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総務のあり方。「コミュニケーションを学ぶ メンバーとの接し方」

総務から会社を変えるシリーズ

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

総務のあり方。「コミュニケーションを学ぶ メンバーとの接し方」

本コラムの読者である皆さんには、部下がいる方も多いと思います。

彼らがモチベーション高く仕事をしてくれたら、任せたことをしっかりと仕上げてくれたら、こんなに嬉しいことはありません。自分の立場で行う仕事だけでなく、さらにその上の仕事も狙うことができます。

しかし、部下の仕事の面倒を見たり、代わりに自分がそれをしなければならなかったりすることも多いものです。

今回は、メンバーのモチベーションを上げるコミュニケーションを紹介しましょう。


まずは聞くこと

メンバーから報告や提案がある場合、まずは最後まで聞いてあげることが大切です。 当たり前のことですが、これがなかなかできないものです。こちらも暇ではありません。企画書を作成中であったり、トラブル対応中であったり、上司という責任ある立場ですから、やることは山積しています。

また、人間ですから、その時々の感情にも影響されます。腹を立てていることもありますし、焦っている時もあります。いつも話を聞くのに最適の状態であるわけではないのです。

一方、話しかけてきた部下の気持ちはどのようなものでしょうか? トラブルが発生して困り果て、藁にもすがりたい状態かもしれません。いいアイデアを思いついて、勢い盛んに話したい状態かもしれません。なかなか進まないプロジェクトの報告を求められ、戦々恐々と報告しようとしているかもしれません。

いずれにせよ、どこか意を決して話しかけている状態ではないでしょうか? その際、こちらがパソコンに向かってキーボードを打ったまま対応したり、不機嫌そうに受け答えしては、部下の思いを出鼻から挫いてしまうことになりませんか?

このような話があります。小さな女の子が、家の庭に咲いていたきれいな花を摘んでお母さんのところに駆け寄りました。「見て、お母さん。きれいでしょう!」。お母さんは、何やら家事の最中。いらいらしながら、「後にして!いま忙しいの!」。この時の女の子の気持ちはどのようなものでしょうか? これからも同じようにお母さんに話しかけるでしょうか?

メンバーが話しかけてきたら、いましている仕事はいったん止めて、話を聞く態度を見せてあげると良いでしょう。メンバーはその時点で、まずはホッとするはずです。第一次関門突破です。上司が話を聞いてくれるという関門を突破したのです。

当然、手を離せない仕事中であればそれを説明し、あらためて、いつであれば話が聞けるか伝えます。中途半端に作業をしながら話を聞くことだけは避けたいものです。話を聞いてあげるということは、マズローの欲求段階の第四段階、承認の欲求を満たしてあげることにも繋がります。


聞く忍耐

メンバーが話し始めたら、最後まで聞いてあげましょう。当たり前のことですが、これもなかなかできないものです。結論が見えてしまったり、途中で間違いに気づいてしまったり、話がまどろっこしくて聞いていられなかったり。途中で遮ってしまうことも多いのではないでしょうか?

途中で話を遮られた時のメンバーの気持ちはどうでしょうか? 人は誰しも「メンツ」があるものです。そのメンツが丸つぶれ、ということもあるでしょう。遮られることで、勢い盛んであった気持ちがしぼんでしまうかもしれません。

話を遮られることが続くと、メンバーはどうなるでしょうか? 上司の顔色を見ながら、恐る恐る話すようになりはしませんか? 「あの言葉を使うとダメ出しを食らう」「話す順番を間違えると聞いてもらえなくなる」。確かに、教育的指導ということもあるかもしれません。

しかし、それは全てを聞いてあげてからでも遅くないはずです。話が終わってから、自分だったらこのように話す、説明すると教えてあげればいいことです。忙しい上司としては、最後まで聞くことは忍耐の一言かもしれませんが…。

しかし話の内容もさることながら、あの上司には気軽に話せるという部下のマインドの醸成を優先してあげたほうが、その後の関係という点では有効ではないでしょうか?

総務という仕事は、その範囲も広く、細かい仕事の積み重ねという側面があります。 どのメンバーも目の前の仕事に追われ、その忙しさに満足してしまい、その日暮らし的な仕事の仕方が多いのではないでしょうか? 確かに仕事量も多いので、目の前の仕事を処理するには、いままで通りの方法で何も変えずに対応していくほうが失敗もせず、最も安全な方法であります。しかしこの状態では、改善も変革も起きないままです。

上司としては、自らの成果のため、部門の評価を高めるために、現状維持ではなく改善や改革、さらにはイノベーションを起こしていかなければなりません。そのためには、自らだけでなくメンバーにもいろいろと動きを作ってもらいたいものです。変化のない安全で安心な世界からメンバーを引き出すには、どうしたら良いのでしょうか?

そもそも、何がしたいのか?

私が新卒で入ったリクルートという会社では、「そもそも」という言葉がよく聞かれました。「そもそも、おまえは何がしたいのか?」「そもそも、この仕事の意味は何?」「そもそも、何が言いたいの?」等々。

まずは目的を明確にすることから始まります。「そもそも、この目的は何なのか?」。これを腹落ちさせてから、仕事に取りかかるのです。目指すべき頂きを確認したら、あとは好きに登ればいいという仕事の仕方です。

目的さえ達成してくれるのなら、あなたのやりたいようにすればいい。いままでの方法は方法。それにとらわれることなく、あなたの考える最短距離で登ればいい。結果として、従来通りの方法が最短距離であれば、その道で登ればいい。

人は自らに裁量権や判断できる余地があると、モチベーションが上がります。その余地を与えるのです。ただし、目的を明確に説明しておくことが肝要です。あらぬ方向に行ってしまうと、その間の時間が無駄になってしまいます。リカバリーが大変なことにもなり得ます。

そこまで任せられない場合は、全体観を示してあげて、その中での工夫を促します。例えば、車両管理という大きな括りでの仕事があるとします。若手メンバーであれば、その全体を司ることはせずに、その一部分、例えば車両保険の管理だけを担当している場合もあるでしょう。

しかし、大抵の仕事はシステムとして、いろいろな仕事が関係しています。車両保険は車両の事故と関係があります。車両の事故は、車両のメンテナンス状況や運転者の健康状態、さらには運転者である社員の働き方にまで関係が及びます。

このように、目の前の一担当の仕事の前後関係、さらにそれらも含めた全体像、全体観を示してあげるのです。前工程や後工程が分かれば、そこには工夫の余地が生まれます。先の目的が明確になり、全体像が見えれば、さらにいろいろな可能性が見えてくるはずです。

目の前の一部だけでは、できることは限られています。全体の中での一部分であれば、代替手段の可能性も検討できます。その仕事を無くす、という選択肢の検討も可能となります。ゼロベースで考えることができるようになります。

このように、メンバーのモチベーションを上げるには、目的の明確化、その目的の範囲であれば可能性を最大限にして考えても良いと思わせること。そして、ある程度決まった仕事の中での改善は全体観を示してあげる、そのようなことが有効ではないでしょうか?

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

総務の最新動向について

総務の在り方、総務のプロとは

戦略総務の実現の仕方・考え方

総務のDXWithコロナのオフィス事情

健康経営の進め方、最新事例の紹介、など

講演テーマ:営業分野

総務経験者が語る総務の実態、総務の意志決定プロセスを知るセミナー

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