ITシステム開発における、管理部門が行うプロジェクトマネジメントとは
管理部門としてITシステムを開発する際、プロジェクト計画書を作成し計画に基づいて遂行しますが、予定通りにいかない事象の発生や、問題点が山積して日々残業に追い込まれるケースも少なくありません。
筆者自身も、長年 ITシステム開発を経験し、プロジェクトリーダーとしてプロジェクト全体のマネジメントに携わってきました。
システム規模が大きくなり、関係者が多岐にわたるような開発では、特にプロジェクトマネジメントが重要となります。
本記事では、管理部門におけるITシステム開発でのプロジェクトマネジメントについて、筆者の体験も踏まえて解説します。
1.ITシステム開発でのプロジェクトマネジメント
システム規模が大きくなればなるほど、プロジェクトマネジメントが重要となります。例えば、開発委託先の進捗状況を確認しながら全体スケジュール管理を行いますが、場合によってはスケジュール調整や仕様の見直しを行うといったことが必要になるためです。
また、プロジェクト全体会議と個別会議に分けて、情報共有や課題対策を行うケースがよく見受けられます。
個別会議の事例として、営業や販売企画の担当者が集まり、ITシステムを活用した際のサービス提供方法や販売促進計画などの意識合わせを行う営業販促会議などがあります。
管理部門においては、ITシステムの規模に関わらず、システム全体のプロジェクト計画策定や計画に基づいた進捗確認、さらに品質確認は必須業務です。
ITシステムの実稼働に向けて進捗状況を確認し、プロジェクト遂行をコントロールすることがプロジェクトマネジメントでは求められています。
2.プロジェクトマネジメント上の問題点とその原因
(1)要件が決まらない
ITシステムを導入するにあたり、何をITシステムで実現するのか、どのような機能を実装するのかなどの要件が決まらないという問題があります。
筆者の経験では、システム稼働日は決まっているのに、どれだけの機能を実装するのか、機能の要件や仕様をどうするのかがいつまでたっても決まらないプロジェクトがありました。この原因は、ITシステムのステークホルダーが多いことがあげられます。
ステークホルダー各々でやりたい・実現したいことがあるために要求項目が膨大となり、実装する機能の優先順位もつけられないといった事態に陥ってしまうのです。
(2)開発会社間の連携不足
大規模なITシステムを開発する場合は、システムを分割して複数の会社に開発を委託します。
会社間の情報連携については会議やメールでのやりとりが中心ですが、システム間でのデータ連携において、開発工程の終盤でないと問題が発覚しないケースがよく見受けられます。
この原因の一つに、システム間インターフェース仕様書の不備があげられます。仕
様書の記述方法や記載内容が開発会社毎にバラバラであるために、読み手側の解釈が異なる、必要な項目がすべて記載されていないといった事象が発生するのです。
(3)管理部門内の連携不足
ITシステムの規模が大きくなると、管理部門内の情報連携不足のために品質悪化をまねくケースが見受けられます。
筆者の経験では、店舗システムと会計システムとのインターフェース仕様に不備があり、ITシステム稼働後に一部の項目の売上集計が実施されないという不具合が生じたことがあります。
原因はドキュメントの記載漏れでした。自社内でも意思疎通が図れないことがありますので、ドキュメントの読み合わせや相互レビュー、システム検証時の相互チェックを必ず行うことが大切です。
(4)アプリケーション開発以外の計画漏れ
システム稼働前の運用テストや運用保守に関する体制構築など、アプリケーション開発以外の項目については、ITシステム開発の終盤になってから準備を開始するケースが見受けられます。
管理部門としては、安心・安全にシステムが稼働し運用されることを重要視する必要があります。例えば、システム稼働前の運用テストでは、システム運用部門などの関係者とのテスト日程調整やテスト環境の構築など、準備に時間のかかる項目も多いため、事前に計画化することが重要です。
また、運用保守についても、システム稼働後の問い合わせサポート手順の確立やサポート要員の確保、サポート業務教育といった、準備に時間のかかる項目が多いです。
3.プロジェクトマネジメントの重要ポイント
(1)最終決定機関を確立する
ITシステムに関わるステークホルダーが多いために、各自でやりたいことをあげだすと要望や要件そのものが巨大化してしまいます。
ITシステム実現のためには、ステークホルダーの言いなりになるのではなく、まずは優先度をつけて、これら要件や開発スケジュールを決めることが重要です。
そのためにも最終決定機関を設けて、重要性や緊急性の高いものから開発を始めるといったルールを定義し、その決定事項に従うという運用にすることをおすすめします。
(2)進捗管理フォーマットの共通化
複数の開発会社が参画する大規模ITシステム開発においては、管理部門としての全体進捗管理が重要となります。
開発会社毎にスケジュールや進捗報告の独自フォーマットを持っていますが、これら異なるフォーマットでは全体進捗管理は難しく、正確な管理は行えません。
開発会社には共通フォーマットによるスケジュール・進捗報告を提示してもらうようにしましょう。また、進捗報告については「予定通り」「遅れあり・リカバリ可」「遅れあり・リカバリ不可」といった、一目で進捗状況がわかるようルールづけを行うことをおすすめします。
「遅れあり・リカバリ不可」の項目に焦点をあてて、原因と対策を検討することで、進捗管理の効率化も図れます。
(3)無理は禁物
プロジェクトマネジメントにおいては、開発途中での要件追加や仕様変更、技術的な課題の発生など、予測しえない事態も発生します。
ITシステムの稼働開始日が決まっている以上、リリースを遅らせることは厳禁ではありますが、不測の事態が発生した場合には、ステークホルダーとも調整を行うようにしましょう。
そのためにも、ステークホルダーへのプロジェクト進行状況報告の場を定期的に持つことをおすすめします。
ITシステムの稼働開始日が変えられないのであれば、機能制限して開発を2段階に分けてリリースするなど、スケジュール面で調整することも必要です。
無理なスケジュールで開発を進めたことにより、結果的にシステム障害を引き起こすことは避けたいものです。
4.おわりに
管理部門におけるITシステム開発でのプロジェクトマネジメントについて解説しました。ITシステムを担う管理部門を取り巻く環境は変化し続けていますが、プロジェクトマネジメントの重要ポイントについては、現在も変わっていないと筆者は考えています。
本記事が、ITシステム開発のプロジェクトマネジメントを実行するうえで、少しでも参考になれば幸いです。
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