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はじめての事業計画書作成!革新的な事業計画の見つけ方とは

著者: 中小企業診断士  牧野 孝治

はじめての事業計画書作成!革新的な事業計画の見つけ方とは

事業計画書を作成する際、最初に頭を悩ませる部分が、革新的な事業計画に必要な新しい事業アイデアを発想することではないでしょうか。

そして、この事業アイデアは事業計画書の中でも一番重要な項目となります。

なぜなら、融資や補助金など事業計画書を審査される場面において、事業のアイデアがありきたりでパッとしない内容であれば、「他社との差別化ができるのか?」「本当にこの事業計画に顧客はつくのか?」「儲かるのか?」と不安視され、高い評価を得ることができないからです。

今回は、いかにして新規事業計画のアイデアを生み出すのか、その見つけ方を解説していきます。まず、事業アイデアを考える際に一番大切なことは、顧客の視点から考えることです。


1.「アイデアは顧客の視点から考える!」ときに陥る罠

「アイデアは顧客の視点から考えることが何よりも大切」と冒頭で申し上げましたが、多くの方は「そんなこと、当たり前じゃないか!」と思われるのではないでしょうか。しかし、顧客の視点から考えることは意外と難しく、多くの方が以下のような失敗に陥ってしまいます。

(1)自社の視点から考えすぎてしまう

顧客の視点に立って考えているつもりでも、自社の強みなどから事業アイデアを考えてしまうケースです。これは、高い技術力などを有する企業で陥りやすい失敗となっています。

「自社の技術力なら、高品質・高付加価値な商品が作れる。顧客もそのほうが喜ぶに違いない!!」と、顧客が求めている仕様よりも、はるかに高い仕様・品質やさまざまな付加価値をつけてしまうパターンです。その結果として、商品・サービスの価格が高くなってしまいます。そうすると、顧客の予算から外れて購買されなくなり売上が減少するだけでなく、他社が最低限の仕様に絞った低価格路線で参入してきた際にシェアをごっそり奪われてしまうことが考えられます。

自社の強みにとらわれすぎず、顧客のニーズを最優先にして自社の強みをどのように当てはめるかを考えましょう。

(2)そもそもそんな顧客は存在しない

その事業アイデアでターゲットとする人物像は本当に存在するのでしょうか。もし、事業計画で挙げたターゲットがそもそも存在しなければ、お金をかけて新規事業を始めたとしても「全く顧客が獲得できない」といった悲惨な結果になってしまいます。

まず、自分が顧客として想定した人物は本当に存在するのかどうかを検証してみることです。具体的にそのターゲットとなる人物像の名前を10人以上挙げられるかどうかで判断をしてみましょう。
ここで名前がスムーズに出てこないと、その顧客は存在しない可能性があります。「自分自身のまわりにいないだけで、多数存在するはず」と考えても、それは思い込みである可能性が十分あります。

実際にアンケートをとることや、二次データをうまく拾い上げるなどして、本当にターゲットとなる人物像や企業が存在するのか、根拠を明確にしましょう。

(3)お金を払ってでも顧客が解決したい課題ではない

顧客の視点に立って課題を発見したとします。しかし、その事業アイデアで解決できる課題は、顧客がお金を払ってでも解決して欲しいものなのかを考えましょう。便利な機能かもしれないけれど、お金を払ってまでは必要ないと思われてしまっては、その事業アイデアは失敗に終わってしまいます。

最も多いパターンは、投資(費用)対効果が悪いことです。例えば、一般家庭向けに電気設備をすべて監視し、無駄な電気代を発生させない画期的なシステムを開発したとしましょう。しかし、導入費やランニング費がその節約する電気代を大幅に超えてしまうようであれば無意味となります。企業であれば導入するメリットはあるかもしれませんが、一般家庭では不要と思われることがほとんどでしょう。

その課題を解決するために「顧客はお金を払うか」を常に考えることが大切です。

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2.顧客の視点から事業アイデアを見つけるコツ

前項で記載した通り、顧客の視点から事業アイデアを発見することは意外と難しいものです。
どうすれば、顧客の視点から新規事業のアイデアを生み出すことに繋げることができるのでしょうか。

(1)事業アイデアは、顧客が抱える「不」から発見する

ここでいう「不」とは「不満」「不安」「不便」「不快」などの、顧客が抱えるマイナスの感情のことを指します。こうした顧客が抱える「不」を解決することが課題になり、その課題を解決する方法が新規ビジネスのアイデアに繋がるのです。

(2)BtoBの場合は「バリューチェーン」から「不」を考える

ターゲット企業のバリューチェーンから考えると良いでしょう。
バリューチェーンとは、事業活動を、材料の調達、製造・加工、配送、マーケティング、営業販売、経理活動などといった機能ごとに分けて、どの機能(部門)でどういった価値を生み出しているのかを考え、一連の流れとして捉えるフレームワークのことです。

例えば、製造業の購買部門をターゲットに、購買活動を支援するサービスを提案すると考えた場合、購買部門の「日々の発注業務」「月次の締め作業」などさまざまな業務が思い浮かぶと思います。どの業務課題に対してアプローチをするか考えると、良い事業アイデアが発想しやすくなります。

(3)BtoCの場合は「カスタマージャーニー」から「不」を考える

BtoCビジネスであれば、ターゲットのカスタマージャーニーから考えることです。
カスタマージャーニーとは、商品やサービスを購入、または利用する人物像の行動や思考、感情のプロセスを見える化することを指します。

例えば、自社が旅行会社とすると、「旅行したい人」といった漠然とした人物像の設定ではなく、「小さな子供がいる30代の家族」や「女子大学生の友人同士」など細かに設定し、そのカスタマージャーニーを思い浮かべることで課題が浮き彫りとなり、良い事業アイデアが思い浮かびやすくなります。

(4)自社の事業領域から外れすぎないように気をつける

ここでありがちな失敗として、顧客の課題に着目しすぎて自社と全く関係のない事業アイデアに方向が進んでしまうことがあります。「なぜこの事業をしなければならないのか」と関係者の協力を得られなかったり、既存の経営資源を活用できずうまく成果が出なかったりするケースがあります。

もちろん、新たな事業領域に展開することは素晴らしいことですが、顧客の課題に振り回されて思いつきだけで行うことは避けましょう。


3.より良い事業アイデアをひねり出す手法

ここでは、事業のアイデアを出す際に助けとなる手法を紹介していきたいと思います。

(1)とにかくありったけのアイデアを出すこと

まず良いアイデアを一つだけに絞るのはなく、とりあえず色々な視点から多くのアイデアを出すことです。多くのアイデアを出した上で収束させ、これは良いと思う事業アイデアを残すようにしましょう。

(2)今ある事業を組み合わせること

完全にゼロから考え出すのではなく、市場にすでに出ている商品やサービスを組み合わせてみることで新しい事業アイデアが浮かぶこともあります。コツとしては、業界内の事業アイデアだけでなく、異業種で行われている事業アイデアが参考になることも非常に多いです。

(3)アイデアを試作品でも良いので世の中に出して、ブラッシュアップすること

新規事業のアイデアが成功するかどうかは、実際に事業を始めてみないと判りません。
いきなり本格的に事業展開をスタートするのではなく、新商品開発であれば「とりあえず試作品を作ってみる」、新しいサービスを展開する場合は「とりあえず既存顧客に試してみる」ことや「説明する資料を作って良いかどうか判断してもらう」ことも非常に効果的です。

机上でシミュレーションすることももちろん必要ですが、実際に市場に出してみることに勝るものはありません。不完全な段階で良いので、とにかく世の中に出して試していきましょう。その反応を基にブラッシュアップを続けていけば、きっと良い事業アイデアへと磨かれていきます。


〈まとめ〉

いかがだったでしょうか。「革新的」といった表現は、補助金の公募要領等でもよく見られる表現で、悩むことが非常に多いと思います。しかし、「世界を変えるようなイノベーション!」といったレベルではなく、「今までの事業をより良くするための事業アイデア」といったイメージを持っていただければ良いと考えます。そのため、素晴らしい完璧なアイデアを練らなくてはいけないと気負いすぎなくても良いのではないでしょうか。とにかくアイデアを形にすることを意識しましょう。

今回の記事を参考に、顧客の目線に立ってとにかくアイデアを出し、ブラッシュアップを繰り返すことで、より良い事業アイデアを生み出して頂けると幸いです。

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著者プロフィール

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牧野 孝治

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1992年生まれ,京都府京都市出身。
2018年中小企業診断士登録
商社営業を経て、現在は経営コンサルタントとして活動中。
得意分野は、顧客目線で展開するマーケティング施策、低コストでITを活用しコスト削減と売上拡大、従業員のモチベーション向上施策立案、M&Aなど。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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