育児短時間勤務とは? 対象者・期間・給与・残業などの諸条件を解説!
育児短時間勤務は、法律によってすべての企業に導入が義務化されている制度です。育児時短勤務と似た制度も多いため、違いを理解しなければなりません。
この記事では、企業の人事部に向けて、育児時短勤務の概要や似た制度を解説します。また、この記事の後半部分では企業が取り組むべき内容をまとめました。ぜひ最後までご覧ください。
育児短時間勤務とは?
育児時短勤務は子育てしながら働く制度で、育児休業から職場に戻る際、勤務時間を基本的に1日6時間まで減らせるものです。育児・介護休業法の改正によって、法的に保証されています。
育児短時間勤務の対象者や対象期間を見ていきましょう。
対象者
育児短時間勤務の対象者は、次の条件をすべて満たす従業員です。
- 3歳未満の子どもを育てていること
- 1日の通常の勤務時間が6時間を超えていること
- 日雇いではないこと
- 時短勤務が適用される期間中、育児休業を取得していないこと。
- 労使間の合意によって時短勤務制度の適用を除外されていないこと
また、育児短時間勤務が適用できないと判断された従業員には、フレックスタイム制度などの代わりの措置を取る必要があります。
次に当てはまる従業員は、育児短時間勤務が労使の合意により、時短勤務制度の対象から外されることがあります。
- 事業主に継続雇用されている期間が1年未満
- 1週間の通常の勤務日数が2日以下
- 業務内容や運用体制からみて、時短勤務制度を適用するのが難しいと判断される職務に従事する労働者
(出典:厚生労働省 育児休業、短時間勤務制度)
対象期間
育児短時間勤務の適用期間は、基本的に子どもが3歳になるまでです。しかし企業には、6歳になって最初に訪れる3月31日まで(小学校に入学)が対象期間とする努力が求められています。
努力義務は法的に強制されるものではなく、企業の自主的な取り組みが期待されています。
【書式のテンプレートをお探しなら】
育児短時間勤務と混同しやすい制度
育児短時間勤務と混同しやすい制度をまとめました。
育児休業制度
育児休業制度とは「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」に基づいて定められた休暇制度です。育児休業の期間は以下の通りです。
子どもが1歳になるまでが基本ですが、延長する場合は、最長2歳になるまで休業できます。対象従業員は特定の除外条件と日雇い契約を除く、1歳未満の子を育てている従業員が該当します。
【書式のテンプレートをお探しなら】
短時間正社員制度
短時間正社員制度はフルタイムの正社員と比較して、勤務時間や出勤日数が少なく設定されています。短時間正社員制度を利用できる従業員の勤務条件は、次の通りです。
- 雇用形態は正社員
- 社会保険適用
- フルタイム正社員より1週間の所定労働時間が短い
- 待遇はフルタイム正社員と同じ
育児短時間勤務における取り扱い
育児短時間勤務における給与や賞与、残業代、社会保険料の扱いを見ていきましょう。
育児短時間勤務の従業員に対して、不利益取扱いの禁止に違反した場合、企業側の罰則はありません。
しかし、行政機関等より是正勧告措置を受けたにもかかわらず、その際に必要な報告等を行わなかった場合は、20万円以下の過料に課されることがあります。
給与・賞与
育児短時間勤務制度を活用する社員に対して、勤務時間の短縮分だけ給与や賞与を下げることは、法律上問題ありません。社員の成績や貢献に基づいて柔軟に評価することが好ましいとされています。
ただし、次のような行為は法律で禁止されています。
- 勤務時間の短縮分以上の給与のカット
- 時短勤務の申請を理由として、解雇や雇用契約の解除など
社会保険料
社会保険料の計算は次の通りです。
- 介護保険などの健康保険料と厚生年金保険料:前年度の4月から6月までの給料を基準に計算
- 労災保険料と雇用保険料:毎年6月1日から40日以内に前年度に支払われた保険料との差額を精算します。
なお、労災保険料などは、前年度の保険料の計算の基準となった「1年間に支払われた賃金総額」と「今年の保険料の計算の基礎となる直近1年間に支払われた賃金総額」を比較して、50%~200%の範囲内であれば、前年の保険料の計算の基準となった賃金総額で計算されます。
育児時短勤務を利用して給与が減っても、当初の社会保険料が変わらないケースが多いでしょう。
また、育児休業を終えて職場復帰した人は、会社を通じて「育児休業等終了時報酬月額変更届」を日本年金機構に提出してください。復職後4ヵ月間は、時短勤務の給与に基づいた社会保険料に変更されます。
(出典:厚生労働省 育児休業等期間中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の免除)
残業
育児短時間勤務の社員に対する残業の要請は違法ではありませんが、社員が残業を拒む場合、強制することは許されていません。残業の給与は、通常の社員と同じように支払われます。
例えば、6時間の勤務が設定されている従業員が1時間残業した場合、特別な規定がない限り、法定労働時間内での残業であれば割増賃金は適用されません。
【書式のテンプレートをお探しなら】
育児短時間勤務に対して企業がすべきこと
育児短時間勤務に対して企業が取り組むべきことをまとめました。ぜひ参考にしてください。
就業規則への記載
まず、就業規則の変更に関する届出の際、従業員から聴取した意見を労働基準監督署長へ提出します。記載内容は労働組合に対して確認し、意見を聞くステップが必要です。
なお、労働組合が存在しない場合は、労働者の半数以上を代表する者に確認してください。
調整された内容及び意見書は、企業の所轄である労働基準監督署長に提出する必要があります。
申請の流れの明確化
短時間勤務の申し込みプロセスがスムーズになるよう、育児短時間勤務申出書を作成し、従業員に提出してもらう体制を整えましょう。
申出書の提出締切は企業ごとに設定できますが、一般的には制度が適用される数週間から1ヶ月前が目安です。
従業員への周知
整備された就業規則や手続きを、従業員に周知徹底することが重要です。職場全員が育児時短勤務の制度目的と内容を理解することで、ハラスメントの予防も可能になります。
なお、メールや社内掲示板など、従業員へ周知する際の方法は問われていません。
また、短時間勤務制度は、育児などの理由で退職するケースを減らす効果もあるため、企業と従業員双方にとってメリットがあります。
育児短時間勤務についてのまとめ
育児短時間勤務制度は、1日の所定労働時間を原則として6時間にする措置を含みます。
実際の現場を見てみると、制度を導入するだけでは不十分といえます。育児短時間勤務を利用しやすいような就業規則の整備や、社内外への周知がとても重要になるでしょう。
【書式のテンプレートをお探しなら】