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建設業許可を受けるために必要な条件(5要件)のポイント(2)

建設業許可を受けるために必要な条件(5要件)のポイント(2)

この記事の著者
  弁護士・法務博士(専門職) 

〔第2要件:営業所ごとに専任の技術者がいること〕

先日は、建設業許可を受けるために必要な5つの条件(要件)のうち、1つ目の経営業務の管理責任者の要件(第1要件)の要点について解説していただきました。本日は、その続きということで、他の要件のポイントなどについて教えてください。

わかりました。大前提の確認ですが、建設業許可を受けるために必要な5要件のうち、建設業法(以下、「法」と略します)7条に4つの積極的な要件が、法8条に1つの消極的な要件が規定されていました。条文は次のとおりです。

〇建設業法(昭和24法律第100号)(抜粋)
(許可の基準)

第7条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。

  • 一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。
  • 二 その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。
  • イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(昭和22年法律第26号)による高等学校(旧中等学校令(昭和18年勅令第36号)による実業学校を含む。…)若しくは中等教育学校を卒業した後5年以上又は同法による大学(旧大学令(大正7年勅令第388号)による大学を含む。同号ロにおいて同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治36年勅令第61号)による専門学校を含む。同号ロにおいて同じ。)を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後3年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
  • ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し10年以上実務の経験を有する者
  • ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者
  • 三 法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
  • 四 請負契約(第3条第1項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。

第8条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次の各号のいずれか(許可の更新を受けようとする者にあっては、第一号又は第七号から第十四号までのいずれか)に該当するとき、又は許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、許可をしてはならない。

一 ~ 十四 (略)

第1要件(経営業務の管理責任者がいること、法7条1号)については、すでに解説させていただきましたので、その次の第2要件から説明しましょう。第2要件は、7条2号に規定される専任技術者を配置する必要があるというものです。技術者であって、かつ、専任の者でなければなりません。

技術者というのは、具体的には、どういった人をいうのでしょうか。

次の三者のどれかに該当する人をいいます。すなわち、

①許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し高等学校か中等教育学校を卒業した後5年以上又は同法による大学か高等専門学校を卒業した後3年以上実務の経験を有する者で、在学中に国土交通省令で定める学科を修めた人(法7条2号イ)か、

②許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し10年以上実務の経験を有する者(同号ロ)、あるいは

③国土交通大臣が①又は②の者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した人(同号ハ)のいずれかに当たる人が技術者です。そして③のうち、土木施工管理技士や建築士などの資格者がいる場合には、①や②のような3~10年間の実務経験が要りません。

なるほど。その資格者についてですが、建設業の種類などによって、必要となる資格が異なるということですよね。

そのとおりです。許可を受けようとする建設業が一般建設業(法3条6項)なのか特定建設業(同項)なのかという点1や、業種によって必要とされる資格の内容が違ってきますね。具体的には、国土交通省のウェブサイトで「営業所専任技術者となり得る国家資格等一覧」というタイトルの一覧表が公表されています2

細かい表ですね…。どう見ればよいでしょうか。

右側の方の「建設業の種類」の欄には「◎」と「〇」があります。「◎」は、特定建設業の営業所専任技術者(又は監理技術者)となり得る国家資格等のことを意味していて、「〇」は一般建設業の営業所専任技術者(又は主任技術者)となり得る国家資格等のことを意味しています。そこで、許可を受けようとする建設業が特定建設業の場合には許可を受けようとする「建設業の種類」のところに「◎」が必要となります。

なるほど。例えば、資格区分の欄が「1級建設士」の場合には、建設業の種類のうち6つに「◎」がありますので、この資格を持つ者がいれば、◎のついている6業種については特定建設業の許可を受けることができるということですね。

はい。そしてその場合には一般建設業の許可も受けられます。一般建設業の場合には「〇」でOKですが、特定建設業の営業専任技術者(又は監理技術者)となり得る国家資格等を有する者は、一般建設業の営業所専任技術者(又は主任技術者)となり得えますので、「◎」であっても問題ありません。ですから、特定建設業の許可も、一般建設業の許可も受けることができるということになります3

よくわかりました。少し話が戻るのですが、先ほど土木施工管理技士や建築士などの資格者がいる場合には実務経験が不要ということでしたが、資格者によっては実務経験が必要ということもあるのでしょうか。

おっしゃるとおりで、この一覧表の「資格区分」の右端に【~年】という記載がある場合には実務経験が必要になります。そこに記載されている年数は、当該欄に記載されている資格試験の合格後に必要とされている実務経験年数を意味するものです。ですから、第1種電気工事士の場合には実務経験が要りませんが、第2種電気工事士の場合には、【3年】という記載がありますので、電気工事士試験合格後に3年の実務経験年数が必要となります。

一覧表の見方が大体わかりました。とはいえ、資格者がいなくても実務経験者がいれば建設業の許可を取れることもあるわけですよね。

先ほどもお話ししたとおり、10年間の実務経験者がいれば許可を受けられますし(法7条2号ロ)、特定の学科(詳細は国交省のウェブサイト4で公表されています)を卒業されている場合であれば、実務経験の期間が3年か5年に短縮されます(同号イ)。例えば、一般建設業の建設工事業であれば、高等学校の建設学科を卒業した後、5年以上建築の業務に従事している技術者が社員としていることが必要とされます5

その「実務経験」の中身のことですが、例えば、建設工事の雑務だけやっている期間も実務経験年数としてカウントされるのでしょうか。

いえ、その場合にはカウントされないと考えられます。実務経験すなわち「実務の経験」(法7条2号イ・ロ)とは、国交省が公表しているガイドラインによると、建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいいます。そして、ただ単に建設工事の雑務のみの経験年数は含まれないとされていますが、建設工事の発注に当たって設計技術者として設計に従事し、又は現場監督技術者として監督に従事した経験、土工及びその見習いに従事した経験等も含めて取り扱うものともされています。ちなみに、実務経験の期間は、具体的に建設工事に携わった実務の経験で、当該建設工事に係る経験期間を積み上げ合計して得た期間とするとされていますね6

第2要件のうち、技術者の方については概ねわかってきましたが、先ほどのお話では、第2要件は、技術者であって、かつ、専任の者でなければならないとの要件ということですから、専任の意味についても教えてください。

はい、専任の者とは、その営業所に常勤して専らその職務に従事することを要する者をいいます。会社の社員の場合には、その者の勤務状況、給与の支払状況、その者に対する人事権の状況等により「専任」か否かの判断を行い、これらの判断基準により専任性が認められる場合には、いわゆる出向社員であっても専任の技術者として取り扱われます7

なるほど。専任の者とはいえないとされる場合で、注意しておいた方がよいケースはありますか。

次の4つの場合には、原則として、専任の者とはいえないと考えられますので、注意が必要です。すなわち、①住所が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能な者、②他の営業所(他の建設業者の営業所を含みます)で専任を要する者、③建築士事務所を管理する建築士(管理建設士)、専任の宅地建物取引士等他の法令により特定の事務所等において専任を要することとされている者8、そして、④他に個人営業を行っている者、他の法人の常勤役員である者等他の営業等について専任に近い状態にある者については、基本的には専任性を満たさないと考えられます9

常勤役員等の経営業務の管理責任者(法7条1号)と専任技術者とを1人で兼ねることはできるのでしょうか。①~④には直接該当しないようにも思いますが…。

できます。第1要件における経営業務の管理責任者(法7条1号)の基準(要件)と専任技術者の基準(要件)と両方とも満たしている場合、勤務場所が同一の営業所である限り、重複して認めることはできると考えられます10。なお、2つ以上の業種の許可を申請する場合、1つの業種の要件を満たしている者が、他の業種の要件を満たしている場合には、同一営業所内では1人で専任技術者を兼ねることができます。例えば、1級の土木施工管理技士の資格を有する者は、土木、舗装、とび・土工工事業など、複数の業種の専任技術者になることができます11


〔第3要件:誠実性要件〕

次に、第3要件の、法人や法人の役員等が「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」(法7条3号)について伺います。「不正」の方は犯罪的なものを指しそうですが、不誠実というのはどういう意味でしょうか。

第3要件(誠実性要件)の「不正な行為」とは、おっしゃるとおり、請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領など法律に違反する行為をいいます。また、「不誠実な行為」とは、工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為をいいます。 申請者が法人である場合においては当該法人、その非常勤役員を含む役員等及び一定の使用人(支配人等)が、申請者が個人である場合においてはその者及び一定の使用人が、建築士法、宅地建物取引業法等の規定により不正又は不誠実な行為を行ったことをもって免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しない者である場合は、原則としてこの基準を満たさないものとされると考えられます12。このようなことから、平素の法令遵守(コンプライアンス)の徹底が重要になってきます。


〔第4要件:財産的基礎要件〕

適正な契約締結や施工ができる社内体制が大事だということですね。では次の第4要件の解説もお願いします。

第4要件(財産的基礎要件)は、請負契約13を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと(法7条4号)です。ガイドラインによると、①自己資本の額が500万円以上である者、②500万円以上の資金を調達する能力を有すると認められる者、③許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有する者のいずれかに該当する者は、倒産することが明白である場合を除き、要件を満たすものとされます14。ちなみに、一般建設業許可の場合には500万円以上の純資産や預金残高証明書等を用意すればよいのですが、特定建設業許可の場合には4000万円以上という規模の大きい請負代金を履行するに足りる財産的基礎を有することが必要とされ(法15条3号)、より厳格な財産的基礎要件が設けられています。


〔第5要件:欠格事由に該当しないこと〕

法7条の4つの要件の要点は分かりました。最後に、法8条の第5要件の内容について教えてください。

第5要件は、欠格事由に該当しないことです。一定の欠格事由に当たる場合(法8条1~14号15)又は許可申請書や添付書類中に重要事項についての虚偽記載があるか重要な事実の記載が欠けている場合には、許可を受けられません(同条柱書)。欠格事由に当たる場合とは、例えば、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者(同条1号)、一般建設業の許可又は特定建設業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(同条2号)、営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者(同条5号)などです。

なるほど、建設業許可を受けるための5つの要件のポイントがよくわかりました。

何よりです。またいつでもご相談ください。


1 建設業の許可は、下請契約の規模等により「一般建設業」と「特定建設業」の別に区分して行われます(法3条6項)。この区分は、発注者から直接請け負う工事1件につき、4,000万円(建築工事業の場合は6,000万円)以上となる下請契約を締結するか否かで区分されます。すなわち、元請業者として請け負った1件の工事代金について4,000万円(建築工事業の場合は6,000万円)以上となる下請契約を下請業者と締結する場合には、特定建設業の許可が必要とされ、特定建設業については、一般建設業の場合よりも、高度の資格や経験が必要になります(公益社団法人 建設業適性取引推進機構『改訂3版 わかりやすい建設業法Q&A』(大成出版社、2018年)31頁及び国土交通省ウェブサイト参照)。
2 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001447594.pdf
3 なお、建設業の許可は、一般建設業と特定建設業の別に区分して行うものであり、同時に一の建設業につき一般建設業の許可と特定建設業の許可が重複することはあり得えません。ただし、一の建設業者につき2以上の業種について、それぞれ一般建設業の許可及び特定建設業の許可を受けることは可能とされています(建設業許可事務ガイドライン(平成13年4月3日国総建第97号総合政策局建設業課長から地方整備局建政部長等あて、最終改正令和2年12月25日国不建第311号(以下、単に「ガイドライン」といいます。)【第3条関係】1.(2)参照)。
4 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000085.html
5 公益社団法人 建設業適性取引推進機構・前掲『改訂3版 わかりやすい建設業法Q&A』31頁参照。
6 なお、経験期間が重複しているものにあっては原則として二重に計算しませんが、平成28年5月31日までにとび・土工工事業許可で請け負った解体工事に係る実務の経験の期間については、平成28年6月1日以降、とび・土工工事業及び解体工事業双方の実務の経験の期間として二重に計算できます。また、電気工事及び消防施設工事のうち、電気工事士免状、消防設備士免状等の交付を受けた者等でなければ直接従事できない工事に直接従事した経験については、電気工事士免状、消防設備士免状等の交付を受けた者等として従事した実務の経験に限り経験期間に算入し、建設リサイクル法施行後の解体工事に係る経験は、とび・土工工事業許可又は建設リサイクル法に基づく解体工事業登録で請け負ったものに限り経験期間に算入するとされています(ガイドライン【第7条関係】2.(2))。
7 ガイドライン【第7条関係】2.(1)の考え方(解釈)である。合理的な解釈といえることから、実務的にもこのような解釈によって専任性を判断すべきことになる。
8 ただし、建設業において専任を要する営業所が他の法令により専任を要する事務所等と兼ねている場合に、その事務所等で専任を要する者を除きます(ガイドライン【第7条関係】2.(1))。
9 ガイドライン【第7条関係】2.(1)参照。
10 ガイドライン【第7条関係】2.(3)、一般社団法人全国建行協編著『新規・更新・追加・変更等の手続きから、経営戦略まで 建設業許可Q&A 第10版』(日刊建設通信新聞社、2018年)51頁参照。
11 ガイドライン【第7条関係】2.(3)、一般社団法人全国建行協・前掲『新規・更新・追加・変更等の手続きから、経営戦略まで 建設業許可Q&A 第10版』51頁参照。
12 ガイドライン【第7条関係】3.(1)・(2)参照。
13 この請負契約については、法3条1項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るもの(例えば、建築一式工事以外の建設工事のうち1件の請負代金の額が500万円未満(取引に係る消費税及び地方消費税の学を含む)の工事など)を除くとされています(法7条4号、ガイドライン【第7条関係】4.(1)参照)。
14 ガイドライン【第7条関係】4.(2)参照。②に関して、担保とすべき不動産等を有していること等により、金融機関等から500万円以上の資金につき、融資を受けられる能力があると認められるか否かの判断は、具体的には、取引金融機関の融資証明書、預金残高証明書等により行うとされている(同4.(2))。
15 許可の更新の申請の場合には、法8条1号又は同条7~14号のいずれかに該当する場合と規定されています(同条柱書)。

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著者プロフィール

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平 裕介

弁護士・法務博士(専門職)

永世綜合法律事務所、東京弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業。

行政事件・民事事件を中心に取り扱うとともに、行政法学を中心に研究を行い、大学や法科大学院の講義も担当する。元・東京都港区建築審査会専門調査員、小平市建築審査会委員、小平市建築紛争調停委員、国立市行政不服審査会委員、杉並区法律相談員、江戸川区法律アドバイザー、厚木市職員研修講師など自治体の委員等を多数担当し、行政争訟(市民と行政との紛争・訴訟)や自治体の法務に関する知見に精通する。

著書に、『行政手続実務体系』(民事法研究会、2021年)〔分担執筆〕、『実務解説 行政訴訟』(勁草書房、2020年)〔分担執筆〕、『法律家のための行政手続きハンドブック』(ぎょうせい、2019年)〔分担執筆〕、『新・行政不服審査の実務』(三協法規、2019年)〔分担執筆〕等多数。

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