手書きのタイムカードは違法になる? 特徴と適切な運用方法を解説
手書きタイムカードは、従業員が自身で出退勤時間を記入する紙ベースの勤怠管理ツールです。
従業員が毎日、出勤時と退勤時に自分で時間を記入し、月末にまとめて提出するのが一般的な使用方法になります。簡易的な勤怠管理方法として、特に小規模事業所で広く利用されています。
しかし、手書きのタイムカードは記入ミスや不正確な記録、改ざんのリスクがあるため、注意が必要です。
本記事では、手書きのタイムカードの違法性、適切な運用方法について徹底解説します。
【関連記事はこちら】
タイムカードとは? メリット・デメリットや勤怠管理システムとの違いを解説手書きタイムカードは違法になる?
手書きタイムカードの違法性について詳しく見ていきましょう。ここでは、法律上の位置づけや求められる勤怠管理の方法について解説します。
法律上は違法ではない
手書きタイムカードは労働基準法上違法ではありません。しかし、労働時間を把握するための方法として厚生労働省が定めている客観的な記録には該当しません。
手書きタイムカードは、客観的な記録ではなく自己申告制による記録とされています。自己申告制による記録は、やむを得ない事情がある場合のみ認められていて、客観的に労働時間を把握できる場合は違法となる可能性もあります。
労働基準監督署の調査時に、手書きタイムカードのみでは正確な労働時間の証明が困難となる可能性があるのです。
労働時間の管理責任は使用者側にあるため、手書きタイムカードを使用する場合も、正確性を担保する追加の措置が求められます。
具体的には、管理者による定期的な確認や、従業員との面談を通じた実態把握などが必要になります。
客観的な記録方法が求められる
厚生労働省のガイドラインでは、手書きタイムカードは補完的な位置づけとされ、ICカードやパソコンの使用時間の記録など、より客観性の高い方法が推奨されているのです。
手書きタイムカードを使用する場合も、使用者による現認や定期的な労働時間の実態調査などの補完措置が求められます。これらの措置を講じることで、手書きタイムカードの正確性と信頼性を高めることができます。
手書きタイムカードのメリット
手書きタイムカードには以下のようなメリットがあります。
- 低コストで導入できる
- 誰でも簡単に利用できる
- 自由にカスタマイズできる
それぞれ詳しく解説します。
低コストで導入できる
手書きタイムカードは、初期投資や運用コストが最小限で済みます。そのため、低コストで導入できるのがメリットです。
紙とペンさえあれば運用可能であり、専用の機器やソフトウェアの購入が不要になります。
また、システムの保守や更新にかかる継続的なコストも発生しないため、長期的に考えても経済的です。小規模事業所や、コスト削減が重要な企業にとって、手書きタイムカードは魅力的な選択肢となるでしょう。
誰でも簡単に利用できる
手書きタイムカードは、ITリテラシーに関係なく全従業員が容易に使用できます。複雑な操作や特別なトレーニングが不要なため、高齢者や技術に不慣れな従業員でも簡単に利用できるのです。
新入社員の教育コストも最小限で済み、即座に運用を開始できることもメリットです。そのため、ITスキルの差が大きい職場や、従業員の教育に時間をかけられない企業にも適しています。
自由にカスタマイズできる
企業や部署の特性に合わせてフォーマットを変更でき、柔軟性があることが利点です。休憩時間の記録、業務内容の記入欄、上司の承認欄など、必要に応じて自由に項目を追加できます。
特殊な勤務形態や複雑な勤怠ルールにも、フォーマットの調整で対応可能です。手書きタイムカードのカスタマイズ性の高さは、独自の勤務体系を持つ企業にとっては大きなメリットとなります。
手書きタイムカードのデメリット
手書きタイムカードにはメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
- 客観性と信頼性に欠ける
- 不正や改ざんがしやすい
- 多様な働き方に対応しづらい
導入する際は、上記のようなデメリットに留意しましょう。それぞれ詳しく解説します。
客観性と信頼性に欠ける
手書きタイムカードは自己申告制のため、記録の正確性の担保が難しいです。実際の労働時間と記録された時間に差異が生じる可能性があり、労働時間の正確な把握が困難になります。
また、労働基準監督署の調査や労働争議の際に、客観的な証拠として認められにくい可能性があることにも注意が必要です。
不正や改ざんがしやすい
故意または過失による記録の改ざんリスクが高いというデメリットもあります。手書きタイムカードでは、従業員による労働時間の水増しや使用者による残業時間の削除など、不正な操作が容易に行えるのです。
改ざんの痕跡が残りにくいため、不正の発見や証明が困難となる場合があります。不正を防止するためには、厳格な運用ルールと定期的なチェックが不可欠です。
【関連記事はこちら】
タイムカードの改ざんは違法行為! 企業が知っておくべき対処法と防止策多様な働き方に対応しづらい
手書きタイムカードでの勤怠管理では、テレワークや変則的な勤務形態に柔軟に対応できません。在宅勤務や外出先からの勤務の場合、リアルタイムでの記録が困難なのです。
フレックスタイム制や裁量労働制など、柔軟な勤務形態の管理には不向きです。
手書きタイムカードを適切に運用するためのポイント
手書きタイムカードを適切に運用するために、以下のようなポイントに注意する必要があります。
- 明確な記入ルールの設定
- 管理者による日々の確認
- 従業員と管理者の相互チェック体制
- 定期的な監査と改善策の実施
各ポイントを詳しく解説します。
明確な記入ルールの設定
手書きタイムカードの運用には、統一された記入方法を全従業員に徹底させることが重要です。例えば、以下のようなルールを設けましょう。
- 記入する時間の単位(5分単位か15分単位か)
- 休憩時間や遅刻・早退の記入方法の統一
- ボールペンでの記入
- タイムカードの修正をする際は管理者に報告
定期的な研修や説明会を通じて、全従業員に記入ルールを周知徹底することが大切です。ルールの理解と遵守を促すことで、記録の正確性と統一性を高めることができるでしょう。
管理者による日々の確認
手書きタイムカードは、管理者が毎日確認することでミスや不正を早期に発見できます。
管理者は記入漏れや不自然な労働時間がないかをチェックし、必要に応じて従業員に確認を取りましょう。
定期的な確認により、労働時間の適正管理と不正防止の効果が期待できます。管理者の負担を軽減するためにも、効率的な確認方法を検討することが大切です。
従業員と管理者の相互チェック体制
従業員と管理者のダブルチェック体制を行うと、手書きタイムカードの正確性を向上できます。
従業員自身による定期的な確認と、管理者による承認のプロセスを設けることで、記録の信頼性が高まるのです。
相互チェックにより、単純なミスの防止だけでなく、不正行為の抑止効果も期待できます。従業員と管理者の協力関係を築くことが、適切な運用のカギとなるでしょう。
定期的な監査と改善策の実施
手書きタイムカードの運用は、継続的に改善を図る必要があります。内部監査や外部の専門家による定期的な監査を実施し、記録の正確性や運用ルールの遵守状況を確認しましょう。
監査結果に基づいて、記入ルールの見直しや従業員教育の強化など、必要な改善策を実施することが重要です。PDCAサイクルを回すことで、手書きタイムカードの運用品質を継続的に高められます。
手書きタイムカード特有の注意点
手書きタイムカードには、以下のような注意点があります。
- 記入ミスと読みづらさへの対策をする
- 適切な修正方法を確立する
- テレワークの記入方法を定める
各注意点を詳しく解説します。
記入ミスや読みづらさへの対策をする
手書きタイムカードの記入は判読しやすい文字で行い、確認作業を丁寧に実施する必要があります。
数字の書き方(0と6、1と7の区別など)についても、統一したルールを設けることが望ましいです。
また、記入ミスや判読困難な場合の対処方法(上司への確認や修正プロセスなど)を明確に定めておきましょう。ミスを減らし、確認作業を円滑に進めるための工夫が求められます。
適切な修正方法を確立する
手書きタイムカードの修正には、二重線や訂正印など、改ざんと区別できる方法を定めましょう。修正箇所には必ず理由を記入し、上司の承認を得るなど、透明性を確保するプロセスを設けます。
修正履歴を別途記録し、必要に応じて確認できるようにしておくこともおすすめです。適切な修正方法を確立することで、記録の信頼性を高め、不正のリスクを減らすことができます。
テレワーク時の記録方法を定める
手書きタイムカードをテレワークで使用する場合、リモートでの記録方法や提出プロセスの明確な定義が必要です。電子メールやチャットツールを活用した日々の勤務報告など、代替的な記録方法を検討してください。
定期的な上司との面談や業務報告を組み合わせ、労働時間の実態を把握する仕組みを構築することも重要です。テレワークに対応した運用ルールを設けることで、社員の柔軟な働き方を支援できます。
手書きタイムカードの適切な活用法を考えよう
手書きタイムカードは、適切に運用することが重要です。小規模事業所や特定の業種では、手書きタイムカードのシンプルさと低コストのメリットを活かせる可能性があります。
一方で、客観性の欠如や不正のリスクなどのデメリットには十分な注意が必要です。
手書きタイムカードの活用には、明確なルールの設定と継続的な改善の取り組みが欠かせません。従業員と管理者の協力関係の構築、相互チェック体制の確立が求められます。
本記事を参考に、手書きタイムカードの特性を理解しましょう。そうすることで、自社に最適な活用法を見つけることができます。