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新規事業(副業)はじめました。1

著者: 中小企業診断士  山本 哲也

新規事業(副業)はじめました。1

今回は、このごろ急に身近になった「副業」について一緒に考えてみたいと思います。

ニュースなどで頻繁に取り上げられているけれど、身の回りに情報や助言をくれそうな人おらず、たくさんの疑問をお持ちのみなさん。

「興味はあるけれど、自分にできるだろうか?」「自分にできることって、どんな仕事だろう?」「そもそも自分の力は通用するのか?」「どのくらい稼げるものなんだろう?」

自分の仕事を外部の方や企業の方に役立てることができて、副収入も得られる。しかも、それを政府が推奨している。とても気になりますよね。

私や友人の経験談も交えて、ざっくりまとめてみました。

すでに、パラレルキャリアの時代が来ています。みなさまも副業にチャレンジしてみてください。


1. 働き方改革と副業の関係

みなさんは、副業と言えばどのようなイメージをお持ちでしょうか?

会社に隠れて夜間や休日に飲食店でアルバイトをしたり、あて名書きや袋詰めなど内職と呼ばれているようなものだったりを思い浮かべるのではないでしょうか。

最近ならフードデリバリーの配達員など、会社以外の場所で時間給や歩合給で働くもの、また、何らかの事情でお金が必要な人たちのもの、といったところでしょうか。

ところが副業はそれほど特別なものではなく、図1のように過去20年ほどの間に着実に増加してきています。

そして、新型コロナウイルス感染症拡大による環境変化によって、副業を取り巻く環境は大きく変化し、いま副業が非常に注目されています。

2021年にランサーズが行った調査によると、副業や兼業をする人は去年から4.5%増えて439万人に上る見通しとのことで、新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、収入の確保や仕事のスキル向上を考えている人が増えていると見られます。

図1

(1)国が後押しをしている理由

平成29年3月に政府が示した「働き方改革実行計画」では、以下のような基本的な考え方が示されています。

①労働制度の抜本改革によって労働者がより良い展望を持てるようにしつつ、②労働生産性を改善する。③これらの改革が消費を押し上げ、みんなで豊かになれる。

つまり、人口減少によって不足する労働力への対策や、都市部への人口集中によってより深刻さを増す地方都市の労働力不足への対策は、これまでのようなやり方ではとても無理というわけです。

「このままでは、日本の将来の見通しが立たない。だから、いろいろな働き方でもっと活躍してください」というわけです。

平成30年1月に厚生労働省が示した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、さらに具体的に示しています。

  1. 現状、副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にある。その目的は、収入増加、活躍の場を広げたい、ネットワーキング、時間がある、本業に生かせる能力の活用やスキルアップなど多様である。
  2. また働き方も、正社員や時間給だけでなく、会社役員や自営業などまで多様になっている。
  3. よほどのことがない限り、労働時間以外の時間において、企業は労働者の自由を制限することは許されない。

一昔前までは「労働時間を減らすことで労働者の健康を守り、余暇時間を確保することで消費を活性化する」という方針であったことを思うと、180度の方針転換だと感じます。

(2)労働者のメリットと留意点

厚生労働省では、労働者のメリットとして以下のようなことを挙げています。

  1. 社外での活動はスキルアップの機会となり、自己のキャリアアップにつなげることができる。
  2. 自分がやりたいことに挑戦することで、自己実現を追求することができる。
  3. それによって収入が得られれば、所得の増加となる。
  4. リスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。

日本では、開廃業率が先進国諸国と比較して非常に低いという問題があります。具体的には、大企業によって有能な人材が囲い込まれており、急成長するスタートアップやベンチャー企業が諸外国と比べて生まれづらい環境になっています。

また、長年続いてきた各種の支援策がゾンビ企業を増やし、正常な新陳代謝が起きづらい環境にもなっています。

国が働き方改革を推進する理由は、労働人口減少といった大きなテーマだけでなく、これらの具体的課題への対応策でもあるわけです。そのような点でも国の真剣さが理解いただけると思います。

一方、厚生労働省は労働者の健康にも配慮が必要だと訴えており、以下のような留意点を示しています。

  1. 就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理もしっかりすること。
  2. 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識することなど、所属企業への配慮が必要。
  3. 1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、雇用保険などの適用がない場合がある。

(3)一方で、民間企業では温度差があるようです

図2

図2の通り、副業・兼業を許可している企業は11.2%にとどまっています。こちらはコロナ前の調査データですので、現状は2倍程度にまで増加しているようです。

しかし、それでも半数近くの企業では副業・兼業を禁止しており、容認している企業においても申請制度や審査制度などを運用しています。これは、副業希望者にとってはプレッシャーがかかる状態です。

では、企業側はどのような理由で反対しているのでしょう?

全面禁止または今後も禁止を継続すると回答した企業によると、「過重労働につながるから」が最も多い理由になっています。

一方で許可している企業では、以下のようなことをメリットとして挙げています。

  • 労働者が外部から知識やスキルを獲得できる。人脈の構築ができる
  • 労働者の自律性・自主性が高まる
  • 優秀な人材の獲得や流出防止になる

なんとなく、各企業の社風次第かなと読み取れるデータです。

厚労省のガイドラインは、先述の通り「過重労働のリスクはあるものの、メリットも大きいため、注意してどんどん進め」となっています。このように、副業・兼業は一過性の流行ではなく、今後ますます加速し、日本社会に定着していくことが予測できます。


2. まとめ

今回は、副業・兼業を希望する労働者にとって「外部環境がどのように変化しているのか?」についてお話しいたしました。一言で言うと、国の旗振りに加えて、新型コロナウイルス感染症拡大によるリモートワークの普及が副業・兼業の追い風になっていると言えそうです。

ここから先は次回に持ち越しますが、副業希望者を支援するサービスも充実してきており、まさに副業元年と言えます。

しかしながら、政府、企業が口を揃えている「過重労働」から健康を守るのは、労働者の自己責任となっています。

私を含めた周りの副業人材を見ていて感じることですが、「目的を明確にし、戦略的に働いている」人においては、このような心配はないようです。

「あなたの兼業目的は、明確になっていますか?」「その目的達成のために、戦略的に取り組めていますか?」

次回は、兼業の始め方や戦略的な取り組み方などについてお話ししたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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著者プロフィール

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山本 哲也

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1966年生まれ,大阪府大阪市出身。
1998年ビルクリーニング技能士取得
2019年年中小企業診断士登録
総合サービス事業会社にてオープンイノベーションによる新規事業開発を担当。得意分野は新規事業開発、事業企画、営業チームビルディング、フランチャイズビジネス

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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