サスティナビリティとは? 経営視点でのメリットや取り組み事例を紹介
近年、「サスティナビリティ」を意識した経営をする企業が増えてきています。
サスティナビリティを意識した経営により、自社に対する評価の向上、資金調達や人材確保の容易化といった、多くのメリットを享受できる可能性もあるのです。大手企業の事例とともに、サスティナビリティについて解説します。
サスティナビリティとは?
まずは、「サスティナビリティ」の意味を改めて確認しておきましょう。
サスティナビリティの意味
サスティナビリティとは「持続可能性」という意味です。
企業活動においては、「環境や社会を持続可能な状態を維持するための活動」といった意味で用いられることが多くあります。
限られた資源を有効に活用し、裕福な者が持っていない者から搾取する事態を回避することにつなげるための活動を指しています。
サスティナビリティとSDGs・CSRの違い
サスティナビリティと似た言葉に、「SDGs」と「CSR」があります。
サスティナビリティとCSRはとても似ている言葉です。しかし厳密に言うと、サスティナビリティが「持続可能性」、CSRが「企業の社会的責任」を表しており、取り組む内容の特徴が異なります。
CSRは自社の従業員や顧客、または取り組む社会貢献活動など、「自社」に関する人々・団体などへの責任を指します。しかしサスティナビリティは「環境や社会」の持続可能性を実現するために、企業の社会的責任が果たされる取り組みであることが必要です。
またSDGsは「持続可能な開発目標」という意味です。サスティナビリティと比べると「人類」が持続的に発展を続けるための取り組みを表している部分が異なります。
サスティナビリティの測り方
サスティナビリティの測定方法として、「GRIスタンダード」と「DJSI」があります。
GRIスタンダードとは、経済・環境・社会に与える影響を報告し、持続可能な発展への貢献を説明することを目的とする枠組みです。オランダのアムステルダムに本部を置く、GRI(Global Reporting Initiative)が作成しました。
GRIスタンダードは企業の環境に対する活動の透明性を高め、その活動についての説明責任を果たすために役立ちます。
一方DJSI(The Dow Jones Sustainability Indices)とは、投資家向けのインデックス(指数)です。1999年に米国のS&P Dow Jones Indices社とスイスのRobecoSAM社が共同開発したもので、世界の主要企業のサスティナビリティを評価することで、総合的に優れた企業を選定しています。
GRIスタンダードとDJSIの共通点は、「ESG(環境・社会・企業統治)」の観点から測定されていることです。
サスティナビリティが普及している背景
サスティナビリティは、1987年に開催された「環境と開発に関する世界委員会」で「持続可能な開発のための課題」として初めて取り上げられています。それからも、重要な課題として議論が続けられていました。
2015年になり、国連サミットにおいてSDGsが採択されたことをきっかけに、サスティナビリティの概念が世界中に浸透することにつながっています。
それに伴い、大企業においても、企業活動においてもSDGsやサスティナビリティを意識した取り組みが始まったのです。これを皮切りに、次第に多くの企業がサスティナビリティに取り組むようになっていきました。
サスティナビリティ経営のメリット
企業がサスティナビリティに取り組みながら経営をすることには、いくつかのメリットがあります。
企業価値の向上
サスティナビリティに取り組むメリットとして、企業価値の向上があります。サスティナビリティに取り組むことは、環境や社会に配慮した経済活動に取り組むことであり、持続可能な活動に取り組むことにもつながるのです。
これにより、自社がそうした活動に取り組んでいるイメージが定着し、企業価値の向上に寄与する効果が見込まれます。
また、環境に配慮した活動から新たな事業を始めれば、事業拡大にもつなげられるでしょう。
事業の成長に貢献
サスティナビリティの取り組みを行うことで、職場環境の改善にも寄与でき、従業員の働く環境を大きく改善できます。
従業員一人あたりの生産性向上につながり、事業の成長にもつながると考えられるのです。
従業員一人一人にも、「環境や社会に貢献している」という意識が生まれるでしょう。結果として、自社が環境や社会の持続可能な世界の実現に貢献することになります。
資金調達の幅が広がる
サスティナビリティに取り組むことは、金融機関の協力を取り付けるためにも必須と言えます。
サスティナビリティへの取り組みは、ESG(環境・社会・企業統治)の観点から社会や環境への持続可能な活動を行うことにつながっています。
近年では、銀行を始めとした金融機関でもSDGsやサスティナビリティを意識した経営に取り組んでいる企業に向けた融資制度が登場しています。
サスティナビリティやSDGsの取り組みを、奨励する流れに移行しているのです。
優秀な人材の確保
サスティナビリティの取り組みは、世界的に行われています。そのため、サスティナビリティの取り組みを行っている企業には、優秀な人材が集まりやすいと言えます。
とはいえ、取り組みを始めたからといってすぐに優秀な人材が集まるわけではありません。取り組みを続けていくことで、社会的に取り組みを認知されるようになり、優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。
サスティナビリティの取り組みを行っている企業は、職場環境の改善に取り組んでいることも多くあります。働き方改革を意識した取り組みを行うことで、人材確保につなげることも可能です。
サスティナビリティの取り組み事例
著名な企業も、サスティナビリティの取り組みを積極的に行っています。
ここでは、日産自動車株式会社・ユニリーバ・キヤノン株式会社の事例を紹介しましょう。
日産自動車株式会社
日産自動車株式会社は、ESGの側面での取り組みを明確にして、社会の持続可能な発展に貢献していくことを目的としています。
具体的には、以下の2つです。
- ゼロ・エミッション
2050年までに、事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現すること
- ゼロ・フェイタリティ
日産の自動車が関わる交通事故での、死者数実質ゼロの実現を目指すこと
また、この2つの実現のために、人材育成の観点から多様な人材1人1人がそれぞれの力を発揮し、中長期にわたり成長できるインクルーシブ(多様性を受容できる)な組織を構築しているのも特徴です。
ユニリーバ
ユニリーバは、ESGの観点からさまざまなサスティナビリティの取り組みを行っています。取り組み内容は毎年見直し、持続可能な発展ができる社会の実現に向けた行動を続けています。
具体的には、環境面において、自社工場からの温室効果ガスの排出量を50%削減。全ての工場の電力を、100%再生可能エネルギーに切り替えました。
人材育成の面では、女性の安全・スキルの向上、機会の拡大を目的としたイニシアチブを利用できるようにしています。
ジェンダーバランスの取れた職場を目指した結果、女性管理職比率は51%となりました。
キヤノン株式会社
キヤノン株式会社のサスティナビリティの取り組みは、企業理念「共生」のもとに行われています。
2021年5月にはサスティナブル推進本部も設置して、以下3つの取り組みの強化を図っています。
- 新たな価値を創造すること
テクノロジーとイノベーションの力で新たな価値を創造し、社会創造に貢献する
- 地球環境の保護・保全
すべての人々が、あらゆる違いを超えて、共生・共働・尊重し、自然と調和し、未来の子どもたちに、かけがえのない地球環境を引き継げる社会の実現を目指す
- 人と社会への配慮
世界初の技術、世界一の製品・サービスを提供し、より多くの価値を、より少ない資源で提供することで社会創造に貢献する
サスティナビリティについてのまとめ
サスティナビリティはSDGsやCSRと異なり、環境や社会の持続可能性を考えて行う取り組みを指します。
企業としてサスティナビリティへの取り組みを行うことには、社内外で多くのメリットがあるものです。
既にさまざまな企業が独自の取り組みをしており、使用するエネルギーや社内体制の変更により、大きな利益を得た事例もあります。
サスティナビリティについて考え、行動することは今後もますます求められていくでしょう。これを機に、自社のサスティナビリティへの取り組みを考えてみてはいかがでしょうか。
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