【事例あり】ビジネスでイノベーションを生み出すプロセスを解説
イノベーションとは、今までにない新しい技術によって、社会に大きな影響を与える現象を指します。
スマートフォンやキャッシュレス決済などは、人々の生活や価値観などを一変させたプロダクト・イノベーションの代表例です。
この記事では、新規事業の開拓や構想を検討している人に向けて、イノベーションのプロセスや事例を紹介します。
イノベーションとは?
ビジネスにおけるイノベーションとは、今までにない新しい技術や考え方などによって価値を創造し、社会に変革を起こすことです。
イノベーションは多くの経済学者によって、さまざまな理論が展開されています。ヨーゼフ・シュンペーターの「5種類のイノベーション」、クレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」などを聞いたことがある人も多いでしょう。
ビジネスシーンでは、これらを含めたより幅広い概念として普及しており、日本では「技術革新」と訳されることもあります。
しかし、近年は技術だけでなく、新しいアイデアやシステム、ビジネスモデル、価値観など、さまざまな手段を含む言葉として使われています。
また、必ずしも新しく誕生した技術や考え方ではなく、他分野との組み合わせや既存事業の新規市場参入などで、イノベーションが成功する場合もあります。
イノベーションが必要な理由
現在、イノベーションが求められている背景には、情報化社会の到来が挙げられます。
スマートフォンやSNSなどの普及により、人々は瞬時に情報を発信・取得できるようになりました。情報の伝達スピードが上がったことでトレンドの移り変わりが早くなり、人々のニーズや価値観はさらに多様化しています。
長く愛される製品・サービスを作るには、変化の激しい市場に対応しなければなりません。企業はこれまでのやり方を抜本的に見直す必要があるでしょう。
また、少子高齢化による労働人口の減少も、イノベーションが必要とされる理由のひとつです。限られた人材で生産性を確保しなければならず、業務効率化のために、業務プロセスや生産方法などを根本的に見直す企業が増えています。
イノベーションを生み出すプロセス
イノベーションを成功させるには、まずは社内でイノベーションに対する考え方を見直し、戦略や環境を緻密に整える必要があります。
イノベーションを生み出すプロセスを、ステップごとに解説します。
イノベーションに対する考え方を見直す
日本はなるべくリスクを取らない企業運営を行うことが多く、挑戦的なアイデアや戦略を好まない傾向があります。なかにはイノベーションに取り組んだものの、一度失敗すると継続する姿勢を失ってしまう組織もあり、失敗を恐れる日本の考え方がイノベーションを阻害しているケースは少なくありません。
そもそも、イノベーションを成功させるのは容易なことではありません。失敗から学び、成功していくことに価値を見出し、従業員全員で共通の認識を持って挑戦を続けることが大切です。
イノベーションを起こす時、リスクや失敗に対してネガティブなイメージが根付いている場合は、まずはイノベーションに対する考え方を、企業全体で見直す必要があるでしょう。
明確な戦略を共有する
イノベーションに取り組む際は、今までの企業方針や運営方法などを根本から見直し、新たな指針を打ち立てていくことが必要です。
企業内部でイノベーションを行う理由や自社の強みなどの認識が噛み合っていないと、一体感を持ってイノベーションに臨めません。経営幹部内での共通認識はもちろんのこと、「経営層の考え方が従業員に正しく伝わっているか」「上司から部下へ伝達される際に解釈のギャップが生まれていないか」などにも配慮し、企業全体で戦略を共有することが大事です。
イノベーションを起こしやすい環境づくりを
イノベーションは会議などのオフィシャルな場ではなく、何気ない日常会話から生まれることもあります。
社内外問わずさまざまな人が利用するオフィス内カフェや、従業員全員が利用する休憩スペースなど、コミュニケーションを促進するオフィス環境を作るとイノベーションが生まれやすいでしょう。
また、従業員の挑戦的な取り組みを評価したり、失敗しても再チャレンジする場を設けたりと、従業員がさまざまなことに挑戦しやすい雰囲気を日頃から作ることも大切です。失敗はリスクだけではなく、必ず学びがあるという認識が社内に広まれば、自然とイノベーションを生みやすい企業に成長するでしょう。
イノベーションの事例
人々の生活や価値観に大きな影響を与えた革新的なイノベーションとは、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、従来のモノの在り方を大きく変えた、代表的なイノベーションを紹介します。
スマートフォン
日本の携帯電話業界では、2008年頃までガラケーと呼ばれる二つ折りタイプの携帯電話が市場のシェアを独占していました。
しかし、キーボードをなくして指で操作するシンプルな操作性、電話やメール、SNS、ゲームなどが1つにまとめられた機能性などが評価されたスマートフォンの登場により、ガラケーのシェアは次第に縮小していきます。
そして、現代では連絡手段としてはもちろん、カメラやGPS、音楽プレイヤー、キャッシュレス決済、ビジネスシーンにまで進出しているスマートフォンは、人々の生活に欠かせないものになりました。
また、スマートフォンの普及に伴い固定電話市場が縮小するなど、他市場にも影響を与えています。
キャッシュレス決済
ITやスマートフォンの発展によって起こったイノベーションの1つに、キャッシュレス決済が挙げられます。
現金管理の手間を削減できるだけでなく、インバウンド需要への対応やレジ業務の簡略化、購入履歴のデータ活用といったさまざまなメリットがあることから、国内外でキャッシュレス決済への取り組みが促進されています。
クレジットカード
クレジットカードは、さまざまな種類があるキャッシュレス決済のなかで、最も普及している決済方法です。
手持ちの現金がなくても買い物ができ、代金は後払いで口座から引き落とされます。公共料金や税金の支払いなどにも対応しており、利用額に応じてポイント還元が受けられることから、幅広い消費者に利用されています。
デビットカード
クレジットカードと同じく、カード1枚で買い物ができます。
デビットカードは口座と直接連携しており、その場で代金が引き落とされるのが特徴です。
クレジットカードは後払いのため、人によっては管理しにくく、キャッシュレス化が進みにくいというデメリットもあります。デビットカードは口座の残高を把握しやすいため、現金派がまだまだ多い日本人にとっては取り入れやすい決済方法でしょう。
電子マネー
電子マネーは、大きく分けると交通機関が発行しているもの、スーパーなどが独自に発行しているもの、そしてクレジットカード系と呼ばれるものの3種類があります。
多くの場合は、あらかじめ現金をカードにチャージしてデータ化し、決済を行うサービスです。銀行口座と紐づけてその場で引き落とされるものや、クレジットカードの支払日に引き落とされるものなどもあります。
QRコード決済
QRコード決済は、QRコードを利用して店舗に送金することで、取り引きを行うサービスです。
顧客が店舗に提示されているQRコードを読み込むユーザースキャン方式と、店舗側が顧客のスマートフォンに表示されたQRコードを読み込むストアスキャン方式の2種類の決済方法がありますが、どちらもスマートフォン1つで買い物が完結します。
ファッションテック
ファッションテックとは、「ファッション」「テクノロジー」を組み合わせた造語で、ファッションとIT技術を駆使したサービスや取り組みのことです。
スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスや、スマホ上でアバターに試着してもらうバーチャルフィッティング、ECサイトとライブ配信を組み合わせたライブコマースなど、多岐にわたります。
サイズ測定が可能なファッション通販
通販で洋服を購入する時、「自分の体型に合わないサイズを選んでしまった」「袖やお腹周りなどの部分的なサイズ感がしっくりこない」などの失敗は多いものです。そのような問題を解決する、体のサイズを自動で測定できるスーツが注目されています。
このスーツは生地に特殊センサーを張り巡らせており、着用するだけで顧客の体型をすみずみまで測定できるものです。実際にスーツを顧客に無料で提供し、測定したデータを保存することで顧客に合ったサイズの洋服を提供している企業も存在します。
ファッション通販の弱みであったサイズ感の問題を解決できるだけでなく、顧客の囲い込みや返品リスク削減などのメリットもあり、ファッション通販市場に大きなインパクトを与えました。
コンピュータがコーディネートの一部に
近年、ファッションの一部としてコンピュータを身に付ける「ウェアラブルデバイス」という考え方が普及しています。高性能なコンピュータでありながら、体に装着しやすいアクセサリーや衣服のような形状をしているのが特徴です。
例えば、腕時計のように手首に巻いて使用するスマートウォッチは、ウェアラブルデバイスを代表するアイテムです。手をふさがずに持ち歩けるだけでなく、スマートフォンの基本的な性能に加えて心拍数や血圧の測定など、装着具ならではの健康面に即した機能が充実しています。
まとめ
イノベーションとは、新しい技術や考え方などによって新たな価値を創造し、社会に大きな影響を与えることです。
経済学者によってさまざまな理論が展開されていますが、現代のビジネスシーンでは、革新的なアイデアやシステム、価値観、製品・サービスなどさまざまな手段を含む言葉として普及しています。
イノベーションを成功させるには、イノベーションを生みやすい環境を社内で整えておくことが大事です。イノベーションに対する正しい考え方を共有したり、従業員が新しい取り組みに挑戦しやすい雰囲気を作ったりと、日頃の働きかけがよい効果をもたらすこともあります。
過去のイノベーション事例を参考にしながら、企業の強みを生かした手段を選択するとよいでしょう。