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社会保険と雇用保険の違いとは? 加入義務条件や保険料の自己負担額を解説!

社会保険と雇用保険の違いとは? 加入義務条件や保険料の自己負担額を解説!

社会保険と雇用保険は、どちらも労働者の生活を保障するための公的な保険制度です。

就職や転職によって雇用形態が変わった場合、「自分は社会保険と雇用保険の加入者に該当するのだろうか」と疑問を持つこともあるでしょう。

社会保険と雇用保険は、事業主または労働者が一定の基準を満たした場合に加入が義務付けられています。

この記事では、社会保険と雇用保険の違いや加入義務条件、保険料の自己負担額をわかりやすく解説します。


この記事の監修者
きた社労士事務所  代表 

社会保険と雇用保険の違い

社会保険や雇用保険は、生活を保障するための公的な保険制度です。事業主または労働者が一定の基準を満たした場合、加入が義務付けられています。

それぞれの違いを表にまとめました。

社会保険

雇用保険

保障内容

疾病・老齢・介護など生活上のリスクを保障する

失業後の生活保障や雇用の安定、就職の推進などがメイン

加入義務条件

  • 労働時間・賃金
  • 社会保険の適用事業所
  • 特定適用事業所
  • 労働時間
  • 雇用期間
  • 適用者

自己負担額

  • 保険料率が一定のものと、事業主が加入する保険により異なるものがある
  • 保険料は事業主と折半
  • 保険料率は業種により異なる
  • 保険料は事業主負担額のほうが高い

社会保険

社会保険とは、被保険者やその被扶養者が疾病・老齢・介護・失業といったリスクに備えるための公的な保険のことです。次の5つの保険があり、これらの保険を総称して「社会保険」と呼びます。

  • 健康保険
  • 介護保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

健康保険・介護保険・厚生年金保険の3つを指して「社会保険」と呼ぶこともあります。

その場合、前者5つの社会保険のことを「広義の社会保険」、後者3つの社会保険のことを「狭義の社会保険」といいます。一方、雇用保険・労災保険の2つは「労働保険」といい、狭義の社会保険と区別されています。

雇用保険

雇用保険は労働保険のひとつで、労働者が失業した場合の生活保障や雇用の安定、就職の推進などを目的とした保険です。

雇用保険には、次のような保障があります。

  • 失業手当:失業した人が再就職するまでの生活保障を目的とした手当
  • 教育訓練給付:スキル獲得やキャリア形成支援を目的とした給付金
  • 就職促進給付:安定した職業への早期再就職支援を目的とした給付金
  • 育児休業給付金:育児を理由に休業し無給になった労働者に対して支払われる
  • 介護休業給付:介護を理由に休業し無給になった労働者に対して支払われる

社会保険と雇用保険に加入が必要な条件

社会保険と雇用保険には、それぞれ加入義務条件があります。

社会保険の加入義務条件

社会保険の加入義務条件は、次の3つです。

  • 労働時間・賃金
  • 社会保険の適用事業所
  • 特定適用事業所

労働者または事業主がこの条件のいずれかを満たす場合、社会保険の加入手続きが必要です。条件をそれぞれ詳しく見ていきましょう。

労働時間・賃金

次の条件に該当する人は、社会保険の加入義務があります

  • 法人役員
  • 通常の労働者(正社員・フルタイム)
  • 週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上

加えて、101人以上の労働者を雇用している事業主は、次の条件すべてに該当する労働者も社会保険に加入させなければなりません

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上
  • 2か月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

参考:従業員数500人以下の事業主のみなさま |厚生労働省

社会保険の適用事業所

事業主が「社会保険の適用事務所」に該当する場合も、社会保険への加入義務があります

社会保険の適用事業所に該当するのは、次の条件に当てはまる企業や個人事業主です。

  • 国または法人の事業所
  • 常時5人以上の労働者を雇用する個人事業主

飲食店や接客業、美容室など特定の事業を営む事業所で法人化していないところは、常時5人以上の労働者を雇用していても適用事業所に該当しません。

また、適用事業所以外の事業所であっても、労働者の半数以上が同意し、厚生労働大臣の認可を受ければ適用事業所になれます。

参考:適用事業所と被保険者|日本年金機構

特定適用事業所

「特定適用事業所」とは、適用事業所で、かつ厚生年金保険に加入する労働者の総数が、12か月のうち6か月以上、101人以上になると見込まれる事業所のことです。

特定適用事業所に該当する事業主は、次のすべての条件に該当する労働者を社会保険に加入させる手続きをしなければなりません。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上
  • 2か月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

なお、法改正により、2022年10月1日から特定適用事業所の要件が、労働者数501人以上から101人以上に拡大されました。2024年10月からは、労働者を51人以上雇用する事業所にも適用される見込みです。

参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構

雇用保険の加入義務条件

労働者か事業主が次の2つの条件のうちいずれかを満たす場合は、雇用保険への加入義務があります。

  • 労働時間
  • 雇用期間

労働時間

労働時間が週20時間以上の労働者には、雇用保険への加入義務が生じます。勤務形態に関わらず、労働時間が週20時間以上であれば雇用保険加入が必要です。

例えば、次のような労働者も対象です。

  • 1日4時間・週5勤務の労働者
  • 1日8時間・週3日勤務の労働者

参考:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!|厚生労働省

雇用期間

雇用保険は、雇用期間が31日以上続く見込みがある労働者にも加入義務が生じます

たとえ入社時の雇用契約において31日未満の契約でも、「更新される」または「更新される場合がある」旨の明示がある場合は注意しましょう。31日以上の雇用見込みがあるものとして、雇い入れ時から雇用保険の加入対象となります。

参考:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!|厚生労働省

雇用保険の適用外となる労働者

次のいずれかの条件に該当する労働者は、雇用保険の適用外です。

  • 法人役員
  • 1週間の所定労働時間が20時間未満である者
  • 31日以上雇用されることが見込まれない者
  • 季節的事業に雇用される者で、4か月以内の期間を予定して雇用される者または週所定労働時間が20時間以上30時間未満である者
  • 家族従業員
  • 国・都道府県・市区町村の公務員およびこれらに準ずる事業に雇用される者
  • 学生

社会保険料と雇用保険料の自己負担額

社会保険料と雇用保険料は労働者と事業主がそれぞれ負担しています。保険ごとの自己負担額を見ていきましょう。

健康保険料・介護保険料

健康保険料と介護保険料は、事業主が加入している健康保険によって異なります

例えば、2022年現在、東京都の協会けんぽに加入している企業の保険料率は、健康保険料が9.81%、介護保険料を含めると11.45%です。

保険料は事業主と折半するため、自己負担分はそれぞれ給与額(標準報酬月額)の約4.905%(介護保険料を含めると5.725%)となり、約5%が自己負担額となります。

参考:令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|厚生労働省

厚生年金保険料

厚生年金保険料の保険料率は、2022年現在で18.3%です

健康保険料・介護保険料と同じく保険料は事業主と折半するため、自己負担額は給与額(標準報酬月額)の9.15%となります。

なお、事業主には厚生年金保険料に加えて「子ども・子育て拠出金」として0.36%の負担が義務付けられています。

参考:保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)|日本年金機構

雇用保険料

雇用保険の場合、事業主の事業の種類ごとに保険料率が異なります。

令和4年10月現在の雇用保険料率は次のとおりです。社会保険と異なり、事業主負担のほうが保険料率が高くなっています。

事業の種類

労働者負担

事業主負担

一般の事業

5/1,000

8.5/1,000

農林水産・清酒製造の事業

6/1,000

9.5/1,000

建設の事業

6/1,000

10.5/1,000

雇用保険料の金額は、各事業の給与額(標準報酬月額)または賞与額に労働者負担・事業主負担をかけて算出します。例えば、一般の事業を行う企業で給与額が20万円の場合、雇用保険料は次のとおりです。

  • 労働者負担分:20万円×(5/1,000)=1,000円
  • 事業主負担分:20万円×(8.5/1,000)=1,700円

社会保険と雇用保険の違いについてのまとめ

社会保険と雇用保険はどちらも公的な保障制度で、雇用主・労働者のいずれかが加入義務条件を満たしている場合は、必ず加入手続きを行わなければなりません。また、保障内容や加入条件、労働者負担額は、社会保険と雇用保険で異なります。

2022年には、法改正を背景に特定適用事業所の要件も変更されました。今後も法改正により、社会保険・雇用保険の加入義務条件が変わる可能性があります。就職・転職をしたり、雇用形態の変化があったりした場合は、必ず事業主に確認しましょう。

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監修者プロフィール

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北 光太郎

きた社労士事務所 代表

2012年に社会保険労務士試験に合格。

勤務社労士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。

2021年に社会保険労務士として独立。

労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。

法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアでも労働法や社会保険の情報を提供している。

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