電子公告とは? メリット・デメリット、使用するまでの流れを解説
決算公告は、株式会社に実施が義務付けられているものですが、多額の費用がかかるため負担に感じていることもあるでしょう。
もし、少しでもコストを削減したい場合は「電子公告」を選ぶのはいかがでしょうか。
Webサイト上で決算公告をするものであるため、従来の方法に比べて安価で実施できる可能性があります。
電子公告の概要やメリット・デメリット、実際の流れなどを解説します。
電子公告とは
電子公告とは、自社のWebサイトや電子公告掲載サービスといった、インターネット上のページで公告をすることです。
決算公告はもちろん、法定公告をする際も利用できます。
概要
電子公告が認められるようになったのは、2005年です。
「電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律」が施行され、電子公告が可能となりました。
これにより企業が決算公告をする方法は、以下の3つとなったのです。
- 官報
- 日刊紙
- 自社のWebサイトまたは各種電子公告掲載サービス
どの方法にするかは、企業が自由に決められます。それぞれの特徴やかかる費用などを比較検討し、一番負担なくできる方法を選ぶとよいでしょう。
定款変更と登記申請が必要
ただし、電子公告をするためには、自社の定款変更と、公告を行うURLの登記申請をしなければなりません。
もし、この2つができていない場合、電子公告をしたとしても効力がなくなってしまうため、忘れずに対応してください。
なお、これから会社を立ち上げるため定款がまだない場合は、新しく作る定款に、電子公告を行う旨を記載すれば問題ありません。
また、まだ自社のWebサイトがない場合は、先に電子公告に使用するURLを取得しておいてください。そのうえで、URLの登記をしましょう。
電子公告規則について
電子公告は、官報や日刊紙での公告に比べて、内容を事後に改ざんしやすいものです。そのため、電子公告が適切に行われているか、外部機関に調査してもらう必要があります。
この調査を「電子公告調査」と言い、その詳細は「電子公告に関する規則(電子公告規則)」に取りまとめられています。
電子公告規則が規定しているのは、以下のような内容です。
- 電子公告調査を求める方法
- 電子公告調査を行う方法
- 調査結果の通知方法
参考:「電子公告規則」
電子公告のメリット・デメリット
電子公告はほかの方法と比べて安価で掲載できますが、その分、ほかの方法では求められない対応が必要になります。
こうしたメリット・デメリットも踏まえて、電子公告を使うか検討してください。
電子公告のメリット
電子公告のメリットは、官報や日刊紙での公告に比べると、費用が大幅に削減できることです。
それぞれの方法での公告にかかる費用の目安は、以下のとおりです。
方法 |
官報 |
日刊紙 |
電子公告 |
---|---|---|---|
必要な 費用 |
|
|
|
金額の 目安 |
1回約6万円~ |
1回約50万円~ |
自社のWebサイトを使う場合は年間約5,000円~、電子公告サービスを使う場合は年間数千円~数万円 ※電子公告調査を受ける場合は1回約5~20万円 |
もし自社のWebサイトがすでに整備できているのであれば、サーバーやドメインの維持費用のみで電子公告をすることも可能です。
設立間もない企業やコストを抑えたい中小企業にとっては、非常に魅力的だと言えます。
電子公告のデメリット
電子公告特有のデメリットは、官報や日刊紙を使う場合に比べて時間と手間がかかりやすいことです。
電子公告をする場合、以下のような対応が必要となります。
- 貸借対照表の全文記載
- 電子公告に使うURLを法務局に登記する(URLを変更する場合は変更登記も必要)
- 決算公告の場合は5年間の掲載
こうした規定があるのは、電子公告の自由度の高さ故だと言えるでしょう。
官報や日刊紙での公告の場合、特定の日に発刊される紙面の限られたスペースで実施するため、公告の要旨のみ掲載することがほとんどです。
しかし、電子公告ではそういったスペースの制約がなく、掲載期間も自由に決められます。その分、掲載すべき情報量も期間も長くなっているのです。
また、何らかの事情で自社のWebサイトが閲覧できない状態になってしまうケースも考えられます。
電子公告を行う流れ
電子公告を行う場合の流れは、以下のとおりです。
- 定款に電子公告を公告方法と定める。既存会社の場合は定款変更する。
- 登記申請を行う。
- 電子公告調査機関に調査を委託する。
- 電子公告調査機関は法務大臣に調査委託があったことを報告する。
- 公告開始(電子公告調査開始)
- 公告期間満了(電子公告調査終了)
- 電子公告調査機関から会社に対し、調査の結果が通知される。
- 調査結果通知を「公告したことを証する書面」として合併等の登録申請書に添付
まずは自社の定款に、「公告は電子公告で実施する」といった文言を記載しましょう。この時、何らかの事情で電子公告ができない場合の対処法も併記しておくことをおすすめします。
そして、定款変更後2週間以内に、公告方法や電子公告に使用するURLの登記申請を行ってください。実際に電子公告を始めた後は、内容が適切かどうか、電子公告調査を受けなくてはなりません。
電子公告調査を受けるためには、以下の情報とともに調査機関に依頼する必要があります。
- 調査申請者の氏名や商号・名称
- 住所または主たる事務所の所在地
- 電子公告を行うURL
ただし、電子公告を行うのが決算公告のみの場合は、電子公告調査は受ける必要がありません。
電子公告と官報を組み合わせることも可能
電子公告は安価で便利なものですが、公告の種類によっては電子公告調査の費用がかかるため、場合によってはある程度の金額の出費が必要になります。
電子公告以外の方法と組み合わせたほうが、かえって費用を抑えられる場合もあります。最も費用が抑えやすいのは「決算公告は電子公告で行い、その他の公告は官報公告にする」という方法です。
決算公告を電子公告で行う場合は、電子公告調査が不要であるため、調査費用の5~20万円ほどを削減できます。
官報での公告の場合も調査は特に発生しないため、費用は官報への掲載料のみで済みます。
電子公告のまとめ
電子公告には、ほかの方法では必要ない工程が増える面もありますが、費用が抑えられる点が大きなメリットです。
また、電子公告とほかの方法を組み合わせることも可能です。自社の状況やほかの方法との違いも踏まえて、導入を検討してください。
もし今後の決算公告を電子公告にしたい場合は、まず自社の定款変更や、電子公告に使用するWebサイトのURLの登記から行いましょう。
これらの準備ができていない場合、電子公告の効力がなくなる場合があります。