このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、対応ブラウザでご覧下さい。

コンプライアンス研修の目的とネタやテーマの選び方を解説

監修者:ひばり社労士事務所  代表 / 社会保険労務士  村松 竜眞

コンプライアンス研修の目的とネタやテーマの選び方を解説

「粉飾決算」や「過労死」といった法令違反が起きると、企業は社会からの信用を失い、大きなダメージを受けます。

そこで重要視されているのがコンプライアンス研修です。研修の効果を最大限に得るには、研修の目的を理解し、適切なテーマを選ぶ必要があります。

本記事では、コンプライアンス研修の目的やネタ・テーマ選びについて解説します。


そもそもコンプライアンスの意味とは

コンプライアンスとは「法令遵守」を意味する言葉で、企業が法令を守ることを指します。当然のことながら、企業がビジネスを行ううえでは税金の支払いに代表される多くの法令を遵守することが必要です。

しかし、現在の日本社会で企業側に求められているコンプライアンスは、単に法令を守るという意味だけで使われているわけではありません。モラルや倫理観といった社会的なルールに従い、公正かつ公平に業務に取り組むことが必要とされています。


コンプライアンス研修の目的とは

なぜコンプライアンス研修が必要なのか、その理由は大きく二点あります。

一点目は、「コンプライアンス違反に当たる内容を理解するため」です。

社員、特に新入社員はコンプライアンスという言葉は知っていても、具体的にどのような法律があり、何が違反に当たるのかを理解している人の方が少ないでしょう。また、ベテランの社員であっても、昔は当然に行っていたことが実はコンプライアンス違反に当たる場合があります。

そのため、研修を行うことでコンプライアンスに関する正しい知識を身につけ、会社全体の意識を向上させる必要があるのです。

二点目は、「コンプライアンス意識を高めるため」です。

業務を日々こなすうちにコンプライアンスの意識が薄れ、いつの間にか違反してしまうといったケースも存在します。法改正などによって必要とされる対応にも変化が生じるため、定期的な研修を行い、知識をアップデートすることでコンプライアンス意識の向上を促す必要があります。


研修テーマ・ネタの選び方

コンプライアンス研修を実施する際は、自社のコンプライアンス方針や行動規範に則った研修テーマを決める必要があります。ここでは、研修テーマ・ネタの探し方・選び方に加えて、具体的な研修テーマを紹介します。

倫理規範や社内ルールから選ぶ

倫理規範や社内ルールから研修テーマ・ネタを選ぶ方法です。

倫理規範や社内ルールは社員がコンプライアンスに対する理解を深めるためのもっとも身近な基準となります。特に昨今はダイバーシティ、すなわち多様性への理解が必須の社会となっている中、人権に関するテーマは重要です。

また情報漏洩のような企業不祥事や、ニュースなどで取り上げられる機会が多い社員のSNS炎上といったネタは社員が身近に感じやすく、コンプライアンスを理解するうえで有用でしょう。

法律知識を養うテーマを選ぶ

法律知識も重要なコンプライアンス研修テーマのひとつです。

企業の現場において、個別の問題や法改正などについてはその都度対応しているケースは多いですが、法律を体系的に学ぶ機会は少ないでしょう。コンプライアンス体制の構築には法律への理解が不可欠なので、研修のテーマ・ネタとしては適していまずはます。

どの法律を扱うのかについては、各業務でリスクの生じやすいテーマを選ぶ方法があります。たとえば開発業務に携わる社員へ向けた研修では、業務との関連度の高い知的財産に関する法律を扱うというように工夫するとよいでしょう。

社員が関心を持ちやすいテーマを選ぶ

研修の主役は参加者である社員なので、社員が興味・関心を持ちやすいテーマを選ぶことが大切です。

研修が形だけの開催に終始するのではなく、効果を期待するのであれば、この点をしっかりと踏まえたテーマ選びを心がけてください。

たとえば、社員が日常業務の中で直面することが多い分野やメディア・報道で多く取り上げられる分野などが関心を持ちやすいテーマです。

省庁や関係団体からテーマを選ぶ

各省庁や関係団体のHPではコンプライアンス違反の事例が紹介されているため、その中から自社と関係の深い分野を取り上げるのも有益です。

たとえば厚生労働省では「ハラスメント」の定義や種類の解説から裁判例、企業の対策まで幅広く紹介しているため、コンプライアンス研修のテーマとして取り入れやすいでしょう。ほかにも経済産業省では外為法違反や不正競争防止法違反、消費者庁では景品表示法違反など各省庁が扱う法律の違反事例が掲載されています。

こうした事例を交えて研修を進めると社員がイメージしやすいため、研修の高い効果が見込めるでしょう。

トラブルを解決させるテーマを選ぶ

コンプライアンス違反によって企業が被る不利益は非常に大きなものです。

些細な出来事がきっかけで大きなトラブルに発展する場合もあるので、社員にはトラブルを起こさないための意識やトラブルが起きたときの正しい行動を身につけさせることが大切です。

そのため研修では、トラブルの防止策やトラブルが起きたときの対処法をテーマにするのもよいでしょう。たとえば同業他社で実際にあったトラブルや裁判例などを紹介しながら、同じようなトラブルが起きたときにどのような行動を取るべきかを解説したり、社員自身に考えさせたりする研修などがあります。


【対象者別】研修プランの立て方

次は、コンプライアンス研修のプランについて解説します。

研修の大まかな流れは「法令についての講義→ケーススタディ→到達度の確認」です。

講義の具体的な内容やケーススタディの題材は、研修対象別に分けることで研修の質を高められます。

ここでは、「新入社員」「中堅社員」「外国人労働者」に分けて研修プランを紹介します。

【新入社員】コンプライアンスの基礎知識をメインにする

新入社員へ向けたコンプライアンス研修では、コンプライアンスの定義や身近なコンプライアンス違反事例、社内ルールなどの基本的な内容を伝え、コンプライアンスに対する意識を高めます。

また、新入社員は自身が当事者となったときに正しい判断をすることが難しい場合があるため、同僚や上司の不正を発見したときの対処法も説明することが大切です。

まずは上司に報告・相談をすることの重要性を伝えるようにしましょう。

【中堅社員】具体的な対処法や部下への指導法をメインにする

中堅社員となれば管理職に就くことが想定されますので、管理職に必要なコンプライアンスの知識を得られるようなプランを用意します。

部下を持つ立場として、部下の手本となる行動を示し、職場でのトラブル防止のために円滑なコミュニケーションの重要性などを伝えます。

管理職はコンプライアンスを社内へ浸透させる中心人物なので、適切なリスクマネジメントができるようコンプライアンス教育を行ってください。

【外国人労働者】働くうえで必要最低限な情報をメインにする

製造業や卸売業・小売業などを中心に外国人が所属する企業は多数あります。

出身国によってコンプライアンスに対する意識や文化、常識が大きく異なるため、コンプライアンス教育を行う際は細心の注意を払うことが必要です。

外国人労働者向けの研修では日本の生活常識や日本の法令など、働くうえで最低限知っておきたい情報をメインにするとよいでしょう。

たとえばゴミの分別や公共交通機関を利用するときのマナー、交通トラブルなどの身近なテーマが挙げられます。

また、研修を実施する際のマニュアルにはイラストや写真を多く使うのがおすすめです。社員ごとに日本語への理解度に差があっても、視覚・感覚的に理解できるため研修結果に好影響を与えられます。


コンプライアンス研修の成果を上げるには

ここまではコンプライアンス研修の目的・テーマ・プランの立て方について紹介してきました。

しかし、実際に研修を行い成果を上げるためには、これから紹介する四つのポイントについても意識する必要があります。

意識や注目が高まったときに実施する

コンプライアンス研修には行うべき適切なタイミングが存在します。

それは、社員のコンプライアンスへの意識や注目が高まるタイミングです。

たとえば、実際に社内でコンプライアンス違反が発生したときや同業他社のコンプライアンス違反が大々的にニュースで取り上げられたときなどが該当します。ほかにも、自社に関係する法律や制度について大幅な改正・変更が行われたときなども、社員の関心が高まりやすいタイミングなので効果があるでしょう。

単発で終わらせない

研修を定期的に行うことも大切です。忘却曲線という言葉がある通り、人間は忘れる生き物なので、単発的に研修を受けただけで大きな効果を得ることはできません。

仮に効果が出たとしても、それは一過性のものにすぎません。そのため、多くの企業では研修を定期的に実施することでコンプライアンスへの意識を浸透させ、違反防止に努めています。

なお、定期的な研修開催においては、コンプライアンス違反が発生するリスクに応じて優先順位をつけることが大切です。

研修には様々な部署や立場の社員が社内にはいるかと思いますが、すべての社員が受講できる体制を整えましょう。

学習結果データと連動させて実施する

学習結果データと連動させて実施することも成果を出すためのポイントです。研修の成果を確認するためにテストの実施は必要ですが、単なる知識問題では意味がありません。

たとえば具体的なトラブル事例を示して、どんな行動をするのか問う問題をネットテストで行うことで、本当にコンプライアンス研修が必要な部署や対象者を明確にできます。

その結果、最小限のリソースで潜在的なリスクを浮き彫りにし、コンプライアンス違反を防止できるでしょう。

組織の再編・変更とともに実施する

最後のポイントは組織の再編・変更とともに実施することです。

研修を行う好機は前に触れましたが、それ以外にも異動や採用にともなう組織の再編や変更の際は研修実施のチャンスです。

研修を通してコンプライアンス意識の統一を図ることができ、再編・変更後の組織に適したコンプライアンス体制を整えられるため、高い研修効果が得られます。


まとめ

コンプライアンス違反は個人の信用問題にとどまらず、企業の信用失墜や倒産など重大なリスクをはらんでいます。こうしたリスクを回避するためにも、コンプライアンス研修の実施は極めて重要です。

しかし、形骸的な研修では何の意味もありません。研修の目的を確認し、受講者に合ったテーマを選別することで、自社に利益をもたらす適切なコンプライアンス研修を行えるでしょう。

【書式のテンプレートをお探しなら】

この記事に関連する最新記事

おすすめ書式テンプレート

書式テンプレートをもっと見る

監修者プロフィール

author_item{name}

村松 竜眞

ひばり社労士事務所 代表 / 社会保険労務士

ひばり社労士事務所 代表。 立命館大学経済学部卒業。労働基準法を無視した劣悪な環境での就労経験から、社会保険労務士を目指す。

社労士事務所や労働局、ハローワークで実務を経験した後開業。

一般企業での就業経験と社労士としての実務経験から、”制度と人”または”雇用者と被雇用者”の感情のバランスを重視した社労士として活動している。

この監修者の他の記事(全て見る

bizoceanジャーナルトップページ