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月次決算とは? 年次決算との違いや実施するメリット・やり方のコツも紹介

監修者:京浜税理士法人 横浜事務所   宮澤 明宏

月次決算とは? 年次決算との違いや実施するメリット・やり方のコツも紹介

企業がおこなう決算には、1年に1度の「年次決算」と、月ごとにおこなう「月次決算」があります。

月次決算は企業の義務ではありませんが、実施しておくことで得られるメリットも多いです。

ただし、作業項目が多くスケジュールがタイトであるため、決して簡単な業務ではありません。月次決算を実施する際は、具体的な手順や注意点を知ったうえで行いましょう。

本記事では月次決算の概要や年次決算との違い、具体的な進め方を解説します。


月次決算とは

月次決算とは、1カ月単位でおこなう決算業務のことです。

一般的に企業は年に1回、税法や会社法などの法律に基づいて決算をおこないます。これを「年次決算」と言います。

一方、月次決算はそれとは別に企業が独自でおこなう決算業務で、実施するかどうかは企業の自由です。

月次決算の目的

月次決算をおこなうのは、自社の業績を定期的に確認し、営業成績や財政状況を確認するためです。

前述の通り、企業が決算をおこなうのは年に1回であることがほとんどです。

そのため、年次決算で自社の経営状況が悪いと分かっても、具体的な対策は翌年度からしかできません。

しかし、月次決算を行うことで毎月の経営状況が把握できるため、そのときどきの状況に応じた経営判断ができます。

その結果、早急に対策することで経営課題を解決しやすくなるのです。

参考:J-Net21「月次決算の考え方と導入方法について教えてください。

年次決算との違い

年に1回おこなう年次決算と月次決算の違いは、「実施が義務付けられているか否か」です。

年次決算は、会社法や金融商品取引法、法人税法などの法律によって、実施が義務付けられています。

また、年次決算の結果は会社の財政状況や経営成績を明確にして、株主への報告や正しい確定申告と納税をするといった用途で使用されます。

一方の月次決算は、株主への報告が目的ではありません。経営者が今後の経営方針や戦略を考えるうえでの、参考資料とするために実施するものです。


月次決算を実施するメリット

企業が月次決算をおこなうことには、以下のようなメリットがあります。

  • 年次決算の負担を大幅に軽減する
  • 金融機関の融資の判断材料として役立つ
  • 事業戦略の策定をスムーズにおこなえる

それぞれ解説します。

年次決算の負担を大幅に軽減する

月次決算を実施しておくことで、年次決算がスピーディーに終わります。

年次決算では、1年分の貸借対照表と損益計算書が必要です。決算の時期にまとめて用意しようと思うと、膨大な手間と時間がかかるでしょう。

しかし、月次決算を実施して月ごとの貸借対照表と損益計算書を作成しておけば、年次決算の時期に慌てて用意する必要がなくなります。

金融機関の融資の判断材料として役立つ

月次決算をしておくと、年度の途中で融資を受けたい場合にも役立ちます。

銀行に融資を申し込むとき、2~3期分の決算書を始めとした書類に加え、月次決算書の提出を求められることがあります。

これは、企業の直近の経営状況や財政状態を月次決算の数値により把握し、融資しても問題ないかを判断するものです。

つまり、月次決算を実施することで、いざ融資が必要になったときもスムーズに進めやすくなるのです。

事業戦略の策定をスムーズにおこなえる

毎月の営業成績を振り返り、その時々の状況に即した事業戦略設計も可能になります。

年次決算のみを実施する場合、自社の経営状況を正確に把握できる機会は年に1回です。もし、経営課題が見つかっても、実際に対処できるのは翌年度からとなり、早急な対処が難しいこともあるでしょう。

しかし、月次決算で月ごとの経営状況が把握できれば、経営課題の発見もスムーズに行えます。

融資の検討、経費削減などの対策も取りやすくなるでしょう。


月次決算のやり方7ステップ

ここでは、実際に月次決算をおこない、月次報告を完了させるまでの手順を解説します。

なお、月次決算の順番は厳密に決められていません。

一般的には、現金預金や棚卸資産のように実際の有高に基づく金額を先に確定させ、その後に経過勘定の処理や減価償却費の計上、引当金の計上をすることが多いです。

1.現金預金残高を確認する

まずは、自社の現金預金残高がいくらなのかを確認します。

帳簿上の残高と、実際の現金預金残高が一致しているかどうか、チェックします。金庫に現金がある場合は、その金額もあわせて確認が必要です。

もし両者に差額がある場合は、帳簿の付け間違いをしているかもしれません。

原因を突き止めて差額がなくなったら、次のステップに進みましょう。

2.月次棚卸高を確定させる

月末の棚卸しをして、在庫数とその金額をチェックします。帳簿上の在庫数・金額との差がなければ、チェックは完了です。

このとき、社外に保管している在庫や、不良品・返品された製品などの確認もおこなってください。

3.仮払金と仮受金を整理する

当月の仮払金・仮受金も、この段階で整理します。

仮払金・仮受金は、金額や内容が定まっていない支出や収入の一時的な記録に使う勘定科目であり、そのままでは月次決算を完了させられません。

それぞれ具体的な勘定科目に振り替えて、計上しましょう。

4.未払費用などの経過勘定を計上する

同じく、当月の費用や収益も、具体的な勘定科目に振り替えて計上します。

もし、未払いの代金がある場合は「未払費用」入金が未済の代金があれば「未収入金」で計上します。

対象となる項目や、計上する基準日をあらかじめ設けておくと、スムーズに処理できるでしょう。

5.減価償却費や退職給付費用などを計上する

最後に、1年を通じて発生する費用を計上します。

具体的には、以下の費用が該当します。

  • 減価償却費
  • 退職給付費用
  • 固定資産税
  • 賞与引当金
  • 各種保険料と労働保険料

それぞれの年間費用を見積もっておき、その金額の12分の1を月額費用として計上してください。

6.月次試算表を作る

これまで計上した内容を基に、月次試算表を作成します。

月次試算表には、「合計試算表」「残高試算表」「合計残高試算表」の3種類があります。

どの資料を作るかは企業によって異なるため、自社で作るものを確認しながら進めましょう。

7.月次業績報告をする

作成した月次試算表をとりまとめ、月次業績報告をおこないます。

月次決算の目的は、現時点でどういった経営状況になっているかを経営陣が把握しやすくすることです。

月別予算と前年同月実績との比較、年間の業績の推移などいくつかの資料を作成し、さまざまな角度から現状分析ができる資料に仕上げます。


月次決算をスムーズにおこなうコツ

月次業績報告には正確性が求められますが、月次決算の手順はいくつもあります。

そのため、各工程が滞りなく進められるようにしておくことが重要です。

月次決算をおこなう際に注意したいポイントを解説します。

月次決算の必要性や有用性を社内に周知する

前提として、社内の全部門に対して月次決算をおこなうことの意義や有用性を説明し、十分な協力が得られるような状況にしておくことが必要です。

月次決算の必要性や有用性は、経営者や経理部門のメンバーであれば、当然に理解していますが、部署によっては十分に理解が進んでいないケースもあります。

そのような状況で月次決算をしても、必要な資料や情報の収集が上手くいかず、結果として適切な月次決算をおこなうことが難しくなるでしょう。

経費精算の締め日を厳守する

自社の経費精算の締め日も社内外に周知し、協力を仰ぎましょう。

月次決算では、請求書や納品書、経費精算の伝票などが期日までに揃っている必要があります。

締め日を厳密に定めて、それまでに必要な書類が経理部署に集められる体制を整えておかなくてはなりません。

もし1枚でも書類の提出が遅れると、月次決算全体に大きな影響が出ます。社内はもちろん、社外の取引先にも締め日を伝えておいてください。

月次決算のスケジュールを共有する

月次決算のスケジュールを、社内の全部署に共有しましょう。

月次決算では、各部署のデータが必要になります。

具体的にいつごろまでにどういったデータが欲しいのかを明確に伝えておくことで、月次決算も進めやすくなるでしょう。

結果的に、前述の締め日の厳守にもつながるはずです。


月次決算についてのまとめ

月次決算は各企業が任意でおこなうものであり、年次決算のような法的な義務はありません。

しかし、経営判断に役立つ、年次決算の業務負担を軽減できるといったメリットがあります。銀行へ融資を申し込む際にも利用するため、取り入れておいて損はないでしょう。

ただし、月次決算は会社ぐるみでおこなうものであるため、実施の際は全部署との連携も必要です。

効率よく進められるポイントを押さえながら、月次決算をおこないましょう。


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監修者プロフィール

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宮澤 明宏

京浜税理士法人 横浜事務所

横浜市青葉区を拠点として、中小規模法人や個人事業主のお客様を中心に、税務顧問サービス及び経営コンサルティングサービスを提供。

月次決算制度の導入、資金繰りの明確化を切り口に、創業3年以内の黒字化を目指し経営を安定化させるための経営管理の手法について、伴走型支援で行っている。

創業時からしっかりとした経営管理を行い、スピード感を持って会社を成長させていきたい経営者に向けて業務を行う。

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