ワークライフバランスとは? 意味や目的、取り組むメリットを簡単に解説!
ワークライフバランスは、企業に広く求められる考え方です。女性の社会進出や少子高齢化が進むこれからの時代には、ますます重要度が高まっていくと予想されます。
今回は、ワークライフバランスの意味や目的、メリットを解説します。企業にとっては、人材の確保やコスト削減にもつながる話ですので、参考にしてください。
ワークライフバランスとは?
まずは、ワークライフバランスとは何か、その歴史について解説します。
ワークライフバランスの定義
「ワークライフバランス」という言葉は、一般的に「ワーク=仕事」と「ライフ=生活」を別々に捉えて、両者の強弱や大小のバランスを取ることと誤解されることが少なくありません。
しかし、本来は「仕事と生活を調和させること」を目指すものです。「仕事」を充実させることが「生活」を支えることにつながり、また、「生活」が安定することで「仕事」にも意欲を持てるというように、仕事と生活の相互作用で生まれる調和に焦点を当てた言葉です。
ワークライフバランスの歴史とは? 日本で意識されたのはいつ?
日本では、高度成長期の長期雇用と会社人間的な長時間労働が続いた後、バブル崩壊の影響もあり、正社員と非正規社員の格差が広がりを見せました。その後、欧米のワークライフバランスの概念が日本にも紹介されるようになりました。
ワークライフバランスが国内でより明確に意識される流れが作られたのは、2004年6月に政府が「仕事と生活の調和に関する検討会議報告書」をまとめてからです。この報告以降、政府のさまざまな取り組みが進められるようになりました。少子高齢化の進行に対応する必要性とも相まって、現在の働き方改革の流れにつながっています。
今後は、パンデミック対策も含めた多様な働き方を推進する、ワークライフバランスを重要視する声が一層高まることが予測されます。
ワークライフバランスの正しい言葉の使い方
「ワークライフバランス」は、単に「残業をしないこと」や、「仕事かプライベートのどちらかに重点を置くこと」のように使われることが少なくありません。働き方改革に関連づけられることが多いためと考えられますが、どちらも間違った使い方です。
「ワークライフバランス」とは、「ワーク」と「ライフ」のどちらかを重要視するという考え方ではありません。「ワーク」と「ライフ」がお互いに良い影響を与えるような、相互作用の関係性を表現する言葉です。
国が掲げるワークライフバランスの目的とは?
国は「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」のなかで、「仕事と生活の調和が実現した社会」を目指すことを掲げています。
憲章によると、「仕事と生活の調和が実現した社会」とは以下の通りです。
「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」
引用元:仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章|内閣府 男女共同参画局 仕事と生活の調和推進室
具体的には、以下のような社会を目指すものです。
- 就労による経済的自立が可能な社会
- 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
- 多様な働き方・生き方が選択できる社会
就労による経済的自立が可能な社会
「就労(勤労)による経済的自立が可能な社会」とは、特に若年層を中心に、経済的自立を必要とする人が、前向きに自立した働き方ができる社会を指しています。
その対象には、結婚や子育てによって多様なニーズや希望を持つ人も含まれます。特定の層や世代の人に限定せず、経済的な自立を必要とするあらゆる人がいきいきと働き、その経済的な自立を実現できることを目指す社会です。
健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」とは、働く人がそれぞれの生活を豊かにするための時間を持つことができる社会を指しています。たとえば、健康を維持するための時間や家族や友人・知人との充実した時間、自己啓発や趣味および地域の一員として活動する時間のことです。
ワークライフバランスでは、働く人が経済的な基盤を維持するために費やす時間だけではなく、肉体的にも精神的にも豊かな生活を送るための時間を確保できる社会を目指しています。
多様な働き方・生き方が選択できる社会
「多様な働き方・生き方が選択できる社会」とは、年齢や性別などに左右されることなく、誰もがいろいろな働き方や生き方を選び、実践する機会が提供される社会のことです。また、介護や子育てなどの理由で柔軟な働き方が必要な人が差別されることなく、公正な待遇が確保されることも目指しています。
少子高齢化が進むなか、ワークライフバランスが目指すのは、女性やシニア層の人材も労働市場に参加しやすい働き方や生き方を選択でき、かつ実現できる社会です。
ワークライフバランスとライフワークバランスの違い
「ワークライフバランス」は一般に広く認知されている正しい言い方ですが、「ライフワークバランス」という言い方も使われることがあります。これは、東京都が以前から実施している「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業制度」で用いられている言葉です。
従業員が生活と仕事を両立し、いきいきと働き続けられる職場の実現に向けて、優れた取り組みを実施している中小企業などを認定公表しています。そのため、この認定制度を知っている人や認定されている企業では、ワークライフバランスと同等の意味でライフワークバランスが用いられることがあります。
企業がワークライフバランスに取り組むメリット
ここからは、企業がワークライフバランスに取り組むことにどのようなメリットがあるのかについて、解説します。
人材確保ができる
ワークライフバランスの向上に取り組むことで、企業は柔軟な働き方を望む女性やシニア層を中心に、より効果的または効率的な人材の確保が期待できます。
実際に「少子化と男女共同参画に関する意識調査」(平成18年1月実施)では、子育てする人が働きやすい環境かつ、女性が男性と同じように昇進・昇格機会のある職場は、既婚・独身を問わず男女の「仕事の満足度」「仕事への意欲」「ワーク・ライフ・バランス実現度」に良い影響を与えていると報告されています。
参考:両立支援・仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)推進が企業等に与える影響に関する報告書 | 内閣府 男女共同参画局
従業員の意欲が高まり生産性の向上につながる
従業員の仕事に対する意欲向上が期待できることも、企業がワークライフバランスを推進するメリットの一つです。文字通りワークとライフの調和が促進されることで、従業員には時間的かつ精神的な余裕が生まれます。仕事に対する集中力が高まるので、生産性の向上にもつながるでしょう。
実際、内閣府発表の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2020」にも、「時間当たりの労働生産性の伸び率」という指標にその傾向が表れています。
参考:仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2020 |内閣府 男女共同参画局
女性が働きやすい環境になる
ワークライフバランスの向上によって、女性従業員は結婚や出産を経験しても仕事を続けやすい環境になります。
内閣府が公表している「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2020」では、長期に渡って4割前後だった「第1子出産前後の女性の継続就業率」が、2010~2014年に出産した女性の継続就業率が53.1%となっています。
2005~2009年と比較して約13ポイント改善しており、ワークライフバランスが推進されたことで、女性従業員の定着率が上がっていることがうかがえます。
コスト削減につながる
ワークライフバランスへの取り組みには、業務効率の改善が不可欠です。従業員が働き方の多様性を実現するためには、より効率的に仕事をすることが求められるからです。
業務改善の方法は企業によって、さまざまな方法が考えられます。業務改善によってコストが削減できるとともに、多様な働き方の促進による時間外労働の削減も期待できるでしょう。
企業のイメージアップ効果が期待できる
ワークライフバランスが一般的に知られるようになった今、企業のイメージアップ効果が期待できる認定制度が、厚生労働省が推進する「えるぼし・プラチナえるぼし」「くるみん・プラチナくるみん」です。
特に近年は、就活生や転職希望者が志望企業を選ぶうえでの判断基準として、重要視する傾向が見られます。認定された企業にとっては、女性活躍推進に積極的に取り組んでいることを端的にアピールできる、メリットがある制度です。
独自のワークライフバランスに取り組む企業事例
「サンワコムシスエンジニアリング株式会社」は、2011年にはくるみん認定を受け、2019年にはくるみん認定に加えて、杉並区の子育て優良事業者表彰最優良賞を受賞した企業です。
「女性採用拡大」「女性職域拡大」「資格取得の奨励」「キャリアアップ支援」「女性活躍プロジェクトチームの結成」の5分野に積極的に取り組んでいます。特に「女性活躍プロジェクトチームの結成」では、1年任期でメンバーを募って毎年異なるテーマで働き方改革について議論してアイデアをまとめ、経営層への提言を行うという取り組みが特徴です。
「大成建設株式会社」は、2007年、2009年~2012年、2014年にくるみん認定を受けています。
取り組みとしては「基幹職(総合職・専任職)の女性を増やす取り組み」「育児との両日支援」「男性の育休取得を奨励」「働き方改革」「女性のキャリア支援」の5分野です。
特に「男性の育休取得を奨励」するために、育児休業のうち5日間を有休化し、配偶者が常態的に子を養育できる場合でも取得可能とするなど、男性が育児取得を取りやすくするための取り組みを積極的に行っています。
ワークライフバランスについてのまとめ
ワークライフバランスは、仕事と生活を調和させて、お互いに良い影響をもたらすことを目指した言葉です。企業にとっては、優秀な人材の確保や生産性の向上、コスト削減など、さまざまなメリットをもたらします。
政府もワークライフバランスを推進するための認定制度を設けており、企業のイメージアップにも効果的です。この記事で紹介した企業の事例を参考にしながら、自社に合ったワークライフバランスに取り組んでいきましょう。
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