ハインリッヒの法則とは?具体例や活用方法をわかりやすく解説
副業・兼業の解説
ハインリッヒの法則とは、アメリカのハーバート W. ハインリッヒ氏が1929年に発表したもので、「1つの重大な事故の背後には29の軽傷の事故があり、その背景には300のケガのない事故が存在する」というものです。
大きな事故には至らなかったものの、「危なかった」と感じる事象を検証することで、重大な労働災害を防止するための教訓として知られています。
本記事では、ハインリッヒの法則について、教訓や具体例、ビジネスでの活用方法をわかりやすく解説します。また、間違いやすい「ヒヤリハットの法則」や「1:29:300の法則」との解釈のずれについても説明しますので、ぜひ参考にしてください。
ハインリッヒの法則とは?
まずは、ハインリッヒの法則を正しく理解しましょう。ハインリッヒの法則は「ヒヤリハットの法則」や「1:29:300の法則」とも呼ばれます。
ハインリッヒの法則を簡単に解説
ハインリッヒの法則とは、アメリカのハーバート W. ハインリッヒ氏が、損害保険会社の安全技師だった1929年に発表した法則です。
労働災害におけるケガの程度を分類したもので、「1つの重大な事故の背後には29の軽傷の事故があり、その背景には300のケガのない事故が存在する」とされています。
つまり、同じ人間が起こした同じ種類の330件の事故のうち、300件は無傷で、29件は軽傷を負い、1件は重い傷害を負っていたということです。「ハインリッヒの法則」は、「1:29:300の法則」や「ヒヤリハット(無傷事故)の法則」とも呼ばれています。
ハインリッヒの法則が示す教訓
ハインリッヒの法則は、重大事故が発生した場合、それまでに小さな事故が数多く発生していることを示しています。
日頃から、小さなミスやヒヤリハットに注意して行動することが、大きな事故の発生を未然に防ぐことにつながるというのが、ハインリッヒの法則が示す教訓といえるでしょう。
ヒヤリハットの発生情報をいち早く把握して、すぐに対策を講じることで重大事故の防止につながります。
間違えやすいハインリッヒの法則の解釈
ハインリッヒの法則は、「1:29:300」とヒヤリハットと関連づけて説明されることが多いため、解釈にズレが生じることがあります。
このズレは、ヒヤリハットを事故でなく無事故と解釈しているために起きます。
つまりは、間違った解釈では、330回の事象のうち、重大な事故まで発展したものが1回、軽傷事故が29回、残り300回が無事故となります。
しかし、正しくは、「1:29:300」はいずれも事故が発生しており、ケガの有無と程度に分けた数字ということです。
ハインリッヒの法則におけるヒヤリハットの具体例
ここでは、ハインリッヒの法則におけるヒヤリハットの具体例を紹介します。ヒヤリハットは職場だけでなく、日常生活のさまざまな場面で起きています。ヒヤリハットに気づいたら、日々の行動を見直してみましょう。
職場でのヒヤリハット
職場でのヒヤリハットの具体例には、次のようなものがあります。
- 大量の書籍や資料を机上に積み上げた状態で地震が発生し、書籍や資料が落ちてきて危うく頭をケガしそうになった
- 刃物で作業している時に後ろから声をかけられ、とっさに振り向いて刃物を相手に向けそうになった
- 自分宛の荷物を一時的に通路に置いたところ、同僚が気づかずに荷物につまずき、ケガをしそうになった
- 急いでいたので走って廊下の角を曲がろうとした時、反対側から歩いてきた同僚と出合い頭にぶつかりそうになった
交通事故でのヒヤリハット
交通事故でのヒヤリハットの具体例には、次のようなものがあります。
- 歩道を歩いている時に、後ろから走ってきた自転車が真横を猛スピードで通り過ぎ、びっくりして車道に飛び出しそうになった
- 停車中の車の後ろを通り抜けようとしたら、急に車がバックしてきてぶつかりそうになった
- 横断歩道を渡ろうとして、信号無視をした車にはねられそうになった
- 渋滞中の車と車の間を徒歩で通り抜けようとして、横から来た自転車にはねられそうになった
- 運転中、スマホに目をやっていた時に信号無視をしそうになった
日常でのヒヤリハット
日常でのヒヤリハットの具体例には、次のようなものがあります。
- 街を歩いている時に強風で物が飛んできて、身体にぶつかりそうになった
- 床に置いてあった荷物に足先をひっかけて、転びそうになった
- 駅に向かって走っている途中、向かってくる自転車と衝突しそうになった
- 帰宅中に集中豪雨が発生し、あっという間に膝まで水に浸って、身動きが取れなくなった
- 重い荷物を持ち上げようとして力を入れたら、ギックリ腰になりそうになった
- カッターを使った作業中に、誤って指を切り落としそうになった
ビジネスの場でハインリッヒの法則を活用する方法
ビジネスの場でハインリッヒの法則を活用するには、ヒヤリハットを報告し、改善策を立案するための仕組み作りが欠かせません。ここでは、その具体的な方法を紹介します。
1. ヒヤリハットの報告フローを作成する
ヒヤリハットは、従業員が報告の重要性を認識していなければ問題として上がってきません。そのため、安全管理担当者は、ヒヤリハットを報告しやすい仕組みを作っておく必要があります。
ヒヤリハットを報告させる時は、発生したその場で、具体的かつ簡潔に内容を報告できるよう、報告フォーマットを決めておくことが大切です。また、重大なトラブルを未然に防ぐことが目的であるため、報告者や報告内容を批判せず、報告に感謝する姿勢を持ちましょう。
2. 報告に基づいて対策する
安全管理担当者は、ヒヤリハットの報告に対して処理の手順をあらかじめ決めておく必要があります。
具体的には、ヒヤリハットの報告があったら速やかに報告の内容を確認し、対応に当たる担当者を決めて詳しい状況を確認します。担当者は、報告書の内容に基づいて発生状況を振り返り、発生の状況と原因を分析した後、考えられる改善策を検討します。
改善策を基に新しいルールを決定し、ガイドラインやマニュアルなどを更新して、社内に周知・実行していきます。
3. 定期的に点検・再確認をする
社内でヒヤリハットの再発防止のためのガイドラインを作成したら、次のようなポイントを確認しながら改善していきましょう。
- マニュアルの通りに現場で運用できているか
- ガイドラインやマニュアルに矛盾や無理がないか
- ヒヤリハットの報告数に変化はあるか
- 変化がある場合、考えられる原因は何か
大切なのは、作成したガイドラインやマニュアルが、ヒヤリハットの発生と大きな事故の発生を抑える効果につながっていることです。
ハインリッヒの法則についてのまとめ
ハインリッヒの法則について、具体例やビジネスでの活用方法をわかりやすく解説しました。
労働災害についてまとめた厚生労働省の「令和3年における死亡災害発生状況」によると、死亡者数は867名で、建設業が最も多い288名、次いで第三次産業が241名となっています。
安全管理を怠っているつもりはなくても、ちょっとした気の緩みで事故は起きてしまいます。重大事故につながるサインであるヒヤリハットを見逃さず、社内全体で注意喚起する仕組みと風土を作っていきましょう。