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VUCAとは? 予測困難な時代に生き抜くための必要スキルや人材育成について解説

VUCAとは? 予測困難な時代に生き抜くための必要スキルや人材育成について解説

予測困難な現代社会の特徴を捉えるうえで、よく使われる用語に「VUCA(ブーカ)」があります。

もとは軍事用語として、冷戦終了後に戦略の見通しが不透明となった状態を表した言葉でしたが、近年では社会経済環境を示す用語としても多用されています。

ここでは、VUCAの意味やVUCA時代に起こり得ること、それらに対応するために必要なスキルなどを紹介します。


この記事の監修者
officeたまこぶ  代表 / 国家資格キャリアコンサルタント 

VUCAとは何か

VUCA(ブーカ)は、予測困難な現代社会の特徴を捉えるうえで、よく使われる用語です。

時代を生き抜くための人材論や組織論にも活用される、VUCAの概念を詳しく解説します。

VUCAの提唱者は?

VUCAは軍事用語として誕生しました。1987年、米国の陸軍戦略大学のカリキュラム開発資料内で使われたのが初出といわれています。

1990年代に入ると、冷戦が終結します。核兵器メインの軍事戦略が前提だった時代が終わり、戦略の見通しが不透明になった状態を指す言葉として、米国内で頻繁に使われるようになったのです。

その後、2010年代になると、ビジネスの場面でも用いられるようになりました。

VUCAの意味

VUCA(ブーカ)とは、以下の4つの単語の頭文字をつなげた造語です。

変動性が高く、不確実で複雑、さらに曖昧さを含んだ社会情勢を示す言葉として使われています。

  • V(Volatility):変動性。変化のスピードが想像以上に早く、未来の予測が難しい
  • U(Uncertainty):不確実性。「何が起きるか?」予測が難しい
  • C(Complexity):複雑性。様々な出来事やモノが複雑に絡み合う
  • A(Ambiguity):曖昧性。出来事の因果関係がはっきりせず、説明できない

つまりVUCAとは、「社会やビジネスにとって先行き不透明で、将来の予測が困難な状態」を意味します。

VUCAを構成するそれぞれの要素を、以下で詳しく見ていきましょう。

変動性(Volatilliy)

変動性(Volatility)はテクノロジーの進化や、それに伴う様々な価値観や社会の仕組み、顧客ニーズなどがどんどん変化し、未来の予測が難しいことを指します。

例えば、2007年に登場したiPhoneの影響から、スマートフォンは爆発的に広がり、2020年には8割以上の世帯で保有されるまでになりました。

参考:総務省|令和3年版 情報通信白書|デジタル活用の現状

技術革新のスピードが上がるにつれて便利さは増しますが、ビジネスモデルや市場の成熟化、陳腐化のサイクルが早まり、先の予測が立てづらくなっています。

不確実性(Uncertainty)

不確実性(Uncertainty)は、自然環境や政治・国家、制度などにおける、予測の難しさを示しています。

日本の場合、人口増加が進む世界とは真逆で、少子高齢化と人口減少が進んでいるうえ、それに伴う地方の過疎化も深刻です。

また、東日本大震災のような大地震のほか、台風や大雨、夏の酷暑といった自然災害も以前よりも増加。

加えて新型コロナウイルスのような未知の疾病が発生するなど、不確実な要因が多く、企業や個人が将来を予測することが難しくなっています。

複雑性(Complexity)

複雑性(Complexity)は、さまざまな出来事やモノが複雑に絡み合い、一筋縄ではいかない状況を指します。

経済のグローバル化により、ビジネスは複雑化しました。

1つの企業あるいは国での成功事例を再現しようとしても、その国の法律や文化、習慣や常識、ルールなどが影響して、うまくいかない場合もあります。

例えば、一般人がドライバーとして乗客を運ぶ「Uber」は、米国で一気に広がりました。しかし日本では、道路運送法で「旅客自動車運送事業」を営むには許可の取得が必要なため、普及していません。

曖昧性(Ambiguity)

出来事の因果関係がはっきりせず、説明できないのが、曖昧性(Ambiguity)です。

変動性、不確実性、複雑性が複雑に組み合わさり、因果関係がはっきりしない出来事が増えています。

そのため、過去の実績や成功例に基づいた手法が通用しなくなっているのです。

かつては、マスメディアで取り上げられれば流行につながりました。

しかし、インターネットが普及した現代では、情報量の増加と個人の価値観の多様化が影響し、爆発的なヒットは減少傾向です。


VUCAの時代に起こること

上記のような特徴を持つVUCAの時代には、どのようなことが起こると想定されるのでしょうか。

VUCA時代に起こり得ることを以下の3つに分け、具体例を交えて解説します。

  • 想定外の出来事が起こる
  • 社会の概念が覆る
  • 常識が非常識に変わる

想定外の出来事が起こる

地球温暖化に伴う気候変動や異常気象、台風や地震による災害、さらには新型コロナウイルスのような疾病の流行など、想定外の出来事が増えています。

また、ロシアによるウクライナ侵攻など各国の政治情勢も不透明です。

日本でも少子高齢化とそれに伴う人口減少、さらには終身雇用や年功序列の崩壊により、人材の流動化が進んでいます。

たとえ予測できない事態が起きたとしても、過去のスタンダードな成功事例にとらわれず、柔軟に受け入れる姿勢が大切です。

社会の概念が覆る

社会の概念が覆る(くつがえる)ような、画期的なサービスも登場しています。いわゆる、エコノミーシェアリングと呼ばれる業態がそれに当たります。

一般人がドライバーとなって乗客を運ぶ「Uber」は、革新的なサービスとして米国で普及すると同時に、タクシー業界大手の倒産など既存の構造に打撃を与えました。

また、「Airbnb」では、一般の人が持っている施設と旅行者をつなぎ合わせ、宿泊すれば収益が入るビジネスモデルを構築しています。

常識が非常識に変わる

常識が非常識に変わることもあります。

例として、これまで必要とされていた経営資源の負債化が挙げられます。

従来は設備投資や必要な人材の雇用や育成などは、自社でまかない、固定資産化してきました。

しかし、テクノロジーの著しい進化で新たな製品やシステムが生まれ、自ら経営資源を持つ必要性がなくなったのです。

家電メーカーのシャープが経営不振に陥り、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収されたきっかけも、液晶テレビ事業やソーラー事業への過剰な設備投資でした。


VUCA時代に対応するために必要なスキル

これまでの常識が通用しない、予測不可能なVUCA時代。

この時代を生き抜くためには、特定のスキルが必要になります。

VUCA時代に求められるスキルを、個人とビジネス、双方の観点から見てみましょう。

個人に必要なスキル

VUCAの時代に対応するため、個人はどのようなスキルを磨くべきなのでしょうか。

VUCA時代を生き抜くために必要な、問題発見力と解決力、自分で考える力をそれぞれ解説します。

問題発見力と解決力

VUCA時代に個人に必要なスキルとして挙げられるのが、「問題発見力と解決力」です。

特に大事なのは、問題を見つける力でしょう。
先の見通しが立てづらい時代だからこそ、社会や組織の中で顕在化していない問題を自ら発見し、定義しなければなりません。

問題もこれまでとは違うケースが多く、成功事例のパターンにとらわれずに物事の本質を見抜く力が求められます。

そのうえで解決策をいち早く導き出し、実行に移せる能力も必要です。

自分で考える力

「自分で考える力」も、VUCA時代の個人に必要なスキルです。

企業に身分や給与を保障されている時代は終わりました。

組織に属していても他から求められる人材になるには、自分の頭で考えて行動する「生き抜く覚悟と能力」が不可欠です。

英国オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士は、株式会社野村総合研究所との共同研究で、「日本の労働人口の約49%が就いている職業で、機械に代替可能」という試算結果を出しました。

出典:総務省|平成30年版 情報通信白書|職業の変化

しかしAIは万能とは言えず、課題の解決や創造的なアイディアを生み出す仕事は苦手です。

だからこそ人間にしかできない「考える力」にフォーカスし、高めていく必要があるのです。

ビジネスに必要なスキル

VUCA時代のビジネスを成功させるためには、次のようなスキルを磨く必要があります。

  • ビジョンを明確化する力
  • 情報収集力
  • 学習し続ける力・チャレンジ力

それぞれを詳しく解説します。

ビジョンを明確化する力

VUCA時代は、将来を正確に予測するのが難しい状況でも、変化していく環境に適用しなければなりません。

そこで個人でも組織でも必要なのが、明確なビジョンです。

「こうありたい」という意思表示があり、チームで共有できていれば、目標達成に向けた推進力が高まります。

逆にビジョンを持っていなければ一貫した対応ができず、その都度、一時的にしのぐ状態になりかねません。

明確なビジョンは、個人や組織の不安を解消する手掛かりになります。

情報収集力

ビジネスが置かれている環境が急激に変化するVUCA時代は、質の高い情報収集力が不可欠です。

情報は新たな革新を起こしたり、道を切り開いたりする材料になるからです。

情報収集する前に、目標や実現に向けた段階を設定します。

そのうえで、変化が起きている状況を見極めながら、情報源となる媒体の特徴を把握し、活用しなければなりません。

特にインターネットの情報は玉石混合のため、注意が必要です。

得られた情報をアウトプットするまでを「情報収集」と捉えると、新たなアイディアが生まれる可能性も高まります。

学習し続ける力・チャレンジ力

VUCA時代には、学び続ける力やチャレンジ力も必要なスキルです。

テクノロジーの進化により社会が急激に変化していくと、これまでの経験や価値観、常識では通用しなくなることも増えてきます。

これを乗り越えるためには、継続的な学びが不可欠です。

自分の生活リズムに合わせて学びが継続できる環境をつくり、習慣化していきましょう。

同時に、常に自分ごとに置き換えて考える癖を付けたり、気になったことは進んで取り組むなど、知識・経験から素早く学習できる力(ラーニング・アジリティ)を高める工夫も必要です。

VUCA時代に合う人材育成

企業の持続的成長のために、社員の能力を最大化するのが、人材育成の目的です。

VUCA時代には、想定外の出来事も乗り切れる人材が求められます。

そのためにも、「自らのキャリアにオーナーシップを持てる人材」「迅速で責任のある決断ができる人材」「新たなリーダーシップ能力を持った人材」を育成するのが不可欠です。

企業は、従業員が自らキャリアを描けるように成長を支援するほか、企業に対するエンゲージメントを高めるなど、多様な人材育成策を講じていきましょう。

結果として、優秀な人材の流出に歯止めをかけることにもつながります。


VUCAについてまとめ

冷戦終了後に、戦略的見通しを立てづらい状態を示すために生まれた用語「VUCA」。

「V(Volatility):変動性」「U(Uncertainty):不確実性」「C(Complexity):複雑性」「A(Ambiguity):曖昧性」の4つの要素を併せ持ち、先の予測が困難である状態を指しています。

VUCAの概念を知り、それに対応するスキルを磨くことは、時代を生き抜くうえで欠かせません。

現在では、ビジネスシーンでも頻繁に用いられるようになったVUCAを理解し、予測困難な時代のビジネスを成功へと導きましょう。


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監修者プロフィール

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宗像 陽子

officeたまこぶ 代表 / 国家資格キャリアコンサルタント

大学卒業後、地方新聞社のスポーツ記者などを経て、キャリアコンサルタントに転身。

公共機関や都内私立大学で学生や既卒者の就職支援に当たった後、フリーランスとして独立。

現在は、「その人のありのままを受け止める」姿勢を大切に、複数の大学で学生のキャリア支援に従事するほか、氷河期世代や高校生向けの講座への登壇、ライティングと幅広い活動を展開している。

新聞記者経験で積み上げた文章力を活かした応募書類作成や講座が得意。

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