勤怠管理とは? 企業の健全な運営と従業員の働き方を支える重要基盤
勤怠管理は企業の健全な運営と従業員の働きやすい環境づくりに不可欠です。従業員の労働時間を適切に把握して管理することは、法令遵守や生産性向上だけでなく従業員の健康維持にも直結します。
本記事では勤怠管理とはなにか、基本的な概念から目的や必要性、具体的な管理方法まで幅広く解説します。どのような方法が自社に合っているのかも考えながらお読みください。
勤怠管理とは
勤怠管理とは、従業員の労働時間や休暇を正確に記録・管理し、適正な労務管理を実現する業務です。具体的には以下の業務が含まれます。
- 出退勤時間の記録
- 残業時間の把握
- 有給休暇の管理
これらの勤怠管理を正確に行うことで、企業は法令遵守を実現し、労働環境の改善や生産性の向上にもつながります。
勤怠管理の対象となる従業員
勤怠管理の対象は、雇用形態に関わらず全ての従業員です。従業員の健康維持や適正な労働時間管理を徹底させるため、労働基準法では原則として全ての労働者を勤怠管理の対象としています。
そのため、正社員、パート、アルバイト、派遣社員、さらには管理職や裁量労働制適用者も勤怠管理の対象です。
つまり企業は、全ての従業員の労働時間を公平かつ正確に管理する責任があります。
管理項目
勤怠管理の主な管理項目には主に以下が挙げられます。
- 出退勤時刻
- 実労働時間
- 休憩時間
- 残業時間
- 休暇取得状況
これらの項目を正確に記録して管理することで、適正な労務管理と給与計算が可能です。
この中でも特に労働時間と休憩時間の区別は重要です。労働時間とは使用者の指揮命令下にある時間を指し、休憩時間はそれから完全に解放される時間を指します。
この区別を明確にすることで、適正な労働時間管理ができるのです。
勤怠管理に関する法律
労働基準法は、使用者に対して従業員の労働時間を適切に管理する義務を課しています。具体的には労働時間の上限規制や、賃金台帳への労働時間の記載義務などです。
これらの法令を遵守するためにも、適切な勤怠管理が重要です。そのために企業は法令を正しく理解し、適切な勤怠管理体制を整備していく必要があります。
企業にとっての勤怠管理の必要性
勤怠管理は、企業にとって単なる法令遵守のための業務ではありません。
ここでは、企業が勤怠管理を適切に行う以下の4つの必要性について解説していきます。
- 法令遵守とコンプライアンスの観点
- 正確な給与計算と公平な待遇
- 従業員の健康管理と過重労働防止
- 生産性向上と業務効率化
法令遵守とコンプライアンスの観点
適切な勤怠管理は労働基準法違反のリスクを回避し、企業の社会的信頼を獲得するために不可欠です。
企業の正当性を示す重要な証拠となり得るためには、勤怠管理を適切に記録しておくことが重要です。この記録が労働基準監督署の調査時や労働争議の際に役立ちます。
正確な給与計算と公平な待遇
正確な勤怠管理を行うことは適正な労働対価の支払いを可能にするため、従業員の満足度向上において重要です。
特に残業代の未払いや誤払いを防ぐことで、労使間のトラブルを未然に防止できます。このような対応によって従業員間の不公平感を防ぎ、会社に対する信頼感が高まるのです。
従業員の健康管理と過重労働防止
適切な勤怠管理は長時間労働を是正できるため、従業員の心身の健康維持につながります。
近年非常に懸念されている過労死や過労自殺といった悲惨な事態を未然に防ぐためにも、労働時間の適切な把握は重要です。
勤怠管理によって従業員のワークライフバランスの向上にも寄与し、十分な休息時間の確保やプライベート時間の充実を可能にします。
生産性向上と業務効率化
勤怠管理で労働時間を可視化することで、業務プロセスの改善と生産性向上に寄与します。労働時間データを収集・分析することで、業務の繁閑の把握や非効率な作業の特定が可能です。
これにより、人員配置の最適化や業務の平準化、残業の削減などが図れます。
勤怠管理の基本的な方法
勤怠管理には様々な方法がありますが、企業の規模や業種、従業員の働き方によって最適な方法は異なります。
ここでは、一般的な以下4種の勤怠管理の方法とそれぞれの特徴についてみていきましょう。
- 紙ベースの勤怠管理
- タイムカードによる管理
- エクセルを活用した管理
- 勤怠管理システムでの管理
紙ベースの勤怠管理
紙ベースの勤怠管理は、出勤簿やタイムシートを使用して、従業員の勤務時間を記録する方法です。この方法は低コストで導入しやすいものの、人的ミスや集計の手間が大きな課題です。
また、小規模事業所では導入しやすいですが、従業員数が増えるにつれて管理者の負担が大きくなり、正確性も低下する傾向にあります。
タイムカードによる管理
タイムカードは機械による客観的な記録が可能なため、紙ベースの管理よりも正確性が高くなります。
ただしデータ集計に時間を要することや、打刻忘れ、他人による代理打刻などのリスクも否めません。導入する場合は、リスクを防ぐための運用ルールの策定を別途行いましょう。
エクセルを活用した管理
エクセルによる勤怠管理は柔軟性が高く、カスタマイズも容易です。また関数やマクロを活用することで、ある程度の自動化も可能です。
ただし、データ入力や集計時の人的ミスによるリスクが存在します。また関数とマクロを使用しても、大規模な組織では管理がより複雑化する傾向があります。
勤怠管理システムでの管理
勤怠管理システムは、自動集計や分析機能により効率的かつ正確な勤怠管理を実現します。
クラウド型のシステムであれば、リモートワークにも対応でき、リアルタイムでの労働時間把握や異常値の自動検知などが可能です。
特に、複雑な勤務体系や多数の従業員を抱える中堅・大企業には、勤怠管理システムの導入が推奨されます。
勤怠管理で特に注意すべきこと
勤怠管理を適切に行うためには、いくつかのポイントがあります。
ここでは、勤怠管理を行う上で特に注意すべき以下の事項について解説します。
- 正確な労働時間の把握
- サービス残業の防止
- 長時間労働の是正
- 勤怠データの適切な保管と活用
勤怠管理の責任者は、これらの注意点を十分に理解し、適切な管理体制を構築していきましょう。
正確な労働時間の把握
企業には、実際の労働時間と記録の乖離を防ぐための仕組み作りが求められます。
特に始業前の準備作業や終業後の片付けなど、いわゆる「グレーゾーン時間」の取り扱いを明確にし、適切に労働時間として計上する必要があります。
さらに、管理者による定期的なチェックや従業員からの申告制度の整備などの環境を整えることで、正確な労働時間把握につながるでしょう。
サービス残業の防止
労働時間を適切に管理することにより、不払い残業を防止して法令遵守と従業員の働きやすい環境づくりを実現します。
具体的には、残業申請プロセスの簡素化や、上司による残業時間の定期的なチェックなど、サービス残業を生み出さない仕組みづくりが重要です。
その上で効率的な働き方を評価する仕組みづくりも検討することで、企業の競争力強化につなげられるでしょう。
長時間労働の是正
勤怠管理を通じて労働時間の上限規制を遵守し、従業員の健康管理を徹底することが重要です。
また、長時間労働の傾向がある従業員に対しては、業務の平準化や効率化、必要に応じて人員増強などの対策を講じる必要があります。
勤怠データの適切な保管と活用
企業は勤怠データについて、法定保存期間を遵守して保管し、データ分析によって業務改善に活用することも必要です。
保管されたデータは、労働時間の傾向分析や業務効率化の検討材料として活用し、より良い職場環境づくりのために利用できます。
また長期的なデータ分析により、働き方改革の効果測定や新たな施策の検討にも役立てられます。
多様な働き方に対応する勤怠管理方法
働き方の多様化が進み、企業には主に以下の3つの働き方に対する適切な対応が求められています。
- テレワーク・在宅勤務の勤怠管理
- フレックスタイム制への対応
- パート・アルバイト社員の勤怠管理
ここではそれぞれの働き方に対応する勤怠管理方法についてみていきましょう。
テレワーク・在宅勤務の勤怠管理
テレワーク・在宅勤務の環境が一般化するなか、企業には労働時間把握と適切な管理方法の確立が求められています。
具体的には、オンラインでの始業・終業報告システムの導入や、業務内容の可視化ツールの活用など、新たな管理手法の検討が必要です。
さらに業務管理ツールと連携させることで、実際の作業時間と申告時間の乖離を防ぐこともできます。
フレックスタイム制への対応
フレックスタイム制導入企業は、柔軟な勤務時間に対応可能な勤怠管理システムの構築が必要です。
具体的には、企業に対して、コアタイムの設定や清算期間内の総労働時間管理など、フレックスタイム制特有の管理ポイントに対応したシステムや運用ルールが期待されています。
パート・アルバイト社員の勤怠管理
現代の企業では、パート・アルバイト社員の多様なシフトや勤務形態に対応した勤怠管理方法を整える必要があります。
シフト管理と連動した勤怠システムの導入や、短時間勤務者の休憩時間管理など、正社員とは異なる管理ポイントに注意を払うことが効果的です。
適切な勤怠管理で企業と従業員の未来を支えよう
適切な勤怠管理の実践は、企業の持続的成長と従業員の幸福につながる重要な経営課題です。
法令遵守はもちろん、従業員の健康と生産性を両立させる勤怠管理の実現が、これからの企業に求められています。
そのため、それぞれの従業員の正確な労働時間を把握することで、サービス残業や長時間労働などの過重労働防止につなげましょう。
勤怠管理を単なる労務管理ではなく、成長戦略の一部として位置づけることで、企業と従業員がともに発展できる環境が整うはずです。