派遣社員の勤怠管理ガイド|派遣元と派遣先で異なるポイントも徹底解説!
派遣社員の勤怠管理は、派遣元と派遣先で異なる役割を担っています。
派遣先は労働時間や安全衛生の管理、派遣元は給与計算や法定休暇の管理が求められますが、両者の役割分担が曖昧になるとトラブルに発展するケースも少なくありません。
本記事では、法律に基づく派遣社員の勤怠管理の基本や、具体的な課題と解決策、さらにはトラブルを未然に防ぐための実践的なポイントを詳しく解説します。
派遣社員の勤怠管理の基本
派遣社員の勤怠管理は、派遣元企業と派遣先企業の両方が行い、それぞれ役割が異なります。
派遣元企業は主に、賃金の支払いと有給休暇の管理を担当します。派遣先企業の担当は、労働時間の管理と安全衛生管理です。
勤怠管理の主な法令には、労働基準法と労働安全衛生法の2種類があり、それぞれに基づいた管理を実施しなければなりません。派遣元・派遣先それぞれの詳しい勤怠管理内容は、後ほど説明します。
勤怠管理について以下の記事で説明していますので、さらに詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
派遣先企業が行う勤怠管理
派遣先企業は、派遣元に派遣社員の勤怠状況を報告したり安全衛生委員会を設置したりするなどの義務があります。
ここではそれぞれの義務について詳しく説明していきます。
労働時間の管理と記録
2017年1月、厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を設け、企業には従業員の労働時間を適切に管理・記録する責務があることを明確にしました。
派遣社員については、派遣社員を直接管理する派遣先企業にその責務があります。労働時間の管理・記録には、タイムカードや勤怠管理システムなど客観的に確認できるものを用いましょう。
また派遣先は、少なくとも月1回は派遣元に派遣社員の勤怠状況を通知する義務があります。具体的な内容は以下の通りです。
- 業務開始時刻
- 業務終了時刻
- 休憩取得時間
派遣先企業が派遣社員に時間外労働や休日労働を行わせる場合、派遣元企業で36協定の締結が必要です。
協定の範囲を超えて労働させた場合、派遣先が労働基準法違反となるため、締結内容を確実に把握しておきましょう。
安全衛生管理の実施
安全衛生管理も派遣先企業の役割です。派遣社員に対しても、正社員と同等の安全衛生対策を実施する法的義務があります。
具体的には以下のことを行います。
- 安全管理者・衛生管理者・産業医などを選任する
- 安全衛生委員会を設置する
- 機械に安全装置を設置するなど、派遣社員に危険を及ぼす可能性のあるものに対して措置を取る
- 派遣社員が作業するものに危険性・有害性がないか調査する
- 安全衛生教育の実施結果について派遣元に書面などで確認をする
- 派遣社員に、業務に必要な資格を所有しているか確認し、マニュアルを確認させる
- 有害業務に従事する派遣社員に対し特殊健康診断を実施する
- ストレスチェックを実施する
派遣元企業が行う勤怠管理
派遣元企業で行うのは、賃金の支払いと年次有給休暇の管理です。最低賃金の適用方法や有給休暇を付与する際の注意点などを説明します。
賃金計算と支払い
派遣元企業は、派遣先から報告された労働時間に基づいて賃金計算を行い、派遣社員へ賃金を支払います。さらに詳しく書く際は、適用される最低賃金を記載しましょう。
例えば、派遣元が埼玉県で派遣先が東京都の場合、派遣先である東京都の最低賃金が適用されます。派遣社員がどこで働いているのかによって最低賃金が変わるので、間違いのないようにしましょう。
また賃金には、時間外労働や休日労働などの割増賃金、社会保険料など様々な要素を正確に反映する必要があります。確定した給与は、定められた支払日に遅滞なく支払うことが重要です。
年次有給休暇の管理
派遣元企業は法定の年次有給休暇を付与し、その取得を促進する責任があります。有給休暇は、勤続年数や1年間の実労働日数により付与される日数が異なります。
例えば、初めての派遣社員で週5日働き、半年間の出勤数が全体の8割以上の場合、付与される年次有給休暇は10日間です。
2019年4月の労働基準法改正により、派遣元の企業は派遣社員に年5日間の有給休暇を取得させなければなりません。
派遣社員の勤続年数は、派遣元企業と雇用契約を結んだ日から換算されます。派遣先が変わったからといって勤続年数がリセットされ、有給休暇がなくなることはありません。
勤怠管理に関する法律は以下の記事で解説しています。詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
派遣社員の勤怠管理における課題と解決策
派遣社員の勤怠管理の課題は、派遣元がリアルタイムで勤務状況を把握できないことにあります。
この課題を放置すると、派遣社員の労働時間の大幅な超過や年次有給休暇の未取得など、法律違反の原因になります。
ここでは、こうした課題が生まれる原因とその解決策を見ていきましょう。
リアルタイムでの勤務状況把握が困難
リアルタイムで勤務状況を把握することが難しい理由として、以下のことが挙げられます。
- 派遣元企業が直接勤怠管理できずスピーディーな情報共有も難しい
- 派遣元と派遣先で勤怠管理の仕方が異なる
- 派遣社員の勤務先が複数あることが多い
このような理由から情報共有がしにくく、結果として派遣元企業では勤務状況を確認しづらくなっています。
このような課題を解決するには、勤怠管理システムを導入するのがおすすめです。
勤怠管理システム導入による解決策
派遣元と派遣先が同じ勤怠管理システムを導入することで双方の勤怠管理を一元化でき、スムーズに勤怠状況を確認できます。
リアルタイムで情報を共有できるため情報の伝達ミスがなくなり、労働時間の超過や割増賃金の適用漏れ、有給休暇の未取得などのミスに気づきやすくなります。
また、システムが自動で勤怠状況を管理してくれるため、派遣先・派遣元それぞれにかかる時間を短縮可能です。
例えば、派遣先が派遣元に勤務状況を報告するための書類を作成する時間や、派遣元が従業員に支払う賃金を計算するのにかかる時間などが挙げられます。
自社に適したシステムを選び、業務の効率化を目指しましょう。勤怠管理システムの選び方は次の章で説明します。
派遣社員向け勤怠管理システムの選び方
派遣社員向けの勤怠管理システムには、必要な機能が付いていることやカスタマイズができること、打刻方法の多様性などが求められます。
それぞれどのような機能があると便利なのか見ていきましょう。
必要な機能とカスタマイズ性
派遣社員向けの勤怠管理システムを選ぶ際には、多様な勤務形態に対応できるかどうかが重要です。
例えば以下の機能が付いているシステムを選ぶと良いでしょう。
- 打刻機能
- 派遣先ごとの就業規則が設定できる
- 労働時間の自動集計機能
- 有給休暇管理機能
- 派遣元と派遣先の情報共有機能
また、派遣業務の特性に合わせて柔軟にカスタマイズできるシステムが便利です。
カスタマイズ性の高いシステムを選ぶことで、派遣先ごとに異なる就業規則や勤務形態に対応でき、より正確に効率的に勤怠管理ができます。
打刻方法の多様性(GPS、生体認証など)
GPS打刻や生体認証など複数の打刻方法があるシステムを選ぶのもおすすめです。GPS打刻機能は、外回りや現場作業が多い派遣社員の勤怠管理に役立ちます。
生体認証での打刻は、IDカードなどのように紛失リスクがなく、他人が本人になりすまして打刻するなどの不正を防げます。
また最近利用が多くなっている、スマートフォンアプリで打刻できる機能も便利です。自社に適した打刻方法を選択しましょう。
適正な派遣社員の勤怠管理を実現しよう
派遣社員の勤怠は、派遣先・派遣元それぞれが役割に沿って管理する義務があります。派遣先では、労働者の勤務状況を客観的に確認して記録し、月に1回以上派遣元へ報告しなければなりません。
派遣元では、報告された情報をもとに賃金を支払い、有給休暇を付与するなどの役割があります。
しかし、勤務先が複数ある、在籍する派遣社員数が多いなどの理由で、勤務状況を適切に管理するのが難しいケースもあるでしょう。その場合は、勤怠管理システムを導入することで解決できます。
自社に合った勤怠管理システムを選択して作業ミスや情報共有不足を防ぎ、効率的な勤怠管理を実現してください。