慶弔見舞金規程の作り方 慶弔見舞金制度の概要と種類 その1
慶弔見舞金とは、従業員本人やその家族の慶弔事について、祝い金や見舞金を贈る制度です。
法定上支払いは義務付けられていませんが、慶弔見舞金規程としてほとんどの企業が設けている制度です。
今回の記事では、慶弔見舞金について解説をします。
慶弔見舞金制度の目的と種類
慶弔見舞金にはいくつかの種類があります。それぞれ、目的と種類別に解説をします。
結婚祝い金、出産祝い金といった祝い金、葬儀の際の弔慰金、傷病や災害時の見舞金など、企業が慶弔見舞金を支払うのは、従業員にお祝いや感謝の意味を込めて支給する目的と、従業員本人やその家族の傷病、死亡、あるいは災害被害などによる経済的な損失に対して支援を行う目的があります。法定外福利厚生制度の中でも慶弔見舞金制度は、福利厚生施策としては最も一般的、代表的なものとして、企業規模を問わず多くの企業で実施されています。
慶弔見舞金制度は慶弔時に企業が金品を支給する制度ですが、支給対象として次の二つの場合が考えられます。
・自社の従業員またはその家族の慶弔事に対して支給するもの
・取引先や得意先など社外の慶弔事に対して支給するもの
自社の従業員に対する慶弔見舞金制度は、一般的に従業員の入社から退職までのライフサイクルの中で生じる生活イベント(結婚、出産、入学など)や、予期できない事故(負傷、疾病、障害、死亡、災害など)が生じた場合に給付を行う施策として設けられています。
一方、取引先に対する慶弔見舞金制度は、取引先関係者個人やその家族に対するもの(結婚、昇進、叙勲、傷病、死亡、災害など)や、取引先の企業に対するもの(新社屋の落成、新社長就任、創立記念など)があります。
なお支給する際は、慶弔事が発生した時に遅滞なく、その内容によって随時行います。通常は現金で支給します。
慶弔見舞金制度の考え方
慶弔見舞金制度は、法定外福利厚生制度のうち最も導入しやすく、企業規模による格差がある性質のものではないため、小企業であっても大企業並みの給付ができる施策の一つであるといえます。そして、慶弔見舞金の支給条件などを明確な規程の形で定めることは、支給に該当する対象者や企業の業績に影響される不公平、不平等を排除することができます。
また、企業の福利厚生制度としての慶弔見舞金制度は、従業員の個人的な事由に対して企業が任意に金品を給付するものであることに留意しなければなりません。ですから、労働の対価として支払われる賃金とは異なり、見舞金などの支給について労働協約や就業規則などにおいてあらかじめ支給条件を定め、使用者に支払い義務を課して労働者にその権利が保障されているような場合には、税務上も給与または賞与として課税されますので、慶弔規程を作る際には注意が必要です。
慶弔見舞金規程の作り方
慶弔見舞金規程には、できるだけ具体的かつ明確に該当する項目を定めることが必要です。
慶弔見舞金規程には、規程の目的、慶弔金の種類と適用範囲(対象)、支給内容と条件、支給のための手続きなどが規定されています。
慶弔見舞金規程を作る上での留意点として、祝い金については社会一般常識の範囲内で儀礼的な金額水準としておきます。一方、弔事については、突然生じることで当人にとって予想外の出費を余儀なくされますので、見舞金などについては生活援助となる金額水準ということで高めに設定しておくと良いでしょう。
慶事にしろ弔事にしろ、金額水準の決定が最も難しいと思われます。ある原則により決定し、継続してその水準を守っていくことになりますが、決定方法として最も多いのが他社事例を収集してその水準を参考にして決める「世問相場型」です。他社事例の収集は、民間の調査機関が発表するものなどを参考にすると良いでしょう。
従業員向け慶弔見舞金の種類
次に、従業員向け慶弔見舞金の種類と規程作成のポイントを記します。
1、結婚祝い金
支給対象は従業員本人の結婚であることはもちろん、その家族の結婚も対象としているケースもあります。その場合の家族の範囲は、子女とするのが一般的です。
支給金額は、勤続年数により差を設けている会社が多く、その区分は、勤続「三年未満」「三年以上」、あるいは「五年未満」「五年以上」といった大まかな区分が多くみられます。従業員同士の結婚の場合であっても、それぞれの祝い事としてそれぞれに支給する方が良いでしょう。ただし再婚で、既に一度会社が結婚祝い金を支払っている場合は、半額にするなどの対応をしているケースもあります。また、結婚後も在籍する場合と退職する場合で差を設けているケースもあります。
2、出産祝い金
支給対象は、本人またはその配偶者の出産までとしているところが多くみられます。第一子の出産と第二子以降の出産とで区別している場合もあります。双子以上の出産の場合でも、それぞれ一人につき支給した方が良いでしょう。
夫婦ともに従業員である場合には、結婚後の夫婦に生じた慶弔関係は一家庭に生じたものと考え支給します。
死産または出産後に短期間で死亡した場合は、出産祝い金を半額にして、見舞金として支給するのが一般的です。
3、入学祝い金
支給対象は原則として義務教育である小学校、中学校を適用範囲とすることが公平性の観点から望ましいですが、高等学校の入学まで適用範囲とする場合もあります。双子以上の場合では、それぞれの祝い事であるので人数分を支給するのが一般的です。
支給水準は、たとえば小学校入学ならばランドセル購入相当額、中学校入学ならば制服代相当額などといったように、入学時に一般的に必要とされる費用を考えると良いでしょう。
支給申請については、入学証明書などの公的証明書など事実確認ができる書類を提出してもらうことになります。
4、傷病見舞金
支給対象は、従業員本人のみとするのが一般的です。それ以外を対象とする場合でも、配偶者や子女まででしょう。また、勤続「三年未満」「三年以上」、あるいは「五年未満」「五年以上」といった、従業員の勤続年数により差を設けている場合もあります。
支給額については、傷病の種類も多岐にわたるので傷病ごとの基準は定めにくく、一般的には休業期間を一定の基準としている場合が多いです。業務上の傷病によるものと、業務外での傷病によるものとで区別をつけるのが一般的です。
傷病見舞金の支給には、医師などの証明書など事実確認ができる書類を提出してもらうことになります。
次回に続く
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