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不正競争防止法とは? 禁止行為や罰則について解説

不正競争防止法とは? 禁止行為や罰則について解説

不正競争防止法に違反すると、民事的措置や刑事的措置がなされます。また、不正競争防止法を正しく理解すれば、同法違反によって責任を負う事態を回避でき、トラブルに巻き込まれてもスムーズに対応できるでしょう。

この記事では経営者や法務担当者に向けて、不正競争防止法の禁止行為や罰則などを詳しく解説しました。ぜひ最後までご覧ください。


この記事の監修者
弁護士   

不正競争防止法とは

不正競争防止法とは、企業や個人が公正で健全に競争できるよう促進する法律です。産業の発展に貢献させるために存在します。誤解を生む広告や企業秘密の盗用、他社の誹謗行為などが禁止されています。

不正競争防止法の目的

不正競争防止法の目的は、以下の通りです。

この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、 不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な 発展に寄与することを目的とする。

出典:経済産業省 知的財産政策室

不正競争に対する措置を取ることで、企業間の競争を公正に保ち、消費者や産業の利益を守ります。また、国際的な競争環境においても適切に対応できます。

不正競争防止法と独占禁止法の違い

不正競争防止法と独占禁止法の違いを表にまとめました。

法律名

規制対象

目的

独占禁止法

不当な独占禁止行為、不当な取引制限行為

市場の公正な競争を保護するため

不正競争防止法

他者の権利を侵害せずに不正行為

企業や個人が公正かつ健全な競争を行うことを促進するため

また、独占禁止法は行政機関が法執行の担い手ですが、不正競争防止法は民事的規律と刑事罰が課される仕組みです。

参考:公正取引協会 第21回「不正競争防止法と独占禁止法」


不正競争防止法の禁止行為【不正競争】

不正競争防止法の禁止行為10個をまとめました。

  1. 周知な商品等表示の混同惹起
  2. 著名な商品等表示の冒用
  3. 商品形態を模倣した商品の提供
  4. 営業秘密の侵害
  5. 限定提供データの不正取得等
  6. 技術的制限手段無効化装置の提供
  7. ドメイン名の不正取得等
  8. 商品・サービスの原産地・品質等の誤認惹起表示
  9. 信用毀損行為
  10. 代理人等の商標冒用

経済産業省 知的財産政策室に基づいて、それぞれ解説していきます。

周知な商品等表示の混同惹起

周知な商品等表示の混同惹起行為とは、他人の商品や営業の表示を使用し、他人の商品や営業と混同を招くことです。

不正競争防止法第2条の「不正競争」のうち、不正競争第2条1項1号では以下のように掲げられてます。

他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

出典:不正競争防止法 | e-Gov法令検索

<行為に違反した場合の措置>

民事措置:当該行為の差止請求及び損害賠償請求

刑事罰:10年以下の懲役もしくは2,000万円以下の罰金

<周知な商品等表示の混同惹起にあたる事例>

令和元年、イッセイミヤケの独自ブランド「BAO BAO」のバッグのデザインに酷似したバッグを販売していたラルジュを相手取り、不正競争行為の差し止めを求めて提訴しました。この裁判の判決として2019年6月東京地方裁判所は、販売差し止めを認め、イッセイ社へ7,106万円の損害賠償を命じました。

参考:不正競争防止法の主要な事案 ※平成30年~令和2年

著名な商品等表示の冒用

著名な商品等表示の冒用行為とは、広く知られている商品や表示を、自分の商品や営業上で使用することを指します。

不競法2条1項2号では、以下のように定められています。

自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

出典:不正競争防止法 | e-Gov法令検索

<行為に違反した場合の措置>

  • 民事措置:当該行為の差止請求及び損害賠償請求
  • 刑事罰:10年以下の懲役もしくは2,000万円以下の罰金

<著名な商品等表示の冒用にあたる事例>

令和2年1月29日、任天堂株式会社の「MARIO KART」「マリオ」等の表示と類似する標章を営業上使用していたMARIモビリティ開発ほかに対して、使用差止め等と損害賠償(約5,000万円)が命じられました。

参考:不正競争防止法の主要な事案 ※平成30年~令和2年

商品形態を模倣した商品の提供

商品形態を模倣した商品の提供行為は、不競法2条1項3号で以下のように定められています。

他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

出典:不正競争防止法 | e-Gov法令検索

<行為に違反した場合の措置>

  • 民事措置:当該行為の差止請求及び損害賠償請求
  • 刑事罰:10年以下の懲役もしくは2,000万円以下の罰金

<商品形態を模倣した商品の提供にあたる事例>

平成10年2月25日の東京地裁による判決では、株式会社バンダイのたまごっちを模倣した商品に対して、販売差止と約2,000万円の損害賠償が認められました。

なお、商品を真似する行為は意匠法にも抵触しますが、意匠法の規制とは保護対象と保護期間が異なります。意匠法で保護するには特許庁による審査と登録をする必要があります。

また、不正競争防止法の商品形態の保護期間は、国内で最初に販売された日から3年以内ですが、意匠法では、意匠出願日から最長25年です。

営業秘密の侵害

営業秘密の侵害とは、窃取などの不正手段で取得するなどした営業秘密を、自ら使用したり、第三者に開示する行為です。(不競法2条1項4号乃至10号)

<行為に違反した場合の措置>

民事措置:当該行為の差止請求及び損害賠償請求

刑事罰:10年以下の懲役もしくは2,000万円以下の罰金

限定提供データの不正取得等

限定提供データの不正取得等とは、窃取などで不正に取得するなどした限定提供データを、自ら使用したり、第三者に開示する行為です。(不競法2条1項11号乃至16号)

<行為に違反した場合の措置>

民事措置:当該行為の差止請求及び損害賠償請求

技術的制限手段無効化装置の提供

技術的制限手段の効果を妨げる装置等の提供とは、利用制限されているコンテンツの視聴や記録などを利用できるようにする装置やプログラム、指令符号などを提供する行為です。(不競法2条1項17号、18号)

<行為に違反した場合の措置>

民事措置:当該行為の差止請求及び損害賠償請求

刑事罰:10年以下の懲役もしくは2,000万円以下の罰金

<技術的制限手段無効化装置の提供にあたる事例>

平成21年2月27日の東京地裁の判決によると、任天堂のゲーム機である「ニンテンドーDS」のソフトから複製したプログラムを起動させた「マジコン」の輸入・販売について販売差止めが認められました。

ドメイン名の不正取得等

ドメイン名の不正取得等の行為とは、不正利益や他人に損害を加える目的で、 他人の商品と役務の表示と、同一もしくは類似したドメイン名を使用することです。使用する権利の取得や保有もこの行為に該当します。(不競法2条1項19号)。

<行為に違反した場合の措置>

民事措置:当該行為の差止請求及び損害賠償請求

商品・サービスの原産地・品質等の誤認惹起表示

商品・サービスの原産地、品質等の誤認惹起表示は、商品や役務などに原産地や品質等に関して誤認を招く表示をする行為です。その表示をした商品を譲渡する際も同様で違反行為です。

<行為に違反した場合の措置>

民事措置:当該行為の差止請求及び損害賠償請求

刑事罰:10年以下の懲役もしくは2,000万円以下の罰金

<商品・サービスの原産地・品質等の誤認惹起表示にあたる事例>

本みりんではない調味料に「本みりん」「タイプ」「調味料」と表示して、「本みりん」が強調された表示がされていたことについて、商品の品質を誤認させるものと認められました。

信用毀損行為

信用棄損行為とは、 競争関係に該当する人の営業の信用を害するような、虚偽の事実を告知したり、流布することです。(不競法2条1項21号)

<行為に違反した場合の措置>

民事措置:当該行為の差止請求及び損害賠償請求

※ただし、刑法233条の信用毀損罪及び業務妨害罪として処罰される可能性があります。

<信用毀損行為にあたる事例>

平成27年3月26日の大阪地判による判決では、家具の考案の実用新案権を持つ事業者が、競争関係にある他の事業者の取引先に対し、事業者の商品が、実用新案権に抵触しているなどの通知をし、信用棄損行為に該当すると判断されました。

代理人等の商標冒用

代理人等の商標冒用とは、 パリ条約の同盟国などにおいて商標関連の権利を持つ者の代理人が、正当な理由なくその商標を使用する行為のことです。(不競法2条1項22号)

<行為に違反した場合の措置>

民事措置:当該行為の差止請求及び損害賠償請求


不正競争防止法の禁止行為【条約上の禁止行為】

不正競争防止法の条約上の禁止行為をまとめました。

禁止行為の塁型

条約上の
禁止行為

外国国旗・ 紋章等の不正使用

国際機関の標章の不正使用

外国公務員等への
贈賄第

外国国旗・紋章等の不正使用

外国の国旗・紋章や外国政府等の印章・記号など、経済産業省令で定めるものの商標利用が禁止されています。さらに、外国紋章の原産地を誤認させるような方法での使用も禁止されています。

不正競争防止法16条

何人も、外国の国旗若しくは国の紋章その他の記章であって経済産業省令で定めるもの(以下「外国国旗等」という。)と同一若しくは類似のもの(以下「外国国旗等類似記章」という。)を商標として使用し、又は外国国旗等類似記章を商標として使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは外国国旗等類似記章を商標として使用して役務を提供してはならない。

出典:不正競争防止法 | e-Gov法令検索

外国国旗・紋章等の不正使用を行った場合、刑事的措置である懲役または罰金の刑事罰の対象となり、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が科されます。

国際機関の標章の不正使用

国際機関の標章で経済産業省令で定めるものを、該当の国際機関と関係があるように誤認を招くような方法で、 商標使用することが禁止されています。

不正競争防止法17条

何人も、その国際機関(政府間の国際機関及びこれに準ずるものとして経済産業省令で定める国際機関をいう。以下この条において同じ。)と関係があると誤認させるような方法で、国際機関を表示する標章であって経済産業省令で定めるものと同一若しくは類似のもの(以下「国際機関類似標章」という。)を商標として使用し、又は国際機関類似標章を商標として使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは国際機関類似標章を商標として使用して役務を提供してはならない。

出典:不正競争防止法 | e-Gov法令検索

外国公務員等への贈賄

外国公務員等に対して、国際的な商取引などで営業上の不正利益を得るために、贈賄などが禁止されています。

不正競争防止法18条

何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。

出典:不正競争防止法 | e-Gov法令検索

また、外国公務員等に対して、国際的な商取引などで営業上の不正利益を得るために、贈賄など行った場合、経時的措置で5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が科せられます。


不正競争防止法違反に対する罰則・措置

不正競争防止法違反に対する罰則と措置を見ていきましょう。

民事上の措置

民事上の措置の項目は次の3つが該当します。

  • 差止請求
  • 損害賠償請求
  • 信用回復措置請求

差止請求とは、不正競争行為の停止や予防を請求したり、不正競争行為で使われた物の廃棄などの内容が含まれています。損害賠償請求するには事実を立証しなければなりませんが、難しいケースが多いため、不競法が推定規定などを設けております。これにより、不正競争行為者に対する請求が簡単にできます。

また、営業上の利益が侵害された場合に使える不当利得返還請求や、謝罪広告などの信用回復措置を命ずる裁判所の判決を求められる、信用回復措置請求なども行えます。

出典:特許庁 不正競争防止法違反被害への救済

刑事上の措置

不正競争防止法違反に対して、刑事責任の追及もできます。不正競争防止法の違反者に対して、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処せることができます。懲役と罰金の両方を科すことも可能です。

また、法人が違反行為を行った場合、実行者と法人の両方に罰金刑が科せられる両罰規定が行われます。法人に対する罰金は、違反した禁止行為に応じて、3億円以下の罰金から10億円以下の罰金まで規定されています。

出典:特許庁 不正競争防止法違反被害への救済


不正競争防止法についてのまとめ

不正競争防止法の具体的な情報や具体事例、罰則の内容などをまとめました。不正競争防止法を理解すると、正しくスムーズに対応できるはずです。

経営者や企業の法務担当の方は本記事で不正競争防止法について学び、自社で不正競争が起きないように注意していきましょう。


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監修者プロフィール

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篠原 一廣

弁護士

1999年東京大学法学部卒業、2000年弁護士登録。

2008年11月に篠原総合法律事務所を開業し、以後、顧問先企業を中心に契約書の作成・リーガルチェックなどの企業法務をメインとする業務を行う。

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