知っておきたい景品表示法の基本
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チラシや店頭POPなどでよく見かける表現ですが、これが事実と異なっていたり、商品・サービスの価格に釣り合わない過大な景品類の提供であった場合、一般消費者が誤った選択で商品・サービスを手にしてしまうリスクにつながります。
今回は、消費者の利益を保護するための法律「景品表示法」の基本について解説していきます。
1. 景品表示法の概要
「景品表示法」は正式には「不当景品類及び不当表示防止法」と言い、略して「景表法」と呼ばれることもあります。
1965年に制定され、2007年から消費者庁の所管となっています。
「景品表示法」では、一般消費者の利益の保護のため、不当な顧客誘引の禁止として『不当な表示の禁止』と『過大な景品類の提供の禁止』を行っています。
2.不当な表示の禁止について
商品や価格についての情報は、一般消費者が商品・サービスを選択する際の判断材料になります。
景品表示法では、実際よりも著しく良く見せる見せかけの品質、規格などの表示による消費者の誤認を防ぐために、商品・サービスに関する不当な表示を禁止しています。
品質、規格、その他の内容とは、次のようなものです。
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①優良誤認表示
品質・規格等に関する不当表示を禁止しています。
(1)実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認される表示は不当表示になります。
例)セーターのタグにはウール100%と表示していたが、実際はアクリル50%ウール50%の混紡素材であった。
(2)内容について、事実に相違して競争事業者に係るものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示は不当表示になります。
例)「このサービスは当社だけ」と表示しているが、実際には他社も同様のサービスを提供していた。
②有利誤認表示
価格や取引条件に関する不当表示を禁止しています。
取引条件とは、次のようなものです。
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(1)取引条件について、実際のものよりも取引先の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤解される表示は不当表示となります。
例)その価格で販売した実績がない商品を、「当店平常価格5万円の品、今だけ半額!2万5千円」の2重価格で表示した
(2)取引条件について、競合事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示は不当表示となります。
例)羽毛布団に他社商品の1.5倍の量の羽毛が使われていますと表示されていたが、実際は他社も同量の羽毛が使われていた。
③その他誤認される恐れのある表示
特定の商品・サービスについて内閣総理大臣が指定(告示)した不当表示
(1)無果汁の清涼飲料水等についての表示
例)無果汁の清涼飲料水のパッケージに果物名を付けたり、果物の写真を表示している
(2)商品の原産国に関する不当な表示
例)国内生産のセーターなのにタグにイタリア製と表示されていた
(3)消費者信用の融資費用に関する不当な表示
例)実質年率が明瞭に記載されておらず、アドオン方式による利息、手数料その他の融資費用の率の表示
(4)不動産のおとり広告に関する表示
例)チラシに掲載されている住宅が既に売却済みの案件であった
(5)おとり広告に関する表示
例)100個限りとチラシに表示していたのに、実際には20個しか準備されていなかった
(6)優良老人ホームに関する不当な表示
例)入居後の居室の住み替えに関する条件等が明瞭に記載されていない
3.過大な景品類の提供の禁止
商品やサービスの販売促進のために景品類を付けることは多いですが、景品によって商品やサービスを選ぶのは本末転倒となり、質の良くない商品や無駄に価格の高いものを買わされて消費者が不利益を受けるリスクがあります。
景品表示法では、このような不利益を一般消費者が受けることがないよう、景品類の最高額、総額などを制限しています。
①一般懸賞
商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣などによって景品類を提供することです。
例)
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②共同懸賞
商店街や一定の地域内の同業者が共同して行う懸賞です。
例)
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③総付景品
商品の購入者や来場者に対し、もれなく提供する景品です。
例)
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次のようなものには、景品規制は運用されません。
- 商品・サービスの販売に必要な物品・サービス
- 見本、宣伝用の物品・サービス
- 自店又は自店と他店で共通して使用できる割引券
- 開店披露、創業記念等で提供される物品・サービス
④オープン懸賞
商品・サービスの購入や来店を条件とせず、新聞、テレビ、雑誌、WEBサイト等で企画内容を広く告知し誰でも申し込むことができ、抽選で金品等が提供される規格を「オープン懸賞」と言います。
オープン懸賞には景品規制は適用されません。
オープン懸賞で提供できる金品等の最高額は、従来1,000万円とされていましたが、平成18年より提供できる金品等に具体的な上限額の定めが無くなりました。
例)
(注意)懸賞をインターネット上で行っても、当選者に店舗まで来てもらって景品を引渡す場合は、オープン懸賞に該当しません。 |
4. 違反行為に対しては措置命令と課徴金納付命令が行われます
景品表示法に違反する行為が行われている疑いがある場合、消費者庁は関連資料の収集、事業者への事情徴収などの調査を実施します。
調査の結果、違反行為が認められると、事業者に弁明の機会を付与したうえで、違反行為の差止めなど必要に応じた「措置命令」と「課徴金納付命令」を行います。
①措置命令の内容
- 違反したことを一般消費者に周知徹底すること
- 再発防止策を講ずること
- その違反行為を将来繰り返さないこと
②課徴金納付命令
2016年より、消費者庁は課徴金行為(優良誤認表示又は有利誤認表示)をした事業者に対して、課徴金を国庫に納付することを命じることになりました。
課徴金額は、課徴金対象行為に係る商品・サービスの「売上額」に3%を乗じた金額です。
③最近の実例
2023年1月、キリンビバレッジ(東京都)に、販売するメロン味のミックスジュースが実際と異なる表示をしていた問題で、景品表示法に違反したとして、消費者庁から1,915万円の課徴金納付命令が出されました。
対象となったのは、2020年6月~22年4月に販売された「トロピカーナ100%まるごと果実感メロンテイスト」です。
このミックスジュースに使われているメロン果汁はわずか2%で、実際には原材料の98%がブドウやリンゴ、バナナの果汁であったのに、あたかもメロン果汁100%と思わせるパッケージが、優良誤認表示であると判断されました。
再発防止などを求める措置命令が出され、同社はパッケージを変更、ホームぺージで一般消費者に景品表示法に違反したことについて謝罪し周知徹底しました。
5. 景品表示法を遵守して、消費者に安心して選ばれる商品・サービスを提供しよう
一般消費者は、より良い商品をより安い価格で手に入れたいと願っています。それに応えるため、事業者は自社の扱う商品・サービスの質を向上させ、より安く提供できる努力を続けます。
「天知る、地知る、人が知る」と言われるように、事業者が自社の商品・サービスを売りたいがためだけに、事実と異なる大げさな表現や過大な景品類の提供をしても、その虚偽は必ず明るみに出ます。虚偽は、結局、自社の信頼を失うことになり、企業価値を下げることにつながります。案外、業界で慣例となっているようなことであっても、景品表示法の規定に照らし合わせてみると違反となっている表示や景品類があるかもしれません。
景品表示法をきちんと遵守して、一般消費者に安心して選ばれる商品・サービスを提供していきましょう!
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