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電子契約における電子署名とは? 電子サインとの違いや法的効力について

電子契約における電子署名とは? 電子サインとの違いや法的効力について

電子契約は、従来の紙の契約書に代わり、デジタル技術を活用して契約を締結する方法です。ビジネスのデジタル化が進む中、重要性がますます高まっています。

電子契約は、契約書の作成から署名、保管までをオンラインで完結させることができるため、業務効率化やコスト削減に大きく貢献します。

本記事では、電子契約における電子署名の仕組みや法的効力、電子サインとの違いなどについて詳しく解説します。


この記事の監修者
  行政書士、申請取次行政書士 

電子契約における電子署名とは

電子署名は、紙の契約書でいうサイン(署名)や押印のことです。電子署名法により、一定の要件を満たす電子署名が付された電子文書は、真正に成立したものと推定されます。

その要件とは、以下の2点です。

  1. 本人による措置であること
  2. 改変が検出できること

電子署名は、契約当事者の本人性を確認し、契約内容の非改ざん性を担保する役割を持ちます。これにより、電子契約でも従来の書面契約と同等の信頼性を確保することが可能です。


電子契約における電子署名の仕組み

電子契約における電子署名は、「公開鍵暗号方式」という高度な暗号技術を用いて、実現されています。この技術により、契約書の内容が改ざんされていないことを確実に証明することができるのです。
公開鍵暗号方式の仕組みは、以下の通りです。

  1. 署名者が秘密鍵と公開鍵のペアを生成する
  2. 契約書データをハッシュ関数で処理し、ハッシュ値を作成する
  3. ハッシュ値を公開鍵で暗号化
  4. 契約書データと電子署名を相手に送信
  5. 受信者は秘密鍵を使用して電子署名を復号し、ハッシュ値を取り出す
  6. 受信した契約書データから同じハッシュ関数でハッシュ値を計算し、復号したハッシュ値と比較する
  7. 両者が一致すれば、契約書が改ざんされていないことが確認できる

電子契約における電子署名と電子サインの違い

電子契約には、「電子署名」と「電子サイン」という2つの概念が存在します。

電子署名は、前述の公開鍵暗号方式を用いた高度な技術によって、本人性と非改ざん性を強固に担保するシステムです。
一方、電子サインは、メール認証やSMS認証などの比較的簡易な方法で、本人確認を行うシステムです。


電子契約と書面契約の主な違い

電子契約と従来の書面契約には、形式や手続き、法的な扱いなど、さまざまな面で違いがあります。ここでは、以下の事務処理という3つの観点から、それぞれの違いを詳しく見ていきます。

  • 契約書の形式と保管方法
  • 本人性の担保方法
  • 契約締結


契約書の形式と保管方法

電子契約と書面契約では、契約書の形式と保管方法に大きな違いがあります。

電子契約の場合、契約書はPDFなどのデジタルデータとして作成され、クラウドサーバーやセキュリティストレージに保管されます。一方、書面契約では紙の契約書が作成され、物理的に書棚や金庫で保管されるのが一般的です。

電子契約は、セキュリティ面でも優れています。適切に設計されたシステムでは、アクセス権限の厳密な管理や、改ざん防止技術の適用が可能です。さらに、自動バックアップや分散保管により、災害時のデータ喪失リスクも軽減できます。

ただし、電子データの長期保存には適切な運用と定期的なメンテナンスが必要です。ファイル形式の陳腐化や、ストレージの劣化に注意しましょう。

本人性の担保方法

本人性の担保方法は、電子契約と書面契約で大きく異なります。

電子契約は、電子署名を用いて本人性を確認する仕組みです。
一方、書面契約では押印や署名による本人確認が行われます。日本では特に、印鑑証明書と実印の組み合わせが、重要な契約で用いられてきました。しかし、印鑑による認証は偽造のリスクがあり、また印鑑の管理や押印の手間が課題となっていました。

電子署名法に基づく電子署名は、一定の要件を満たせば書面契約の署名や押印と同等の効力を持つと、法的に認められます。電子サインの場合、そのような法的推定効はありませんが、他の証拠と組み合わせることで有効な契約として認められる可能性があります。

契約締結までの事務処理

電子契約では、契約書の作成から署名、相手方への送付、最終的な契約締結までの全プロセスにおいて、オンライン対応が可能です。専用のクラウドサービスを利用すれば、契約書のアップロード、署名依頼の送信、署名の実行、契約完了の通知までをスムーズに行えます。

一方、書面契約では以下のような手順が必要です。

  1. 契約書の印刷
  2. 押印または署名
  3. 契約書の郵送または持参
  4. 相手方の押印または署名
  5. 契約書の返送
  6. 収入印紙の貼付(必要な場合)

電子契約では、郵送費や印紙代が不要となるほか、契約締結までの時間も大幅に短縮できます。そのため、大幅な業務効率化とコスト削減が可能です。ただし、電子契約システムの導入には初期コストがかかる場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。


電子契約の法的効力と留意点

電子契約の普及に伴い、その法的効力や関連する法律についても、理解しておきましょう。ここでは、以下の内容について詳しく解説します。

  • 電子署名法とその解釈
  • 民事訴訟法との関係
  • 電子契約に関連する他の法律
  • 電子帳簿保存法の変更点
  • デジタル改革関連法の影響


電子署名法とその解釈

電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)は、電子署名の法的効力を規定する重要な法律です。この法律では、一定の要件を満たす電子署名が付された電子文書について、「真正に成立したものと推定する」と定めています。

電子契約サービスにおける電子署名法の解釈のポイントは、以下の通りです。

  1. 本人性の確認:署名者が本人であることを確実に証明できる仕組みが必要
  2. 非改ざん性の担保:契約内容が署名後に変更されていないことを技術的に保証する
  3. 署名過程の信頼性:署名が行われた過程が信頼できるものであること

ただし、電子署名法の適用には一定の限界があります。たとえば、すべての種類の契約や法的手続きに、電子署名が適用できるわけではありません。不動産登記や家族関係の届出など、一部の手続きでは依然として書面や実印が必要とされます。

また、電子署名法は技術中立的な立場を取っているため、特定の技術や方式を指定していません。そのため、個々の電子署名システムが法の要件を満たしているかどうかは、個別に判断される必要があります。

民事訴訟法との関係

電子契約の法的効力を考える上で、民事訴訟法との関係も重要です。民事訴訟法では、電子文書の証拠能力について規定しています。基本的に、電子文書も書面と同様に証拠として認められますが、その真正性(作成者の真偽や内容の改変の有無)が問題となることがあります。

電子署名の付与は、電子文書の証拠能力を高める重要な要素です。電子署名法に基づく電子署名が付された電子文書は、その真正性が推定されるため、訴訟において有力な証拠となり得ます。

具体的には、以下のような点で電子署名は有効です。

  1. 契約当事者の本人性の証明
  2. 契約内容の非改ざん性の証明
  3. 契約締結時刻の特定
  4. 契約の成立過程の追跡可能性

ただし、裁判所による電子契約の有効性の判断は、個別の事案ごとに行われます。電子署名の技術的信頼性だけでなく、契約締結の経緯や当事者の意思確認プロセスなども、考慮されるでしょう。

また、電子契約システムの運用や管理の適切性も、重要な判断要素となります。電子契約の有効性をより強く主張できるように、セキュリティ対策や、アクセス記録の保管などが適切に行われていることを示すとよいでしょう。

電子契約に関連する他の法律

電子契約の利用に際しては、電子署名法や民事訴訟法以外にも、いくつかの重要な法律が関連してきます。

まず、電子帳簿保存法は、税務関係書類の電子的な保存に関する要件を定めています。電子契約書も税務関係書類に該当する場合があるため、この法律の要件を満たすことが重要です。

具体的には、以下の点に注意しましょう。

  1. 真実性の確保:改ざん防止措置や検索機能の確保
  2. 可視性の確保:画面・書面に速やかに出力できること
  3. 保存期間:法定保存期間中の可読性の維持

次に、電子契約が利用できない契約類型についても理解しておくことが必要です。たとえば、以下のような契約や手続きでは、依然として書面や実印が要求される場合があります。

  1. 不動産登記に関する書類
  2. 戸籍や住民票の届出
  3. 遺言書
  4. 手形・小切手

これらの契約類型で電子契約が認められない主な理由は、高度な本人確認の必要性や、長期的な保存と真正性の担保の重要性などが挙げられます。

デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律の施行により、多くの手続きで押印が不要になるなど、電子化の流れは加速しているのです。今後も、ブロックチェーン技術の活用や、より高度な本人確認技術の導入などの法的動向を常に把握し、適切に対応していく必要があるでしょう。

電子帳簿保存法の変更点

2022年1月から施行された改正電子帳簿保存法では、いくつかの重要な変更点がありました。主な変更点は、以下の通りです。

  • 電子取引の電子保存の義務化
    電子的に受け取った請求書や契約書などは、原則として電子データのまま保存することが義務付けられた。
  • 重加算税の加重
    隠蔽や仮装された事実で生じた申告漏れ等があった場合、重加算税が10%加重されることになった。
  • 事前承認制度の廃止
    電子帳簿等保存について、税務署長の事前承認が不要になった。
  • スキャナ保存での適正事務処理要件の廃止
    領収書等のスキャナ保存において、適正事務処理要件が廃止された。


デジタル改革関連法の影響

2021年に成立したデジタル改革関連法は、電子契約の普及にも大きな影響を与えています。この法律により、多くの手続きで押印義務が廃止され、書面化義務も緩和されました。

デジタル改革関連法による主な変更点は、以下の通りです。

  • 押印義務の廃止
    多くの行政手続きで押印が不要になった。
  • 書面化義務の緩和
    法令で書面の作成が義務付けられていた手続きの多くで、電磁的記録による代替が認められるようになった。
  • 不動産取引における変更
    不動産取引の重要事項説明書などへの押印が不要になった(不動産事業者は電磁的方法で交付可能)。

また、従来は書面での手続きが中心だった不動産取引のような分野でも、電子化が進むことで、業務効率の大幅な向上が見込まれます。


電子契約における電子署名について理解して活用しよう

電子契約は、ビジネスのデジタル化を推進する上で非常に便利なツールです。この技術を適切に活用することで、業務効率を大幅に向上させつつ、法的にも有効な契約を締結することができます。

ただし、電子契約を有効に活用するためには、契約内容に応じて電子署名と電子サインを適切に使い分けることが必要です。重要度の高い契約や法的な効力を強く求められる場面では、電子署名法に基づく電子署名の使用が望ましいでしょう。

電子契約を導入する際は、関連法規を正しく理解し、それらに準拠したシステムの構築と運用が求められます。特に、改正電子帳簿保存法やデジタル改革関連法などの最新の法改正にも注意して活用しましょう。


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監修者プロフィール

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井上 通夫

行政書士、申請取次行政書士

行政書士(平成18年度行政書士試験合格)、申請取次行政書士(令和2年1月取得)。

福岡大学法学部法律学科卒。大学在学中は、憲法・行政法ゼミ(石村ゼミ18期生)に所属、新聞部編集長を務める。

卒業後、大手信販会社や大手学習塾等に勤務し、平成20年7月に福岡市内で行政書士事務所を開業、現在に至る。

現在の業務は相続・遺言、民事法務(内容証明・契約書・離婚協議書等)、会社設立、公益法人(社団・財団法人)関連業務、在留資格業務など。福岡県行政書士会所属。

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