このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、対応ブラウザでご覧下さい。

商標出願における商品・役務とは ー商標登録のきほんー

商標出願における商品・役務とは ー商標登録のきほんー

「新商品のチョコレートのネーミングについて商標登録を取りたい」

「フィットネスジムの店舗ロゴについて商標登録を取りたい」

商標登録を取りたい場合、まずは、特許庁に願書(商標登録願)を提出することになります。

この願書には、商標登録を受けようとする商標や出願人の住所及び名称に加えて、「指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分」を記載する必要があります。

ここで、「指定商品又は指定役務」とは、商標登録を受けようとする商標を使用する商品やサービスのことです。

「商品及び役務の区分」とは、各種の商品、サービスが割り振られた分類のことです。

上記の例でいうと、新商品のお菓子のネーミングについて商標登録を取るためには、願書に、第30類「チョコレート」「菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)」などと記載する必要があります。

また、「フィットネスジムの店舗ロゴについて商標登録を取るには、第41類「フィットネス施設の提供」「運動施設の提供」などと記載しなければなりません。

このように、「指定商品又は指定役務」や「商品及び役務の区分」は、願書の必須記載事項となっており、商標権の内容・範囲を画する要素でもあり、とても重要です。

そこで、商品・役務とその区分について、その概略をご説明していきます。


この記事の著者
シルベ・ラボ商標特許事務所代表/株式会社シルベ・ラボ  代表取締役 / 弁理士 

1.商品及び役務の区分とは

商品及び役務の区分とは、すべての商品や役務(サービス)を45個の類に分類したものであり、「商標法施行令」という政令の第2条で規定する別表において、以下のように定められています。

商標法施行令第2条において規定する別表(政令別表)

第 1 類

工業用、科学用又は農業用の化学品

第 2 類

塗料、着色料及び腐食の防止用の調整品

第 3 類

洗浄剤及び化粧品

第 4 類

工業用油、工業用油脂、燃料及び光剤

第 5 類

薬剤

第 6 類

卑金属及びその製品

第 7 類

加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械

第 8 類

手動工具

第 9 類

科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、映像用、計量用、信号用、検査 用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械器具、光学式の機械器具 及び電気の伝導用、電気回路の開閉用、変圧用、蓄電用、電圧調整用又は電 気制御用の機械器具

第 10 類

医療用機械器具及び医療用品

第 11 類

照明用、加熱用、蒸気発生用、調理用、冷却用、乾燥用、換気用、給水用又 は衛生用の装置

第 12 類

乗物その他移動用の装置

第 13 類

火器及び火工品

第 14 類

貴金属、貴金属製品であって他の類に属しないもの、宝飾品及び時計

第 15 類

楽器

第 16 類

紙、紙製品及び事務用品

第 17 類

電気絶縁用、断熱用又は防音用の材料及び材料用のプラスチック

第 18 類

革及びその模造品、旅行用品並びに馬具

第 19 類

金属製でない建築材料

第 20 類

家具及びプラスチック製品であって他の類に属しないもの

第 21 類

家庭用又は台所用の手動式の器具、化粧用具、ガラス製品及び磁器製品

第 22 類

ロープ製品、帆布製品、詰物用の材料及び織物用の原料繊維

第 23 類

織物用の糸

第 24 類

織物及び家庭用の織物製カバー

第 25 類

被服及び履物

第 26 類

裁縫用品

第 27 類

床敷物及び織物製でない壁掛け

第 28 類

がん具、遊戯用具及び運動用具

第 29 類

動物性の食品及び加工した野菜その他の食用園芸作物

第 30 類

加工した植物性の食品(他の類に属するものを除く。)及び調味料

第 31 類

加工していない陸産物、生きている動植物及び飼料

第 32 類

アルコールを含有しない飲料及びビール

第 33 類

ビールを除くアルコール飲料

第 34 類

たばこ、喫煙用具及びマッチ

第 35 類

広告、事業の管理又は運営、事務処理及び小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

第 36 類

金融、保険及び不動産の取引

第 37 類

建設、設置工事及び修理

第 38 類

電気通信

第 39 類

輸送、こん包及び保管並びに旅行の手配

第 40 類

物品の加工その他の処理

第 41 類

教育、訓練、娯楽、スポーツ及び文化活動

第 42 類

科学技術又は産業に関する調査研究及び設計並びに電子計算機又はソフトウェアの設計及び開発

第 43 類

飲食物の提供及び宿泊施設の提供

第 44 類

医療、動物の治療、人又は動物に関する衛生及び美容並びに農業、園芸又は 林業に係る役務

第 45 類

冠婚葬祭に係る役務その他の個人の需要に応じて提供する役務(他の類に属 するものを除く。)、警備及び法律事務

(注)商標登録出願をする際は、上記の表示ではなく、本審査基準に記載されている商品・役務の表示(「類別表」を除く。)を参考に記載してください。

注意すべきは、願書に記載する「区分」については上記の分類を記載すれば足りるのですが、商品・役務については原則として、ここに記載されている表示ではなく、特許庁が発行する「類似商品・役務審査基準」に記載された、各区分の商品・役務を記載すべきとされている点です。

類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2022版対応〕 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

あくまで、商標法施行令第2条において規定する別表の商品・役務は概略を示したものであり、権利の内容・範囲を定めるものとしては広すぎるものであり、不明確なものであるためです。

なお、特許庁が発行する「類似商品・役務審査基準」には、より具体的な商品・役務が記載されていますが、これらは例示であって、必ずしもその表記に合わせる必要はありません。


2.区分と類似群コード

出願された商標が、他人の登録商標と同一又は類似の商標であって、かつ、出願に係る指定商品又は指定役務が同一又は類似のものである場合は、商標登録を受けることはできないとされています(拒絶理由、商標法4条1項11号)。

すなわち、出願した商標が他人の登録商標と同一であったとしても、指定商品、指定役務が類似しないのであれば、上記の拒絶理由には当たらないことになります。

前述の「類似商品・役務審査基準」は、互いに類似すると推定される商品・役務をグルーピング化したもので、同じグループの商品・役務には、数字とアルファベッドの組合せからなる共通のコードである「類似群コード」が付され、同じ類似群コードが付された商品・役務については、審査において類似と推定されることになります。

ここでご注意いただきたいのは、同じ区分に属する商品・役務同士が類似するとは限らないということです。

むしろ、異なる区分に属する商品・役務同士が類似する場合もあり、また、商品と役務が類似する場合もあります。

例えば、第30類「チョコレート」「菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)」には「30A01」という類似群コードが付与されているのに対し、同じ第30類でも「コーヒー」の類似群コードは「29B01」であるため、非類似の商品ということになります。

他方、第29類の「甘納豆」や「菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものに限る。)」は「30A01」という類似群コードが付与されているため、第30類の「チョコレート」「菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)」と商品が類似するということになります。

また、第35類の役務である「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」には「35K03」と「30A01」の類似群が付与されているため、第29類の「甘納豆」や第30類「チョコレート」といった商品と類似する関係になります。

【非類似の例】

  • 第30類「チョコレート」と第30類「コーヒー」 

【類似の例】

  • 第29類「甘納豆」と第30類「チョコレート」
  • 第35類「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と第30類「チョコレート」

3.区分の数と印紙代

商標出願をする際の願書には、複数の区分、複数の指定商品、指定役務を記載することができます。

商標登録する場合には、商標出願をする際と、審査後に登録査定を受け取った際に、特許庁に対して各々、出願料、設定登録料を支払う必要があります。

下記の計算式にあるように、願書に記載した区分の数に応じて決まることになります。

すなわち、区分の数が増えると、それだけ加算されることになります。

なお、商標権の存続期間の更新登録の申請をする際も同様に、区分に応じた料金となっています。

(1)出願料

3,400円+(区分数×8,600円)

したがって、出願する区分の数が1つの場合は12,000円、3つの区分について出願する場合には29,200円となります。

(2)設定登録料

審査官が拒絶理由を見つけられなかった場合は、登録査定の通知が送られてきます。

この通知を受け取ってから30日以内に支払わなければならないのが、この設定登録料です。

設定登録料については、10年間分か、5年間分(分割納付)か選択することができます。

1)10年間  32,900円×区分数

つまり、1区分であれば32,900円、3区分なら98,700円となります。

2)5年間   17,200円×区分数

つまり、1区分であれば17,200円、3区分なら51,600円となります。

(3)更新登録料

商標は長く使えば使うほど、需要者の信頼・信用が蓄積されるものであり、財産権としての価値が高まっていくものです。

そのため、商標権については、特許権や意匠権とは異なり、存続期間の更新という制度を設けられています。

設定登録料の場合と同様に、分割納付制度は更新登録にもあります。

1)10年間   区分数×43,600円

区分が1つの商標権の更新登録料は43,600円、3つの場合は130,800円となります。

2)5年間   区分数×22,800円

区分が1つの商標権の更新登録料は22,800円、3つの場合は68,400円となります。


4.まとめ

指定商品、指定役務とその区分は、料金に関わってくるものであることに加え、商標権の権利自体の内容・範囲となるものであり、いわば商標権の根幹となる、極めて重要な要素となります。

その選択にあたっては、自社の事業内容を十分に理解し、どのような商品、サービスのブランドとして用いるものであるのか、将来的にどのような商品、サービスまで展開する可能性があるのかなどといった事情を把握したうえで、選び出す必要があります。

複数ある区分の中から該当する区分を選び、的確な商品・役務を特定し、必要不可欠のものに加えて、将来の可能性まで含めた戦略的な区分、商品、役務の選択をするには、高度の専門性が要求される場合があります。

漏れのない適切な商標登録の取得を目指すには、専門家のサポートもうまく利用しながら、この区分、商品、役務というものを検討する必要があります。


【書式のテンプレートをお探しなら】

この記事に関連する最新記事

おすすめ書式テンプレート

書式テンプレートをもっと見る

著者プロフィール

author_item{name}

潮崎 宗

シルベ・ラボ商標特許事務所代表/株式会社シルベ・ラボ 代表取締役 / 弁理士

上智大学法学部法律学科卒業。日本弁理士会関東会 中小企業・ベンチャー支援委員会。東京都内の特許事務所勤務を経て、2005年弁理士登録。

商標・ブランドに関するコンサルティングのほか、ベンチャー企業や中小企業の案件を中心に、国内及び外国での調査や出願、審判に関する手続、不正競争防止法・著作権に関する相談を行っている。各専門家との各々の強みを活かしたワンストップ体制で、知的資産の分析・調査の段階から、権利化、運用までを見据えたサービスを提供している。

この著者の他の記事(全て見る

テーマ/キーワードから記事を探す

カテゴリ別テーマ一覧へ

フリーワードで探す

bizoceanジャーナルトップページ