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新規事業につながるイノベーションが起きる組織と起きない組織 その1

著者: 中小企業診断士  山本 哲也

近年、大企業だけでなく経済産業省も本腰を入れて“新規事業開発”に取り組んでいる様子が、報道や白書などからもうかがえます。

また、巷では多くのスタートアップイベントが行われ、大企業がCVCを作り、ベンチャー投資をどんどん大きくしています。

加えて、コロナによって大きく変化した外部環境への対応や補助金制度の創設など、日本中の多くの中小企業で新規事業に取り組む雰囲気が醸成されつつあります。

しかし一方で、企業担当者からは……、

  • 「会社のお金で遊んでいると思われている。」
  • 「社内から奇異の目で見られてつらい……」
  • 「自分でも手ごたえがない。相談すべき先駆者がいない。」

など、ネガティブな声が多く聞かれます。

では、“成功”と評価されている新規事業開発の現場では一体何が起きていて、“失敗”と呼ばれる事例にはどのような原因が、そして解決策があるのかについて考えていきたいと思います。


新規事業につながるイノベーションが起きる組織と起きない組織 その1

イノベーション活動がうまくいかない企業の人事評価制度とは

企業は、目的を同じくする人の集まり、つまり組織であり、人とルールがそれを支えています。その意味で、従業員の活性化や従業員満足(ES)の向上は人事施策上の重要論点となっています。

では、新規事業開発がうまくいっていない企業では、どのようなことが起きているのでしょうか?

ところで、あなたの会社の人事制度や人事評価制度は何種類ありますか? 一度思い浮かべてみてください。

一般的な企業では、おそらく1つではないでしょうか?では、なぜ人事制度が1つなのでしょうか?

それは、まだ2つ目が生まれていないからです。ひょっとしたら、今まさに2つ目の制度を必要としている時期に差し掛かっているのかもしれません。

いくつかの事業分野に分かれて活動している企業では、複数の人事制度を運用している企業も存在します。

例えば、小売り業やサービス業など業態が違えば、収益構造が違ったり業態によって営業時間が違ったりするため、制度が別になっているほうがうまく機能する場合があるからです。


では、どうやって人事制度上の問題を解決すればよいのか?

2つの人事評価制度を設定しましょう。

子供の頃のことを思い出してください。小さい頃は、自分で着替えができたらどんな親も大喜びで褒めてくれたものです。しかし、自分で着替える中学生を褒める親はいるでしょうか?

つまり、働き方や成果の定義、難易度など、細かな評価軸や人事制度が必要なのです。これまでの日本企業は創業以来のビジネスに継続して取り組んできた企業が多いため、それでも不都合がなかったのです。

しかし、新規事業開発チームを設置して、本腰を入れて成功を目指すのであれば、新規事業開発担当者用の評価制度や人事制度が必要なのです。

例えば……。一般的な事業会社の評価制度では、

  1. 売上や利益といったP/L(損益計算書)や、それを分解した活動量などを指標とする定量評価
  2. 後進育成や他者への貢献などの定性評価
  3. そのいずれにも属さない事業外活動(資格取得や社会貢献)の組み合わせ

が一般的です。

つまり、新規事業用のP/L(損益計算書)があれば、この問題は解決することになります。新しい人事評価制度を構築するのは、それほど難しいことではありません。

具体的には、既存事業の制度設計に合わせて評価ポイントを設計するだけです。大きくは、以下の2つを明らかにすることになります。

  • ①新規事業開発のプロセスの定義
  • ②結果(ゴール)の定義

①新規事業開発のプロセスの定義

既存事業の売上を構成している大まかなプロセスは、原材料の調達、設計、製造・加工、販売・マーケティング、流通、サービス・アフターフォローとなっており、これらを支えるのが管理部門(人事、経理、総務など)です。

このように、新規事業開発のステップを定義します。例えば、リサーチ・分析、アイデア・発想、プランニング、実証実験、販売テスト、ローンチといった大まかな分類でも、社内コンセンサスが取れさえすれば、何ら問題はありません。

②結果(ゴール)の定義

プロセスの設定が完了したら、それぞれのプロセスにおける成果(結果)を定義します。

これは、新規事業開発という仕事を、既存事業と同様に“ビジネスモデル”として捉えることで検討を容易にするためです。

つまり、「1事業を生み出すのに、どれくらいの活動量とリソースが必要か?」「また、その難易度は?」などを材料に、評価指標を設定します。

既存事業にも新規事業の時代(創業期)があり、どうすればうまくいくのかわからずもがいていた時期があり、その時期によって注力すべきプロセスに違いがあったはずです。

「創業期にどのような評価指標があればよかったのか?」について考えることからも、ヒントを得られるのではないでしょうか?

また実際には、新規事業開発部門だけではなく、人事、既存事業部門、外部専門家も入れ、社内全体のコンセンサスと公平性・透明性を担保できるように進めることも重要になります。


人事制度の改革を通じて、組織文化も変化させる必要がある!?

ここまで、新規事業開発のための新しい人事評価制度の設計についてお話ししてきましたが、これは組織を分けて理解するためであり、組織を分断するためではありません。

新規事業開発という仕事は非常に不確実性が高く、棚ぼたや偶然、ライバル会社からヒントを得る場合もあれば、逆に迷っている間に出し抜かれてしまうこともあるのです。ですから、既存事業と新規事業開発チームには相互に助け合い協力する関係が必要です。

既存事業から開発チームに潤沢に開発資金が流れるだけでも、社内に不満が生まれるでしょう。その不満が原因で、市場の変化やアライアンス先からの情報が開発チームに流れないようなケースも散見されます。

既存事業の持つ幅広いネットワークは大きな社内リソースですから、第一優先で活用すべきものと捉えましょう。

一方、新規事業開発の過程で、既存製品やサービスの改善、合理化につながるヒントが得られることも多いものです。

なぜならほとんどの場合、開発チームは既存事業経験者で構成されており、そのアンテナを有しているからです。特に小規模企業では既存事業組織内に企画や開発担当が置かれていないことが多く、これらの情報が開発チームでストップされてしまうことで、既存事業ではレガシーシステムが朽ち果てるまでしがみつくしか方法がなくなってしまいます。

一般的には開発チームのほうが劣勢に立たされることが多いため、経営者が先頭に立ってイノベーションや新規事業開発を後押ししているように見えますが、実はこのように各社それぞれ事情を検討したうえで、企業文化も踏まえて社内の雰囲気を調整する必要があります。

これが、リーダーの大切な役割になります。


まとめ

今回は、新規事業につながるイノベーションが起きる組織と起きない組織について紐解きつつ、「新規事業開発を成功させるには?」について一緒に考えてきました。

自社と比較しつつじっくりお読みいただけば、とてもシンプルな、当たり前のことばかりだということがご理解いただけたと思います。

ただし今回は、問題の発生原因をどのように理解・共有し、いかにして解決するかという点を重点的に説明いたしました。つまり、あくまで入口のお話として理解してください。

安定的に新しい取り組みを生み出し続けるには、これらを仕組みとして組織内に取り入れ、工場の生産ラインのように、安定した品質のアウトプットが出るところまで昇華させる必要があります。

次回以降では、新規事業開発を仕組み(ビジネスモデル)として定着させるために必要なコツについてお伝えしたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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著者プロフィール

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山本 哲也

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1966年生まれ,大阪府大阪市出身。
1998年ビルクリーニング技能士取得
2019年年中小企業診断士登録
総合サービス事業会社にてオープンイノベーションによる新規事業開発を担当。得意分野は新規事業開発、事業企画、営業チームビルディング、フランチャイズビジネス

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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