ビジネス文書の書き方 第28回 社内文書の書式(4) 報告書
この連載では、ビジネス文書の適切な書き方をお伝えします。
ビジネス文書には、一定の書式があります。今回は、報告書の書き方のコツを紹介します。
報告書の構成
出張報告書を例に考えてみましょう。
発行日、宛名、発行部署・氏名、標題(表題・件名)、本文、記書き、結び(「以上」)の書き方については、本連載の第25回「社内文書の基本形」をご覧ください。
「結論」「要旨」「詳細」の3段構成で
記書きの「6」以下の書き方については、次の文例を参考にしてください。
①結論
「6.打ち合わせ事項」の第1項目として、
(1)CMSサービスプレゼンテーション実施 ①
と記したとします。
この部分が、報告書の「結論」に当たります。
それを補足するのが「7.ヒアリング内容等」の項です。プレゼンテーション実施に至った理由や経緯をここで説明します。
②要旨
顧客管理システム導入をご検討中。「CMSサービス」に関心あり。
③詳細
A社様では、ご使用中の顧客管理システムが実情に合わなくなり、新システムの導入を検討されている。弊社の「CMSサービス」に関心をお持ちのため、プレゼンテーションを実施。今後も商談を重ね、「CMSサービス」の受注を目指す。
といった具合です。
①②③の順に字数が多くなり、内容も詳しくなります。
ここで、①②③の順で書こうとすると難しく感じてしまいます。まず2~3文程度で③を、その要約として②を、さらにキーワードを取り出して①とすれば、比較的容易に書けるはずです。
項目ごとに分け、「詳細」以外は箇条書きで記します。
固有名詞や数字を盛り込めば、より具体的な内容にすることができます。公的文書として保存される場合もあるので、正確な記述を心がけましょう。
所見や添付資料がある場合
④所見(所感)
宛先により、所見を記す必要がある場合と、必要のない場合があります(後述します)。
自分の意見がある場合や、先方の反応などニュアンスを報告する必要があれば、1~2行程度で書きます。
その際、自分の主観や推測を交えないように注意しましょう。報告書は「事実」を報告する文書であり、希望的観測を記すのは禁物です。
⑤添付資料
資料がある場合は、資料の名称、作成日時、総ページ数を記します。
資料にはページ番号を振り、「別紙1」「別紙2」などのように表示すると分かりやすいでしょう。
上司が知りたいのは「結論」「理由」「課題・予定」
報告相手である上司が何を知りたいのかを意識して書きましょう。
まず、「何をしたのか」を記載します。これが①の「結論」です。
次に、「なぜ、そうしたのか」を書きます。これが②の「理由」に当たる部分です。
そして、「今後どのようなアクションを取るのか」に言及します。これが③の「課題・予定」です。
報告書で概要を把握した上司は、「システム開発担当部署にも協力を依頼しよう」「3か月以内の受注を目標に」などと次の対応について判断を下すことができます。
また、上司は「報告書を一刻も早く上げてほしい」と思っているのか、「課題を明確にすること」を望んでいるのか、意向を汲み取って作成しましょう。
文字数
書面を提出するだけでなく、併せて口頭での報告を求められることも多いでしょう。
- 一言で報告する場合 ⇒ 50字
- 1分で報告する場合 ⇒ 200字
を目安にすれば良いでしょう。
さらに詳細な報告書を求められた場合は、
- A4用紙1枚に要旨
- 2~3枚を追加して詳細
という2段構えにするのも、ひとつの方法です。
誰に宛てるのか
報告書の形式や内容は「誰に」「何の目的で」提出するかによって異なり、それぞれに合わせた書き方が必要です。
1.トップ・役員に提出する報告書
<内容>
大口の商談、大きなトラブル、重大な環境変化、同業他社の重大な動向 などの報告
<分量>
A4用紙1枚程度で要旨のみ
<所見>
必要
<タイミング>
できるだけすみやかに提出
経営判断に関わる内容であるため、報告書をいち早く提出する必要があります。
トップは現場の詳細を知らないことが多く、まず担当者の意見を聞こうとするものです。
そのため所見を必ず付し、判断の一助にしてもらうと良いでしょう。
専門用語や現場用語の使用を控え、字数も最低限に抑えて、一読して理解できる記述を心がけましょう。
2.上司など部署内に提出する報告書
<内容>
商談、業務内容、出張、研修、トラブル、同業他社の動向 など通常業務における報告
<分量>
A4用紙1枚に要旨。詳細の必要があれば2~3枚程度
<所見>
所見の有無を提出相手に尋ね、必要に応じてつける
<タイミング>
数日以内に提出
素早く作成するために、形式については前例を踏襲するか、上司に相談するのが良いでしょう。
「簡単に」と求められれば要旨のみ、「詳しく」と言われれば詳細を添えます。
特に指示がなければ、詳細に書くのが望ましいでしょう。上司の判断材料になり、また後の業務に役立つこともあるからです。
3.お客様に提出する報告書
<内容>
トラブル報告、調査報告 など会社対会社として実施する事項
<分量>
A4用紙1枚に要旨。詳細を2~3枚程度
<所見>
不要
<タイミング>
報告期限までに提出
要旨を1枚で、詳細を別紙として作成するのが基本です。
提出先の社内で、立場が上の方は「要旨」を、担当者は「詳細」を必要とするためです。
加えて、儀礼上の不備がないかを入念にチェックすることも欠かせません。社内文書とは異なり、対外文書には挨拶の言葉が必須です。
対外文書の書き方につては、本連載の第5回「挨拶文のマナー」をご覧ください。
特にお客様宛の文書については、次の点に注意してください。
- 社名
略称の(株)ではなく、「株式会社」と書く
通称で知られる企業でも、正式名称を記す - 氏名
文字の誤りはないか
正しい表記は旧字体でないか(髙橋、渡邉、中嶋 など) - 役職
部長であるのに「課長」などと誤っていないか など
体裁を整える
上司や顧客は、読むに値する報告書かどうか、まず「一見した見栄え」で判断します。
体裁に配慮があれば、内容も吟味された確実なものであるだろうとの印象を持ちます。
見栄えを美しくするために、次の3点を意識すると良いでしょう。
- 適度な余白があること
- 行頭の位置が揃っているなど、構成・レイアウトが整っていること
- 「結論」の箇所が的確に表現され、要点を一目で理解できること
最後に読み返す
書き上げたら、最後に読み返して次の点をチェックしましょう。
1.内容に欠落・誤認がないか
次の点が妥当かどうかを確認します。
- 数字(金額、日時、時期、数量 など)
- 固有名詞(商品名、人名、場所 など)
- 単位(円かドルか、kgかトンか など)
- 相手の意志(反対、賛成、購入する、購入しない など)
2.声に出して読み上げる
報告書を提出する際には、口頭でも説明を求められることが多いものです。
報告に要する時間を確認するためにも、ぜひ声に出して読んでみてはいかがでしょうか。
次回も引き続き、議事録などの書き方を紹介します。