第5回 Web社内報を導入する場合のポイント
効果のある社内広報メディアの構築
リアルな情報ルートの確立が必要
前回記したように、Web社内報はデメリットも把握して導入を検討しなければなりません。一人一台の端末がない場合、無理に導入すると閲覧できない従業員に疎外感を生んでしまいます。
そのため、ある会社では、共用端末を設置して就業前後と昼休みに誰でも閲覧できる状態にしているそうです。別の会社では、端末が使える部門長が必要な画面を出力し、配布・回覧・掲示するなどの対応を取っています。少なくとも、誰でも閲覧できる状態を提供しましょう。
今まで家族やOBに社内報を配布していた場合、Web社内報に全面シフトすると少なからずクレームが入ります。そのため、ある会社では年に一冊OB向けの社内報特別号を発行したり、ニュース記事を中心とした家族向け社内報を発行しています。
閲覧しにくい風土もある
Web社内報は、閲覧するまでに相当の意思が必要なメディアです。PCを起動し、Web社内報のコーナーをクリックし、さらにお目当ての記事をクリックし、やっと閲覧されるものです。
ある会社では、端末を立ち上げると最初にWeb社内報が表示されるようにしています。また、Web社内報に経費精算書等をぶら下げて、必ずWeb社内報のコンテンツが目に入るようにしている会社もあります。
会社によっては、就業中に気軽に閲覧できない場合があります。社内報は読んでもいいのに、Web社内報を読んでいると、遊んでいると思われることもあるようです。ある会社では社内報を廃止してWeb社内報にしましたが、閲覧しにくい風土があり、社内報を復活させたそうです。
さらに、Webで長文を読むのは抵抗があります。Webは見るメディアであり、長文の記事や経営企画に関わるような硬い内容を読ませるのは困難です。
ニュースなどのお知らせ記事は淡々と事実を掲載すれば良いのですが、企画立案の難しさがWeb社内報にはあります。クリックした先に何かあるか、企画に意外性が必要とされるからです。
ある会社の新人紹介企画は、新人の写真をクリックすると「私の大切なもの」の写真が表示されるようになっています。その先を見たいという期待感により、閲覧数が高かったそうです。ある会社では、写真を中心にコンパクトにまとめ、ワンスクロールで見られるようにしているといいます。
Pull型メディアの問題点
Webはメディアとしての問題点もあります。軽いメディアとの印象を持たれてしまうのです。掲載される側としては、印刷メディアと比較して、うれしさが少ないとはよく聞く話です。
また、参加型メディアの利点を活用して誰もが投稿できるようにすると、素人であるがゆえに質が保たれないという懸念があります。投稿する人の筆力が、メディアの質を落としかねないのです。そのため、ある会社では投稿は一切禁止しています。すべてリライトするか、編集部が取材して記事をアップしているそうです。
最後に、リカバリーの難しさです。社内報は手元に届くPush型メディアなので、表紙をリニューアルするなどして再度注目を集めることができますが、Web社内報は一度閲覧されなくなると復活は非常に困難です。
Web社内報導入のポイント
社内報との併用する場合は、それぞれの発行目的や編集方針を明確にし、同じようなコンテンツが掲載されないようにする必要があります。その上で、相互に誘導したり補完し合ったりするよう、有機的な連携を目指します。単独で存在させるのではなく、双方を閲覧することでより理解が深まるような仕掛けにすると良いでしょう。
☆両方を読むことで会社の動きが多面的にわかる仕掛け
■相互誘導
- Web社内報に掲載した事実の背景を社内報で詳しく解説する
- 社内報で取り上げたプロジェクトなどの進捗状況をWeb社内報で随時報告する
■補完関係
- 社内報で取り上げ切れなかった情報をWeb社内報で捕足する(Web社内報には物理的制約がない)
- 社内報のバックナンバーをWeb社内報の中に掲載する(アーカイブ機能)
- 社内報の読者アンケートをWeb社内報に掲載し、メールにて回収(回収率のアップ)
- 社内報に掲載した記事について、読者の意見を吸い上げる(掲示板機能⇒Web上での座談会も可)
- 個別に伝えたい情報はWeb社内報に掲載し、対象者に個別にメールで告知する
- 社外秘の情報は、IDとパスワードを付与して掲載する(セキュリティ機能)
①Web社内報の構築
既存のイントラネットをベースに構築するケースもありますが、情報システム部との兼ね合いから、なかなか前に進まず断念するケースもよくあると聞きます。全く別のプラットフォームを広報部だけで運用できるASPを利用するケースが増えています。自宅でも閲覧できるようにしたいのであれば、なおさらです。
②アクセスの向上
こまめな更新と、更新告知をすることがポイントです。常にいろいろな情報がアップされている、動きがある、というイメージを植え付けます。可能であれば、Web社内報への入り口を社内イントラの最も目立つ場所に置きます。端末を立ち上げると、まずWeb社内報が表示されるように設定しておく場合もあります。階層を深くせずワンクリックですぐに読みたいものが読めるようにするとか、写真を中心に文章量を少なくすると良いでしょう。
③更新頻度
多い場合は、ほぼ毎日記事をアップしています。少なくとも週に一回は更新したいところです。速報性というWeb社内報の特性を生かし切れないようであれば、導入する意味がありません。掲載する記事内容の「敷居」を下げる、通信委員が投稿できる仕組みにするなど、多くの記事を集める仕掛けも必要です。
トップ画面に更新情報を掲載するのが一般的です。目立つようにマークをつけたり、更新日時を掲載するといった工夫が必要です。そのほか、随時メールで告知したり、一週間に一回、更新情報を掲載したメールを送信する方法などがあります。何らかの方法で告知しておかないと、導入当初はアクセスされない懸念があります。
次に続く