このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、対応ブラウザでご覧下さい。

賞与にも社会保険料がかかる! 理由や計算方法、注意点を徹底解説

賞与にも社会保険料がかかる! 理由や計算方法、注意点を徹底解説

会社や個人の業績に応じて支給される賞与(ボーナス)は、企業で働く人にとって嬉しいものです。

しかし、賞与にも、毎月の給与と同じように社会保険料がかかることをご存じでしょうか。本記事では、賞与にも社会保険料がかかる理由や計算方法、注意点を解説します。

社会保険料の仕組みを理解し、賞与の金額を正しく把握するのにお役立てください。


この記事の監修者
西岡社会保険労務士事務所  代表 

賞与は社会保険料が引かれる

まずは、賞与の意味と、賞与に社会保険料がかかる理由を見ていきましょう。

そもそも賞与とは?

賞与とは、会社や個人の業績に応じて毎月の給与とは別に支給される賃金のことで、「ボーナス」とも呼ばれます。

日本の企業では、夏と冬の決まった時期に支給されるのが一般的ですが、支給時期や回数、支給の有無が決まっていないこともあります。労働基準法では、賞与に関する決まりを設ける場合に限り、就業規則への記載を義務付けています。

一方、社会保険上の賞与とは、「賃金、給料、俸給、手当、賞与、その他いかなる名称であるかを問わず、被保険者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の支給のもの」のことです。

社内での呼び方に関係なく、年4回以上従業員に支払うものを「給与」、支払い回数が3回以下のものを「賞与」として区分します。

賞与に社会保険料がかかる理由

2003年(平成15年)4月より、社会保険で「総報酬制」が導入され、社会保険料が給与だけでなく賞与にもかかるようになりました。2003年3月以前は、賞与に対して1%の厚生年金保険料と、1%以内の健康保険料がかかるだけでした。

総報酬制の導入前は、年収が同じでも、賞与の割合の高い人の社会保険料は安くて済むという不都合な状況でした。総報酬制によって、不都合な状況を解消するとともに、毎月の給与にかかる保険料負担の軽減が図れます。


賞与における社会保険料の計算方法

ここでは、賞与にかかる5つの社会保険料の計算方法を紹介します。

  • 健康保険料の計算方法
  • 厚生年金保険料の計算方法
  • 介護保険料の計算方法
  • 雇用保険料の計算方法
  • 源泉所得税の計算方法


なお、賞与に対する所得税は、賞与から社会保険料分を差し引いて計算します。

  • 賞与に対する所得税 =(賞与 -社会保険料) × 所得税率

所得税率は、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和4年分)」を使って調べましょう。

健康保険料の計算方法

健康保険料は「標準賞与額」を基に、次の通り計算します。

  • 健康保険料 =標準賞与額 × 健康保険料率

標準賞与額とは、支給された賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額です。後で説明する、厚生年金保険料や介護保険料の計算でも同様です。

健康保険料率は、各都道府県の協会けんぽや企業の健康保険組合で異なり、1,000分の30から130までの間で決まっています。保険料率の目安は1,000分の100、つまり10%程度です。

健康保険料は労使折半するため、企業または従業員が負担する保険料は「標準賞与額 × 健康保険料率 × 1/2」となります。賞与が50万円ならば、それぞれの健康保険料の目安は、2万5,000円程度です。

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料は前述の「標準賞与額」を使って、次の通り計算します。

  • 厚生年金保険料 = 標準賞与額 × 厚生年金保険料率

厚生年金保険料率は健康保険とは異なり、全国一律18.3%です。法改正がない限り、この料率が継続します。

総報酬制の導入以降、2017年(平成29年)9月まで数回にわたり料率の引上げがありましたが、現役世代の負担を抑えるため、これ以上の料率アップは行わないことになりました。

健康保険料と同様、企業または従業員が負担する保険料は、「標準賞与額 × 厚生年金保険料率 × 1/2」です。それぞれの負担額は賞与の約10%で、社会保険料のなかで最も高額になります。

介護保険料の計算方法

介護保険料は次の通り、保険料率を掛けて計算します。

  • 介護保険料 = 標準賞与額 × 介護保険料率

介護保険料率は、健康保険料と同様、健康保険組合によって異なります。ただし、協会けんぽについては都道府県に関係なく一律で、2022年3月以降の保険料率は1.64%です。

介護保険の対象となるのは、次の通り40歳以上の人です。40歳未満の人は、介護サービスが受けられない代わりに、保険料負担もありません。

  • 第1号被保険者:65歳以上の人
  • 第2号被保険者:40歳以上64歳までの人

第2号被保険者の保険料は健康保険料と一緒に給与天引きされますが、65歳以上の第1号被保険者の保険料は、原則として年金から差し引かれます。企業または従業員が負担する保険料は、「標準賞与額×介護保険料率×1/2」です。

雇用保険料の計算方法

雇用保険料は、これまで説明した社会保険料と異なり、「標準賞与額」ではなく実際に支給された賞与額を用いて計算します。

  • 雇用保険料=賞与額×雇用保険料率

また、介護保険料率は事業内容によって異なること、企業と従業員の負担割合が異なることなどが、ほかの社会保険料との違いです。

介護保険料率と労使の負担割合は、次の通りです。

(2022年10月~2023年3月までの雇用保険料率)

従業員負担

企業負担

企業負担の内訳

雇用保険

料率

失業給付などの保険料

雇用保険2事業の保険料

一般の事業

5/1,000

8.5/1,000

5/1,000

3.5/1,000

13.5/1,000

農林水産・

清酒製造

6/1,000

9.5/1,000

6/1,000

3.5/1,000

15.5/1,000

建設の事業

6/1,000

10.5/1,000

6/1,000

4.5/1,000

16.5/1,000

失業保険や育児休業給付金などに充てる保険料は労使折半、雇用保険2事業分は企業負担となります。また、雇用保険料率は、全国一律で毎年見直されます。

源泉所得税の計算方法

賞与に対する源泉所得税は、「賞与から社会保険料を控除した金額」に税率をかけて計算します。

国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和3年分)」に、「賞与から社会保険料を控除した金額」と「扶養親族数」に応じた税率が記載されています。

  • 賞与に対する源泉所得税=(賞与-社会保険料)×税率

賞与金額が高いほど税率は高く、扶養親族数が多いほど税率は低くなります。給与や賞与にかかる所得税は、支給額や扶養親族数などから概算して源泉徴収されるので覚えておきましょう。

年末調整によって、1年間の正確な所得税額を算出し源泉徴収された税額を精算します。源泉徴収で所得税の払い過ぎが判明すれば、還付を受けられます。


賞与計算の注意点

賞与計算には、次のような注意点があります。

退職予定者は、控除対象にならないことも

退職予定者への賞与については、支給月と「資格喪失月」によって、社会保険料がかかるケースと、かからないケースがあります。

資格喪失月とは、退職日の翌日(資格喪失日)が属する月のことです。

  • 資格喪失月の前月までに賞与を支給した場合:社会保険料がかかる
  • 資格喪失月以降に賞与を支給した場合:社会保険料がかからない

例えば、10月末日に退職した場合、資格喪失日は11月1日となり、資格喪失月も11月です。前月の10月末までに賞与を支給すると社会保険料の控除が必要ですが、11月1日以降に支給した場合、社会保険料はかかりません。

10月10日に退職した場合、資格喪失月は10月です。社会保険料がかかるのは、9月末までに賞与を支給した場合になります。同じ月に退職しても、月中退職と月末退職とでは、社会保険料がかかる時期が1か月違ってきます。

社会保険料の対象には上限がある

賞与にかかる社会保険料には、上限があります。実際には、計算のベースとなる「標準賞与額」について上限が定められているため、その結果として、社会保険料は一定額の範囲内で収まります。

健康保険料や介護保険については、標準賞与額の1年通算(4月1日~翌年3月末日)が最大573万円です。6月と10月、12月に200万円ずつ賞与が支給される場合、各月の標準賞与は、200万円・200万円・173万円となります。

厚生年金保険料については、1か月の標準賞与額が最大150万円と定められています。賞与が150万円でも200万円でも、標準賞与150万円に対して厚生年金保険料がかかります。


賞与にかかる社会保険料についてのまとめ

賞与にも社会保険料がかかる理由や計算方法、注意点を解説しました。

賞与の額は、毎月の給与をベースに「給与1か月分」「給与1.5か月分」のように決定される場合がありますが、社会保険料がかかるため、その金額がすべてもらえるわけではない点に注意が必要です。

社会保険料の計算方法を大まかに覚えておくだけでも、自分が支払っている税金に意識を向けることができるでしょう。

【書式のテンプレートをお探しなら】

この記事に関連する最新記事

おすすめ書式テンプレート

書式テンプレートをもっと見る

監修者プロフィール

author_item{name}

西岡 秀泰

西岡社会保険労務士事務所 代表

生命保険会社に25年勤務し、FPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。
2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
得意分野は、人事・労務、金融全般、生命保険、公的年金など。

【保有資格】社会保険労務士/2級FP技能士

この監修者の他の記事(全て見る

bizoceanジャーナルトップページ