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電子契約に法的効力はある? 要件と法的効力を高めるポイントを解説

電子契約に法的効力はある? 要件と法的効力を高めるポイントを解説

電子契約システムの普及が進む中、その法的効力について疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、電子契約の法的効力と要件、効力を高めるポイントについて詳しく解説します。

電子契約と紙の契約書の違いや、事業者署名型と当事者署名型の比較、さらには実際の裁判例まで幅広く取り上げます。電子契約の活用を検討している方や、電子契約の法的効力について知りたい方はぜひ参考にしてください。


この記事の監修者
  行政書士、申請取次行政書士 

電子契約の法的効力と要件

電子契約の法的効力については、多くの方が不安を感じているかもしれません。しかし、適切に作成された電子契約は、紙の契約書と同等の法的効力を持つことが認められています。

ここでは、電子契約の法的効力を考慮するケースや、民法および電子署名法の要件について詳しく見ていきましょう。

電子契約の法的効力を考慮するケース

電子契約の法的効力を考えるケースは以下のような場合です。

  1. 電子契約で行った契約内容自体が、法的に効力が認められるか(契約自由の原則とその例外)
  2. 訴訟の際に、電子契約が証拠として利用できるか
  3. 税法上の取扱い(印紙税が必要になるか・保存方法など)

これらのケースにおいて、電子契約の法的効力が問題となることがあります。適切に作成された電子契約は、これらの場面でも十分な法的効力を持つことができます。

民法の要件を満たす電子契約

電子契約が法的効力を持つためには、民法上の契約成立要件を満たす必要があります。
民法では、契約の成立には当事者間の意思の合致が必要とされています。電子契約の場合、この意思の合致が電子的な方法で行われることになるのです。

例として挙げられるのは、メールでの契約締結が有効とされた判例や、ウェブサイト上での約款への同意が有効とされた判例です。これらの判例は、電子的な方法による意思表示も、従来の書面や口頭による意思表示と同様に有効であることを示しています。

電子署名法の要件を満たす電子署名

電子署名法は、電子署名の法的効力を明確にし、その利用を促進することを目的として制定されました。電子署名法では、以下の要件を満たす電子署名に、特別な法的効力を与えています。

  1. 本人による電子署名であること
  2. 改変が行われていないこと
  3. 電磁的記録の真正性が確保されていること

これらの要件を満たす電子署名が付された電子文書は、本人による署名または押印が行われたものと推定されます。電子署名法の要件を満たす電子契約は、紙の契約書と同等の法的効力を持つことになります。

「真正な成立の推定」が得られる電子署名の条件

電子契約の法的効力を考える上で重要なのが、「真正な成立の推定」です。これは、民事訴訟法第228条第4項に規定されており、文書の成立の真正が推定される場合を指します。

電子署名法第3条では、一定の要件を満たす電子署名について、この「真正な成立の推定」が及ぶと規定されています。電子署名が対象となるための具体的な条件は、以下のとおりです。

  1. 本人のみが行うことができる電子署名であること
  2. 電磁的記録に付された電子署名であること
  3. 当該電磁的記録について改変が行われていないこと

参照:e-GOV(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=408AC0000000109_20240301_504AC0000000048

紙での契約と法的効力に違いがあるか

基本的に、電子契約と紙の契約書の法的効力に違いはありません。2001年に施行された「電子署名及び認証業務に関する法律」(電子署名法)により、一定の要件を満たす電子署名が付された電子文書は、紙の文書と同等の法的効力を持つことが認められています。

ただし、一部の文書(不動産登記に関する書類など)は、法律で紙での作成が義務付けられているものもあるので、注意しましょう。


電子契約の法的効力を高めるポイント

電子契約の法的効力を高めるためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、電子証明書の使用、タイムスタンプの活用、そして長期署名による法的効力の維持について詳しく解説します。

電子証明書を用いる

電子証明書は、電子契約の法的効力を高める上で、非常に重要な役割を果たします。電子証明書とは、デジタル世界における身分証明書のようなもので、オンライン上で本人であることを証明するために使用されます。電子証明書の発行プロセスは、通常以下のような流れになります。

  1. 申請者が認証局に証明書の発行を申請する
  2. 認証局が申請者の身元を厳密に確認する
  3. 確認が取れたら、認証局が電子証明書を発行する

タイムスタンプを用いる

タイムスタンプは、電子文書がある特定の日時に存在し、その時点から変更されていないことを証明する技術です。電子契約においてタイムスタンプを使用することで、契約締結の正確な日時を証明し、後から契約内容が改ざんされていないことを示すことができます。

タイムスタンプの付与方法は、一般的に以下のような手順で行われます。

  1. 電子文書のハッシュ値を計算する
  2. そのハッシュ値を信頼できるタイムスタンプ局に送信する
  3. タイムスタンプ局が正確な時刻情報とともにハッシュ値に署名を付ける
  4. 署名付きのタイムスタンプを電子文書に添付する

長期署名によって法的効力を維持する

電子証明書には有効期限があり、その期限が切れると証明書の信頼性が失われてしまいます。これは、長期にわたって保存が必要な契約書にとっては、大きな問題となります。

この問題を解決するのが「長期署名」です。長期署名は、電子署名に加えてタイムスタンプを付与し、定期的に署名の有効性を確認・更新します。そうすることで、電子文書の真正性を長期間にわたって維持することができるのです。

長期署名の仕組みは、以下のようになっています。

  1. 電子文書に電子署名を付与する
  2. 署名済み文書にタイムスタンプを付与する
  3. 定期的に署名の有効性を確認し、新たなタイムスタンプを追加する

事業者署名型と当事者署名型の法的効力

電子契約には、大きく分けて事業者署名型当事者署名型の2つの方式があります。これらの方式は、それぞれ異なる特徴を持ち、法的効力の面でも若干の違いがあります。ここでは、両方式の仕組みと法的効力、そして本人性の担保における差異について、詳しく見ていきましょう。

事業者署名型電子署名の法的効力

事業者署名型電子署名は、電子契約サービス提供事業者が契約当事者に代わって電子署名を行う方式です。この方式では、事業者が契約当事者の本人確認を行い、その上で事業者自身の電子署名を契約書に付与します。

事業者署名型の法的効力については、2020年7月に公表された政府見解で一定の基準が示されました。その見解によると、以下の要件を満たす事業者署名型電子署名は、電子署名法第3条の推定効を得られる可能性があるとされています。

  1. 利用者の意思に基づき、事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う機能を有すること
  2. 事業者が利用者の本人確認を適切に行っていること
  3. 利用者の指示に基づき、事業者が電子署名を行ったことを示す証跡が残されること

参照:e-GOV(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000102

当事者署名型電子署名の法的効力

当事者署名型電子署名は、契約当事者自身が電子証明書を保有し、直接電子署名を行います。各当事者が自分の電子証明書を用いて契約書に電子署名を付与する方式です。

当事者署名型の法的効力は、電子署名法に直接的に基づいています。電子署名法第3条では、一定の要件を満たす電子署名について、「本人による署名又は押印があったものと推定する」と規定されています。

当事者署名型電子署名の大きな特徴は、本人確認の厳格性です。電子証明書の発行時に厳密な本人確認が行われるため、署名者の本人性が高い精度で担保されます。

参照:e-GOV(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000102

本人性の担保における2つの方式の差異

本人性の担保方法である事業者署名型と当事者署名型には、大きな違いがあります。事業者署名型の場合、本人確認は電子契約サービス提供事業者に委ねられます。この方式では、事業者の本人確認プロセスの信頼性が鍵となる一方で、利用者側の手続きを簡素化することが可能です。

当事者署名型では、各当事者が認証局から直接電子証明書を取得します。この過程で厳密な本人確認が行われるため、本人性の担保がより確実です。ただし、電子証明書の取得や管理に手間がかかるというデメリットもあります。

両者を比較すると、以下のような特徴があります。

  1. 本人性の確実性:当事者署名型 > 事業者署名型
  2. 利用の手軽さ:事業者署名型 > 当事者署名型
  3. 運用コスト:事業者署名型 < 当事者署名型
  4. 法的安定性:当事者署名型 > 事業者署名型

高度な信頼性が求められる場合は当事者署名型を、手軽さや効率性を重視する場合は事業者署名型を検討するとよいでしょう。


電子契約に関する裁判例と実務上の留意点

電子契約の法的効力に関する理解を深めるためには、実際の裁判例を知ることが非常に有効です。また、実務において電子契約を有効に活用するためには、いくつかの重要なポイントに注意を払う必要があります。ここでは、電子契約書が証拠として採用された裁判例と、電子契約を有効に締結するための実務上のポイントについて詳しく解説します。

裁判で電子契約書が証拠採用された事例

電子契約書の証拠能力については、すでに複数の裁判例で認められています。以下では、電子契約書が証拠として採用された代表的な事例をいくつか紹介します。

  1. 東京地裁平成16年12月22日判決
    メールで交わされた契約内容が有効とされた事例です。
    裁判所は、メールのヘッダ情報や内容の一貫性から、当該メールの真正性を認めました。
  2. 大阪高裁平成26年8月28日判決
    電子署名付きの電子文書が証拠として採用された事例です。
    電子署名の技術的信頼性が高く評価され、文書の真正性が認められました。
  3. 東京地裁平成30年4月19日判決
    クラウド型の電子契約サービスを利用して締結された契約、有効とされた事例です。
    サービスの利用履歴や本人確認プロセスの適切性が評価されました。

これらの裁判例から、電子契約書の証拠採用のポイントとして、以下が挙げられます。

  • 電子文書の作成過程や送受信の記録が明確であること
  • 電子署名やタイムスタンプなど、技術的な信頼性が確保されていること
  • 本人確認のプロセスが適切に行われていること

電子契約を有効に締結するための実務ポイント

電子契約を法的に有効に締結するためには、以下のようなポイントに注意を払うことが重要です。

  1. 契約当事者間での電子契約利用の合意
    電子契約を利用することについて、予め当事者間で合意しておくことが重要です。この合意は、契約書本文や取引基本契約書などに明記しておくとよいでしょう。
  2. 適切な本人確認手法の選択と運用
    なりすましを防ぐため、信頼性の高い本人確認手法を選択し、適切に運用することが必要です。たとえば、電子証明書の利用やマイナンバーカードを活用した本人確認などが考えられます。
  3. 信頼性の高い電子署名サービスの選択
    電子署名サービスを選ぶ際は、以下のようなチェックポイントを確認しましょう。
    • 電子署名法の要件を満たしているか
    • セキュリティ対策は十分か
    • 長期保存機能はあるか
    • 利用実績や評判はどうか
  4. 契約内容の明確化と合意形成プロセスの記録
    電子契約でも、契約内容を明確にし、合意形成のプロセスを記録することが重要です。契約書のバージョン管理や交渉経緯の記録を適切に行いましょう。
  5. 電子契約書の適切な保存と管理
    締結した電子契約書は、改ざんや紛失のリスクを避けるため、適切に保存・管理する必要があります。バックアップの作成や、アクセス権限の管理などに留意しましょう。

法的効力のある電子契約の活用に向けて

電子契約は、適切に作成・運用されれば、紙の契約書と同等の法的効力を持つことが可能です。
電子契約の導入には、業務効率の向上やコスト削減、ペーパーレス化の推進など、多くのメリットがあります。一方で、セキュリティリスクや法的要件への対応など、留意すべき点もあります。

これらを踏まえ、各企業や組織においては、信頼できる電子署名サービスの活用を検討することをお勧めします。適切なサービスを選択し、正しい運用を行うことで、電子契約の利点を最大限に活かすことができるでしょう。


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監修者プロフィール

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井上 通夫

行政書士、申請取次行政書士

行政書士(平成18年度行政書士試験合格)、申請取次行政書士(令和2年1月取得)。

福岡大学法学部法律学科卒。大学在学中は、憲法・行政法ゼミ(石村ゼミ18期生)に所属、新聞部編集長を務める。

卒業後、大手信販会社や大手学習塾等に勤務し、平成20年7月に福岡市内で行政書士事務所を開業、現在に至る。

現在の業務は相続・遺言、民事法務(内容証明・契約書・離婚協議書等)、会社設立、公益法人(社団・財団法人)関連業務、在留資格業務など。福岡県行政書士会所属。

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