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会計監査人とは? 会社法による設置義務や必要な資格などをわかりやすく解説

監修者:京浜税理士法人 横浜事務所   宮澤 明宏

会計監査人とは? 会社法による設置義務や必要な資格などをわかりやすく解説

会計監査人は、企業会計の健全化を目的として設けられています。

会計に関する高度な専門知識が求められ、第三者の立場から公平な立場で企業会計の監査を実現するために、要件が細かく定められているのが特徴です。

この記事では、会計監査人の定義や会社法による設置義務、必要な資格などをわかりやすく解説します。

似たような言葉に「監査人」や「監査役」があるため、これらの用語との違いも理解しておきましょう。


会計監査人とは

会計監査人とは、第三者の立場から企業の会計監査を行う専門家のことです。

企業会計の健全化をはかる役割を担い、企業は会計監査を受けることで、投資家や銀行からの評価を維持できます。

設置義務のある企業

会社法に基づき、次のいずれかにあてはまる企業は、会計監査役を設置する義務があります。

  • 大会社
  • 監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社

出典:e-Gov 法令検索

会社法における「大会社」とは、資本金5億円以上もしくは負債の部に計上した額の合計が、200億円以上ある会社のことです。

いずれの企業も社会への影響力が大きいため、企業会計に間違いがないようにしなければなりません。

そのため、高い専門性を持った会計監査人による確認が必要になります。

監査人との違い

会計監査人と監査人は、会計監査を行う根拠となる法律が異なります。

  • 会計監査人:会社法に基づいて設置される
  • 監査人:金融商品取引法に基づいて設置される

金融商品取引法に基づいて監査人を設置する会社は、株主数500名以上かつ資本5億円以上と定められています。このような会社は、会社法の「大会社」にあたるため、必然的に会社法に基づく会計監査の対象になります。

業務上の混乱を避けるため、会計監査人と監査人は、同じ監査法人や公認会計士に委託するのが一般的です。

一方で、会社法上の会計監査の対象になる会社が、金融商品取引法上の会計監査の対象にはあてはまらず、金融商品取引法上の会計監査を受けていないケースは数多くあります。


会計監査人の業務内容

会計監査人には、業務を遂行するにあたり、次の3つの権利や義務が設定されています。

  • 会計帳簿や関連資料の「調査権」
  • 不正行為などの「報告義務」
  • 定時株主総会での「意見陳述権」

それぞれ詳しく解説します。

1. 調査権

会計監査人は、会計帳簿とそれに関連する資料の閲覧・謄写を、いつでも行うことができます。

また、取締役や執行役員、従業員、さらには対象となる株主会社の子会社に対して、会計に関する報告を請求することが可能です。

ただし、正当な理由がある場合、子会社は請求を拒否できます。

2. 報告義務

調査を進めるなかで、取締役・執行役の不正行為や、法令・定款に反する重大な事実を会計監査人が発見した場合は、監査役(取締役の職務の執行を監査する会社法上の役員)や監査委員会へ、速やかに報告する義務があります。

会計監査人は、企業会計の健全化を目的としていることから、不正防止のための措置を講じなければなりません。

3. 意見陳述権

定時株主総会で会計監査人の出席を求める議決があった場合は、出席して意見を述べる必要があります。

また、会社法396条第1項に規定する書類が、法令や定款規定に適合するかどうかについて会計監査人と監査役の意見が異なる場合、会計監査人は定時株主総会に出席して、意見を述べることができます。

出典:会社法|e-Gov法令検索


会計監査人の任期

会計監査人は、株主総会で事業年度ごとに選任され、解任する場合も株主総会で決議されます。

会社法により、任期は次のように定められています。

会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

引用: 会社法|e-Gov法令検索

ただし、任期満了を迎えるまでに特段の決議がなかった場合は、自動的に再任されたものとみなされます。


会計監査人の資格要件

会社法により、会計監査人は「公認会計士または監査法人」と定められています。

公認会計士は、会社における会計と監査の専門家です。監査業務が行える唯一の国家資格で、資格の取得には公認会計士試験に合格するほか、3年以上の実務経験や研修が必要です。

監査法人は企業の監査を行う法人のことで、5名以上の公認会計士を在籍させなければなりません。


会計監査人の選任・解任基準

ここでは、会計監査人の選任・解任の基準について詳しく解説します。

選任基準

会社法第337条3項の規定により、次の条件にあてはまる公認会計士と監査法人は、会計監査人になれません。

  • 一 公認会計士法の規定により、第四百三十五条第二項に規定する計算書類について監査をすることができない者
  • 二 株式会社の子会社若しくはその取締役、会計参与、監査役若しくは執行役から公認会計士若しくは監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者又はその配偶者
  • 三 監査法人でその社員の半数以上が前号に掲げる者であるもの

引用: 会社法|e-Gov法令検索

会計監査人は、第三者の立場から会社の会計や財産について詳しく調査し、不正を未然に防止する役割があります。

そのため、会社と利害関係がある公認会計士と監査法人は、会計監査人になれないと定められています。

解任基準

会計監査人は、株主総会の決議によっていつでも解任できます。

株主が会計監査人の選任・解任に関わることによるコントロールの強化が目的です。

解任に関する決議については、独立性を維持し、より適切な会計監査を実現するために監査役が決定します。

解任の理由としては、職務上の義務違反や心身の故障などがあげられますが、正当な理由がなく解任された場合は、会計監査人が会社に対して損害賠償を請求できます。


会計監査人についてのまとめ

会計監査人は、企業会計が健全に行われるよう、第三者の立場から調査する役割を担います。

社会的な影響も大きいことから、会計監査人の基準は細かく定められているのが特徴です。

また、「監査人」と会計監査人とでは、監査を行う根拠となる法律が異なるということも覚えておきましょう。


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監修者プロフィール

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宮澤 明宏

京浜税理士法人 横浜事務所

横浜市青葉区を拠点として、中小規模法人や個人事業主のお客様を中心に、税務顧問サービス及び経営コンサルティングサービスを提供。

月次決算制度の導入、資金繰りの明確化を切り口に、創業3年以内の黒字化を目指し経営を安定化させるための経営管理の手法について、伴走型支援で行っている。

創業時からしっかりとした経営管理を行い、スピード感を持って会社を成長させていきたい経営者に向けて業務を行う。

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