インタレストカバレッジレシオの目安は? 分析時の注意点や他の重要指標もまとめて解説
インタレストカバレッジレシオは、企業が借入金の利息をどの程度支払う能力があるかを示す重要な財務指標です。この指標が高いと、企業の返済能力が評価され、金融機関や投資家からの信頼が高まります。
この記事では、融資を検討している経営者向けに、インタレストカバレッジレシオの理想的な目安や平均値、そして分析時の注意点をわかりやすく解説します。
さらに、他の重要な財務指標についても後半で触れているので、ぜひ最後までお読みください。
インタレストカバレッジレシオとは?
インタレストカバレッジレシオとは、企業の財務指標の一つで、借入金の利息を支払う能力がどれだけあるかを示します。企業が稼いだ年間の事業利益と、支払利息など支払うべき金融費用の比率がわかります。
インタレストカバレッジレシオが高いほど、その企業が借入金の利息を支払う能力が高いと評価されます。具体的な計算式と数値を把握する必要性を見ていきましょう。
計算式と計算例
インタレストカバレッジレシオの計算式は「営業利益 + 金融収益 ÷ 支払利息」です。
- 営業利益:決算書でいう損益計書(PL)に記載されている営業利益のこと
- 金融収益:預金や貸付で生じる受取利息と、株式などの保有で生じる受取配当金
- 支払利息:金融機関などへ支払う利息
例えば、次の例をもとにインタレストカバレッジレシオを算出してみましょう。
- 営業利益:500万円
- 受取利息&配当金:5万円
- 支払利息:50万円
(500万円 + 5万円) ÷ 50万円 = 10.1
この場合におけるインタレストカバレッジレシオは、10.1倍です。
数値を把握する必要性
インタレストカバレッジレシオは、借入金の利息を支払う企業の能力を分析できるため、その数値が高いほどよいといえます。
インタレストカバレッジレシオは企業の営業収益、金融収益が良ければ高くなり、支払利息が高ければ低くなります。
事業の収益に対して、過剰な設備投資などで支払利息を払いすぎていないか、払いすぎていた場合、収益が悪いのか、それとも借入条件が悪く支払利息が余計にかかっているのかなどの原因を分析するのにも役立ちます。
ただし、企業の状況は単年で把握できません。インタレストカバレッジレシオの推移を見る事で、企業の支払能力(体力)がわかります。また、数値の高さだけではなく、高さや低さの要因を深堀することで、正確な企業分析ができるでしょう。
インタレストカバレッジレシオの目安と平均
インタレストカバレッジレシオの目安と平均を紹介します。
数値目安
インタレストカバレッジレシオは、1.0を超えることが最低限のラインです。1.0を下回ると、利益が利息をカバーしきれず、経営の安定性に問題があると判断されるためです。
適正なインタレストカバレッジレシオは投資などの目的によって異なりますが、2〜3倍が望ましいとされており、金融機関や投資家から信頼を得やすいといえるでしょう。
業界別の平均
インタレストカバレッジレシオの平均値を、業界とその規模別にまとめました。
指標 |
~50人 |
251~300人 |
501 ~550人 |
751 ~800人 |
1000人~ |
製造業 |
160.197 |
1286.538 |
831.362 |
7294.996 |
831.154 |
小売業 |
54.205 |
819.218 |
326.958 |
1361.911 6 |
701.925 |
インタレストカバレッジレシオの分析における注意点
インタレストカバレッジレシオを分析する際の注意点をまとめました。
計算する際は同時期の会計データを使用
インタレストカバレッジレシオを計算する際には、一貫性を確保するために同時期の会計データを使用しましょう。
営業利益や受取利息といった収益要素と、支払利息などの負担要素は、同じ期間のデータに基づいて算出しないと、正しい数値を算出できないためです。
業種や規模によって目安の数値が変わる
インタレストカバレッジレシオの最低限のラインが1倍以上で、2倍以上は安全性が高いとされています。
しかし、インタレストカバレッジレシオの適正な数値は、業種や企業の規模、投資配分などによって異なります。業界の特性や規模によっては異なる数値が求められるケースがあるためです。
例えば、事業投資しない企業の場合、インタレストカバレッジレシオの数値は高まりますが、長期的に考えると事業が縮小傾向になるでしょう。数値だけで判断するのではく、企業全体を見ることが大切です。
少ない数値のほうが企業成長につながるケースがある
インタレストカバレッジレシオの高さは、企業の債務返済能力の高さにつながりますが、その一方で、インタレストカバレッジレシオが低い場合でも、企業の成長につながるケースがあるでしょう。
具体的には、積極的に設備投資する傾向にある製造業などが当てはまります。設備投資は借入額を増やし、インタレストカバレッジレシオの数値が高まりますが、中長期の目線で見ると設備投資分を回収でき、数値は良化するケースもあります。
インタレストカバレッジレシオ以外の指標
インタレストカバレッジレシオ以外で、経営に関する重要な指標をまとめました。ぜひ参考にしてください。
自己資本比率
自己資本比率は、企業の総資本に対する自己資本の割合を示しています。自己資本とは、返済の必要がない資本で、「純資産 ÷ 総資本 × 100」の式を使って算出します。
自己資本比率が高ければ高いほど、企業の財政健全性が高いと評価されます。
しかし、過度に高い自己資本比率は、企業の成長機会を逸している可能性を示すため、適切なバランスが求められます。
(出典:財務省 自己資本比率)
借入金依存度
借入金依存度とは、企業の総資産のうち、借入金が占める割合を表した数値です。借入金依存度が高いと、借入金に対する依存度が高く、財務リスクが高いと判断されます。
しかし、企業が投資や事業拡大が目的で、借入金の割合が高いケースも考えられます。借入金依存度は次の式を用いて算出できます。
借入金依存度 = (短期借入金 + 長期借入金 + 受取手形割引高) ÷ 総資産 × 100
債務償還年数
債務償還年数とは、企業が現在抱える借入金をすべて返済するため、どれだけの年数を要するかを示した指標です。総借入金を一年間の営業キャッシュフローで割ると、債務償還年数を算出できます。
債務償還年数が小さいほど、企業の財務健全性は高いと考えられるでしょう。債務償還年数は次の式を用いて算出できます。計算式は異なりますが、どちらも債務償還年数がわかります。
- 債務償還年数=貸借対照表の借入金の合計/営業活動によるキャッシュ・フロー
- 債務償還年数=貸借対照表の借入金の合計/(税引前当期純利益+減価償却費)
インタレストカバレッジレシオについてのまとめ
企業の返済能力の高さを示すインタレストカバレッジレシオは、金融機関が企業にお金を貸す際の重要な指標になります。
企業の財務体質を改善したい経営層は、インタレストカバレッジレシオなどの指標を理解したうえで、自社分析に活用してください。
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