誓約書の書き方と法的効力の有無について、目的別のテンプレートを紹介
誓約書とは、両者で交わす約束の覚書です。有名なものに「機密保持誓約書」などがあります。
誓約書は通常ならば2部作成し、両者で保管することが多い書類ですが、両者のサインがあれば1部でも効力はあります。しかし、1部しか作成していないと紛失の恐れや、トラブルの元になるので注意が必要です。
本コラムでは、誓約書の書き方や注意点と目的別の例文を記載した誓約書のテンプレートをご紹介します。


誓約書とは?
誓約書とは、当事者が何らかの事項を約束する際に、相手方に提出する合意書です。通常、当事者間でトラブルが発生した際に、トラブルの元になった行為をした者が「今後そのような行為はいたしません。」と約束する際に作成されます。
また、トラブルの発生を未然に防ぐために、事前に約束を交わす場合にも作成されます。そのため、約束を守る意志を表明する提出者のみが署名捺印し、受け取る側は署名捺印をしません。
誓約書には法的効力がある
誓約書に書かれた内容は、公序良俗に反しない限り、法的効力を有します。
そのため、相手方と裁判(訴訟)になった場合にも、誓約書を証拠として提出することができます。従って、誓約した者が誓約書の内容を遵守しなかった場合、損害賠償責任などを負う可能性があります。
ただし、以下のような場合には、誓約書が無効・取消しとなる可能性もあるので注意が必要です。
・誓約書の内容が公序良俗に違反する場合(民法第90条)
・作成者に錯誤(無意識な誤り)があった場合(民法95条1項)
・詐欺・強迫に基づく場合(民法第96条)
・誓約書の作成時点で、作成者に意思能力がない場合(民法3条の2)
・作成者が未成年であり、法定代理人の同意がない場合(民法5条2項)
・強行法規に違反する場合
・誓約書の内容が不明確な場合
また以下のように、誓約書が労働基準法などに違反している場合も無効・取消しとなります。
・誓約者に残業代を請求させない(労働基準法第37条)
・競業禁止など、誓約者の職業選択の自由を害する
誓約書の書き方ガイド
誓約書の書き方は法律で定められているわけではありませんが、いつ、誰と誰が、どのような内容で合意を交わしたのかを明確にする必要があります。
誓約書の主な記載項目は、以下の6つです。
・表題:単に「誓約書」もしくは「秘密保持誓約書」や「入社誓約書」などと具体的に記載する
・誓約者の情報:誓約者の氏名や住所、所属先、役職などを記載し、署名・押印する
・作成日:誓約書を作成した日付を記載する
・作成理由:誓約書を作成することとなった理由やトラブルの原因を記載する
・誓約内容:誓約者が約束する事項の内容を記載する
・罰則:誓約者が誓約内容を遵守しなかった場合の罰則を記載する
目的別の誓約書テンプレート
秘密保持誓約書
従業員は勤務期間中様々な情報に接することとなります。その中には他に漏らされては困る会社の製品情報、営業上の秘密、顧客情報、社員の個人情報など、多岐に渡る情報に社員は触れることになります。これらの秘密を守るため、従業員は入社の際に秘密保持誓約書を会社に提出することになるのです。
これには、業務上知りえた情報を他に漏らさない旨の誓約文言、自ら秘密情報を創出した場合の会社への報告義務、自ら創出した情報といえども他に漏らさない旨の文言、秘密情報を他に漏らしていないか確認する社員のメールのモニタリングを承認する文言などで構成されます。
入社誓約書
内定者に会社が新卒採用や中途入社の経験者採用を行う場合、選考の結果誰を採用するか決定します。この決定された人が簡単に辞退して採用選考を繰り返すことがないように、採用決定の段階で会社が採用内定者に提出を求めるのが、入社を誓約する入社承諾書です。
この誓約書には、入社指定日に必ず入社する旨誓約する文言が記載されます。また採用に当たり提出を求められる書類の提出、入社までの住所変更、家族の異動など会社が求める書類や報告を遅滞なく提出する旨、誓約する文言が書かれています。
新規学卒者の場合には、まだ卒業が決まっていないうちに採用内定されるのが通常であるため、卒業が採用の条件である旨の文言が普通記載されます。
退職誓約書
労働者が退職する際に提出する文書が、退職誓約書です。誓約書に書かれる項目としては、「秘密保持義務の遵守」と「競業避止義務の遵守」などが多い傾向にあります。誓約書を交わす目的は、「競合企業への転職」「競合する会社の設立」などの競業行為や、在職時に知りえた営業上の秘密や顧客や取引先の情報、習得したノウハウの不正な流用を防ぎ、自社が重大な損害を被らないようにするためです。
また労働者が、在職中に担当していた業務の成果に発生した知的財産権を、退職後に求めて訴訟を起こす場合もあります。このような争いを防ぐためには、知的財産権の帰属先が会社であることを明確に記載しておくことが大切です。
離婚時に夫婦で交わす誓約書
離婚する場合には、離婚した後のトラブルを回避し、離婚後の義務の履行を担保するため、誓約書を提出してもらうことになります。
夫婦はお互いに一緒に暮らしている間にお互いの努力で、財産を築いたとする夫婦共有財産制を前提として離婚する場合には、財産分与が行われます。
また離婚の原因を作った配偶者から他方配偶者に対して、慰謝料が支払われることになります。離婚時点でこれらが清算されていれば問題ありませんが、離婚時点以後に支払いがなされる場合には、支払う義務のある配偶者から、確かに支払う旨の誓約書を他方の配偶者に差し入れることになります。
子供が夫婦の間にいる場合に、母親が子の親権を持って育てることになり、成人するまでの間は父親が子の養育費を母親に支払うことになった場合、その養育費支払いに関する誓約書なども、この離婚時の誓約書に含まれます。養育費支払いの義務が誓約書として残っていれば、後で養育費の支払いをめぐってトラブルになることは回避することができるのです。
下記テンプレートを参考に夫婦間で協議した協議書も作成しておくと良いでしょう。基本的な財産分与や慰謝などについての条項記載があります。
金銭貸借誓約書
個人間でお金の貸し借りを行う場合にも誓約書を用いる場合があります。
金銭トラブルに発展しないよう、
- 貸し借りをする金額
- 借用日
- 返済期限
- 返済方法
- 利息
を明記しておきましょう。
また、もしも上記の誓約内容が守られなかった場合の延滞損害金(ペナルティ)も記載しておくと安心です。
下記の基本的な誓約書のテンプレートに必要な項目を記載して使用してください。
個人間で交わす誓約書
個人間で何らかの約束事を交わす場合には、誓約書よりもプライベートな場面に向きの「念書」が用いられることが多いです。誓約書も念書も法的効力があることには変わらないため、どちらで作成しても問題ありません。
誓約書を作成する場合は、下記の基本的な誓約書のテンプレートに誓約書の内容や必要な項目を記載して使用してください。
誓約書の注意点
誓約書は、○○をします、もしくは○○をしませんと誓約するわけですが、その誓約事項の履行を担保するため保証人をたてる場合があります。人の作為、不作為を担保するわけですから、土地建物といった物的担保はそぐわず、保証人といった人的担保をたてることになるわけです。
先にも触れましたが、誓約書は誓約する本人が一方的に誓約するものですから、押印するのは誓約する本人だけで足り、誓約を受ける者の押印は誓約書上必要ありません。しかし押印がないと効力は認められませんので、押印は必ず誓約者にしてもらわなければなりません。
誓約に違反した場合には、誓約書に書かれた罰則が適用されることになります。誓約の内容が反社会的でない限り、誓約書に書かれた義務の履行を求められることとなります。
誓約書と混同しやすい書類
誓約書と混同されやすい書類がいくつかありますが、それぞれの違いについて分かりやすく解説していきます。
誓約書と契約書には拘束力に違いがある
誓約書と契約書は、混同されやすい言葉ですが、以下の点で異なります。
【誓約書】
署名捺印:誓約する者のみが署名捺印する
拘束力:誓約する者のみに拘束力がある
【契約書】
署名捺印:当事者双方が署名捺印する
拘束力:当事者双方に拘束力がある
従って、当事者のうち一方のみを拘束したい場合は誓約書、お互いに権利義務を課して拘束したい場合は、契約書の作成が適しています。
誓約書はよりフォーマルな場面で、念書はプライベートな場面で使用
誓約書と混同しやすいものに、「念書」があります。この2つについては、どちらも一方が相手方に対して約束事を誓うための文書であり、意味に違いはありません。
ただし、誓約書がビジネスシーンやフォーマルな場面で用いられるのに対し、念書はよりプライベートな場面で用いられることが多い傾向にあります。例えば、個人間における金銭借用の約束事には、念書が用いられることがあります。
まとめ
誓約書は契約書と同じく後のトラブルを回避するための書類ですから、公正証書にしておけば確実です。誓約書を書く側からすれば、後の証拠にもなる重要な書類ですので、提出した内容を確認し、後の改ざんを防ぐ意味でもコピーをとっておくようにしましょう。
