションが円滑に行え、情報の共有や協力が必要な作業がスムーズに進みます。
特に、ChatworkやSlack、zoomなどの多機能なチャットツールを採用すると、ファイル共有やタスク管理も一元的に行えるため、業務の効率化を期待できます。
フレックスタイム制のメリットも把握しよう
フレックスタイム制度はデメリットだけではなく、多くのメリットがあります。それぞれ詳しく解説します。
ワークライフバランスが取りやすい
フレックスタイム制度の大きな魅力は、従業員が自分のライフスタイルに合わせて、勤務時間を自由に選択できる点です。
子育てや介護、趣味、自己啓発など、従来の働き方よりもプライベートの時間を充実させられるでしょう。
また、通勤時間帯を避けられるため、混雑した交通機関を利用するストレスの減少につながります。
業務効率が上がる
従業員が最も仕事に集中できる時間帯に合わせて仕事できるため、上手に自己管理できれば業務効率が上がるでしょう。
一人一人の従業員が高い集中力で仕事に取り組むことで、企業全体の売上アップにつながります。
優秀な人材を確保しやすい
若い世代や多様なバックグラウンドを持つ求職者にとって、フレックスタイム制度は魅力的な福利厚生です。
また、従業員の働き方の多様性に魅力を感じることは、その会社に入社してからの自由なキャリアパスの形成にもつながります。
優秀な人材が集まる、きっかけにもなるでしょう。
離職率の低下
フレックスタイム制の導入は、従業員のストレスの軽減やワークライフバランスの向上、職場への満足度アップなどによって、離職率の低下につながるでしょう。
また、離職率の低い職場を実現させると、従業員の業務の質や技術の向上につながります。
フレックスタイム制を導入する際の注意点
フレックスタイム制を導入する際の注意点をまとめました。
詳しく見ていきましょう。
適用する従業員の範囲
フレックスタイム制を導入する際、どの従業員に適用させるかを最初に考えましょう。
全従業員に対して一律に適用させるのか、部署や業務内容に応じて制限を設けるのかを明確にする必要があります。
例えば、顧客対応の部署や、定期的に集まって会議が必要なチームなど、フレックスタイム制の導入が難しいケースも考えられるからです。
清算期間と起算日を決める
清算期間とは、フレックスタイム制を採用する期間のことです。
具体的には、1ヵ月以上3ヵ月以内の期間内で定める必要があり、1ヵ月を超える期間で定める場合には、労使協定の届出が必要です。
また、起算日とは、清算期間が始まる日のことです。
フレックスタイム制を導入する際は、いつからいつまでといったように、開始日と終了日を明確にしなければなりません。
1日当たりの労働時間
通常の働き方の法定労働時間は、1週間40時間、1日8時間と定められています。
法定労働時間を超えて働いた場合、36協定の締結などの条件を満たしたうえで、残業代を支払う必要があります。
ただし、フレックスタイム制では、清算期間における総労働時間の総枠を超えた分を、時間外労働と見なします。
次の章で、清算期間における総労働時間を詳しく解説します。
(出典:厚生労働省 フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き)
清算期間内の総労働時間
フレックスタイム制度では、清算期間内の総労働時間を、総枠の範囲内で決めなければなりません。
清算期間ごとの法定労働時間総枠を、表にまとめました。
清算期間の暦日数 |
法定労働時間総枠 |
28日 |
160.0時間 |
29日 |
165.7時間 |
30日 |
171.4時間 |
31日 |
177.1時間 |
なお、所轄の労働基準監督署へ労使協定の届出があれば、清算期間を1カ月以上できます。
(出典:厚生労働省 フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き)
コアタイムとフレキシブルタイム
フレックスタイム制を導入する際は「コアタイム」と「フレキシブルタイム」の設定が重要です。
- コアタイム:従業員が必ず出勤する時間帯
- フレキシブルタイム:従業員が出退勤する時間を自由に選択できる時間帯
コアタイムでは会議や共同作業、情報共有のために設定されることが多いでしょう。
一方、フレキシブルタイムでは自由に仕事するかどうか選べますので、時間帯の幅や、最大もしくは最小労働時間の細かな設定がポイントです。
フレックスタイム制導入の適切さ
業種や業務内容によって、フレックスタイム制が適しているかどうかが決まります。
具体的には、IT関連の仕事やクリエイティブ業務、データ分析などには、フレックスタイム制の導入が適しています。
一方、製造業や小売業、医療など、人と直接会って話をする頻度が多い業種や決まった時間に同じ作業を続けるような業種では、フレックスタイム制の導入が難しいでしょう。
フレックスタイム制のデメリットについてのまとめ
現代では多様な働き方があり、フレックスタイム制は多くの働く世代にとって、魅力のある選択肢です。
企業にとっては、組織の活性化や人材確保など、多くのメリットがあります。
しかし、フレックスタイム制を効果的に運用しなければ、本来得られるメリットを得られなくなりますので、明確なルール設定とシステム整備を心がけましょう。