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IFRSとは? 日本基準との違いや導入によるメリット・デメリットを紹介

IFRSとは? 日本基準との違いや導入によるメリット・デメリットを紹介

IFRS(アイファス/イファース)は、市場のグローバル化とともに世界的に導入が進んでいる「国際会計基準」です。日本でも適用する企業が増えつつありますが、どのような企業が導入すべきなのでしょうか。

今回は、IFRSの日本基準との違いや、導入するメリット・デメリットについて解説します。IFRSの適用を検討している経営者の方は、参考にしてください。


この記事の監修者
  公認会計士・税理士 

IFRS(国際会計基準)とは?

IFRSは「International Financial Reporting Standards」の略で、「国際会計基準」と訳されます。

国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board:IASB)が作成している会計基準であり、「国際財務報告基準」とも呼ばれます。

会計基準は各国独自に作成されているため、基準が違う他国との財務諸表の比較が難しいという問題があります。その問題を解決するため、世界共通の会計基準として策定されたのがIFRSです。


IFRSの特徴から分かる、日本基準との違い

IFRSには3つの特徴がありますので、日本基準と異なる点を比較しながら解説します。

原則主義

IFRSでは「原則主義」を採用しています。原則主義では、具体的な数値基準や判断基準は記載されておらず、基本的な会計基準の記載のみになっています。国ごとの慣習が異なり、具体的な基準を設けることができないからです。

一方で、日本基準では具体的な数値基準や判断基準が記載されています。基準が細かく記載されていることから、「細則主義」と言われています。

日本で細則主義が採用されているのは、誰がやっても同じ会計処理になり、都合のいい会計処理がされないようにするためです。

貸借対照表重視

IFRSは「貸借対照表重視」と言われています。しかし、IFRSが損益計算書を軽視しているというわけではありません。

IFRSでは利益を計算する際に、資産負債アプローチが用いられます。つまり、貸借対照表の資産・負債を時価評価し、その差額から利益を算定するのです。将来キャッシュフローを重視した考えになります。

一方で、日本基準は「損益計算書重視」であり、利益は損益計算書を基に売上から経費を差し引いて算出します。日本では、経営成績を重視する傾向があります。

グローバル基準

IFRSは、市場のグローバル化にともない、会計基準が異なる各国の企業の財務諸表を比較することが困難という状況を解決するために策定が始まりました。そのため、国ごとの独自性は考慮されず、共通言語の英語で議論や定義がされています。

一方で、日本基準は日本独自の事情が考慮され、日本語で定義・議論されます。そのため、日本の会社でしか採用されません。


IFRSを導入するメリット

ここからは、IFRSを導入するメリットについて解説します。

自社の経営管理がしやすくなる

海外にも子会社がある会社の場合、IFRSを導入することで、海外子会社すべてを含め、企業グループ全体の会計基準を揃えることができます。

事業セグメント・地域セグメントごとの業績測定や比較が容易になり、経営層が経営資源配分を判断する時や業績評価をする時に役立つでしょう。

同業他社との比較がしやすくなる

競合他社が海外企業の場合、IFRSを導入することで自社と競合他社の比較がしやすくなります。国内の同業他社がIFRSを導入し始めた際に、他の同業他社も追随する流れになることも考えられます。

また、自社の株主に海外投資家が多い場合、海外の競合会社と比較しやすい、IFRSに基づく財務情報を望んでいる可能性は高いでしょう。

海外投資家へ説明がしやすくなり、資金調達の幅も広がる

IFRSの導入には、海外投資家に対して日本基準とIFRSの差異を説明する手間が省けるメリットもあります。また、海外での資金調達を行う場合に財務諸表をそのまま利用することができるため、変換する手間を省略できます。


IFRSを実施するデメリット

海外進出をしている企業にとってメリットが大きいIFRSですが、以下のようなデメリットもあります。

実務負担の増加

IFRSの導入時には、グループ会計方針書の作成や決算日の統一など、一時的な対応が必要です。企業グループ全体を巻き込むプロジェクトを立ち上げて取り組むことも多いため、担当者の負担は大きいものとなります。

また、継続的な実務負担も増加します。複数帳簿(IFRSと日本基準)の管理やIFRS導入による開示量の増加、日本基準と並行で開示することによる実務の増加は避けられません。

コストの増加

外部アドバイザーを依頼する費用や監査法人に支払う追加の監査報酬、IFRSに対応するためのシステム対応など、IFRSの移行時には多額のコストが発生します。

企業によっては、IFRS導入後もコストが増加します。外部アドバイザーへの継続的な依頼やIFRSに対応したシステムの維持費用、IFRS対応のための人員増による費用負担が予想されます。


IFRSを導入するべき企業

日本証券取引所によると、2022年8月現在、日本のIFRS適用済会社数は251社、IFRS適用決定会社数は7社であり、合計258社に及びます。直近の2022年3月期では、TDK、愛知製鋼、日本新薬がIFRSを導入しています。

IFRS適用済の会社は、海外売上が大きい会社や海外子会社が多い会社など、IFRSの導入でメリットを享受できる会社が多数を占めています。

発生するコストを自社で負担することができ、コスト以上の利益を得ることができる会社がIFRSを導入するべきといえるでしょう。

参考:日本証券取引所HP「IFRS適用済・適用決定会社数 (2022年7月現在)」


IFRSについてのまとめ

IFRSは世界共通の会計基準として作成され、世界的に導入が進んでいます。海外投資家への説明が容易になり、海外市場での資金調達の幅が広がるメリットがあることから、日本でも導入する会社が増えつつあります。

ただ、日本基準とは異なる点が多いIFRSの導入は、企業にとってコストや労力の負担が大きいというデメリットもあります。

IFRSについて知識を得たうえで、他社の適用事例を参考にしながら、導入を検討してみてください。

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監修者プロフィール

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喜多 弘美

公認会計士・税理士

神戸大学経済学部、甲南会計大学院卒業。

2010年公認会計士試験論文試験合格後、上場会社経理部に所属し、固定資産・消費税を担当。その後、大手監査法人で会計監査、グループ会社で内部監査・人事に携わる。

2020年4月から東京都品川区で個人事務所を開業し、会計システム導入支援・記帳代行に従事。

2020年11月税理士登録。

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