外注工賃(外注費)とは? 源泉徴収の扱い、仕訳・勘定科目を解説
外注工賃は外部の業者や個人事業主に業務を委託した際、その対価として支払われる費用です。支払い報酬など、外注工賃は他の勘定科目と間違いやすい勘定科目ですので、外注工賃の扱い方を知らなければなりません。
この記事では、経理部の社員に向けて、外注工賃の概要や注意点を解説します。また、この記事の後半部分では、外注工賃によくある仕訳方法をまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
外注工賃とは
外注工賃とは、特定の業務を外部の専門家や、組織に委託した際に発生する下請け賃料や手間賃のことです。一方、税理士などへの依頼は外注工賃ではなく「支払報酬」や「支払手数料」の勘定科目に該当します。
外注工賃の具体例や外注費、給与賃金との違いを見ていきましょう。
外注工賃の具体例
外注工賃は外部の業者や個人事業主に業務を委託した際、その対価として支払われる費用ですので、具体的には次のような業務に外注工賃が発生します。
- Web開発
- 動画制作
- デザイン
- 営業代行
- 事務代行
外注工賃(外注費)と混同しやすい勘定科目
勘定科目の仕訳の際に、外注工賃と混同しやすい科目がいくつかあります。
ここでは主に注意が必要な下記の3つについて、それぞれの分類ポイントを解説します。
- 給与
- 支払手数料
- 販売促進費
給与
給与とは、自社の従業員として業務を行っている者に対して支払う費用のことです。業務開始前からすでに労働時間が定まっていたり、進め方が決められていたりする場合は、給与に該当します。これは、雇用契約の有無にかかわらず、業務委託の際も同様です。
ただし、成果物を提出すれば労働時間や進め方が自由な場合は、基本的に外注工賃に分類されます。
支払手数料
支払手数料とは、業務の中で必要となった専門家に対する報酬や金融機関の取引手数料などです。
外注工賃と支払手数料は、主に業務の専門性で分類されます。たとえば税理士や公認会計士、弁護士など高度な専門性を要する業務を依頼した時には、支払手数料に該当します。
これらの職業に対する報酬や顧問料、また依頼先が個人事業主の場合は源泉徴収が必要となるので気を付けましょう。
販売促進費
販売促進費とは、商品を直接宣伝する場合にかかる費用です。具体的には企業カタログやノベルティ制作、サンプルの作成などがあります。
これらは外部業者に委託するため外注工賃と混同されやすいですが、販売を増やす目的で発生した費用は販売促進費に分類されます。
外注工賃の扱いで注意したいポイント
外注工賃の扱い方で注意すべきポイントをまとめました。ぜひ参考にしてください。
消費税の区分
消費税の区分は、国内外のどちらで取引したかによって異なります。例えば、事業者が海外に在住するフリーランスに業務を発注した場合、海外における取引となり、消費税は課税されません。
一方、普段は海外に在住しているものの日本に一時帰国して業務する際は、国内で行う取引になるため、消費税が課されます。
消費税の有無は、取引当事者間でやりとりされる金額に影響するため、取引を開始する前にどのような形で役務の提供を受けるかを詳細に決めておくとよいでしょう。
(出典:消費税法 第4条)
インボイス制度の注意点
令和5年の10月よりインボイス制度が導入されました。
以前の制度では、発注側の事業者はどんな外注先でも、外注費として支払った額の消費税分は仕入税額控除を受けることができました。しかしインボイス制度施行後は、外注先が適格請求書(インボイス)を発行できない場合、仕入税額控除を受けられなくなりました。
適格請求書とは、以前と同様の仕入税額控除の適用を受けるために必要な請求書等の記載事項要件に、新たに下記の2つを追加したものです。
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 税区分ごとの消費税額と適用税率
インボイス制度施工後は、仕入税額控除の適用を受ける要件が「法定事項が記載された帳簿と適格請求書等の両方を保存していること」となりました。また、インボイス制度前にあった支払額の合計が3万円未満(税込)の特例はありません。
ただし、外注先が免税事業者の場合は、適格請求書発行事業者ではないので適格請求書の発行はできません。そのため仕入税額控除が適用されませんが、一定の期間のみ一部の仕入れ税額控除の適用を認める経過措置がとられています。
詳しくは、以下のとおりです。
期間 |
割合 |
---|---|
2023年10月1日~2026年9月30日 |
免税事業者からの仕入税額相当額の80% |
2026年10月1日~2029年9月30日 |
免税事業者からの仕入税額相当額の50% |
上記の経過措置の適用を受けるために、帳簿には「80%控除対象」「免税事業者からの仕入れ」などと経過措置が適用される課税仕入れであるという旨の記載が必要です。
ほかにも免税事業者から受け取る請求書は従来の項目を記載するなどの注意点もあるため、事前に調べておくことが大切です。
源泉徴収
外注費や報酬の支払いには、必ずしも源泉所得税を徴収するわけではありません。なぜなら、所得税法の第204条に基づき、ケースごとに判断されるためです。一般的なケースを紹介します。
- 源泉徴収の対象:法人が個人に支払う場合
- 源泉徴収の対象外:特例を除いた個人同士や法人同士の支払い
なお、外注費や支払報酬などの名称は経理上の用語ですので、税の徴収義務とは関係ありません。所得税法第204条に基づく支払いの条件に当てはまるかどうかを、チェックしましょう。
たとえば、Webサイトのデザインや記事の執筆などを個人に依頼した場合、外注工賃として、源泉所得税の徴収対象になります。徴収した税金は、報酬を支払った翌月の10日までに納付する必要がありますので、期限を忘れないようにしましょう。
(出典:所得税法 第204条)
外注工賃によくある仕訳例
外注工賃によくある仕訳例を紹介します。
個人事業主・フリーランスのプログラマーへ外注した場合の仕訳
自社のWebサイト制作のデザインの仕事を、個人事業主やフリーランスのプログラマーへ依頼し、その報酬として7万円(消費税抜き)を現金で支払ったとしましょう。委託先が個人事業主ですので、10.21%の源泉徴収税率を考慮すると、次のような仕訳になります。
なお、報酬額が100万円を超える場合、超えた金額に対して20.42%の源泉徴収税率が掛けられます。
日付 |
借方 |
貸方 |
摘要 |
||
---|---|---|---|---|---|
2023年6月1日 |
外注工賃 |
70,000円 |
現金 |
69,853円 |
個人事業主Aさん、Webサイト構築費用 |
7,000円 |
預り金 |
7,147 円 |
また、源泉徴収税の納付時に再度記帳しなければなりません。仕訳方法は次の通りです。
日付 |
借方 |
貸方 |
摘要 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|
2023年7月1日 |
預り金 |
7,147円 |
現金 |
7,147円 |
源泉徴収税の納付 |
|
会計業務を外部の会計事務所(法人)に依頼した場合の仕訳
会計業務を外部の会計事務所(法人)に依頼し、その報酬として110,000円(消費税込)を銀行振込で支払ったとします。この場合、仕訳は次のようになります。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
外注工賃 |
100,000円 |
当座預金 |
110,000円 |
仮払消費税等 |
10,000円 |
相手が法人の場合、源泉所得税を控除する必要はないため、注意が必要です。
個人事業主・フリーランスが外注する際の注意点
個人事業主やフリーランスの外注費用は、相手との関係性や状況によって外注工賃か給与かに分類されます。外注工賃でなく給与として認定されてしまうと、源泉徴収税やそれに係る延滞税などさまざまな税金が発生します。
外注工賃か給与かの判断基準は、以下の表にまとめたので参考にしてください。
判断基準 |
外注工賃 |
給与 |
---|---|---|
契約 |
請負契約 |
雇用契約 |
他人が代替しての業務遂行 |
できる |
できない |
指揮監督下 |
ない(業務性質上に存在する指揮は除く) |
ある |
材料または用具の用意 |
本人 |
企業 |
時間的拘束 |
受けない |
受ける |
ほかにも業務を受注する側が金額を計算しての請求であるかなどの基準がありますが、形式より実質で判断されることが多いようです。
外注工賃についてのまとめ
外注工賃とは、特定の業務を外部の専門家や、組織に委託した際に発生する下請け賃料や手間賃のことです。外注工賃を正しく仕訳するためには、取引先や源泉徴収税の有無などで異なります。
この記事をぜひ参考にしながら、間違いのないように外注工賃を処理しましょう。
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