意匠出願の流れ~意匠登録のきほん~
・自社で創作したデザインを他社にまねされたくない。
・デザイン力をアピールして、販売促進につなげたい。
このような時に利用できる制度として、意匠法・意匠権というものがあります。
意匠権とは、出願した後、意匠法に則った審査を経て登録される独占的な権利であり、模倣品・類似品を排除できるというメリットがあります。
また、意匠登録されているデザインをまとった製品は、オリジナルで信頼性が高いものとして認知され、ブランド力強化につながり、対外的な競争力を高めることになります。
さらに、社内に目を向けると、デザインの価値が認められ、創作意欲の向上にもつながります。
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他方で、手続には一定の知識、作業が必要になります。
- 意匠出願するには、何が必要なのか?
- どんな流れで登録されるのか?
- 費用は、いつ、いくら必要なのか?
- 出願から登録までどれくらいの時間がかかるのか?
いざ意匠権取得をしたいと考えても、なんだか難しそうだからと二の足を踏んでしまうなんてこともあるのではないでしょうか。
今回は、このような不安を解消するために、意匠権取得までの流れをご説明します。
1.登録が認められるには?
意匠権取得までの流れをご説明する前に、どのようなデザインが意匠登録できるかについてふれておきたいと思います。
すべての出願が問答無用で意匠登録される訳ではありません。
意匠法で定められた登録要件について意匠審査官が審査し、要件を満たしているものだけが登録されます。
主な登録要件には次のようなものがあります。
1 工業上利用できる意匠であるか(意匠法3条1項柱書)
意匠法上の意匠であること、どのような用途に用いられるものなのか、形状は特定できるか、同一のものを複数量産し得るかなどが審査されます。
量産できないものや、純粋美術の分野に属する著作物などは、「工業上利用できる意匠」に該当しません。
2 今までにない新しい意匠であるか(新規性、3条1項)
出願前に出願意匠と同一又は類似の意匠が存在しないこと、すなわち、新規性を備えている必要があります。
出願前に公に知られている意匠や、意匠公報、雑誌、新聞、カタログやSNS、ホームページなどに掲載されている意匠や、それらに類似する意匠は、出願しても新規性がないと判断され、登録されません。
3 容易に創作することができたものでないか(創作非容易性、3条2項)
新規な意匠であっても、その意匠の分野について通常の知識を有する者であれば簡単に創作できる意匠は、意匠登録を受けることができません。
例えば、既にあるデザインを寄せ集めて完成した新たなデザインは、創作が容易であると判断され、登録されません。
4 意匠ごとに出願しているか(一意匠一出願、7条)
意匠登録出願は、原則として意匠ごとにしなければなりません。
なお、複数の物品等であっても、一定の要件を満たしているものは「組物の意匠」として認められる場合があります。また、複数の物品等から構成される内装の意匠について、所定の要件を満たせば、一の意匠として認められる場合があります。
5 他人よりも早く出願したか(先願、9条)
同一又は類似の意匠について二つ以上の出願があった場合、「先願主義」という制度が採用されているため、出願日が早い者の意匠のみが登録となります。つまり、早い者勝ちです。
2.出願から登録までの概要
日本国特許庁では、意匠出願するといくつかのステップがあります。
方式審査、実体審査を通過した意匠出願のみが登録査定を受けることができます。
登録査定後、登録料を納付することで、設定登録され意匠権が発生します。
3.意匠出願の流れ
(1)出願準備のその前に
さあ出願するぞ!と気持ちが固まっても、まずは次の点についての検討から始めましょう。
- 既存の意匠登録を調査する
既に登録されている意匠登録の存在を理由に出願が排除されることを回避するために、出願しようとしている意匠や、似ている意匠が既に登録されていないかを調査します。
- デザインの特徴を整理する
出願するデザインについて、その特徴や他のデザインとの違いを正確に把握することで、有効な意匠権取得につなげられます。
あわせて「出願しようとしている意匠をすでに公開してしまっていないか」を確認してください。
出願前に公開された意匠は原則として意匠登録が認められないため、出来るだけ意匠を公開する前に出願することをお勧めします。
公開した意匠を救済する方法もありますが(意匠法4条)、公開ごとに証明書の作成の必要があるなど手続きが煩雑になることや、救済を認められる期間が定められているなど、あくまで例外的に認められているに過ぎません。
(2)意匠登録願の作成
意匠登録願書に出願する意匠の名称、出願人名、創作者名等を記載します。
あわせて願書に添付する意匠の図面や見本等を準備します。図面は、出願意匠の形状や構造、どのように動くかなどの特徴が把握できるように作成する必要があります。
出願後に図面等の誤りや不備に気付いたとしても、出願時に提出した願書等に記載の要旨を変更する補正は認められないので、出願願書作成時にしっかり注意を払う必要があります。
(3)意匠登録願を特許庁に提出
意匠登録願は、紙で提出する方法と、インターネット出願ソフトを用いて電子で提出する方法があります。
特許庁へ納める出願費用は、16,000円です。(代理人に手続きをご依頼の場合は、別途代理人費用が発生します)
出願後、「方式審査」では出願書類の記載に不備がないか等を審査し、「実体審査」は出願した意匠に登録できない理由(拒絶理由)がないかを審査します。
審査にかかる期間は、一般的に6~8か月程度となっています。
(4)審査の結果:拒絶理由通知が届いたら
審査官が登録できない理由を見つけた場合は、拒絶理由が通知されます。
ここで出願人は通知された拒絶理由に対して、意見を述べることや、願書や図面を補正することが認められており、拒絶理由を解消することができれば登録査定へと進みます。
なお、拒絶理由が解消されないと判断された場合は、拒絶査定が通知されます。
この場合でもこの判断に不服を申し立てて争うこともできます。
(5)審査の結果:登録査定が届いたら
審査で登録できない理由が見つからなかった場合や、拒絶理由通知に応答して、拒絶理由を解消することができると登録査定が通知されます。
(6)登録料納付
登録査定の通知を受けてから30日以内に特許庁に登録料を納付すると、意匠登録原簿に意匠権として意匠が登録されます。これで晴れて意匠権が発生します。
権利の存続期間は、意匠出願の日から25年です。
登録料は、1年~3年目まで毎年8,500円です。その後4年目から25年目までは毎年16,900円となります。登録料は複数年分をまとめて納めることも可能です。
4.まとめ
今回、審査における登録要件、出願前の検討事項、意匠出願から登録までの大まかな流れをご説明しました。
公開してしまう前に出願する点や、間違いのない出願願書を作成する点などのポイントを押さえていれば、意匠出願をおそれる必要はありません。
意匠権取得には費用や時間がかかりますが、独自のデザインを保護することができ、他者による無断使用や模倣品の出現などから、自身のブランド価値を守ることができます。
また、特許での権利化が難しい場合であっても、意匠権で有効に保護できるという場合もあります。
ものの形状、模様など新たな創作が生まれたら、意匠権の取得・活用も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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