経理担当必見! 住民票発行手数料を適切に処理するための勘定科目ガイド
住民票発行手数料の経費処理に悩んでいませんか?実は、この手数料は「租税公課」で処理するのが一般的です。しかし、誤って支払手数料や雑費で処理している企業も少なくないでしょう。
本記事では、住民票発行手数料の仕訳時の注意点や正しい仕訳方法、経費計上できるパターン・できないパターンなどについて詳しく解説します。
さらに、誤って処理している場合の対処法も紹介していますので、今すぐチェックして適切な処理を行いましょう。
住民票発行手数料の勘定科目
住民票発行手数料は、原則として「租税公課」の勘定科目で処理します。租税公課とは、国に納める税金(租税)と、公共団体に納める会費や罰金などを意味する「公課」を合わせた言葉です。
住民票の発行手数料は、取引相手が公的機関になるため、租税公課として記帳するのが本来の仕訳です。しかし、法人の場合は、支払手数料や雑費として処理を行っていることもあるでしょう。
その場合は、企業会計原則の一つである「継続性の原則」に基づき、租税公課への切り替えを慌てて行う必要はありません。
住民票の発行手数料を仕訳する際に注意したいこと
住民票の発行手数料を仕訳する際は、次のポイントに注意しましょう。
住民票の発行手数料は非課税として区分
住民票の発行手数料は、非課税として区分します。ほかの支払手数料が消費税の課税対象になっているからといって、住民票の発行手数料も課税対象にしないよう注意が必要です。
住民票発行などの行政手続きにかかる費用は、事業者がサービスを提供する際に発生する消費税の考え方になじまないことから、非課税となっています。
「支払手数料」や「雑費」の勘定科目を用いている場合は、課税仕入となっていることが多いため、必ず確認しましょう。勘定科目を選択後、非課税取引に修正して仕訳処理を行わなければなりません。
住民票の発行手数料は仕入額控除の対象にならない
仕入額控除とは、売上にかかる消費税額から、仕入にかかった消費税額を差し引いて納税することにより、消費税の二重課税を解消するための仕組みのことです。
住民票の発行手数料は非課税であり、二重課税の解消にあてはまらないことから、仕入税額控除の対象にもなりません。
勘定科目を一度決めたら安易に変えない
会計には「継続性の原則」というルールがあり、合理的な理由がない限り、一度決めた勘定科目を変えるべきではないとされています。勘定科目を変更すると、過去の分との正しい比較ができなくなるためです。
ただし、当初は住民税の発行手数料が少額だったため「雑費」として処理しており、金額が増加したことから「租税公課」に変更する場合などは、勘定科目を変更できます。
勘定科目を変更する際は、妥当性や勘定科目の変更による影響を精査したうえで、監査を受けている公認会計士に相談するとよいでしょう。
住民票の発行手数料を経費計上できる?
住民票の発行手数料は、経費計上できるパターンとできないパターンがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
経費計上できるパターン・できないパターン
住民票の発行手数料を経費として計上できるのは、住民票の取得が事業に必要な場合のみです。従業員の本人確認や、海外出張のためにパスポートの取得が必要になった場合などが該当します。
一方で、社長や従業員が個人的な理由で住民票を取得する場合など、事業に関係がない場合、経費計上は認められません。
事業以外の目的で、社長や従業員が取得した住民票の発行手数料を会社が立て替えている場合は、立替金などの勘定科目を使用し、本人から徴収する必要があります。
租税公課で経費となる税金や公共料金について
住民票の発行手数料のほかにも、租税公課で経費計上が可能な税金や公共料金があります。一例として、次のような税金や公共料金があげられます。
<税金>
- 印紙税
- 固定資産税
- 事業税
- 事業所税
- 不動産取得税
- 消費税(税込処理の場合)
- 自動車重量税
- 自動車税環境性能割
- 自動車税環境種別割
- 登録免許税
<公共料金>
- 協同組合や商店会、同業者組合などの会費・組合費・賦課金
このほかに、租税の発生時や、国・地方自治体などへの支払いが必要になった場合は、背景を踏まえながら費用計上を検討します。
租税公課項目すべては経費計上できない
一般的には租税公課の勘定科目で処理できるといわれている経費であっても、仕入や固定資産の付随費用とみなされ、租税公課として計上しないものがあります。
代表的な例が関税で、仕入の付随費用として「仕入」や商品などの「棚卸資産」で会計処理されることがあります。その後、売上が上がった際に売上原価として会計処理される流れです。
関税が固定資産にかかる場合は「建物」や「建設仮勘定等」として計上するなど、経費の種類によって処理の方法が異なるので、都度確認しましょう。
住民票の発行手数料の仕訳例を紹介
住民票の発行手数料の仕訳例を、パターン別に紹介します。
例)住民票の発行手数料200円 × 4枚分を会社の現金で支払った場合
借方 |
貸方 |
租税公課 800円 |
現金 800円 |
<従業員が手数料を立て替えた場合の仕訳例>
例)従業員が住民票の発行手数料200円を立て替えた場合
借方 |
貸方 |
租税公課 200円 |
未払金 200円 |
<従業員が住民票の発行をオンライン申請した場合の仕訳例>
例)従業員が住民票の発行をオンラインで申請し、発行手数料200円、郵送料120円を支払った場合の仕訳例
借方 |
貸方 |
租税公課 200円 通信費 109円 仮払消費税 11円 |
未払金 320円 |
郵送料は課税対象となるのが、オンライン申請の仕訳のポイントです。
まとめ
住民票の手数料は、非課税で「公課」に該当するため、租税公課に記帳するのが基本です。しかし、すでに支払手数料や雑費として継続して記帳している場合は、継続性の原則に従って同じ勘定科目を使います。
勘定科目の選定には企業会計原則を参照し、個人事業主は青色申告の基準を活用するとよいでしょう。