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BSC(バランススコアカード)とは? ビジネスへの導入手順と事例を紹介

BSC(バランススコアカード)とは? ビジネスへの導入手順と事例を紹介

企業の経営状況を評価する際は、財務指標を参考にするのが一般的です。

しかし、業績を向上させるためには、財務以外の視点からも総合的に問題点を洗い出し、バランスの取れた経営を実現する必要があります。

そこで活用したいのが、BSC(バランススコアカード)です。BSC(バランススコアカード)とは、「財務」「顧客」「業績プロセス」「成長・学習」の4つの視点で企業の状況を数値化し、業績の向上や問題解決を目指すものです。

異なる4つの視点から経営状況を客観的に判断することで、不確実性が高まっている昨今のビジネス環境に合った施策が立案できるでしょう。

本記事では、BSCの概要やビジネスへ導入する効果、事例などを徹底解説します。


この記事の監修者
マネーライフワークス  代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP 

BSC(バランススコアカード)とは

まずは、BSC(バランススコアカード)の概要を押さえていきましょう。BSCが提案された背景も解説しますので、参考にしてください。

BSCとはビジネス戦略に役立つ経営管理の手法

BSCとは、「Balanced Scorecard(バランス・スコアカード)」の略称です。「財務」「顧客」「業績プロセス」「成長・学習」の4つの視点で企業の状況を数値化し、バランスを保ちながら業績の向上や問題解決を目指すものです。

4つの視点を数値化することで、それぞれの視点から見た進捗状況を把握でき、改善が必要な部分を客観的に理解できます。

BSCが提案された背景には、ビジネスの複雑化がある

近年のビジネス環境を表した言葉に、「VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)」があります。

ビジネスを取り巻く環境はめまぐるしく変化し、将来の予測が困難になっていることが、BSCが提案された背景の1つです。

ビジネスの不確実性が高まるなか、1つの部門や事業所に会社全体のリソースを集中させてしまうと、リスクが高まります。

BSCによって、財務面だけではなく、人材や顧客、業務プロセスといった経営品質を多角的に評価することで、バランスが取れた経営の実現に近づけるでしょう。


BSCの特徴となる4つの視点

ここでは、BSCの4つの視点について詳しく見ていきましょう。4つの視点を基準として、経営ビジョンや戦略を実現するためのカギとなる「重要成功要因(CFS)」を設定します。

1. 財務の視点

財務の視点では、企業の段階を「成長期」「維持期」「収穫期」の3つに分け、どの時期に該当するかによって評価内容を変更します。

  • 成長期
    将来の発展のために設備や人材に投資します。この段階では、将来的な売上や収益の見込みを重視し、成長率を指標とします。
  • 維持期
    成長期で投資した資本を基に、利益の最大化を目指します。この段階では、経営利益率を指標とします。
  • 収穫期
    これまで投資した資金の回収を重視します。この段階では、自己資本比率やキャッシュフローを指標とします。

他にも、財務上の重要評価指標として、営業利益率・株主資本利益率(ROE)・投資収益率(ROI)などが挙げられます。

2. 顧客の視点

ビジネスは、企業と顧客がいなければ成り立ちません。そのため、「顧客の視点」では、顧客から見た企業と、企業から見た顧客の双方の視点で考えることが大切です。

具体的な評価指標として、顧客の立場から見た場合は「顧客満足度」や「リピート率」などがあり、企業の立場から見た場合は「顧客単価」や「顧客あたりのコスト」などが主な指標となります。

3. 業務プロセスの視点

業務プロセスの視点は、「イノベーション・プロセス」「オペレーション・プロセス」「アフターサービス」の3つの視点に分類できます。

業務活動の効率化や顧客対応力の向上を目指すことで、ライバル企業よりも優れた商品やサービスを作り出すプロセスについての行動を把握します。

それぞれのプロセスの内容は次の通りです。

  • イノベーション・プロセス
    市場規模や顧客ニーズを考慮した商品・サービスを開発するプロセス
  • オペレーション・プロセス
    商品や顧客ニーズを充足させるための提供プロセス
  • アフターサービス
    購入後のアフターフォロー

具体的な評価指標としては、生産リードタイム・納期遵守率・訪問顧客数・不良品発生率などが挙げられます。

4. 学習・成長の視点

企業は、優れた人材を確保するための能力開発・人材育成や、情報インフラの整備・充実を行うことで、ライバル企業に差を付けることができます。

人材育成や能力開発の手段について、「社員の意義」「能力開発」「ナレッジマネジメント」の3つの視点から分析を行います。人材育成や組織の活性化を進めていく手がかりとなります。

学習・成長の視点の具体的な内容は次の通りです。

  • 社員の意義
    社員の視点から見た、会社に対する評価や働く環境
  • 能力開発
    社員の個性に合った能力開発
  • ナレッジマネジメント
    社員個人が持つ知見を、会社の資産として活かすこと

具体的な評価指標としては、社員定着率・従業員満足度・能力向上率・資格取得率などが挙げられます。


BSCを導入する目的・得られる効果とは

目的

BSCを導入する目的は、企業が経営をするうえで注力するべきポイントを理解することです。「財務指標」「顧客の視点」「業務プロセス」「学習と成長」という4つの視点から企業を分析し、足りない部分を改善しながら業績の向上を目指します。

効果

また効果としては、BSCは、全社的な目標管理や評価システムとして活用することができるという点があります。4つの視点で目標を管理することで、方向性がブレにくく、バランスを取りやすい点がメリットです。

評価システムへの導入例として、賞与にBSCの評価結果を連動させるなどの取り組みを行うことも可能です。


BSCを実際に導入している企業の例

ここでは、BSCを実際に導入している企業の例を紹介します。BSCをうまく活用することで、社内の環境のみならず、企業を取り巻くビジネス環境も客観的に分析できます。

1. 製造業(印刷業)

【BSC導入に至った背景】

主要の得意先メーカーの生産が海外に移転した影響で、収益性が悪化し、経営の立て直しを図る必要があった。経営戦略を策定していたが、達成状況が低く、実行力を向上させることが課題だった。

【BSC導入の目的】

①従来の経営戦略は財務的な面での数値目標しかなかったが、評価指標や目標をBSCで数値化できる特長を活かし、実行と検証を効果的に行う

②4つの視点でそれぞれについて整理を行うことで、成功のイメージや成功のストーリーを明確にする

③戦略マップを作成し、各従業員が戦略を理解する手助けとする

【BSC導入の効果】

BSC導入の主な目的は実行力の向上だったが、導入直後のため、具体的な成果については今後じっくりと検証を重ねていく必要がある。

また、戦略の実行よりも数字管理が目的化しないように注意していく必要があり、計画策定も実行の方が重要であるという認識を高く持つことが大切。

アクションプランを各部門、さらには個人別に落とし込むことで、目標管理シートに結び付けていき、実行力が向上し始めている。

2. 卸・小売業(作業着服・生地販売)

【BSCの導入目的】

売上の横ばい状態が続いている状況下で、会社の方向性を明確にするため、社内外の環境の分析を行う必要性を実感。しかし、時間的に着手ができない状況が続いていた。

自社の経営戦略を考えるとともに、社長の考え方やアイデアを整理するきっかけになると考えてBSCを導入した。

【BSCの導入の効果】

BSCの戦略マップでは、「財務」「顧客」「内部プロセス」「学習と成長」の4つの視点で戦略を捉えているため、一貫性が生まれて、方向付けがしやすくなる。

これを活用することで、従業員に提案販売を促し、顧客の満足度を高める戦術を立案。社員教育を行って、商品知識や接客技術を修得してもらう流れが明確化された。

また、BSCの策定過程においても、社長の考えをまとめるのに役立ち、事業戦略の面でも、目標達成のためのアクションプランの策定に大きく貢献している。


企業がBSCを導入するときの手順

企業がBSCを導入するときは、ビジョンや戦略を明確にすることが大切です。軸がしっかり定まってこそ、BSCの導入によって高い成果が期待できます。

1. 企業のビジョンや戦略を明確にする

BSCを導入する際は、企業のビジョンや戦略を明確にすることが必要不可欠です。ビジョンや戦略がすでに決まっている場合は、再度検証を行い、改めて関係者に共有しましょう。

ビジネスを取り巻く環境は常に変化し、トレンドも移り変わっています。過去に立案したビジョンや戦略は、常に最新の情報を意識したものにすることも重要といえます。

2. 4つの視点に基づいて、戦略目標(KGI)と重要成功要因(CSF)を抽出する

次に「戦略目標(KGI)」と「重要成功要因(CSF)」を抽出します。

4つの視点について、それぞれのビジョンと戦略を実現するための戦略目標を立てます。それが「重要目標達成指標(KGI)」です。そのうえで、設定した戦略目標を達成するための要因として「重要成功要因(CSF)」を決定します。

なお、「重要成功要因(CSF)」を決定する際には、「SWOT分析」を活用した検討が望ましいです。

3. 重要評価指標(KPI)を設定する

KGIとCFSが設定できたら、次は戦略目標の進捗状況を管理する指標として「重要評価指標(KPI)」を設定します。

KPIは、自社の経営方針・戦略として設定したテーマと関連付けられたものにすることが大切です。それぞれの戦略に基づいた実行計画の進捗状況を、客観的な数値で管理しましょう。

また、4つの視点ごとにそれぞれ設定されたKGIと、CFSに基づいた実行計画としてKPIを設定する必要があります。

4. アクションプランを作成する

それぞれのKPIに対するターゲット数値や成果目標が設定できたら、アクションプランを作成しましょう。KPIを達成するために、「いつまでに」「どのように動くか」を明確にします。

経営戦略における4つの視点について、それぞれのKPIを実現させる方法を個人レベルまで落とし込み、アクションプランを立てます。この時、実現が難しい内容や、達成できたかどうか客観的に判断できないプランを立てないように注意しましょう。


BSCについてのまとめ

BSCの概要やビジネスへ導入する効果、事例などを徹底解説しました。

近年のビジネスを取り巻く環境は変化のスピードが速く、仕組みがより複雑になっているのが特徴です。不確実性が高い環境で業績を向上させるには、企業の課題を複数の異なる視点で見極め、一番成果が出やすいポイントから着手することが必要といえます。

BSCを活用して自社の課題を明確化し、変化に強い組織作りを目指しましょう。

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監修者プロフィール

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岡崎 壮史

マネーライフワークス 代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

生命保険の営業や不動産会社の営業企画を経て、1級FP技能士とCFPを取得。

平成28年に社会保険労務士試験に合格。その翌年にマネーライフワークスを設立。

現在は、助成金申請代行や助成金の活用コンサルを中心に、行政機関の働き方改革推進事業のサポート事業や保険などの金融商品を活用した資産運用についてのサイトへの記事の執筆や監修なども行っている。

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