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電子契約はBtoCの取引にも導入できる! 法律やサービスの選び方も紹介

電子契約はBtoCの取引にも導入できる! 法律やサービスの選び方も紹介

近年では企業間取引(BtoB)において、電子契約システムを導入する事業者が増えてきました。ですが企業と消費者間の取引(BtoC)にも電子契約システムを活用できるのでしょうか。

本記事では、BtoC取引における電子契約の活用方法や、導入前に知っておくべき法律、適切な電子契約サービスの選び方などについて詳しく解説します。


この記事の監修者
弁護士法人山本特許法律事務所  パートナー弁護士 

電子契約サービスはBtoC取引にも活用可能

電子契約サービスは、BtoB取引はもちろん、BtoC取引においても活用が可能です。電子契約サービスを活用すれば、業務の効率化が図れるだけでなく、顧客の利便性も向上させることができます。

BtoC取引は、BtoB取引に比べて大量の契約処理や迅速な顧客対応が求められるのが特徴です。電子契約サービスを導入すれば、これらの要求に応えつつ、ペーパーレス化によるコスト削減も実現できるでしょう。

具体的な活用例は、保険の加入やジムの入会手続き、不動産の賃貸契約書の締結などです。これらの契約を電子化することで、顧客は来店せずに手続きを完了でき、企業側も事務作業の負担を大幅に軽減できます。もちろん、デザイナーやコンサルタントといった個人事業主との委託契約を電子化することも可能です。

近年では様々な消費者の状況を考慮して、PC環境がない場合やフリーメールを利用している場合にも対応できる電子契約サービスが登場しました。
たとえば、スマートフォンでの契約締結や、SMS認証を利用した本人確認など、柔軟な機能を備えたサービスが増えてきています。

BtoB取引では電子契約が急速に広まっている一方で、BtoCでの電子契約の普及状況はまだ発展途上の段階です。しかし、デジタル化の進展やオンラインサービスの発展に伴い、今後BtoCでも電子契約が普及していく可能性は高いでしょう。現に先進的な企業では導入を始めており、競争力強化の観点からもBtoCの電子化は注目を集めています。


BtoC取引で電子契約を利用する場合に知っておきたい法律

BtoC取引で電子契約を活用する際には、関連する法律について理解しておくことが大切です。特に「電子契約法」と「特定商取引法」に関する知識は欠かせません。

以下では、この2つの法律について詳しく解説します。

電子契約法

電子契約法は、インターネットショッピングといった電子商取引の普及に伴い、消費者が安全に電子商取引をできるようにするために制定されました。この法律の具体的な目的は、消費者の誤発注に対する救済と、消費者が望んでいない契約の阻止です。

電子消費者契約において、錯誤の取り消しが重要な特例です。たとえば、消費者が操作ミスで意図しない発注や申し込みをしてしまった際、その契約を無効にすることができます。ただしこれは、事業者側から事前の利用規約の提示がなかった場合や、最終確認画面の設置がなかった場合などに限り適用される点に注意しましょう。

また電子契約法は、電子商取引における契約の成立時期についても明確化しています。従来では、消費者が承諾の意思を通知した時点で契約が成立すると定められていました(発信主義)。ですが、2020年の改正民法の施行により、現行では承諾の通知が相手に到着した時点を契約の成立時期としています(到達主義)。

特定商取引法

特定商取引法は、消費者トラブルが生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルールを定めた法律です。通信販売やインターネット通販といった、BtoC取引の多くがこの法律の対象となります。

特定商取引法では、BtoC取引において以下の事項を明示しなければいけません。

  • 販売価格と送料
  • 支払い方法と支払いの時期
  • 商品の引渡時期
  • 返品・交換の規定
  • 事業者の名称・住所・電話番号

これらの情報を、消費者が簡単に確認できる形で表記する必要があります。

また、特定商取引法で特に重要となるのが、クーリング・オフ制度です。この制度により、消費者は契約から一定期間内であれば無条件で契約を解除できる権利が保障されます。ただし、不動産の賃貸契約や通信販売など、一部の契約・取引はクーリングオフの対象外となるので注意しましょう。

特定商取引法はBtoC取引の多くが対象となります。そのため、電子契約を導入する際は、この法律に対応できるシステムを整備することが重要です。

特定商取引法については具体的にこちらの記事で解説しています。

【関連記事はこちら】

特定商取引法改正のポイント

BtoC取引における電子契約システムの選定基準

BtoC取引で電子契約システムを導入する際は、いくつかの重要な選定基準があります。
ここでは、取引のリードタイム短縮、コスト最小化、法対応の容易さ、顧客満足度向上の4つの観点から、適切なシステムの選び方を解説します。
これらの基準を参考に、自社のニーズに合ったシステムを選定することが成功の鍵です。

取引のリードタイムを最短化できるサービスを選ぶ

BtoC取引では、契約締結までのスピードが重要な要素です。そのため、取引のリードタイムを最短化できるかどうかは電子契約サービスを選ぶうえで重要でしょう。電子契約サービスは、電子署名のやり方によって当事者型と立会人型の2種類に分けられます。

当事者型は、第三者の認証局が発行する電子証明書を利用して、契約の電子署名を行う契約方法です。電子契約の証拠力やセキュリティの安全性が高いのがメリットですが、その分契約までに手間や時間がかかってしまいます。

一方立会人型は、電子契約サービスの提供元が電子署名を付与する契約方法です。セキュリティ面では当事者型に劣るものの、利便性やコストの低さがメリットであり、スピーディに契約を締結できます。そのため、BtoC取引では、迅速な契約締結が期待できる立会人型が適していると言えるでしょう。

立会人型の中でも、操作性がシンプルで、リアルタイムの進捗管理機能の備わったサービスを選べば、契約業務の効率化も期待できます。また、PC環境を持たない消費者でも利用しやすいよう、SMS機能を備えたサービスを選ぶことも重要です。

コストが最小化できるサービスを選ぶ

BtoC取引では多数の契約を処理する必要があるため、コストを最小化できるサービスを選びましょう。電子契約サービスを選ぶ際は、導入コストだけでなく、運用コストも含めた総合的な視点が不可欠です。

コスト削減の観点では、以下のような機能を持つサービスがおすすめです。

  • 身分証管理機能:顧客の本人確認を効率化し、不正利用のリスクを低減できる
  • 重要書類の保管機能:契約書や関連書類を安全かつ効率的に管理できる
  • テンプレート機能:頻繁に使用する契約書のひな型を作成・管理できる

またAPI連携機能など、既存の社内システムとの連携が可能な電子契約サービスもあります。他システムとの連携ができれば、データ入力の自動化や業務プロセスの効率化による更なるコスト削減が期待できるでしょう。

法対応が容易なサービスを選ぶ

BtoC取引で扱う契約書は、法的要件を満たした上で適切に保存しなければいけません。特に、法人税法と電子帳簿保存法への対応が必要不可欠です。これらの法律では、契約書の真正性の確保や、一定期間の保存が義務付けられています。

そのため、電子契約に関する法令への対応が容易なサービスを選びましょう。特に以下の機能が備わっているかがポイントです。

  • タイムスタンプの付与:契約締結日時の証明
  • 改ざん防止機能:契約内容の不正な変更を防ぐ
  • 検索機能:必要な契約書を迅速に取り出せる

これらの機能を備えたサービスを利用すれば、法的要件を満たしつつ、効率的な契約管理が可能になります。また、定期的なアップデートにより、法改正にも柔軟に対応できるサービスを選ぶことも重要です。

顧客満足度向上が期待できるサービスを選ぶ

BtoC取引では、電子契約システムの使用で顧客に負荷がかかることは避けたいことでしょう。導入によって顧客満足度が上がるような、顧客が使いやすいシステムを選ぶことが大切です。

顧客満足度を向上させるポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 直感的な操作性
  • モバイル対応
  • 24時間365日の利用可能性
  • 多言語対応

これらの機能が備わっていれば、顧客の利便性が高まり、結果としてリピート率の上昇や口コミによる新規顧客の獲得も期待できるでしょう。また、電子取引は海外の顧客と行うことも多いので、多言語対応やシンプルな操作性といった機能が重要になります。


BtoC取引における電子契約システム導入の注意点

電子契約システムを導入する際は、抵抗感を感じる消費者がいる可能性を念頭に置くことが必要です。
特に高齢層の顧客などは、ネット上でのやり取りに慣れていない場合もあるため、電子契約についての丁寧な説明や対応が求められます。

そのため、導入の前に以下のような対策を検討してみると良いでしょう。

  • 一部の取引から段階的に電子契約を導入
  • 電子契約サービスの操作方法をマニュアル化
  • 電話やチャットでのサポート体制の整備
  • 従来の契約方法と電子契約との併用

また、セキュリティ面での不安を感じる顧客もいるため、システムの安全性についても丁寧に説明することが重要です。


BtoC取引にも電子契約システムを活用して業務効率化しよう!

本記事では、BtoC取引での電子契約の活用について解説してきました。電子契約はBtoB取引では急速に普及しているものの、BtoC取引においてはまだ発展途上の段階です。しかし、BtoC取引は多数の契約処理や迅速な顧客対応が求められる分、電子契約の活用によるメリットは大きいと言えます。

BtoCで電子契約システムを導入する際は、スピーディに契約が締結でき、業務の効率化が図れる機能が備わっているサービスを選びましょう。また、電子帳簿保存法や法人税法などに対応していることや、顧客が使いやすいシステムであることも欠かせません。

BtoC取引でも電子契約サービスを適切に活用し、契約業務の効率化や顧客満足度の向上を促進させましょう。


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監修者プロフィール

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上米良 大輔

弁護士法人山本特許法律事務所 パートナー弁護士

2009年弁護士登録。大阪市内の法律事務所を経て、2012年にオムロン株式会社に社内弁護士第1号として入社、以降約7年にわたり企業内弁護士として、国内外の案件を広く担当した。特にうち5年は健康医療機器事業を行うオムロンヘルスケア株式会社に出向し、薬事・ヘルスケア規制分野の業務も多数経験した。

2019年、海外の知的財産権対応を強みとする山本特許法律事務所入所、2021年、弁護士法人化と共にパートナー就任。知的財産権案件、薬事規制案件を中心に、国内外の案件を広く取り扱う。

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